映画人九条の会Mail No.25

2008.01.16発行
映画人九条の会事務局

目次

映画人九条の会の着実な発展を!

 新年明けましておめでとうございます。昨年は「9条を守れ」という世論が大きく広がった一年でした。今年はどういう年になるのでしょうか。

 福田政権は世論の反対を押し切って新テロ特措法案を無理やり成立させました。立法による事実上の改憲=「立法改憲」の進行です。消費税増税も狙われています。年金問題も先が見えません。格差と貧困に怒りが広がっています。原油高が続き、サブプライムローンの破綻で景気後退が懸念されています。地球温暖化も予想を超えて進んでいます。5月には「9条世界会議」が開催され、7月には洞爺湖サミットがあり、多分、解散・総選挙もあるでしょう。政界再編、大連立もくすぶり続けています。そして夏には北京オリンピック、秋には米大統領選挙です。

 本当に今年もいろんなことが起こりそうですが、映画人九条の会の着実な発展をめざし、平和を求める世界世論の主柱である9条を生かす運動を大いに進めましょう。今年一年、よろしくお願いいたします。

映画人九条の会運営委員一同

12・8映画人九条の会第2回交流集会報告 映画人九条の会の新たな運動方向を確認!

─映画人九条の会の会員数、1167名に─

 映画人九条の会は昨年12月8日(土)、東京・文京区民センターで「映画人九条の会第2回交流集会」を行い、9人の代表委員を発表するとともに、映画人九条の会の新たな運動方向を確認しました。参加者は、予定数を超える約80名でした。

 第2回交流集会は冒頭、高橋邦夫事務局長が、映画人九条の会の会員数が1167名になったことを報告、続いて4年目の新たな運動方向を提案しました。

 その内容は、(1)地域別、職場別、サークル別に映画人九条の会を作り(「映画人九条の会・○○」)、映画人九条の会の日常的な活動を全国に作っていく。(2)映画人九条の会はその連絡センターとして機能していくほか、節目には今までのような大規模イベントを行う。(3)4年目の飛躍を期して、映画人九条の会に代表委員をおく。(4)改めて多くの映画人の方々に映画人九条の会への加入を訴え、映画人九条の会の活動をいっそう幅広いものにする。(5)映画人九条の会のホームページを一新し、情報を充実させ、発言、主張を発信していく。(6)4年目の活動を保障するために、大規模なカンパ活動を行う。──というものです。

 また高橋事務局長は、「今日までに9名の著名な映画人が代表委員就任を承諾された」として、以下の代表委員を発表しました。

【映画人九条の会・代表委員】 (あいうえお順)
大澤豊 (映画監督)
小山内美江子 (脚本家)
神山征二郎 (映画監督)
ジャン・ユンカーマン (ドキュメンタリー映画監督)
高畑勲 (アニメーション映画監督)
羽田澄子 (記録映画作家)
降旗康男 (映画監督)
山内久 (シナリオライター)
山田和夫 (映画評論家)
【出席された代表委員のあいさつ】
ジャン・ユンカーマンさん (ドキュメンタリー映画監督)
 映画人九条の会は4年目に入ったが、九条の会は全国で6800以上あると聞いている。僕は「映画日本国憲法」の上映活動の中で、この3〜4年の中で憲法を守る勢いがますます広がって、強くなってきて、改憲の勢いを抑えていると感じている。そこで安心して活動を緩めるのではなく、これを機会にもっと積極的に、憲法を守るということだけでなく、憲法を生かす方向でやっていく必要があると思う。
 僕がいま一番力を入れているのが、来年5月の「9条世界会議」だ。日本の国内だけでなく、世界中に9条をアピールしていきたい。
 
高畑勲さん (アニメーション映画監督)
 
 私はアニメーション映画の分野に属しているが、自分の身の回りに十分広げていないので、代表委員などというものを引き受けていいのかと思ったが、今年から自分の身の回りにも呼びかけて、九条の会を増やしたいと思う。私の地域でも活動を着実にやっておられるので、この運動が身近に広がっていることを感じている。これからも一緒にがんばりましょう。
 
降旗康男さん (映画監督)
 
