【講演録】 ★映画人九条の会5.16学習集会★

「緊急事態条項」の 特徴と危険性

講師・山田 朗(明治大学教授/日本現代史・軍事史)

2016年5月16日(月)/東京・文京区民センター2A会議室

はじめに──報告の目的

 皆さん今晩は。ご紹介いただきました山田です。今日は「緊急事態条項の危険性」ということでお話をさせていただきます。
 最初に、安倍政権が改憲路線に立っているということは明白なことですが、この改憲路線の先頭に立っている「緊急事態条項」、これは明らかに9条改憲とセットなんです。9条改憲に進むにはこっちから先にやった方がいいのか、それとも本体の9条を変えたらいいのか、これは実はまったくセットになっている課題です。
 緊急事態で一番想定されているのは、そもそも戦争なんです。自然災害のためとかいろいろあるんですが、しかし最大の想定事項は戦争なのです。しかもこれは対外戦争、内戦、そういうことをまず第一に想定して、その次に自然災害というようなことです。
 ですから、当然「緊急事態条項」は今の9条とは両立しないのです。9条を撤廃してしまうということとこの「緊急事態条項」は、まさに繋がっている、ということなのです。
 「緊急事態条項」という言い方、あるいは「国家緊急権」という言い方もしますが、要するにこれは戒厳令なんだということで理解していただければ、非常に解りが早いと思います。戒厳令というと、言葉自体が厳めしい、字自体が厳めしい感じですから、こういう言葉は最近使わないわけですが、しかし中身はまさに戒厳令そのものなのです。
 戒厳令というのは、戦前において日本にありました。実際にそれが使われたことがあります。使われたときに何が起きたのか、ということを、もう少し振り返ってみなければならないと思います。「緊急事態条項」、すなわち戒厳令が過去の歴史においてどのような役割を果たしてきたのか。これは日本でもドイツでもどの国でも、実はこういう事例はあるのですが、大体なにかの形で悪用されることが多いのです。それはなぜなのか、ということは後でまたお話をしたいと思います。

前提/戦争遂行のための3要素──ソフトウェア、システム、ハードウェア

 今、戦争法と言いますか、安保法制という問題が出てきまして、これは当然戦争をするための国家体制づくりということなのですが、戦争を遂行するためには三つの要素があります。
 まずはソフト、価値観、戦争肯定の価値観。戦争というのは国家にとって必要な選択肢なんだという、こういう価値観を広めなければいけない。これはまさに9条とまったく相反する価値観であるわけです。これが今、主として激しく衝突しているのが教科書問題であり、歴史認識問題です。過去の歴史を評価し直すことで、戦争否定ではなくて、戦争は国家にとってあり得る選択肢なんだ、ということを刷り込んでいきたいわけです。
 しかし、人間の価値観を変えるというのは──大人はなかなか変わらないのです。一番手っ取り早いのは、子どもの価値観を引き寄せてしまうということなのです。1930年代、40年代、まさに日本が軍国主義の時代を見ますと、まず子どもが率先して軍国少年になっちゃうんです。そうすると家庭の中で、親は子どもに模範を示さなければならないという気持ちが少しはありますから、子どもが持ち込んだ軍国主義を表立って否定できないので、建前として、社会(学校)から家庭へ軍国主義が押し寄せてきます。
 そうなると、社会や地域の軍国主義化は、ある意味で子どもがかなり重要な役割を果たしてしまう、ということがあります。ですから現在でも、この教科書問題、歴史認識問題をテコにして、若い人たちから価値観を変えていくという、こういうやり方が採られつつあるということです。
 もう一つは、まさに安保法制に代表されるようなシステム──法律や制度です。これは改憲の動きとも繋がっているわけですが、実は改憲というのは、システムの問題であると同時に、ソフト=価値観の問題でもあるんですね。日本国憲法、あるいは9条というのは、一つの法律・制度であると同時に、多くの日本人の基本的な理念、価値観になっています。ですから、システムの問題と同時にソフト、価値観の問題に収斂(しゅうれん)していくのが改憲問題になろうかと思います。
 もちろん、安保法制に見られるように、こういう法律や制度を作って行くことで、戦争を合法化していくという動きが進められています。
 そしてもう一つ、戦争を肯定する価値観があり、戦争を遂行するための法律がある、しかしハード──兵器や装備がなければ戦争はできません。このハードの部分がいかに整えられているのか、ということです。実はここが今、一番既成事実が進んでいるところです。
 まあ、安保法制なんかで急激にシステムの部分が進んだという感はあります。安保法制と、その前の有事法制、これが合わさってこのシステムの部分が急速に進んでいるように見えますが、実はハードの方が、兵器・装備の方がさらに先行しているのです。
 この三つ、戦争遂行のための3要素──ソフト、システム、ハード。一般的な規定性というのは、戦争を肯定する価値観があり、それに基づく法律・制度が作られる。あるいは戦略が作られてからハード、つまりどういう兵器体系を作って行くかという、一般的にはこういう流れで進んで行くわけです。
 ところが現在の日本は、こういう進み方じゃないんです。大本の価値観の部分というのが、憲法9条があるために、ここが根強いわけです。ですから逆にハード、戦争をやるための装備→そして制度→そして価値観、という逆流現象が起きているのです。既成の事実を作ることで最終的に価値観の変更、9条の改憲という流れ、現在はまさにこちらです。普通の規定性とはまったく逆の、ハードがシステムを作り、システムがソフトを変えていくという──つまり、こんな戦争を肯定する法律がある、これが既成事実となって、こういうことができるんだ、日本国はこういう選択肢も持っているんだということで、価値観そのものを変えていくという、こういう流れです。
 実は、歴史の中では時々こういうことが起きるんです。兵器体系や技術が思った以上に進んだことで、新しい戦略が採用される。それによって非常に冒険主義的な戦争が行われる。
 例えば、戦争映画によく出てくる零戦という飛行機がありますが、零戦という飛行機ができたことによって何が変わったのかというと、零戦というのは非常に航続距離の長い飛行機です。当時の戦闘機の常識を打ち破る航続距離の長さを持っていました。それによって何ができたかというと、台湾から航空母艦を使わずにフィリピンを空襲することができるようになったのです。
 零戦ができる以前は、もし日本軍が南進しようとすると、航空母艦をフィリピンの近くまで持って行かないと、アメリカの植民地であったフィリピンを攻撃できない。ということは、航空母艦の全力をあげて真珠湾攻撃をやろうとしても、それは無理だったということなんです。
 ある程度航空母艦を南に持って行かなければならない。ところが零戦というハードができたために、台湾からひとっ飛びでフィリピンを攻撃できるようになった。ということは、すべての航空母艦を真珠湾に持って行けるようになったわけです。これは、当時の日本海軍が従来考えていたこととはまったく異なる軍事戦略が生まれた、ということです。それで実際に戦争に突き進むわけです。
 ですから、零戦というハードが生まれたことで、新しい戦略が、あるいは作戦のためのいろいろな、例えば空母機動部隊みたいなものが実際に作られていくというのは、ここではハードが先導したこの流れ、逆流があったからなんです。
 歴史の中ではこういうことが時々起きて、起きた時にはかなり危ないことが起きているのです。それまでの戦略とは違った非常に危険な戦略が採られてしまうということが起きるんです。これが戦争遂行のための3要素からみた前提部分なのです。

