映画人九条の会Mail No.56

2014.07.14発行
映画人九条の会事務局

目次

憲法破壊の暴挙に抗議し、 「戦争する国づくりは許さない」の声を全国に!!

 「戦争する国」づくりに向かって暴走する安倍政権は7月1日、圧倒的多数の国民の反対の声を無視して、ついに集団的自衛権行使を容認することを閣議決定しました。これは立憲主義破壊の暴挙であり、憲法9条を根底から破壊するものです。
 安倍首相は、この期に及んで「憲法解釈の基本的な考え方は変わらない」「明確な歯止めがある」「日本が戦争に巻き込まれることは断じてない」など、嘘に嘘を重ねています。私たちはこれほどのウソツキ政治家を見たことがありません。これは全国民を欺き、愚弄しつつ、さらに「戦争する国」づくりを進めようとするものです。
 「戦争する国」づくりは、これですべてが決着したわけではありません。安倍政権はこの閣議決定を基に、秋の臨時国会で自衛隊法改正、周辺事態法改正などの立法措置を行い、年末の「日米防衛協力のための指針」の再改定によって第一次「戦争する国」づくりを完成させようとしています。そしてその先には、必ず明文改憲が待っています。
 今こそ、憲法破壊の集団的自衛権行使容認に抗議し、閣議決定の撤回を求め、「戦争する国づくりは許さない!」の声を全国に広げるときです。秋には全国の九条の会や護憲団体、民主勢力が総結集する国民的総行動も検討されています。闘いの帰趨(きすう)を決めるのは、国民の世論と運動です。映画人九条の会も、全力を挙げて「戦争する国」づくり反対の行動に立ちあがる決意です。

集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議し、 いまこそ主権者の声を全国の草の根から

 ★九条の会事務局は7月5日午後、東京・日本教育会館で緊急の九条の会交流・懇談会を開催し、5名の呼びかけ人による以下のアピールを発表しました。

 安倍晋三内閣は7月1日、多くの国民の反対の声を押し切って、集団的自衛権行使を容認する新たな憲法解釈の閣議決定を強行しました。憲法9条の下では集団的自衛権の行使は許されないとする政府の憲法解釈は、60年以上にわたって積み重ねられ、国会答弁などをつうじて国民に示されてきたものです。これを一内閣の考えでくつがえすことは、まさに立憲主義破壊の暴挙です。
 集団的自衛権による武力行使は限定的なものとの政府の説明とは反対に、閣議決定の内容は際限なく武力行使が拡大できるものとなっています。国連安全保障理事会の決定にもとづいておこなわれる軍事行動への参加も明示的には否定されてはいません。自衛隊は海外で武力行使しないという原則がくつがえされ、自衛隊員が海外で殺し殺されることになります。「戦争をしない、軍隊をもたない」と定め、国の安全と生命・自由・幸福追求の国民の権利は徹底した平和外交によって守るとした憲法9条を根底から破壊するものです。
 安倍内閣は今回の閣議決定を基礎に、自衛隊法、周辺事態法やPKO法など関連する法律の「改正」をおこない、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定によって日本を「戦争する 2 国」にしようとしています。
 今こそ、私たちは主権者として、集団的自衛権行使容認の閣議決定に対して、きっぱりと「NO」の意思を示し、「戦争する国づくりは許さない」との声を全国の草の根からあげるときです。全国のすべての「九条の会」が、その先頭にたって、創意と工夫をこらした多様な行動に立ちあがることを呼びかけます。

2014年7月5日 九条の会

集団的自衛権行使容認の閣議決定で、世論急変!

