映画人九条の会Mail No.26

2008.02.22発行
映画人九条の会事務局

目次

自衛隊の「派兵恒久法」は、明らかな立法改憲!

 自民党は2月13日、「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の初会合を開き、自衛隊の「海外派兵恒久法」の検討に着手しました。座長は山崎拓前副総裁です。

 「派兵恒久法」とは、いつでも政府の判断だけで自衛隊の海外派兵ができる法的な枠組みを作ることです。いままでは海外派兵ごとに時限立法である特措法を作り、国会の審議を経た上で自衛隊を出動させていました。しかし「恒久法」が成立すれば、政府の判断一つでいつでも自衛隊を海外へ派兵させることができるようになるのです。

 この「派兵恒久法」は、昨年の福田・小沢による「大連立」協議の中心テーマとして政治の表舞台に浮上してきました。その後民主党は、新テロ特措法案の対案として、昨年12月に「アフガン復興支援特措法案」を提出しましたが、その中には恒久法の「早期整備」が明記されており、自民党はあえてこの法案を継続審議としました。民主党は「派兵恒久法」の先導役を果たしているのです。

 そして今年1月29日衆院予算委員会で、福田首相は「ぜひ一般法(恒久法)を作りたい」と表明し、通常国会への法案提出を示唆しました。また山崎拓氏は、「新テロ特別措置法が来年1月に期限切れになる。恒久法を制定しておかないと対応できない」と強調して、今年中の法案成立を狙っています。

 自民党「合同部会」が検討の土台にするのは、自民党・防衛政策小委員会が2006年にまとめた石破試案=「国際平和協力法案」です。この石破試案では、自衛隊の海外活動は国連の要請によるだけでなく、「国連加盟国の要請」でも日本政府が必要と判断すれば可能だとしています。

 また石破試案は、武器使用基準を大幅に緩和し、「安全確保活動」(これは治安活動そのものです)や「警護活動」「抵抗の抑止」にまで活動の幅を広げて、現地での武力行使や武力弾圧を可能にする恐るべき内容になっています。「合同部会」幹部の一人も、「武器使用基準の緩和が検討の重要なテーマになる」とし、他のメンバーも「自衛隊を海外に出す以上は(武器使用基準の緩和は)当然必要だ。武器使用制限は交戦規則でもできるので、法律で厳格に制限するのは適当でない」と述べています。

 「派兵恒久法」の制定を許せば、憲法9条は実質的に破壊され、日本は本当に「戦争ができる国」になってしまうのです。

 日本の平和憲法は、戦争を放棄しています。平和憲法があるからこそ、諸外国からの信頼を得ることもできるし、平和のための運動や国際貢献もできます。いま世界では、紛争が起きても外交的・平和的に解決する流れが大勢を占めています。武力で平和は作れない、これが世界の共通の認識であり、これこそが憲法9条の輝かしい精神であり、世界で9条に対する評価が高まっている理由です。

 しかし「派兵恒久法」は、その平和憲法を真っ向から踏みにじるものです。憲法9条を立法によって破壊し、実質的に改憲し、戻れないところにまで行ってしまおうとしているのです。

 私たち九条の会の活動の中心テーマは、「戦争の放棄」を明記した憲法9条を守ることであり、9条を生かすことです。これが私たちの活動の原点です。9条を破壊する「派兵恒久法」は、絶対に成立させてはなりません。

 おりしもアメリカでは、大統領選挙の予備選挙の真っ最中です。「ブッシュのアメリカ」はもうお仕舞いです。なのに、日本はいつまでアメリカの言いなりになり、屈辱的な追従を続けるつもりなのでしょうか。

 9条を守り、生かすために全国で行動をつづけている映画人九条の会の皆さん、自民・民主両党による「派兵恒久法」の制定を何としてもくいとめましょう。そのために、それぞれの地域、職場で、「派兵恒久法」の危険性を伝え、反対する世論を大きくひろげましょう。

多額カンパ、ありがとうございました!