参考/戦前期日本における〈有事・治安維持〉法体系

 もう一つ、緊急事態条項を考えるうえで、戦前の日本における有事・治安維持法体系──戦前は天皇大権を前提としているので、今とまったく同じではありません。しかし、参考になる部分はあるんです。つまり、非常に権威主義的な国家を作ろうとしてときに、どういう法律が必要になってくるか、ということです。
 これはさっきのシステムの部分なんですが、もともと明治国家が最初に作ったのは、徴兵令です。明治の初めの頃(1873年)に徴兵令を作りまして、これが昭和の初めに兵役法(1927年)という法律に変わります。これは、中身は同じものです。徴兵制を基盤とした兵隊集めのシステムで、これが一番最初に作られました。
 二番目が、実は戒厳令(1882年)なんです。そして、これも今はほとんど使われない言葉ですが、徴発令(同年)。徴発というのは、物を軍隊が徴発する。例えば、食料であるとかいろいろな物資を、緊急だからということで、一応制度上はちゃんと代価を支払うということになっているのですが、それが行われないこともあります。戦地においては事実上の略奪ということにもなってしまうのですが、徴発は私有財産権の制限です。つまり、食料だとか建物だとか土地を、戦争のために収用してしまう。
 普通だったらいろんな手続きが要るわけです、私的所有権、財産権の侵害になりますから。しかし、緊急事態なんだ、ということで、そういう手続きを一切取っ払って、建物を使う、土地を収用する。これは戦争になれば、必ずそういうことが強行されます。この建物を接収します、あるいはこの土地を使ってそこに陣地を作ります、ということは必ず起こります。これがまさに、戦前でいうところの徴発令。これをもっと発展させたのが、昭和期の国家総動員法になるわけです。これも私有財産権の制限です。
 戒厳令というものと徴発令は、実は同じ年、1882年に出されていて、大日本帝国憲法(1889年公布)ができる以前に作られているのです。戦前日本においては、国家の枠組みができる前に何がまず最初に求められたのかというと、この戒厳令と徴発令であったということです。
 戒厳令は、戦時(内乱含む)における憲法の一時停止を意味しています。もっとも、戒厳令ができた時には大日本帝国憲法はできていなかったんですが、憲法ができあがると、それを一時的に停止してしまうことが可能になるんですね。そして軍政を実施する。軍政というのは、司法・立法・行政の3権を軍が掌握することです。ですから戒厳令というのは、まさに通常の法体系、その中心である憲法すら停止して、そして基本的には軍がすべての権限を掌握する、これが戒厳令の本質です。そして徴発令は、戦時においては一般人の財産権を制限してしまう。
 今回の「緊急事態条項」には、まさにこれが盛り込まれているわけです。ただ言葉が戒厳令や徴発令ではなく、少しソフトになっているわけですが、戦前においてはこれとまったく同じことがこのようなもので行われていた。
 そして、こういうものが整った後でなにが行われたかというと、情報統制と弾圧です。軍機保護法(1899年)、スパイ防止法と言ってもいいですね。それから治安維持法(1925年)。国防保安法(1941年)は、これもスパイ防止法の極めつけです。治安維持法も国防保安法も、最高刑は死刑でした。これで取り締まられた事例、治安維持法と国防保安法を併せて適用された事件は「ゾルゲ事件」ですね、戦前においては。これは実際に死刑まで出ています。こういう情報統制や弾圧法規というものが、次に出てきます。
 そして、戦前日本においては、こういうものができて、さらに国家総動員法(1938年)という包括的委任立法ができます。包括的委任立法というのは、基本的に行政に委任してしまう。戦前においては勅令です。つまり天皇が出す勅令によって、政府が必要と認めることをどんどん作ってしまう。さすがに今はそれはできませんので、「緊急事態条項」においては内閣が政令を作るという形です。
 国家総動員法は1938年、昭和13年にできますが、何でもかんでも政府が国家総動員上必要と認められるものについては、勅令を以って何々することができるという法律なのです。勅令というのは天皇の命令です。(勅令は)議会で審議されるわけではありません。議会の権限というのが、事実上なくなってしまうんですね。議会が何か文句を言っても、どんどん勅令を以って実行できるわけです。この法律は、国家総動員法は議会を通った法律なのですが、事実上、議会の権限を格段に骨抜きにしてしまう法律だったのです。
 実は今回の「緊急事態条項」も、ややその傾向があります。国家総動員法が持っていた包括的委任立法としての性格が、「緊急事態条項」には含まれています。必要と認められることは内閣がどんどん政令で作って行ってしまう。国会は事後承認でいいんです。ということは、これは行政権の肥大だということになります。戦前においては、「行政の軍事化」という言い方をしています。
 戦前において悪名高き法律を全部ここに網羅しましたが、これのかなりの部分が、今回の「緊急事態条項」に分割して盛り込まれているということです。その中心となるのが、戒厳令であり、徴発令であり、一部、国家総動員法と近い発想が盛り込まれています。これは、現在の事態を考えるうえで非常に大事なところです。