 集団的自衛権の行使容認へ憲法解釈を変更した7月1日の閣議決定を境に世論が急変し、安倍内閣の支持率が急落しています。
 共同通信の世論調査(7月1〜2日実施)では、支持47.8%(−4.3ポイント)、不支持40.6%(+7.6ポイント)。読売新聞(7月2〜3日実施)では支持48%(−9ポイント)、不支持40%(+9ポイント)で、「初めて5割を切ったことに、政府・与党はショックを受けている」と報じました。
 朝日新聞(7月4〜5日実施)では、支持44%(+1ポイント)、不支持33%(変わらず)でしたが、フジテレビ「新報道2001」(7月第1週)でも支持率は48.6%と5割を切り、JNNの調査(7月5〜6日実施)では、内閣支持率は10.9ポイントも下がって52.4%、不支持は10ポイント以上上がって46.4%となりました。
 また、集団的自衛権の行使容認については「反対」が半数以上を占めています。共同通信の調査では、「賛成」34.6%、「反対」54.4%。読売新聞では、「評価する」36%、「評価しない」51%。朝日新聞では、「よかった」30%、「よくなかった」50%となっています。
 公明党が最終的に行使容認へ転じたことについては、共同通信社の世論調査で、公明党支持層の49.0%が「納得できない」と答え、「納得できる」の42.4%を上回り、行使容認への反対は52.0%で、賛成の25.2%の倍以上に上っています。

集団的自衛権の行使容認を許さない 映画人九条の会アピール

 ★ 映画人九条の会は6月19日、以下のような「集団的自衛権の行使容認を許さない映画人九条の会アピール」を発表し、集団的自衛権の行使容認と「戦争する国」づくりを阻止するために、多くの映画人、映画関係者、映画愛好者の方々に賛同を訴えました。

 安倍政権は今、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しようと躍起になっています。
 集団的自衛権の行使とは、日本が攻撃されてもいないのに他国が行う戦争に日本も参戦し、自衛隊を戦闘地域に投入した上、武力を行使することです。
 これは、自民党内閣も含めた歴代内閣が、“憲法上できない”としてきたことです。
 それを安倍内閣は、閣議決定だけで憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認しようとしているのです。これはまさに立憲主義の否定であり、憲法9条の実質的破壊であり、この国を「戦争する国」に変えようとするものです。
 安倍政権は、集団的自衛権の発動は限定的としていますが、地理的な限定をすることもなく、他国に対する武力攻撃により国民の生命や権利が根底から覆される「おそれ」があると政府が判断した場合には武力行使は可能だとしています。「限定」とは名ばかりで、「無限定」そのものです。
 「戦争する国」を作ろうとすれば、当然のように基本的人権や言論表現・報道の自由が規制されます。その表れの一つが、昨年末の特定秘密保護法の制定強行です。そして本格的な「戦争する国」作りは、明文改憲に進まざるを得なくなります。私たちが愛する映画も陰に陽に規制され、作りにくくなるでしょう。
 この国を、戦前のような「戦争する国」にしてはなりません。
 私たち映画人九条の会は、安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に断固反対することを表明します。そして、映画人、映画愛好者の皆さまが集団的自衛権の行使容認に反対の声を上げてくださるよう、心から呼びかけるものです。

2014年6月19日 映画人九条の会

★7月10日現在の主な「映画人九条の会アピール」賛同者は次の通りです。(順不同)

高畑 勲(アニメーション映画監督)/降旗康男(映画監督)/小山内美江子(脚本家)/大澤 豊(映画監督)/神山征二郎(映画監督)/ジャン・ユンカーマン(記録映画作家)/須藤遙子(横浜市立大学客員准教授)/仲内節子(わらび映画サークル事務局長)/ 吉村英夫(映画評論家)/原田 浩(アニメーション演出)/仲築間卓蔵(元テレビプロデューサー)/田中重幸(角川映画労組委員長)/今井一雄(元MIC議長)/羽淵三良(映画評論家)/金丸研治(映演労連委員長)/大原穣子(方言指導)/長瀬未代子(日本シナリオ作家協会会員)/澤島 忠(映画監督)/上田耕一(俳優)/土橋 亨(映画監督)/池田太郎(脚本家)/中田新一(映画監督)/倍賞千恵子(俳優・歌手)/山田洋次(映画監督)/佐伯孚治(映画監督)/梯 俊明(映演労連書記長)/飯野高司(日活労組書記長)/高室晃三郎(日本映画・テレビ編集協会副理事長)/桂荘三郎(プロデューサー)/竹石研二(「深谷シネマ」館長)/岡 泰叡(映画監督)/大山陽子(ヘアメイク)/ 小林正夫(プロデュ-サ-)/杉原 憂(俳優)/日野繭子(アーティスト)/村岡伸一郎(映画プロデューサー)/吉村次郎(元東映動画撮影監督)/さのてつろう(映画撮影監督)/くまがいマキ(劇作家、映画配給)/小北裕子(メイクアップアーティスト) /他