 前号で、映画人九条の会の運営資金について皆様にカンパをお願いしましたが、多くの皆様方から多額のカンパ金をいただきました。カンパ金は、1年間の活動に足るだけのものが集まっています。本当にありがとうございました。運営委員一同、心から御礼申し上げます。

【2007年映画統計】邦画興収、再逆転さる!

──日本映画はどうなっていくのか!?──

 今年1月31日、日本映画製作者連盟が発表した2007年映画統計によると、観客動員数は1億6319万3千人(前年比99.2%)、興行収入は1984億4300万円(前年比97.8%)で、いずれも昨年実績を下回りました。邦画:洋画の興収比率は47.7:52.3で、洋画が再逆転しました。

 公開本数は810本(邦画407本、洋画403本)で、興行成績上位作品は、「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」WDS(109億)、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」WB( 億)、「HERO」東宝(81.5億)、「スパイダーマン3」SPE(71.2億)、「硫黄島からの手紙」WB(51億)、「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール」東宝(50億)、「西遊記」東宝(43.7億)、「武士の一分」松竹(41.1億)、「トランスフォーマー」UIP(40.1億)、「ダイハード4.0」FOX(39.1億)、「恋空」東宝(39億)など。

 興収10億円以上の作品は、邦画洋画合わせて51番組で、1488.7億円を上げ、全興収の75%を占めています。邦画だけで見ると、興収は946.5億円、公開本数407本、興収10億円以上の29作品で興収730億円を上げています(77.1%)。残りの216.5億円を378本で分ける勘定となり、その1作品当たりの平均興収は5700万円程度です。これではほとんどの映画が赤字で、製作費も回収できないでしょう。

 また邦画の上位10作中9作が東宝配給であり、大半の作品がテレビ局が幹事会社、もしくは共同幹事会社として製作に携わった映画です。高視聴率のドラマを映画化し、公開直前のドラマ再放送、バラエティー・情報番組への大量露出などによってヒットに繋げるという構図のなかで東宝は一人勝ちの様相を見せ、年間興行収入の記録を更新しました。しかしマーケット全体の拡充にはつながらず、全体的な興収は横這いから漸減へと向かっています。ちなみに、邦画興収10億円以上の29作品でキネマ旬報ベストテンに入ったのは、「それでもボクはやってない」の1本だけでした。

 スクリーン数は、シネコンの増加と単館の閉鎖が続いて、前年より+159スクリーンの3221スクリーンとなりました。シネコンも淘汰の時代に入り、スクリーン増に伴わない興行収入、家賃高などでサイトの収益性が圧迫されているようです。1スクリーン当たりの興行収入は6200万円前後(前年比約400万円減)にまで下がっています。

 また東京と地方の映画鑑賞機会の格差も広がっています。2006年度の邦画公開率は、東京を100とすると、長野市はわずか17%です。

 撮影所関係では、松竹の新撮影所建設が一向に進展せず、松竹京都映画は立命館大学との提携で施設の整備を進めていますが、東映京撮は昨年のテレビ朝日のレギュラー時代劇打ち切りに加え、正月映画の不振で厳しい状況にあります。日活は土地の権利問題と施設の老朽化が喫緊の課題となっています。

 映像文化への公的支援も減少の一途を辿っています。文化庁の20年度予算案では、「『日本映画・映像』振興プランの推進」の減少傾向に歯止めが掛からず、トータルで1.72億円減の20.5億円となっています。「魅力ある日本映画・映像の創造」は前年より1.63億円減の6.51億円となり、「日本映画・映像の流通の促進」も7300万円減で3.85億円。「国内上映・映画祭の支援」も4900万円減って2.17億円となりました。日本映画の状況に逆行した予算組みをしており、政府の映画文化に対する認識の浅さが伺えます。

 日本映画はどうなっていくのでしょうか。私たちは日本映画が文化的にも産業的にも豊かに発展することを願っていますが、この事態はとても気がかりです。

 なお、日本映画復興会議は3月29日(土)10:00から東京・文京区民センターで「日本映画は生きぬけるのか?」をテーマに全国集会を行います。問い合せは日本映画復興会議(TEL 03-5689-3970)まで。

映画人九条の会第2回交流集会・山田朗さんの特別講演録 「南京事件70年──南京事件の真実は」が完成!