「自民党2012憲法草案」における「緊急事態条項」

 2012年に出た自民党の憲法草案には、どういうことが書かれているのか。自民党の憲法草案の第九章が「緊急事態」というものでして、第98条が「緊急事態の宣言」です。
 「第98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、」──まず第一に想定したのはこれなんです。「──外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」ということで、第一に想定されているのは、やはり戦争なんです。これが第一なんですね。
 地震などの自然災害は、我々一般人に取ってはこっちの方が切実なんです。起こり得ることですから。戦争というのは人間がやることですから起こらないかもしれないし、それを回避する手立てはあるわけです。しかし自然災害は、ある程度予知ができたとしても、根本的に回避することはできませんので、この部分というのは、「これが必要だ」と訴えるときには、やはりまず第一に出してくる問題です。しかし、この緊急事態というもの自体は、戦争、武力攻撃、内乱、それにともなう社会秩序の混乱、これを想定したものであるのです。
 社会秩序が混乱した時に何を行うかというと、これはまさに治安維持です。治安維持のためには当然、基本的人権の制限ということになりますし、私的所有権、財産権の制限という、さっきの戒厳令と徴発令で行われたことが、まさにここに盛り込まれて行くわけです。
 もし「緊急事態条項」が憲法に盛り込まれますと、「法律に定めるところにより」とありますので、“緊急事態法”みたいな法律がまた別に作られることを意味しています。
 「2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。」ということで、事後でも良いのです。事後でも良いということは非常に重要なことで、戦前においても天皇が出した緊急勅令というものがあります。一応、出した後で議会に諮って事後承認を得るということになっていました。戦前の国家体制では、天皇が出した勅令を議会が否定するなんてことはできないわけで、結局はみんな事後承認という形になるんですね。
 恐ろしいものもあります。例えば1925年、大正14年に治安維持法ができます。1928年、昭和3年に治安維持法の最高刑が死刑になりますが、その時は緊急勅令でやるんです。法律改正ではなくて緊急勅令、天皇の命令で死刑にしておいて、それを議会が事後承認するという形で最高刑を死刑にします。
 まさに、事後で良いというこの発想がある限り、政府にとってはかなりのフリーハンドが許されることになります。
 98条というのはまだ続いておりまして、「3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。」これは当たり前ですよね。必要がないのにずうっと緊急事態を宣言しているわけには行かないわけですから。
 ただ、これでなにか議会の歯止めがかかっているように見えますが、例えば今のような国会状況が続いていたとすると、これはほとんど歯止めにならないということですよね。それを推し進めようとする、緊急事態を良しとする考え方の議員が圧倒的多数であれば、一見すると国会の制約が効いているように見える条文ですが、実は行政のやりたい放題がずっと続いてしまう可能性があるということです。
 これはまた後でお話ししますが、緊急事態宣言が長引けば長引くほど悪影響が出てくるんです。例えば1936年、昭和11年に起きた大きな事件というと、226事件があります。あの時は事実上の戒厳令が布かれた状況、事実上というのは、厳密に言えば戒厳令が布かれたわけではなくて、戒厳令の一部分を緊急勅令で施行するんです。これは「行政戒厳」というのですが、戒厳令が生でそのまま施行されたわけではないんですが、それでも1936年2月26日に事実上の戒厳令が布かれて、およそ半年間これが布かれているんですが、この間に、例えば戦前におけるメーデーはこの年に開けなくなって、以後1946年までないのです、ずっと。メーデーというのは1936年の戒厳令下で禁止されて以来、戦前においては一度も開かれていないんです。
 それから言論統制というのも、戒厳令下で非常に厳しく行われて、どんどん悪化する一方なんです。戒厳令が解除されても、元に戻るのかというと決してそうじゃなくて、落ち込んだレベルでずっと行く、あるいはもっと悪くなって行く。こういうことです。ですから、こういう状態が長く続けば続くほど、非常に影響が大きいということになります。
 99 条は「緊急事態の宣言の効果」というものでして、「第99条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」ということで、これは行政権を飛躍的に肥大させるものです。強権発動ということになるわけですね。法律と同等の政令を制定できるということ、それから地方自治体に対して──今の沖縄のような状態ですよね、政府がどんどん押し付けていってしまうことが可能になるということです。
 これは、「2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。」とありますが、さっきも言いましたように国会状況によっては歯止めにならないかもしれない、ということです。
 問題は、一般国民がどうなるかということですが、「3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。」ということで、一応この後に「この場合においても、第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。」とあるんですが、わざわざこんなことを言っているということは、尊重されないということですね。(笑い)ある程度見通しているから、一応宣言としては「尊重されなければならない」ということを言っておいて、多分現実にこれを作った人は判っているわけです、これは。明らかに基本的人権は制限される、私的財産権は制限されると判って言っている、ということです。ですから、これは非常に強力なものです。
 これは、まさに戦時ということを想定して、それに準ずる状態を宣言することによって、強力に治安維持を行い、基本的人権、私的財産権を制限していくという、こういう中身になるということです。
いま言ったことをもう一回まとめますと、自民党憲法草案の「緊急事態」は98条、99条という二つの条項です。98 条は「緊急事態の宣言」、これは内閣総理大臣による宣言ですから、与党多数で内閣総理大臣が絶対的な力を持っている時には、歯止めにならないということです。
 99 条は「緊急事態の宣言の効果」です。政令を制定することができる、国会は事後承認ということで、基本的人権には配慮しなければいけないとあっても、どうしてもそこが問題になってくる。必ず強権的なことをやった時には──基本的人権に徹底的に考慮した強権なんてないわけですよ。これは矛盾するから、このような緊急事態条項を作らなければいけないということになるわけです。
 しかも自民党の作った憲法改正草案というのは、基本的に非常に古い発想、明治憲法、大日本帝国憲法的な発想が随所に盛り込まれているんです。つまり、日本国憲法をさらに発展させるというよりも、歴史的に見ると明らかに後ろ向きです。憲法というのは国家の基本法だから国民が守らなければいけないことを規定するんだ、という発想で憲法草案が作られています。
 ワイマール憲法とか日本国憲法の流れというのは、もともとヨーロッパの市民革命から出てきた考え方を引き継いでいるわけで、権力の濫用をいかに食い止めるか、基本的人権をいかに守るか、という発想で憲法は作られてきたわけですが、その発想じゃないんです。
 ですから、この中には戦前における戒厳令とか、徴発令とか、国家総動員法的な発想が、随所に盛り込まれているということです。

「緊急事態条項」と9条改憲との連動性

 「緊急事態条項」と9条改憲との連動性ということですが、おそらく自民党の改憲草案の三本柱と言えるものは、「天皇元首化」、「9条改憲」=国防軍設置、そして「緊急事態条項」、これが絡まりあって、改憲草案の核になっています。これらは、すべてが基本的人権の制限に繋がる条項です。
 天皇の元首化がどうして基本的人権の制限に繋がるのかというと、天皇を元首化すると同時に、国旗と国歌を憲法で定めようとしているのです。今、教育現場でいろいろと問題になっているように、「日の丸」「君が代」に批判的な立場の人たちは憲法に反している、という規定がされてしまうわけです。憲法の名のもとに基本的人権が踏みにじられる、ということになるわけです。まさに改憲案の基底には、明治憲法的な発想があるということです。
 戦前的な発想と言えば、「緊急事態の宣言」は政府の独裁ということになるわけですが、その時の主役は、もちろん内閣総理大臣とも言えるのですが、具体的な行動は自衛隊、改憲後は国防軍がその主役になっていくということです。つまり、通常の警察機能では治安維持ができないので、緊急事態を宣言して治安維持を軍隊が行う、という話です。まさに緊急事態の時の主役は自衛隊であり、9条が変えられてしまえば国防軍であるということになります。これは、戦前の事例からしてもまさにそういうことなんです。
 自衛隊から「国防軍」に転換させる、「自衛権」を明示する、ということが憲法草案には書かれています。当然、集団的自衛権(他国への攻撃を自国への攻撃とみなすこと)を容認する。この部分まで来たわけです。新安保法制によって、自民党改憲草案のこの部分というのは実現しつつあるわけです。
 自然災害への危機感をテコにして「緊急事態条項」に進み、改憲の既成事実を作る──これは戦略としては非常にやりやすい。9条を先にするのか、後にするのかという議論はあると思いますが、もし改憲に対する抵抗感を失わせるということで言えば、確かにこの「緊急事態条項」から進んでいくというのは一つの戦略なのかな、と思います。

