映画人九条の会Mail No.82

2020.1.15発行
映画人九条の会事務局

目次

映画人九条の会の皆さま、あけましておめでとうございます。

今年は安倍改憲をめぐる最大の山場
改憲発議を絶対に阻止しよう!

 映画人九条の会の皆さま、映画人、映画関係者、映画ファンの皆さま、あけましておめでとうございます。
 この年末年始、安倍首相がゴルフ三昧をしている間に、国内外で重大事件が相次ぎました。「桜を見る会」疑惑に続いてIR汚職事件が拡大し、元日産会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡、そして1月3日、米トランプ政権はイランを空爆し、イラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を殺害しました。
 この間、安倍政権はこれらの事件について一言もコメントを発せず、政権としての機能を失っているとしか思えない状況でした。1月6日にようやく行われた年頭記者会見では「現状を憂慮している」としか言わず、トランプ政権による国連憲章違反の無法なイラン攻撃には口をつぐみました。
 イランは8日、イラクの米軍基地に報復攻撃を行いましたが、事前にイラク側に攻撃を通告していたこともあってか、被害は最小限にとどまったと伝えられ、トランプ政権は当面の軍事対応を避けています。しかし、ウクライナ国際航空旅客機をイランが誤ってミサイルで撃墜するなど、中東全体を巻き込んだ全面戦争に発展する危機は今も続いています。
 こうした中で安倍首相は、内外の批判をよそに中東への自衛隊派兵を押し進める一方、改憲について「私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」「憲法改正原案の策定を加速させたい」と述べ、自分の任期中の改憲実行に未だに固執しています。安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までですが、場合によっては自民党総裁4選を強行してまで自らの手で改憲を推し進めようとするかもしれません。
 今年は、安倍改憲をめぐる闘いの最大の山場になります。安倍9条改憲NO!全国市民アクション昨年末、新たに「改憲発議に反対する全国緊急署名」を開始することを提起し、元旦に戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と共同のアピールを出しました。(後記)
 映画人九条の会も改憲発議に強く反対し、この「改憲発議に反対する全国緊急署名」活動に積極的に取り組みたいと思います。映画人九条の会の皆さま、映画人・映画関係者の皆さま、そして映画ファンの皆さま、「改憲発議に反対する全国緊急署名」を急速に広げ、何としても改憲発議を阻止して、安倍政権を早期退陣に追い込みましょう。


映画人九条の会運営委員一同

いま新たに「改憲発議に反対する全国緊急署名」を開始します

2020年1月1日     戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
安倍9条改憲NO!全国市民アクション