 今日新聞を見たら、12月8日なのだが、大東亜戦争が始まったということが片言節句も載っていないのを見て、昔が忘れられていくのが大変早いなあと感じた。一方、安倍晋三が郷里で政界にカムバックしたという大きな写真が載っていた。いま、改憲の声が低くなっているが、決して終わったわけじゃない。
 私なんかには代表委員をお引き受けする才能はないが、憲法9条と討ち死にをする覚悟だけで、皆さんと一緒に歩いていきたいと思う。よろしくお願いします。
 
山田和夫さん (映画評論家)
 
 映画人九条の会は4年目に入った。私たち運動をやっている側は、どれだけ効果があるのかと思うことがあるが、やはりやってきただけの効果はある。安倍内閣の時には一気に憲法を変えてしまおうという状況であったが、「正論」や「諸君」「Will」などという右寄りの雑誌は、ここ1〜2ヶ月は怒り狂っていて、“安倍内閣ができたので、これでいよいよ日本に夜明けが来るかと思ったら、早くも陽が落ちていく”というようなことを言っている。
 だけど、決して安心しているわけには行かない。「南京大虐殺はなかった」という人々によって、「南京の真実」という映画が出来上がりつつある。「第1部/七人の死刑囚」は、東京裁判で死刑になった7人のA級戦犯の最後の7日間を描いて、“今度の戦争は正しかった”“南京大虐殺なんかなかったんだ”ということを俳優に喋らせる映画だ。第2部、第3部と続くようであり、私たちは決して安心してはいられない。
 これから予告編をご覧になる「北辰斜にさすところ」や「母べえ」という映画は、直接9条のことには触れていないが、明らかに9条の心を持った映画だ。「日本の青空」もそうだが、そういう映画をもっと多くの人たちに広げることも、私たちの大切な仕事の一つだと思う。皆さんと一緒にそういうことにも力を尽くしていきたい。