「自民党2012憲法草案」の9条関係

 9条関係は、前にもお話ししましたが、自民党の憲法改正草案は9条の第1項はほとんど手を付けていないんですね。第1項はほとんど手を付けずに、第2項で「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」として「自衛権」ということを明記し、さらに「第9条の二」というものを作ります。「国防軍の保持」です。「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。」ということです。
 で、国防軍の任務ということが書かれています。「国際社会の平和と安全を確保するため」というようなことは、今回の安保法制の中でも国際協力ということが謳われています。もともとこれは、PKOから始まる流れをもう一回整理しているわけですが、部分的にこういうことが既成事実としてだんだんできあがりつつあるわけです。
 それから「第9条の二」というのはすごく長くて、「機密の保持に関する事項」が書かれていて、「国防軍に審判所を置く」とあります。「審判所」というのは、要するに軍法会議です。秘密漏えいをブロックするために、昔で言うところの軍法会議を置くということです。
 軍法会議というのは、基本的に軍人を裁く特別裁判所です。現行の憲法の規定では特別裁判所は置けないことになっていますので無理なのですが、憲法が変わってしまえば軍法会議を置くということになります。
 もう一つ重要なのは、軍法会議と、さっきの「緊急事態条項」が組み合わさると何が起きるかということです。226事件の後に何が起きたのかということを想起すると判りやすいんですが、226事件の後に「特設軍法会議」というのが作られました。これは、従来の軍法会議とは違うんです。これもまたまた緊急勅令で、ここで言う政令と同じ役目を果たすわけですが、緊急勅令を以って陸軍東京軍法会議という、226事件を裁くためだけの特設軍法会議というのが作られたんです。
 これは建物から全部従来のものとは違う、代々木練兵場の一角に特設軍法会議の法廷を作るんですが、ここでなにが起こったのか。戒厳令下で軍法会議が開かれると、その軍法会議は特設軍法会議という名のもとに、軍人だけじゃなくて民間人も裁いちゃったんです。北一輝たちが処刑されたのは、まさにこの特設軍法会議なんです。
 515事件の時は軍人は軍法会議で、民間人は普通の裁判所で裁かれたのです。ところが226事件は将校たち軍人と民間人が──北一輝は民間人です。西田税は元将校ですが当時は軍籍がないので民間人です。これらの人たちは同じ特設軍法会議で裁かれ、民間人に死刑判決を出したのです。これはまさに、戒厳令と軍法会議の合わせ技なんです。これが合わさって、一番暗黒な部分が出たのが226事件の後の特設軍法会議なんです。
 軍人たちはおよそ半年間でみんな処刑されました。これは弁護人もなしの一審制で、控訴もできない、こういう特殊な裁判です。こんな特殊なものが軍法会議といえども容認されたのは、戒厳令下であるということです。この二つが合わさると、非常に恐ろしいことが起こるのです。
 現在は軍法会議はありません。一応、特定秘密保護法のようなものができましたが、軍法会議がないので、自衛隊が自衛隊員を逮捕することはできないのです。しかし、もしここで戦前の憲兵のようなものを作ったとすると、それが可能になってくるわけです。
 その憲兵の卵はすでにあります。「情報保全隊」です。表向きは情報保全ということですが、やっていることは反自衛隊活動をやっている人の情報を収集することです。情報の保全と情報の収集というのは実は背中合わせで、表裏一体だということです。戦前においては憲兵がスパイ防止を行いつつ、スパイ活動もやっているわけです。これはまさに、特定秘密保護法の裏面ということになります。
 もし憲兵が作られたとすると、戦前における特務機関のような情報収集機関が当然できあがってくる。これは繋がっています。
 もう一つ、自民党の憲法草案の中には、「国防の義務」と言い方がされていますが、漠然とした言い方になっています。「第9条の三」に「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。」とあり、「国が」が主語になっていて、「国民と協力して」という言い方ですが、国民は協力しなければいけない、という文脈が多分強まっていくと思います。
 そうすると、戦前的な徴兵制というものが布かれなかったとしても、戦前でいうところの「徴用」──民間人であっても戦争に動員して、戦争に関する仕事をさせる──こっちに繋がる話なんですね。自分は自衛隊員じゃないから関係ない、民間企業に勤めているから関係ない、と思っていても、そういうことではないんです。
 今の自衛隊だって、民間企業の働きがなければできないことがいっぱいあるのです。最も秘密性の高い兵器の修理は、昔は軍工廠がありましたから軍で処理することができたんですが、今、軍工廠にあたるものは民間企業です。しかも今の兵器はコンピュータの塊ですから、その修理をするのは民間企業ということになります。
 そうなると、民間人が戦場に行かざるを得ないということが起きてくるわけです。その時に拒否できるのか、と言われたときに、多分ここから派生して法律が作られ──戦前には国民徴用令がありましたが、それに類する法律がもし作られてしまうとすれば、非常に恐ろしいことになります。