 安倍晋三首相らが企てる9条改憲に反対しているすべてのみなさん。
 先の参院選で改憲派が発議可能な3分の2の議席を失ったにもかかわらず、安倍首相は臨時国会終了後の記者会見で「必ずや私の手で(改憲を)成し遂げていきたい」と語り、自らの自民党総裁任期の2021年9月までに実現する決意を語りました。
 この改憲スケジュールからみて、安倍改憲をめぐるたたかいはいよいよ最大の山場にさしかかったというべきでしょう。2020年の通常国会と臨時国会で「改憲発議」を許すかどうか、さらに2021年通常国会会期中に安倍改憲国民投票を許すかどうかの正念場になりました。この安倍首相の企ては絶対に阻止しなければなりません。
 安倍首相はこの記者会見で「時がきたと考えればちゅうちょなく解散総選挙を断行する」と述べました。この期間に衆議院議員総選挙に踏み切る可能性が濃厚です。改憲派は時期と条件を選んで、改憲を訴える総選挙を断行するでしょう。そこで圧勝することによって、安倍改憲が世論に支持されたと強弁し、改憲に反対している野党を分断し、両院で改憲に賛成する議員を3分の2以上確保し、改憲発議に踏み切ろうとするにちがいありません。
 事態は緊急です。いまこそ、安倍改憲に反対するすべての人々は共同し、全国の草の根から運動をおこし、世論を盛り上げ、総選挙に際しては安倍改憲に反対する野党と連携して改憲派を徹底的に孤立させる必要があります。
 9条をはじめとする自民党の4項目改憲案は絶対に阻止しなくてはなりません。それは日本を米国との同盟の下で「海外で戦争をする国」にするための改憲です。2020年の防衛省予算案は5兆3千億円を超え、過去最大となりました。自民党9条改憲案は、「必要な自衛の措置」として「戦争する国」にむけ集団的自衛権の全面行使をも可能とするものです。すでに「防衛大綱」などによって9条の空洞化が進んでいますが、この動きを止めなくてはなりません。
 緊急事態条項導入案は、軍事的な緊急事態に内閣の権限を拡大し、人権の大幅な制約を可能にする危険性があります。大地震などの自然災害の対応についてはすでに充分な法律が整備されており、憲法に置く必要性はありません。
 さらに、合区に関する問題の解決は公職選挙法等の改正で可能であり、自民党の改憲案は投票価値の平等を侵害するなどの危険性があります。
 教育の充実に関する改憲案は、教育が「国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担う」として教育への国家介入を正当化する危険があります。教育の充実は国会と内閣がその気になれば、法律や予算措置で可能です。
 自民党の4項目改憲案は、いずれも改憲の必要性・合理性を欠くうえに、日本国憲法の基本原理である平和主義、主権在民、基本的人権の尊重を破壊するものです。
 2017年秋以来、安倍首相による9条改憲を阻止するため、広範で多様な人々を結集して「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が結成され、3000万人を目標にした9条改憲に反対する一大署名運動(安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名)が展開されました。(中略)
 この署名運動に、多くの仲間の皆さんが参加し、すでに1000万筆に迫る署名を集めたこと、これが全国の草の根に強固な改憲反対の世論をつくり出し、立憲野党を励まし、国会の憲法審査会での自民党改憲案などの審議を実質的に阻止し、2年余りにわたって安倍9条改憲の発議を阻止し続けてきました。そして先の参議院選挙で、改憲勢力3分の2割れを勝ち取った原動力であったことは明確であり、3000 万署名運動の成果を高く評価する必要があります。
 いま、安倍改憲のスケジュールにとって決定的な山場を迎え迎えました。私たちは安倍首相らによる改憲暴走の動きに痛打を浴びせて、安倍改憲と「戦争する国」の企てを阻止しなくてはなりません。
 この重大な時期に際し、全国市民アクション実行委員会は、従来取り組んできた署名にかえて、あらためて「安倍9条改憲反対!改憲発議に反対する全国緊急署名」運動への取り組みを呼びかけます。
  「安倍首相の下での改憲には反対だ」という点は全国の市民の多数の声であり、国会内の立憲野党すべての一致点です。この声をさらに大きな力に変え、世論を強め、安倍首相らの改憲を食い止めたいと思います。この2年にわたった粘り強い草の根の市民の努力を再始動させ、もういちど行動の力に変えましょう。態勢を整え、この新しい署名を軸に全国の津々浦々で、市民の一大対話運動を繰り広げましょう。そのための共同こそが、この社会の未来を平和で、希望ある社会に変える力となるに違いありません。
 私たち市民はこの国の主権者です。この国の未来は私たち自身の手で切り開かなくてはなりません。そのためにこそ、私たち主権者の名において、いまこそ全力をあげて改憲発議を阻止するために立ち上がりましょう。
【呼びかけ人】有馬頼底・うじきつよし・落合恵子・岡野八代・鎌田 慧・鎌田 實・香山リカ・佐高 信・
澤地久枝・杉原泰雄・田中優子・ちばてつや・暉峻淑子・なかにし礼・浜 矩子・樋口陽一・前川喜平・益川敏英・田原総一朗・山口二郎・北原みのり             (2019年12月13日現在)
■署名用紙は、http://kaikenno.com/?p=1218 からダウンロードしてください。