■小山内美江子さん、山田朗さん、大澤豊さんが特別講演

 神山征二郎監督の最新作「北辰斜にさすところ」と山田洋次監督の最新作「母べえ」の予告編上映のあと、小山内美江子さん、山田朗さん、大澤豊さんが特別講演を行いました。

小山内美江子さん (代表委員/シナリオライター)の特別講演
 映画人九条の会の代表委員になった小山内美江子さんは、「今日は12月8日です。66年前、私は小学6年生で、開戦のラジオ放送を覚えています。だけど現実感がなかった。それより4年前に日本は中国と戦争をしています。戦争とは言わず、“事変”だと言うのですが、勝った勝ったで提灯行列をやって喜んでいました。なんで戦争をするのか、私たち小学生には分かりませんでした。映画館で重慶爆撃のニュース映画を見ましたが、ナレーションで『本日は絶好の空爆日和です』と言っていました。本当です。爆撃機のお腹からバラバラと爆弾が落ちていくのを見て、みんな手を叩きました。私も叩きました。爆弾が落ちていく下に何があるのか分からなかったのです。その下に何があるのか分かったのは、東京大空襲や横浜空襲に遭ったときでした」と語り、「広島や長崎の何十万人もの犠牲によって戦争が終わりました。1945年8月15日以前に生まれた人は、彼らのおかげで生き延びられたんだということを絶対に忘れてはいけない」と訴えました。
 また小山内さんは、「1990年は私にとって大きな節目でした。イラクがクウェートに侵攻して多国籍軍ができたとき、日本は1300億ドルという金を出しましたが、『日本は血も汗も流さない』『顔の見えない日本人』と大変なバッシングを受けました。私は『翔ぶが如く』を書き上げたあと、中東の難民キャンプに行きました。ちょうど60歳のときでした」と語りました。小山内さんは、その後もイラン・イラク国境の難民キャンプなどでボランティア活動し、93年から教育が破壊されていたカンボジアで学校を作る活動(JHP・学校をつくる会)を始めたことを教えてくれました。現在、199校目を建設中だそうです。
 小山内さんは、「軍隊を出さなくても、専門家やボランティアが現地に出て行けばいいんです。そうすれば日本の顔が見えます。日本は戦争をしないと宣言しているのだから、誰も非難しない。この国の外から見ると、9条のありがたさがよく分かります」「映画人の職業として、9条をどうやって訴えていくかということは、大変大きな問題です。何年か前の『金八先生スペシャル』では、9条の条文をひと区切りずつ読ませたことがありますが、今はテレビ局が自主規制してできません。だけどそこをどう潜りこんでやるかというのが、私たちの使命です。私はいま、カンボジアを舞台にした映画のシナリオを、合間をみて書いています。戦争をやることが、いかに酷くてくだらないか、ということを伝えていきたい」と結びました。
「南京事件70年──南京事件の真実は」 山田朗さん(明治大学教授)の特別講演
 今年12月は、南京大虐殺から70年になります。「南京事件──南京事件の真実は」というテーマで演壇に立った山田朗先生は、その時南京にいた日本兵の日記をもとに南京大虐殺の実態を報告し、「虐殺した遺体の多くを揚子江に流してしまったために、犠牲者の数が確定できないが、それをもって、大虐殺がなかった、などとは到底言えない」と語りました。(山田先生の講演は、後日小冊子にまとめる予定です)
「映画『日本の青空』のこれまでの上映を振り返って」 大澤豊さん(代表委員/映画監督)の特別講演
 大澤豊監督はまず、「九条の会のアピールに映画人として応えるべく、憲法闘争を励ます映画を作ろうと思いましたが、当初は、憲法押し付け論に対抗する内容で行くことに異論もありました。しかし当時の安倍首相が『9条はGHQの占領下で押し付けられたものだ』と繰り返し言っていたので、それに真正面から立ち向かうことにしました」と語り、「映画『日本の青空』は今年3月に完成して、現在までに500ヶ所、すでに30〜32万人の方々に観ていただいた」ことを報告しました。
 大澤監督は、「びっくりしたのは、感想文が非常に多いことです。観客の3割ぐらいが感想文を寄せてくれています。その中で、私は現憲法はGHQによって押し付けられたものだとばかり思っていた、という感想文が非常に多かったんです。このテーマで作ったことは間違っていなかったと思いました」と述べるとともに、「この映画は、製作も上映も、すべて運動でやらなければ成功しないと思いました。事実、各地の上映会は、配給業者が段取るのではなく、実行委員会が上映運動として取り組んでいます。それが想像以上の数字に繋がったと思います」「第2弾、第3弾の映画をぜひ作ってほしい、というラブコールも受けています」と語りました。
 大澤監督は最後に、「日本の青空」上映会をきっかけに自分の町や隣町に九条の会ができた、という新聞の投書を紹介し、「この映画を作って良かった」と講演を締めくくりました。

 交流集会はこのあと、参加者の皆さんによる意見交換に移りました。4人の方が地元の運動や映画人九条の会の運動について発言し、そのあと冒頭に提案した「映画人九条の会の新たな運動方向」を全員の拍手で確認して、3時間20分にわたる集会を終わりました。

4年目の活動を支えるカンパをお願いします。

 皆様のカンパで運営してきた映画人九条の会ですが、そろそろ財政が苦しくなってきました。4年目の活動をさらに飛躍させるために、皆様方のカンパを改めてお願い申し上げます。

郵便振替口座
本郷一郵便局
口座番号: 00140−9−278825
口座名: 映画人九条の会

【情報コーナー】

07年の映画観客数後退か
 2007年の映画観客数が、前年より後退しそうです。昨年10月までの実績では、前年比97.7%でした。その後、正月興行もこれといった大ヒット映画がなかったため、映画観客数の後退は確実でしょう。
 問題なのは日本映画です。2006年は20年振りに日本映画の興行収入が洋画を上回りましたが、昨年は再逆転されたかもしれません。昨年は「日本の青空」や「夕凪の街桜の国」「パッチギ!LOVE&PEACE」「陸に上がった軍艦」などの力作がありましたが、それらの日本映画の大半は大チェーンの映画館には乗らず、大チェーンの映画館の映画館では、テレビ局主導の「テレビドラマの映画」「コミック原作の映画」「感動もの」「難病映画」ばかりがスクリーンを独占しました。
 そのスクリーン数も、前年比155スクリーン増の3,217スクリーンに達し、シネコンは全体の76%に達したと言われています。ますます宣伝力、興行力のある映画ばかりが幅を利かせそうですが、そのことに日本映画の未来がないことは、昨年の映画観客数減少が証明しています。さて、今年の日本映画はどうなるのでしょうか。

映画人九条の会事務局
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