「戦争法」と「緊急事態条項」から始まる軍拡・参戦・言論弾圧・徴用

 戦争法、安保法制と「緊急事態条項」から始まる軍拡、参戦、言論弾圧、徴用。改憲の既成事実を作った上で、9条改憲へという、こういう一つの道筋を描いているようにも思われますが、当然9条が変わってしまったら、現在の「戦力」不保持は消滅してしまいますから、兵器体系への拘束はなくなり、本格的な兵器が何でも持てます。理論的には。
 しかし今、当面は既成事実をまず作るいうことを中心に考えていますので、機動戦力の中核としてのヘリ空母、これが焦点です。ヘリを搭載した空母ということですが、これを既成事実としてどんどん先行して、この開発をいま進めています。将来的には垂直離着陸機だとかオスプレイの運用が可能な強襲揚陸艦──アメリカの海兵隊が使っている上陸作戦用の攻撃機能を強めた空母ですが、こういうものを持ちたいと。その道へかなり進んでいるんです。
 ヘリ空母建造路線を補足説明しますと、現在海上自衛隊には「ひゅうが型」ヘリ搭載護衛艦13950トンがあり、ヘリを10機搭載しています。この「ひゅうが型」の2番艦「いせ」も完成しています。「ひゅうが型」というのは、「はるな型」というヘリ搭載護衛艦の代替艦でした。「はるな型」が古くなったので、新しくしますと言って作ったのが「ひゅうが型」です。「はるな型」は普通の駆逐艦型のスタイルで、前半分が駆逐艦、後ろ半分がヘリ空母みたいなもので、大きさは4950トン、ヘリの搭載は3機です。これは潜水艦を攻撃するために開発されたもので、ヘリを飛ばして潜水艦を探知し、そして攻撃するものです。米ソ冷戦時にこれが整備されました。
 これが古くなったので新しくします、と言って作ったのが「ひゅうが型」ですが、(写真を示し)これは空母みたいですよね。大きさを見てください。「はるな型」は4950トンでしたから、「ひゅうが型」は3倍近い大きさになっています。自衛隊の中では、これが古いものを1隻廃棄して新しいものを1隻作った、ということになっているんです。同じ1隻です。しかも「ヘリコプター搭載護衛艦」という名前も一緒になっています。今はもう、2隻が海の上を走っています。
 ここまでかというと、その次も作っています。「いずも型」19500トン、へり搭載14機です。すでに1番艦は就役しておりまして、2番艦も進水式を挙げています。「しらね型」へり搭載護衛艦5200トンの代替艦として建造されました。
 発表されたイメージ図を見ると、「輸送機能の強化」と書いてあるんです。物をたくさん運べるようにしたい、ということなんです。つまり、ヘリコプターを積みますから、ヘリコプターで物を運べるようにしたい。
 物を運ぶには輸送艦というものがあり、ヘリが降りられる「おおすみ型」輸送艦があります。ホバークラフトが中から出てきて、上陸作戦に使います。ヘリで物資を運ぶ、あるいは兵員を運ぶ。ホバークラフトには戦車なんかも積んで上陸作戦をやります。こういうものをすでに持っているわけです。さっきの「ひゅうが型」と、だんだん機能が合体しつつあるんですね。
 「いずも型」1番艦進水式の時に、NHKが「空母のような形が特徴」と言ったんです。空母と言っちゃうと、「いやいや空母じゃない」「ヘリコプター搭載護衛艦だ」と言われるので。護衛艦というのは、国際的には駆逐艦のことです。「ヘリコプターを積んでいる駆逐艦なんだ」と。あくまでも空母ではないということになっているので、空母と報道すると自衛隊が怒るんです。だからNHKも配慮して「空母のような形が特徴」と言ったんです。「いずも」はすでに海の上を走っています。(写真を示し)これはどう見ても空母です。(笑い)「のような形」ではなく、空母です。しかし名前は一応、ヘリコプター搭載護衛艦なんです。大きさももう2万トン近い。2万トンに近い駆逐艦と言ったら、みんな笑っちゃいます。世界的に例がない。
 2番艦は名前を「かが」と言います。かつての航空母艦と同じ名前です。ミッドウェイ海戦で沈んだ4隻の航空母艦の1隻が「加賀」でした。もともと「かが」は旧国名ですから、戦艦に付いていた名前なんです。「加賀」は、ワシントン海軍軍縮条約で戦艦を改造して空母になった艦なんです。名前だけ残って、空母だけど「加賀」という名前だったのです。2番艦にはその名前を付けました。
 いままで「ひゅうが」「いせ」「いずも」「かが」、これはみんな旧国名なんです。江戸時代までの国の名前を示しています。旧国名は、帝国海軍では戦艦に付けていたのです。これは偶然じゃないんです。そういうグレードをちゃんと考えて付けているんです。
 これは明らかに既成事実が進んで、こういうものを持っているから、これができる仕事を後付けして行っているわけです。
 どんどん艦が大きくなっているのは、遠くまで出ていくためです。遠くまで出ていくためには当然、燃料搭載量を大きくしなければなりませんし、物もたくさん積めなければなりません。ヘリコプターなんかもたくさん積めなければいけません。それから居住性も良くしなければならない。長い時間、遠くまで行動するには、小さな艦だと乗っている人は堪りません。ですから、なるべくゆったりと作らなければならない、ということで艦はどんどん大型化するんです。
 軍事に詳しい人は、真珠湾攻撃に参加した空母に「翔鶴」とか「瑞鶴」という当時の最新鋭空母があったことをご存知だと思いますが、その「翔鶴」や「瑞鶴」の飛行甲板の大きさと、先ほどの「いずも型」の飛行甲板では、「いずも型」の方が大きいのです。ですから、結構大きな艦なのです。排水量こそ「翔鶴」や「瑞鶴」に比べると小さいのですが、飛行甲板の広さだけを見ると、もうそのレベルになっているのです。長さは248mで、幅は38m。これは「瑞鶴」クラスより広いんです。
 では、この先はいったいどうなっちゃうのか、ということなんですが、いろいろなことができるハードを既成事実としてどんどん作っちゃっています。
 さっき言いました「いずも型」ですが、自衛隊が公式発表している写真では、長さが判る写真はあまり出さないんです。前から撮ったりして、短く見せているんですが、結構大きな艦なんです。
 (写真を示し)この写真は「おおすみ」型輸送艦にオスプレイが降りようとしています。「おおすみ」は「ひゅうが」とか「いずも」に比べたらはるかに小さいです。ずっと小さい艦なのに、こういう運用ができるのです。  ということは、当然先ほどの「いずも」だったら、十分にオスプレイが発着できます。格納することはできません。オスプレイは結構大きいので、格納することはできませんが、これをプラットホームにして、ここに着艦し、ここから飛び立つことは十分に可能なんです。
 (写真を示し)これは輸送艦「しもきた」が米軍と共同演習をやっている写真です(オスプレイが着艦しようとしている)。
 とすると、これらが合体したものが何なのかというと、これなんです。(アメリカ海兵隊タラワ型「強襲揚陸艦」ベロー・ウッド39000トンの写真を示し)これはまだ日本は持っていません。これはアメリカ海兵隊が持っているタラワ型「強襲揚陸艦」です。ヘリコプターや、オスプレイも当然載せられます。垂直離着陸機も載っています。この穴から船やホバークラフトを出すことができます。このアメリカの強襲揚陸艦は、まさに日本のヘリ搭載護衛艦と「おおすみ型」輸送艦が合体したようなものです。これが、これからの発展形なんですね。これは一番攻撃的な艦船です。上陸作戦を行うためのものです。どうもこっちの方に進んでいるんですね。
 これだとさすがに大きさも4万トン近くて、現在の「いずも型」のさらに倍です。ですから、今からもう一段階先に進まないと作れませんが、しかし私たちがうっかりしていると、「もうでき上がりました」みたいなことになっちゃうんです。今までもどんどんそういうふうに、5000トンぐらいの船がいつのまにか1万数千トンになり、2万トン近くになっても、「ヘリ搭載護衛艦だ」とずっと言い張ってきたわけです。これは名前のマジックなのです、自衛隊お得意の。名前でごまかして、本質を隠しているんです。
 実は先ほどの「ひゅうが型」がまだできる前に、イギリスの海軍年鑑にそのイラストが先に載っちゃったんです。それが発表されたために、当時の中国は「日本が空母を作っている」というふうに言い、我が国も作らなければ、ということで、現在中国は1隻空母を持っているわけです。垂直離発着機なんかが降りられる、日本のヘリ空母より一歩先に進んだものを先に作っちゃったんです。
 となると、さらにその先を行くものを作りたくなっちゃうわけです。軍拡ゲームに憑りつかれるると、必ずそういうことになるのです。
 まさに「戦争法」と「緊急事態条項」から、戦争準備というのが具体的に進みはじめたということですね。先ほどの審判所の問題──軍法会議ですね。民間人を含めての機密漏洩の取り締まり。スパイ防止法、特定秘密保護法がすでに制定され、おそらく憲兵のようなものが設置されていく。そっちに進みたいわけです。
 秘密保護と秘密収集は表裏一体です。国民には秘密を漏洩しないように守るんだ、ということしか言いません。オープンにはされないんです。戦前においてもそうです。日本国はこんなにスパイ活動をやっています、なんてことは絶対に言うわけがない。やっていた戦前においてすら、そんなことは言わない。しかし、これは秘密戦という分野では、まさに表裏一体だということです。
 「国防の義務」の問題もありますから、民間人であるから安全だ、と言えない時代であるということです。