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“憲法の伝道師”伊藤真弁護士が講演!
──11・29映画人九条の会15周年の集い・報告──

11・29映画人九条の会15周年の集い 2019年11月29日、映画人九条の会は東京・文京シビックセンターで「映画人九条の会15周年の集い」を開催しました。集いには45名が参加し、“憲法の伝道師”として様々な活動を行っている伊藤真弁護士が、「今こそ『憲法の力』をつけよう!〜安倍改憲に終止符を打つために」と題して記念講演を行いました。

【講演要旨】
 憲法の最も大切な「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」、この三原則が2017年5月3日の安倍首相発言を契機に大きく揺らいでいます。
 9条1項で定める「侵略戦争の放棄」、これはどの国にも存在する標準的な規程です。しかし、2項によって戦争手段を規制し一切の戦争を放棄する、ここが特徴です。これまでの政府見解は自衛のための戦争は放棄する、但し固有の自衛権は憲法の枠の外に認める(砂川事件)という立場でした。ところが2014年の閣議決定で「集団的自衛権」を認めました。米国が攻撃されたら日本が防衛力を行使するという、米政府の圧力に屈した姿勢です。
 そこで安倍首相は「自衛隊は違憲かも知れないという議論の余地をなくす」と発言し、「何も変わらない」という誤魔化しで憲法に自衛隊を明記しようと考えたのです。
 「後法は前法を破る」、これは法律論の原則です。社内に「職場でお酒を飲んじゃダメ」という規則があるとします。その後暫くして「ストレス解消のためなら良いよ」と付け加えたとしたら、「職場は禁酒」という原則が消滅します。2杯程度なら良いのか、或いは酩酊しなければ良いのか、社長がその都度判断するということになれば、禁酒のルールは存在しないも同然です。
 多くの方々には、いま危険に晒されている憲法の理念があまり理解されていないようです。勝っても負けても等しく戦争によってもたらされる被害のこと、そして抑止力という幻想を理解する必要があります。世界で最も抑止力が高いはずの米国は最もテロの脅威に晒されていますね。文民統制すれば良いという意見もあるでしょうが、今のように好戦的な政治家の下では不可能でしょう。
 人は間違いを犯すことがあります。ヒトラーに代表されるように、プロパガンダは過去から現在まで様々な国で多くの人々を翻弄してきました。そうならないためにも、国が目指すべきこと、即ち自分たちが何を目指すか、という視点で憲法を捉え考える必要があるのです。 (文責・映画人九条の会)


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大澤豊監督、逝去

大澤豊監督 映画人九条の会代表委員のお一人であった大澤豊監督が1月1日、逝去されました。84歳でした。一昨年の高畑勲監督、昨年の降旗康男監督に続く訃報に、心が痛むばかりです。
 映画人九条の会が2005年12月13日に行った結成一周年集会で大澤監督は、九条への想いを次のように語っていました。

 「私は反戦平和を訴える映画を随分作ってきました。広島を舞台に、長崎を舞台に、沖縄を舞台に、東京大空襲を舞台に、集団学童疎開を舞台に、常に反戦平和を訴える映画を作ってきたつもりですが、憲法9条改悪を許したらそんなことがみんな無駄になっちゃうじゃないか、という思いの中で、映画人九条の会の呼びかけ人の一人として名前を連ねさせていただいたのです」

