映画人九条の会Mail No.65

2016.6.14発行
映画人九条の会事務局

目次

参院選は歴史的政治決戦
改憲派を少数派に!

 通常国会が閉会して、いよいよ歴史的な一大政治決戦である参院選が始まります(6月22日公示、7月10日投票)。この参院選の最大のテーマは、立憲主義の回復と戦争法廃止をめざす勢力の躍進によって暴走アベ政権を打ち倒すことです。
 6月1日に記者会見したアベ首相は、消費税増税の再延期を表明し、「アベノミクス」の破綻をごまかすのに必死でした。これまで何度も「リーマンショックや大震災のような事態が起きない限り、消費税増税の再延期は絶対にない」と言っていたアベ首相は、「アベノミクス」の破綻によって増税どころではなくなり、伊勢志摩サミットでは突如「世界経済はリーマンショック前に似てきた」と言い出して各国から呆れられました。すると今度は「そんなことは言っていない」と否定し、「消費税増税の再延期は新しい判断だ」などと言い、改憲意図をひた隠しにして「参院選の争点は消費税増税先送りの是非とアベノミクスのさらなる推進だ」などと主張したのです。
 選挙では「アベノミクス」による経済成長を訴え、選挙が終れば憲法破壊の暴走政治を繰り返してきたアベ首相は、今度の参院選でもまた同じことをやろうとしているのです。そして参議院で改憲派が3分の2を占めた暁には、在任中の改憲に突き進むつもりです。しかし、3度目は通用しないことを、はっきりと判らせてやりましょう。

「アベノミクス」の下心

 「アベノミクス」を「アホノミクス」と言って厳しく批判してきた同志社大学大学院の浜矩子教授は、「アベノミクス」を進めてきたアベ首相には「下心」がある、と指摘しています。
 昨年4月に訪米した際に笹川平和財団米国で行ったスピーチでアベ首相は、「私の外交・安全保障政策はアベノミクスと表裏一体であります」「厳しい財政の中にある日本は、防衛費を劇的に増やすことはできません」と言い、「デフレから脱却をして、経済を成長させ、GDPを増やしていく。それは社会保障の財政基盤を強くすることになりますし、当然、防衛費をしっかりと増やしていくこともできます」「つまり、強い経済はしっかりとした安全保障、安全保障政策の建て直しに不可欠であると考えています」などと本音を語ったのです。
 「アベノミクス」は国民生活向上のためではなく、軍備増強のためだったのです。経済政策を安保政策の道具にする「アベノミクス」は、まさに「アホノミクス」そのものです。こんなアベ首相に3度も騙されてはなりません。

野党と市民の歴史的共闘の力で、アベ暴走政権に終止符を!

 昨年来の集団的自衛権行使容認反対・戦争法案阻止の市民運動は、「2015年安保闘争」と言っても過言ではない画期的な市民運動でした。その闘いに支えられて今年2月19日、民主党、日本共産党、維新の党、社民党、生活の党の5野党は、安保法制の廃止や安倍政権打倒などで共闘することで合意し、参院選32の1人区すべてで野党統一候補を実現しました。これは史上初のことです。
 野党合意はさら具体化され、戦争法廃止・立憲主義回復に加えた4野党(民進党、日本共産党、社民党、生活の党)の「共通政策」として、@アベノミクスによる国民生活の破壊、格差と貧困の拡大の是正 ATPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治に反対 B安倍政権のもとでの憲法改悪に反対──が確認されました。また介護、保育、雇用、被災者支援、男女平等、LGBT(性的マイノリティー)差別解消をはじめ、4野党が共同提案した15本にわたる議員立法の内容を「共通政策」とすることで一致しました。
 さらに6月7日には、「市民連合」の政策要望書に4野党の党首らが署名し、個人の尊厳の尊重、公正な分配、TPP合意に反対などなど、合意内容はさらに拡大しました。
 この歴史的な野党と市民の共闘の力で、参院選では自民党、公明党、おおさか維新の会などの改憲派をなんとしても少数派に追い込み、危険極まる暴走アベ政権を打倒しましょう。
 映画人九条の会は、1人区32の野党統一候補と4野党、4野党の候補者の勝利を願い、心から応援します。映画人九条の会の皆さま、映画人・映画関係者の皆さま、そして映画ファンの皆さま、アベ暴走政治に終止符を打ち、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すために、参院選かんばりましょう!

「野党は共闘」の新たな流れを強く、大きく!

2月19日、民主党、日本共産党、維新の党、社民党、生活の党の5野党は共同で「戦争法廃止法案」を国会に提出するとともに党首会談を開き、(1)安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。(2)安倍政権の打倒を目指す。(3)国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。(4)国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。──の4項目で合意しました。
 これは歴史的な野党共闘合意です。そしてそれを支えたのは昨年来の市民の運動でした。この合意を受けて、参院選1人区での統一候補擁立も各地で進んでいます。
 映画人九条の会の皆さま、映画人・映画関係者の皆さま、そして映画ファンの皆さま、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すために、この流れをさらに強く、大きくして、なんとしても参院選で(あるいはダブル選挙で)自民・公明と改憲補完勢力を大敗北させ、改憲の流れを断ち切りましょう!