歴史における「緊急事態」の悪用

 歴史において「緊急事態条項」が悪用された例というのは、日本における戒厳令です。戒厳令にもとづく戒厳状態布告は、日清・日露戦争の時の軍港地域だけなんです、本当は。
 戒厳令はもともと戦争ということを想定して作られたものですから、戒厳状態というのは戦時、あるいは内乱時の臨戦地境(戦場と隣接している地域)、もしくは合囲地境(敵に包囲されている状況)、そういう時にのみ布告されるということが原則なんです。ですから実際に日清戦争や日露戦争の軍港──軍港は戦地に隣接しているという意味合いです。そこからどんどん軍隊が出ていくわけですから。だから要塞地帯とか軍港にのみ戒厳令が布かれたんです。
 ところが、日露戦争が終った後の日比谷焼き打ち事件(1905年)、関東大震災(1923年)、226 事件(1936年)の際には、戒厳令は戦時ではないので、戒厳令の一部を緊急勅令をもって布告したのです。先ほども言いましたが、これは「行政戒厳」と言います。しかし、これでも結構強力なんです。一般的な行政はいったん停止して、治安維持とか言論統制には軍が全面に出てきます。
 関東大震災の時には「治安維持」の名のもとに大杉栄が虐殺され、あるいは亀戸事件などが発生しました。治安を維持する名目で、このような野蛮なことが行われたわけです、実際に。
 226 事件の後は、メーデーは戦前にはずっと禁止され、言論抑圧、検閲はさらに強められました。226事件を起こした人たちの裁判は、226事件を起こした人がいいというわけではありませんが、暗黒裁判でした。完全なる暗黒裁判で、弁護人もないような状況で闇から闇に葬り去られてしまったのです。これはまさに、戒厳令と軍法会議が合わさったために、そういう暴力的なことが実現したということです。
 226 事件後の行政戒厳は、日中戦争への反対運動の抑圧に使われます。226事件の翌年が日中戦争ですから。その更に翌年が国家総動員です。1年単位でどんどん深みにはまっていくということが起きるわけです。きっかけは226事件の時の戒厳令、行政戒厳というものです。
 もっとも、226事件を起こした、「国家改造」を狙っていた人たちも、戒厳令が布かれるということを予想していたんですね。戒厳下の政府打倒、クーデターを狙っていたのです。不思議なことに226事件は、起こした人たちも戒厳令が布かれないかなあ、ということを狙って、そのもとで臨時内閣を作って、国家改造、昭和維新を実現するということを考えていたし、それを弾圧した側も戒厳令を利用して徹底的に皇道派を壊滅するというやり方を取ったのです。
 戒厳状態というのは、一種の無法状態を作っちゃうわけです。それによって、普通だったら考えられないことが堂々と行われてしまう。
 先ほどは特設軍法会議の話をしました。青年将校たちを壊滅させるためにどうせ軍が勝手にやったんだと思われがちですが、特設軍法会議は別に軍の命令ではなくて勅令、つまり天皇の命令でできたのです。その天皇の命令を出すときには、枢密院という当時の機関がちゃんと審議したのです。軍だけで特設軍法会議を作ったのではなく、天皇も、枢密院もみんな認めた上で、それでこの特設軍法会議という超法規的なものを作っちゃったのです。
 それは、戒厳令下であるという特殊心理が影響しています。こういう状態の時には特別なものも作らないといけないんだ、という心理になってしまうんですね。
 ドイツにおいても、有名なのはナチスドイツが第1党になった翌年、1933年にヒットラーを首相とするナチス政権ができてすぐに行ったのが、「国会議事堂放火事件」です。これは共産党員が国会議事堂に放火したということをでっち上げ、それで徹底的に反対派を弾圧する。国家緊急権の名のもとに、合法的に憲法を停止状態にし、「全権委任法」という法律を作って反対派を完全に封じ込めてしまうのです。
 ですから1932年まで、ナチスが第1党でナチス政権ができた時までは、一応合法的と言えば合法的なんです。ワイマール憲法下で、一応合法的に進んできていたのですが、この「全権委任法」ができたことで、流れがガラッと変わってしまうんです。
 この「全権委任法」は、まさに「緊急事態条項」です。国会が放火されるという緊急事態、これは自民党の憲法草案にある社会秩序の大きな変更、動揺です。これを理由にこのような法律を作って、独裁体制を一気に確立するということです。
 最初は共産党を大弾圧し、さらに社会民主党も弾圧され、キリスト教関係者もどんどん圧迫されて、段階的に弾圧が強まっていく、そのきっかけが「全権委任法」で、その時まさに緊急事態であるということが口実に使われたのです。
 こういうのは、歯止めを効かすから大丈夫だと言っても、何かの拍子に大きく動いてしまうと、もう歯止めどころではなくなってしまうのです。どんどん既成事実が積み重ねられていってしまうのです。