★映画人九条の会は今後も「映画人九条の会アピール」賛同者を募ります。「戦争する国」づくりを許さず、言論表現・報道の自由を守るために、集団的自衛権の行使容認を許さないために、ぜひ多くの映画人、映画関係者、映画愛好者の方々のご賛同をお願いいたします。

アピール賛同はこちらから

【お薦め映画紹介】

この映画を観て、なぜ「南京事件」が起きたか考えてみませんか

「ジョン・ラーベ」
〜南京のシンドラー〜


羽 渕 三 良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 5月17日(土)、江戸東京博物館ホールにおいて表題の映画が、作られてから6年たってやっと日本で公開された。この映画は、今から77年前の1937年12月の「南京事件」を描いた映画である。「南京事件」を描いた映画はいくつもあるが、この作品はドイツのシーメンス社南京支社長のジョン・ラーベ(ウルリッヒ・トゥクール)の日記にもとづいて映画化されている。
 当時の中華民国の首都の南京で、日本軍が迫りくる前に、南京城内に「南京国際安全区委員会」を設立。安全地帯を作り、アメリカ人をはじめ貧しい南京市民を守ったジョン・ラーベの活躍ぶりを主軸にしながら描かれている。
 ジョン・ラーベはナチス党員でありながら、国際感覚を持った博愛主義者であったと言われている。20万人の市民を救った。25ヶ所の難民キャンプ、医療の提供、無料食堂の開設など、活動は多方面にわたっている。
 この映画の製作にあたった国は、ドイツ、フランス、中国の3カ国。日本人の俳優も香川照之(朝香宮鳩彦親王)、井浦新(小瀬少佐──この人物だけは映画製作上の創造的人物)。公開当日、井浦氏は舞台あいさつをした。さらに柄本明(松井石根大将)、杉本哲太(陸軍中将)らが出演している。
 中国ではこの映画は『ラーベ日記』という題名で公開され、ヒット作品となり、ドイツでは2009年度の「ドイツ映画賞」を受賞した。
 この作品はジョン・ラーベを主軸としながらも、日本軍の掃討作戦も描かれ、残酷な略奪、暴行、強姦、放火、殺人などの実相が再現されている。第1回公開の5月17日当日、江戸東京博物館の会場には、弁護士の人たちによる防衛措置もとられていた。
 「南京事件」から70周年となった2007年を前後して、世界各地でこの事件をテーマとする映画、『アイリス・チャン』(カナダ)、『チルドレン・オブ・ホァンシー』(オーストラリア・中国・ドイツ)などが製作されているが、日本においてはそれらは公開されていない。第57回サンセバスチャン国際映画祭(2009年)で最優秀作品賞を獲得した『南京!南京!』(中国)は、日本では2011年に公開されたが、しかし、日本はこうした映画の公開に不自由な国と言えるだろう。
 映画『ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー〜』の監督は、ドイツ人のフロリアン・ガレンベルガー。134分。


★映画『ジョン・ラーベ〜南京のシンドラー〜』は8月23日(土)、東京・文京シビック小ホールで上映されます。

〔第1回上映+シンポジウム〕 12:00開場 12:30上映 15:10シンポジウム ──1,800円

シンポジウムには永田浩三さん(元NHKプロデューサー・武蔵大学教授)、鈴木邦男さん(「一水会」顧問)、永田善嗣さん(ジョン・ラーベ研究家・大阪府立大学)がパネリストとして登壇されます。

〔第2回上映〕 16:30開場 17:00上映 1,500円(映画のみ)

前売券の購入は、インターネットまたは電話で予約し、セブン・イレブンでの発券となります。

・WEB予約は http://johnrabe.jp ・電話予約は 0120-240-540(カンフェティチケットセンター)

なお、全席自由席で並んだ順に入場。チケットは完売次第終了し、上映日前に完売した場合は当日券はありません。前売券には別途、発券手数料(200円、税抜き)がかかります。

・お問い合わせは、史実を守る映画祭 080-9691-5378 Eメール info@jijitu.com


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