「戦争法廃止を求める2000万統一署名」1200万筆!
署名運動は6月末まで延長

 「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」は、5月3日の憲法集会で1200万筆が集まったと報告されました。そして署名運動は6月末まで延長することになりました。
 署名活動を急ぎ、集めた署名は映画人九条の会事務局にお送りください。よろしくお願いいたします!

「緊急事態条項は戒厳令、9条改憲とセット」
──5・16映画人九条の会学習集会報告──

 映画人九条の会は2016年5月16日、明治大学の山田朗教授を講師に迎え、東京・文京区民センターで「『緊急事態条項』の特徴と危険性」と題する学習集会を開催しました(70名以上が参加)。
 山田教授は先ず、「緊急事態条項」は戦時を第一に想定した「戒厳令」であり、9条改憲とセットだと断じた上で、今日本では、既成事実を作ることで最終的に価値観の変更、9条の改憲へという、「戦争遂行のための三要素」の逆流現象が起きていると指摘しました。
 次に戦前の日本の有事・治安維持法体系に触れ、明治国家は大日本帝国憲法より前に「戒厳令」と「徴発令」を制定した。戒厳令は内乱を含む戦時における「憲法の一時停止」と「軍政」の実施が本質であり、これらが整ったあと情報統制と言論弾圧が行われた。国家総動員法(1938年)は包括的委任立法であり、「勅令」で議会権限を骨抜きにし、行政の軍事化に突き進んだ。
 自民党2012年憲法草案では、98条に内閣総理大臣に絶対的権力を与える「緊急事態の宣言」を規定しているが、多数与党の下では歯止めがかからず、99条「緊急事態の宣言の効果」も内閣による政令制定を国会は事後承認、強力な治安維持と、基本的人権・私的財産権の制限、行政権の飛躍的肥大など戦前の法体系的発想が随所に盛り込まれている──と指摘。
 また草案の3本柱は「天皇元首化」「国防軍設置」「緊急事態条項」であり、軍による治安維持を想定しているが、自然災害への危機感をテコに「緊急事態条項」という既成事実を作り、改憲への抵抗感を失わせる手法への警戒を呼びかけました。
 さらに草案の九条の二では「国防軍の保持」「審判所(軍法会議)」の設置が記されているが、軍法会議と緊急事態条項が組み合わさると226事件直後の「特設軍法会議」設置と暗黒裁判による関係者処刑のような事態を招来する。自衛隊には憲兵の卵ともいうべき「情報保全隊」が在り、反自衛隊活動情報の取集を行っている。また九条の三「国防の義務」の規定は「徴用」に繋がるものであり、戦前の国民徴用法に類する法律が制定されかねない──とその危険性を指摘しました。
 また、自衛隊はヘリ空母化した護衛艦の配備を積極的に進めているが、「既成事実を作った上で9条改憲へ」という道筋に沿っていると説明しました。
 山田教授はまた、戦前、緊急勅令による「行政戒厳」で一般的な行政は一旦停止し、治安維持や言論統制に軍が全面的に出て一種の無法状態となった、と歴史における「緊急事態」悪用の事例を紹介、ドイツでは1933年ヒトラー首相のナチス政権が「国会議事堂放火事件」をでっち上げて共産党を大弾圧、続いて社会民主党などを弾圧し、「全権委任法」で反対派を完全に封じ込めたが、「全権委任法」がまさに「緊急事態条項」であると論じました。
 最後に、安倍政権の下、自衛隊は予算規模や軍事力で決して小さい存在ではないにも拘らずイメージ操作が行われ、軍事費は上昇に転じ、中国、日本、インドがアジアの軍拡の牽引車になっている。「緊急事態条項」は政府の独裁を容認するもので歯止めはかからない。「緊急事態条項」の改憲の次は必ず9条改憲に進む。中国や北朝鮮の脅威が煽られ、軍拡モードで既成事実が積み重ねられているが、私たちは国際的な緊張を9条改憲の突破口にさせず、アジアにおける「軍拡の連鎖」や、軍需経済の方向に向かわせない国のあり方を考えていかなければならない、と締めくくりました。

「緊急事態条項」の特徴と危険性/山田朗講演録完成!