安倍政権になって軍事費がまた上昇に──「既成事実」の進行

 先ほど既成事実の話をしましたので、それをさらに続けますが、安倍政権になって軍事費がまた上昇に転じたました。上昇に転じたというと、日本の軍事費は大して多くなかったのかと思われがちですが、もともと結構多いのです。世界第6位の軍事費です。ドル換算で各国を比べますと、世界第6位ぐらいの支出があります。
 この10年間、世界の軍事費ランキングでいうと日本のランクは5位、6位なんです。その前の冷戦期は、2位だったことがあるんです。1位アメリカ、2位日本という時代も結構あったのです。こういうのは喜べない2位なんですが、5位、6位になったとしても相当な額です。
 アメリカがトップですが、アメリカは一国で世界の軍事費の半分を使っている国ですから、これは桁外れです。その3分の1か、4分の1ぐらいが中国です。で、ロシア、サウジ、フランス、日本、イギリス、インドときています。
 中国、日本、インドという三本柱が、アジアの軍拡の牽引車になっているんです。これが競い合っています。中国が軍拡すると、必ずインドが軍拡するんです。ライバル関係ですから。当然、日本も軍拡します。こういう悪循環になっています。(軍事費の表を示し)この軍事費の表は、それを示しています。
 軍事費は下方硬直性だと言われていて、減りにくいんです。前年踏襲型の予算編成が行われることと、高額兵器の後年度負担──今年払わなくても来年、再来年でいいという形で高額兵器の代金が支払われていることによります。毎年毎年、ツケ払いをしている。本当は今年払わなければいけないのに来年度、再来年度に回すよ、ということで、毎年毎年2兆円ぐらいがそうなっています。これはすごい額です。軍事費は全体で5兆円なのに、2兆円も先送りするという、そういうやり方なのです。
 それが累積しています。今は3兆円ぐらいの累積額なのですが、下手をするともっと増えちゃいます。その最たる事例が、イージス艦です。1隻1500億円ぐらいですし、「いずも型」ヘリ搭載護衛艦もそれに近い額です。
 日本は、陸軍力では英仏よりも多いんです。空軍力ではイギリスよりも多く、海軍の総トン数では世界の5位か6位ぐらいの海軍力になっています。陸軍力では日本は16位よりももっと下なので、少ないように見えますが、日本より下にイスラエル、フランス、イタリア、イギリスがあります。あの戦争が大好きなイスラエルさえも日本より少ないのです。フランスが11万人、ドイツに至っては63000人です、陸軍が。ドイツ陸軍というと、冷戦期に最高時50万人ぐらい持っていたのですが、時代が変わると削減されて、今は63000人です。
 陸上自衛隊は今は14万人ですが、もともと定員18万人の時代に15万人ぐらいしかいなかったのです。ほとんど減っていないんです。
 海軍力では日本が現在、3隻のヘリ空母を持っていますので、46万トンで6位です。アメリカ、ロシア、中国、イギリス、インド、日本。インドと日本が今、競り合っています。つまり、アジアで軍拡競争になっているのです。
 航空戦力でも、12位ぐらいですが、日本よりも下にフランスがいるという状況です。
 ですから、増やさなきゃいけないと言っても、もう結構な軍事費を投入しているのです。それは決して自衛隊というのが予算規模で小さいとか、あるいは軍事力として小さな存在じゃないんです。しかし、そこはなかなかそう思われないようなイメージ操作がされている。そして知らないうちに既成事実がどんどん進んでいるということです。

おわりに──日本のこれから、市民としてできること

 「緊急事態条項」なんですが、少し単純化して言えば、まさにこれは政府の独裁を容認するものであるということです。自然災害を口実にしていますが、一番想定しているのは戦時です。
 そうなると、やはりかつての戒厳令であるとか徴発令とか、そういうことを想起せざるを得ないということになります。基本的人権についての歯止めというのは、根本的にかかるものではないということです。
 「緊急事態条項」を突破口に、さらに9条改憲へと突き進む。これは必ずセットで考えています。ここで止まるという話ではありません。「緊急事態条項」の改憲をやったら、必ず9条の方へ進むことは間違いありません。
 私たちとしては、いろいろな領土問題だとか国際的な緊張を、9条改憲の突破口にさせないことです。
 よく北朝鮮がミサイルを撃ったりして、すごく危機感が煽られています。なんで日本で北朝鮮労働党の党大会をあんなに詳しく報道しなければいけないのかと思いますが、軍事パレードの映像なんかを結構報道しています。ロケットもバンバン撃っています。北朝鮮はこの頃、わりとデータを出すようになったんです。写真なんかも発表しています。
 しかしそれらを見れば見るほど、逆に北朝鮮の内情が苦しいということが判ります。軍事パレードの映像を嫌と言うほど見せられました。ミサイルのトレーラーはたくさんありましたが、上空を飛んでいる飛行機がないんです。普通、ああいうものは士気を上げるためにやるものですから、最新鋭のジェット戦闘機や武装ヘリがなんかがバンバン飛んでいるというような映像を見せれば良いと思うのですが、空は空白なんですよ。飛んでいないんです。飛んでいたら、当然写しますよね。
 飛んでいないということは何なのか。ある程度は持っているんです。ロシアから買った最新鋭機を20機ぐらい持っているんですが、どうも燃料が十分じゃないんですね。イギリスの軍事年鑑「ミリタリーバランス」には、北朝鮮空軍パイロットの飛行時間は年間12時間となっています。12時間ですよ、訓練時間が。自衛隊なら150時間から200時間ぐらいです。
 この数字は、驚くべき数字なんです。つまり、大戦末期の日本軍とほぼ同じ状況になっているということです。通常戦力はほぼ役に立たない状態になっている。普通に買える軍事年鑑にそう出ているのですから当然、もっと詳しい人にはそれが判っているのです。
 だから北朝鮮は、そういう形で他国から侮られないようにという発想で、核を持つという選択をして、相手を威圧しているわけです。じゃあ本当に戦争ができるのか、と言ったら、そんな状態なわけです。そこはちょっと両方見ていかなければいけないわけです。
 アジアにおける軍拡の連鎖、これが非常に恐ろしいことです。今、中国や北朝鮮が怖いぞと言って軍拡モードになっています。なっていて既成事実がどんどん作られていますが、日本が軍拡すれば中国の軍拡に拍車がかかり、そうすると当然インドが軍拡する。インドが軍拡するとパキスタンが軍拡し、中東諸国が軍拡し、イスラエルが軍拡する。日本人が知らないところまでどんどん軍拡していってしまうという、これが軍拡の連鎖です。自分たちの意思と関係ないところまでどんどん進んで行ってしまうということなんです。
 そういう、力で脅威を抑えるという発想を取ろうとすると、どうしても軍拡の連鎖に巻き込まれてしまい、さらに既成事実の先行を許してしまうことになるわけです。ですから脅威を作らない戦略と言いますか、国家の在り方を考えなければいけないと思います。
 確かに一発当てれば大きいんです。1隻潜水艦を売れば600億円というレベルですから、売りたくなる人たちはいると思うのですが、それをやってしまうと、軍需産業立国みたいな方向に行ってしまう。
 これは非常に恐ろしいことで、かつてのアメリカの自動車メーカーが、ベトナム戦争以降、軍需に依拠して、自動車を作るよりも戦車を作った方が儲かるというスタンスを採ったために、知らないうちに日本の自動車メーカーに市場を奪われていたという、そういう技術の退廃を生んでいくんです。
 日本の技術というものは、まさに民生、非軍事というところで基盤を作ってきたわけです。それを軍事に転用しようなどということを、当面儲かるからということでやってしまうと、取り返しのつかないことに繋がっていくんじゃないかなと懸念をしています。今は経済が良くなれば何でも許されるみたいな発想が強いですから、ここは私たちは抑えなければいけないと思います。
 ちょっと時間をオーバーしましたが、「緊急事態条項」から出発して、現在の既成事実の進展についてお話ししました。どうもありがとうございました。(拍手)

司会;山田先生、ありがとうございました。改めて「緊急事態条項」の話を聞くと、本当に怖くなってきます。「緊急事態条項」と9条改憲が繋がると、とんでもない状況になるということがよくお判りいただけたかと思います。まだ少し時間がありますので、皆さまから質疑を受けたいと思います。

質疑応答

【質問1】行政権で独裁を狙って改憲しようとする方々の真意は何でしょうか。戦前に戻りたいのか、軍産複合体で美味しい思いをしたいのか、何をもってやろうとしているのでしょうか。