 昨年12月8日に行った「映画人九条の会第2回交流集会」での、山田朗先生(明治大学文学部教授)の特別講演「南京事件──南京事件の真実は」の講演録が完成しました。山田先生のこの講演は、非常に分かりやすく、説得力のある素晴らしい講演でした。

 講演録は映画人九条の会のHPに掲載されているほか、映画雑誌シネ・フロント1月号に掲載されています。お読みになりたい方は、映画人九条の会のHPにアクセスするか、シネ・フロント1月号をお取り寄せください(シネ・フロント社 TEL 03-5802-3121)。

 また、映画人九条の会事務局にご連絡いただければ、プリントアウトしたものを郵送いたします(送料&実費として300円分の切手を送ってください)。

3月8日(土)、九条の会講演会──小田実さんの志を受けついで

 九条の会は、昨年亡くなった小田実さんの志を受けつぎ、これからも憲法9条を守り、生かしていくという趣旨で、3月8日(土)午後に講演会を開催します。
 大変好評のようで、すでに残り前売り券が数百枚ほどになったそうです。まだ間に合うそうですが、お申し込みはお早めにお願い致します。

九条の会講演会──小田実さんの志を受けついで
日時
3月8日(土)開場12:00 開会13:30
会場
渋谷 C.C.Lemon ホール(旧渋谷公会堂)
参加費
前売り券1000円(当日券1200円)
お話
井上ひさし、大江健三郎、奥平康弘、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子の各氏。小田さんのお連れ合いの玄順恵さんも出席
音楽
チェロ演奏:渡部宏(東京ヴィヴァルディ合奏団代表、東京芸術大学音楽学部管弦楽研究部首席奏者)
ピアノ演奏:山形明朗(モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキーなどのピアノ協奏曲を各地のオーケストラと共演、活発な演奏活動を繰り広げている)
【申込方法】
郵便振替で九条の会事務局まで1000円をご送金ください。折り返し入場券が送られてきます。
当日の入場は先着順(ただし前売り券優先)で、定員になり次第締め切りだそうです。
郵便振替口座
口座番号 00180−9−611526
口座名  九条の会
通信欄に「講演会入場券 ○枚 希望」とお書きください

9条世界会議、いよいよ5月開催!

 今年5月4日(日)、5日(月)、千葉・幕張メッセで7000人規模の「9条世界会議」が開催されます。「9条世界会議」は、「世界から見た9条」「世界に広げる9条」を基本に、世界各国からノーベル平和賞受賞者をはじめ、国際的な平和運動家が参加し、音楽ライブやパネル展も多彩な平和の一大祭典です。

 5月4日(日)は13:30開始で全体会です(定員7000名)。基調講演はマイレッド・マグワイヤさん(北アイルランド/76年ノーベル平和賞受賞)と、コーラ・ワイスさん(アメリカ/ハーグ平和アピール代表)。日本からは池田香代子さん(翻訳家)、雨宮処凛さん(作家)などが参加し、発言します。

 5月5日(月)は10:00開始で分科会です。定員3000名。6日(火)もワークショップや最終文書の発表などが予定されています。

 地方集会は、仙台・大阪が5月6日、広島が5月5日です。ピースウォークも取り組まれます。

 参加費は、4日全体会が1000円(当日1500円)、5日分科会が1000円(当日1500円)です。賛同金は個人1口2000円です。


映画人九条の会事務局
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