 5・16映画人九条の会学習集会での山田朗先生の講演録「緊急事態条項の特徴と危険性」が完成しました。こちらのページで掲載しています。また、こちらではpdfデータがダウンロード出来ます。
 印刷された講演録がご希望の際は、事務局に200部ほどありますので送料を負担していただければお分けいたします。ぜひご活用ください。

【お薦め映画紹介・3本】



『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』

 アポなし激突取材でアメリカの深刻な社会問題を鋭く抉り、ドキュメンタリー映画の世界を変えてきたマイケル・ムーア監督の新作『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』が公開中です。
 今回の映画は、侵略戦争に失敗し続けてきたアメリカ防総省が、世界各国の優れた社会システムを“略奪”してきてほしいとムーア監督に依頼する、という設定で始まります。星条旗を片手に空母に乗り込んだマイケル・ムーア監督は、行く先々で驚愕の事実に出くわします。
 フランスの公立小学校では給食が仏料理のフルコースで、イタリアでは年に8週間も有給休暇があり(アメリカは0日)、宿題がないフィンランドが学力トップクラスの国だったり、ノルウェーでは刑務所がまるで別荘のようだったり、スロベニアでは大学の学費が無料だったなどなど。
 極めつけはドイツで、世界的文具メーカーの社長は「社員の要望はほぼ全て聞き入れている」と話します。社員の要望を呑みまくった結果、「昨年は過去最高の売り上げを記録した」と言うのです。
 アメリカ人だけでなく、私たち日本人も驚かされる各国の“ジョウシキ”が次から次へと飛び出してきて、それができないアメリカの実情と理由が次第に浮かび上がってきます。
 この映画、絶対にお薦めです。現在、角川シネマ新宿や各地のTOHOシネマズなどで公開中ですが、順次全国で公開されます。



ドキュメンタリー映画 『不思議なクニの憲法』

 松井久子監督「この映画は、憲法論議が政治によって進められるのでなく、主権者である私たち国民の間に広がることを願ってつくられたものです。
 国のかたちをきめる憲法に、誰もが当たり前に関心を持ち、正しい知識を得、そして理解を深めるために、歴史的事実を重んじながら『意見』よりも日常に根ざした『人びとの声』に耳を傾けます。
 怒りや憎しみから出発する議論は広がっていきません。対立よりも冷静な選択を──。
 私たち一人ひとりが個として大切にされる自由な社会を守りたい。映画にメッセージがあるとすれば、その一点の『希い』のみです」──「不思議なクニの憲法」HPより
 映画は、瀬戸内寂聴さん(作家)や孫崎享さん(元外交官・評論家)、長谷部恭男さん(憲法学者)ら20数名の方々が立憲主義や日本国憲法の歴史、国民主権、基本的人権の尊重、封建的家族制度からの解放、憲法の空文化、若者の政治参加などについて語ります。ナレーターは竹下景子さん。
 東京・渋谷シネパトスでの上映は終了しましたが、順次全国で公開されます。また、自主上映会が全国で活発に開催されています。自主上映会の申し込みは(株)エッセン・コミュニケーションズ(FAX:03-3523-0212 メールアドレス:info@essen.co.jp)まで。



ドキュメンタリー映画『アトムとピース 〜瑠衣子 長崎の祈り〜』

 「長崎を最後の被爆地に。」放射能の恐ろしさをいちばん知っていたはずの日本人が、なぜ福島の事故を起こしてしまったのか? そしてなぜ今も原発にこだわるのか?
 長崎の被爆3世の瑠衣子はこの疑問を胸に、福島・青森の原子力の平和利用の現場を旅する。
 旅のなかで瑠衣子は、日本が大量のプルトニウムを保有していることを知る。長崎に落とされた原子爆弾「ファットマン」の原料となった、あのプルトニウムだ。いったいなぜ?
 やがて瑠衣子は、政治家たちが隠してきたある事実を知ることになる。長崎に生まれた者として、決して許せない事実を……。
 プルトニウムがつなぐ長崎・福島・青森、そしてアメリカ。瑠衣子の旅を追ったロードムービー。

      ──「アトムとピース 〜瑠衣子 長崎の祈り〜」HPより

 監督は新田義貴さん。東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにて6月18日(土)ロードショー。順次全国公開予定。

【情報コーナー】

●6月19日(日)、怒りと悲しみの沖縄県民大会に呼応する命と平和のための6・19大行動

 14時〜15時30分 国会正門前

共催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会/「止めよう辺野古埋め立て」国会包囲実行委員会
──映画人九条の会は憲政記念館付近にのぼり旗を立てる予定です。

●6月22日(水)、街の人の疑問に柳澤協二さんが答えます。

 柳澤協二さん(元・内閣官房副長官補/元・防衛庁防衛研究所所長)

13:30開場、14:00開会〜16:30 会場:月島社会教育会館ホール(地下鉄月島駅徒歩5分)  資料代:500円
主催:日本ジャーナリスト会議、日本マスコミ文化情報労組会議、マスコミ九条の会 TEL・03-3291-6475&三枝090-8580-6307


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