山田;これは二つポイントがあると思います。一つは、改憲自体が目的であるということですね。改憲していくということ自体が自己目的化しています。
 もう一つは、戦争できる国が一流なんだ、ちゃんとした国家なんだ、という価値観に基づいて国家運営をしている、あるいは国家はかくあるべし、と考えている人たちがかなり居るということです。
 戦後の日本は、戦争に関わらないんだ、戦争をやらないんだ、ということを一つの誇りにしてきたわけですが、そうではなくて昔ながらの大国の行動様式は、場合によっては戦争とか武力による威嚇とか、そういうものが必要なんだという考え方ですよね。それが国家の在り方としてスタンダードなんだ、という考え方を持っている。アメリカで勉強すると大体そうなります。世界最大の軍事大国で、それを基準に考えたらそうなるわけですし、そういう意味でのパワー・ポリティクスというのが現実にあることは否定しませんが、それを基準に日本もそうあるべきなんだと思っている人たちが、おそらく安倍首相もそうだと思いますし、いま国会議員や官僚の中にかなり増えてきてしまっているということは確かだろうと思います。
 まさに、そのための突破口としての改憲なんですが、かなりそれが自己目的化してしまっているということです。それから、戦争ができる国が普通なんだ──普通という言い方もおかしいですが、そうあるべきなんだ、と思っているということでしょうね。  

 
【質問2】既成事実によってハードを拡大し、日本を「戦争する国」にしようとしているその背景は、自衛隊なのか、軍需産業なのか、アメリカなのか教えてください。

山田;これは実は、その三者の絡まり合いです。アメリカの主導性は明らかです。アメリカがその方向に舵を切らなければ、日本の防衛省も企業も、軍事にもっとシフトすることはできません。しかし日本の軍事技術というのはすでに一定の蓄積を持ってしまっていて、かなり高度なものも作れるようになったということが一つあります。
 アメリカのやり方を背景にすれば結構いろんなことができるんだ、ということを防衛省の官僚の人たちはかなり味をしめています。ですから、日本国内の議論がどうあれ、アメリカが何を考えているのか、それを先読みして、それに沿った兵器体系づくりが明らかに行われています。日本国内で議論されたり、法律ができたりした時には、もうハードはできていますよ、ということになっています。
大きな船であればあるほど、設計から考えれば10年単位で時間がかかるわけですが、それが計ったかのように、海外展開が必要だと言われると、はいこの船があります、という形で次々と出てくる。ということは、アメリカの戦略にくっつきながら、ある程度自立した軍事強国になって行こう、という考え方で進めている人たちが居るということなんですよ。それは結構、持ちつ持たれつでやっているのかなあ、という感じがします。

【質問3】マスコミは今、脅威論を煽り立てています。アメリカの次期大統領になるかもしれないトランプ氏は、「米軍の駐在費を日本が全額負担しなければ米軍を引き上げる」などと言っていますが、すると日本の一部マスコミは早速「日本は自主防衛をしなければならない」などと言い出しています。この辺をどう考えれば良いのでしょうか。

山田;どんな場合でも極端な意見は出てくるわけですが、アメリカのそういう意見をいかにうまく使って改憲なり、軍拡なり、そういう環境を作ろうか、と考えているということです。あらゆる手段を都合よく使って軍拡や改憲に持って行こうという人たちがいるわけですから当然、米軍が撤退するんだったら国防軍だ、という話を持ってくるとか、あるいは、それこそ核武装だ、というところまでエスカレートしてしまう。
 確かに日本の技術は一定の水準を持っているわけですから、やってできないことじゃないわけです。しかし、やってしまったらもう、元も子もないわけですから。
 いま一番焦点になっているのは、逆流して結論的にあるのがソフトの部分ですね。価値観の部分、あるいは9条の理念の部分というのが最後の攻防戦になっているのかなあ、という感じがします。

【質問4】原発の再稼働が進んでいますが、原発でできたプルトニウムが45万トンあり、長崎型原爆の4000発分あると言われています。アメリカはこれに対してどういうスタンスなのでしょうか。

山田;トランプ氏が大統領になったら容認するかもしれませんが、一般的には容認しがたいことです。核クラブというか、核兵器を持っている大国は、自分たちだけに止めたいわけで、彼らにしてみれば核兵器を持つ国がいっぱい増えることで、自分たちのプレゼンス、影響力が相対的に低下してしまうことは恐れています。
 逆にそこを突いたのが北朝鮮です。一点突破型でミサイルと核兵器に突き進むことで、ひょっとして発言力が強まるんじゃないか、という見方をしているんです。それが本当にそうなるのか判りませんが。
 核武装の道というのは、これは地獄への道であることに間違いありません。
 今もし核武装しようとしたら、北朝鮮がやっているように弾道ミサイルに核兵器を積むというのではあまり意味がなくて、潜水艦発射弾道ミサイルが持てるかどうかが一つの焦点です。核ミサイルというのはある程度大きなものですから、地上のどこから発射するのかというのは、大体分かっちゃうんです。
 それを分からなくするのが、潜水艦なんです。潜水艦に核ミサイルを積んで、ある日突然、分からない所から撃つと。これだけ技術が発達した今でも、潜水艦が深い海に潜ってしまうと本当に分からなくなるんです。800mよりも深く潜ると、追跡できなくなってしまうのです。それと核兵器が組み合わさると、それが一番強力な核兵器となるのです。
 そこまで到達しようとすると、大変な軍事費が必要となります。あれだけ威勢よく軍拡をやっている中国も、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を積んだ潜水艦(ジン級)は4隻(ミサイル12基)しかありません。アメリカは戦略原潜(オハイオ級)14隻(ミサイル336基)配備しています。
 そういう点でいうと、それの開発と維持をしようとしたら、それだけで財政破たんを起こしてしまうような国はいくらでもあります。まさに核軍拡の道を歩もうとすると、これはもう大変なことで、アベノミクス(の失敗)どころではなくて、本当に国家財政の破綻、経済の破綻という道に近づいてしまうことになります。
 かつてのソ連の失敗もそこにあったわけで、アメリカと正面から潜水艦を中心とした核軍拡の道を突き進んじゃったんですね。それで、核軍拡にも負けたし、経済も破たんしたんです。中国は、ちょっとそこに学んでいるみたいなところがあって、そこに突き進もうとはしていないんです。
 日本のような技術がある国では、議論としてはそういう意見は必ず出てきます。それが作れるんだったら作ろうという。だけどそういう物は、1個や2個持っていても駄目なんで、どうしたって程度の数を揃えなければということを考えると、大変な費用が要ることになります。
 そういう意味では、一時期、核武装は安上がりだ、という議論があったんです。たくさんの兵員を要さないから安上がりなんだ、というのですが、核兵器のメンテナンス、管理、原子炉の問題を考えると、実は非常に高くつくし、いつ終わるか分からない危険なものを抱え込んじゃうわけです。ですからその辺りは、核を兵器として礼賛する人たちは居るんですが、そうじゃないということがだんだん見えてきた、ということだと思います。

司会;山田先生、ありがとうございました。(大きな拍手)


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