 ──大澤豊監督のご冥福を心からお祈りいたします。

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表現の自由への攻撃と市民の反撃

 昨年2019年は、安倍政権の下、「表現の自由」を脅かす暴挙が相次ぎました。
 8月1日から開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、わずか3日で中止に追い込まれ、その後9月には文化庁が「トリエンナーレ」への補助金の全額不交付を決めました。この決定はテロ予告や脅迫の被害者に責任を押し付け、加害者の行為を追認する蛮行です。
 また、文化庁所管の独立行政法人日本芸術文化振興会(芸文振)は、映画『宮本から君へ』に対する助成金支給を、麻薬取締法違反で有罪判決をうけた俳優の出演を理由に取り消し、9月になって助成金の「交付要綱」を改正し、助成金の「募集案内」の内容も変更しました。
 文化庁の不交付決定に芸文振はじめ諸団体が追従、萎縮の連鎖が蔓延し、KAWASAKIしんゆり映画祭では、慰安婦問題を扱った映画『主戦場』について川崎市が主催者に懸念を伝え、一度は上映中止になりました。
 しかし、言論表現の自由を求める抗議の声が市民の中に大きく広がる中、「表現の不自由展・その後」は10月に再開され、『主戦場』も上映が決定しました。『宮本から君へ』制作会社は「助成金不交付」は憲法違反だとして取り消しを求め提訴しています。
 安倍政権の暴挙を許さず、日本国憲法21条が謳う「言論表現の自由」「検閲の禁止」が保障される社会を守るため、私たち市民一人ひとりが声を上げることがますます重要となっています。

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【お薦め映画紹介】

『時の行路』

平沢清一(映画人九条の会運営委員/映画ライター)

 実話に基づく田島一さんの小説を原作とした劇映画『時の行路』が、構想から8年を経て完成しました。『月光の夏』『郡上一揆』の神山征二郎さん30本目の監督作品です(共同監督は土肥拓郎さん)。
 青森でリストラされた五味洋介(石黒賢)は、妻の夏美(中山忍)と2人の子どもを残して、静岡の大手自動車工場で派遣社員として働く。ベテラン技術者として職場で信頼も厚かった洋介は、家族を呼び寄せる準備をしていた。しかし、リーマンショックの不況を口実とした大量解雇により、洋介ら非正規労働者は年末にもかかわらず職場から追いだされてしまう。会社のあまりに理不尽な仕打ちに「俺たちはものじゃない、人間なんだ!」と悲痛に叫ぶ洋介は、泣き寝入りはしたくないと職場の仲間とともに労働組合に加入し、不当解雇に抗議の声をあげて行動に踏み出していく。
 労働運動とは縁のなかった洋介でしたが、労働組合の存在意義と仲間とつながる連帯の重要性や喜びを次第に実感していきます。経済的な困窮、家族との軋轢、大企業寄りの裁判所の姿勢など、さまざまな困難に直面しながらも、あきらめずに向き合い続ける洋介たちの闘いに、希望と勇気が示され励まされます。雇用や生活の不安定な非正規労働が拡大の一途をたどる現在、他人ごとではない誰にでも起こりうる問題として、関心と共感の広がる映画となっています。
 最近公開された、アメリカ映画『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督)、イギリス映画『家族を想うとき』(ケン・ローチ監督)、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)など、格差と貧困の深刻さや劣悪化が加速する労働現場の実態を主題とした、家族をめぐる映画が評判を呼んでいます。新自由主義経済の収奪が世界中で猛威を振るう中で、『時の行路』は日本映画として、これら世界の映画人の現代社会に斬りこむ問題意識と共振する作品といえるでしょう。
 東京・池袋シネマ・ロサ(3月14日〜4月3日)他で全国順次公開予定。


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【今後の主な行動予定】

●1月19日(日)、安倍9条改憲NO!1・19国会議員会館前行動
        ■時間&場所:14:00〜衆議院第2議員会館前を中心
        ■主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会
         戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会


●1月20日(月)、自衛隊の中東派兵反対!安倍改憲発議阻止!1・20国会開会日行動
        ■時間&場所:12:00〜衆議院第2議員会館前を中心
        ■主催:総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、共謀罪NO!実行委員会


●2月6日(木)、許すな政治の私物化!STOP改憲発議!新署名スタート2・6市民集会
        ■時間&場所:18:30〜北とぴあ・さくらホール           ■参加費無料
        ■主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション
         戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会


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