映画人九条の会Mail No.23

2007.09.03発行
映画人九条の会事務局

目次

提案!4年目の飛躍をめざす改革案リニューアルプラン

 先の通常国会で改憲手続き法(国民投票法)が成立し、九条を守る闘いは新たな段階に入りましたが、7月の参議院選挙で自民党が大敗したため、改憲勢力も改憲の戦略の見直しを迫られています。

 2004年11月24日に結成された映画人九条の会ですが、今年の11月で満3年が経過し、4年目を迎えようとしています。8月9日に行われた映画人九条の会運営委員会は、映画人九条の会の4年目の飛躍をめざして、以下のような「改革案(リニューアルプラン)」を作成しました。

 会員の皆様のご検討をお願い申し上げます

【映画人九条の会の4年目の飛躍をめざす改革案リニューアルプラン

  1.  地域別、職場別、サークル別に映画人九条の会を作り(「映画人九条の会・○○」)、映画人九条の会の日常的な活動を全国に作っていく。
     映画人九条の会はその連絡センターとして機能していくほか、節目節目に今までのような大規模イベントを計画し、実行していく。
  2.  映画人九条の会は12名の「結成呼びかけ人」の呼びかけによって結成されたが、あえて「代表」は置かずに運営してきた。その「結成呼びかけ人」も、高村倉太郎さん(撮影監督協会名誉会長)、黒木和雄さん(映画監督)が亡くなられ、10名になった。
     4年目の飛躍を期すに当たって、10名の「結成呼びかけ人」の方々と、新たに数名の映画人の方に「映画人九条の会・代表委員」になってもらうよう依頼する。
  3. 改めて多くの映画人の方々に映画人九条の会への加入を訴え、映画人九条の会の活動をいっそう幅広いものにする。
  4. 映画人九条の会のホームページを一新し、情報を充実させる。
  5. 4年目の活動を保障するための大規模なカンパ活動を行う。
  6. これらの「改革案(リニューアルプラン)」を確認し、映画人九条の会の飛躍に向けて意思統一するため、12月8日(土)午後に、東京で「第2回映画人九条の会交流会」を開催する。
以上

今回参院選当選者と非改選議員をあわせて、改憲賛成派が減少、3分の2に届かず!

──さらに「九条の会」の活動を前進させよう──

 7月29日の参議院選挙に当たって、「映画人九条の会」運営委員会は、会の主旨にそって7月20日発行の「映画人九条の会mail/No.22」に、「参院選、九条を守る力の前進を!」の訴えを発表した。

 参院選の結果はどうなったか。朝日新聞(8月7日)が、同社と東京大学蒲島郁夫・谷口将紀料研究室が共同調査を行い、その調査内容は、今回参議院の当選者に、非改選議員を加えた参議院議員に対して、憲法の「改正か否か」を聞き、「改正すべきだ」「どちらかと言えば改正すべきだ」を合わせた改憲賛成派が53%になったこと。「今回の調査に回答しなかった31人全員を改憲賛成派と仮定した場合でも」改憲賛成者派は全体の60%で、「憲法改正の発議に必要な」3分の2を上回らない、というもの。

 04年の参議院選挙の後の改憲賛成派の勢力が71%、05年衆議院選挙(小泉郵政選挙)では86%を占めていたことを考えてみるとき、今回の参議院選挙での国民の意思の変化には大きなものがある。

 そして、8月10日に閉会した臨時国会では、憲法審査会は運営規程や委員構成が決まらず、始動先送りで、秋の臨時国会(9月10日から)に持ち越しとなった。

 他方、安倍首相の改憲への態度はどうか。選挙直後の記者会見において、国民の審判にいささかも耳を傾けることなく、「国民とともに今後も議論をしていく」と強弁。憲法改正の野望を貫こうとしている。

 秋の臨時国会で憲法審査会の設置を許さず、何よりも全国で6000を超える「九条の会」の活動を更に前進させ、映画の分野でも「映画人九条の会mail」本号の「提案」のように、地域別、職場別、サークル別の映画人九条の会を作り、さらに草の根で活動を広げ、いまこそ改憲派の巻き返しを許さず、改憲勢力を国民的に包囲し、孤立させることが求められているのではないか。

(映画人九条の会運営委員/羽渕三良)

 安倍改造内閣が8月27日に発足しました。「崖っぷち内閣」だとか、「派閥均衡内閣」だとか言われていますが、安部首相、麻生幹事長の「AAライン」は強烈な「靖国」派で、改憲への執念を持つ体制です。私たちは絶対に気を緩めるわけには行きません。

 また秋の臨時国会では、11月1日で期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長が最大の焦点となります。注目しましょう。

【お薦め映画紹介】
米体制を直撃する米英映画の力作 「シッコ」「大統領暗殺」など

山田 和夫 (映画人九条の会結成呼びかけ人/映画評論家)

 「華氏911」のマイケル・ムーア監督の新作長編ドキュメンタリー「シッコ Sicko」が、再び騒然の話題を巻き起こしている。今回の標的は米医療制度だ。

 日本でも医療をめぐって、国民の生命と健康を守るはずの国家の無責任が世論の避難を浴びている。日本映画も、高齢者問題や障害者福祉をしばしば取り上げているけれど、どうしても当事者の勇気を鼓舞する方向に行き勝ち。高齢者や障害者を苦しめる国の施策そのものを告発し、指弾する追求が薄い。ムーアの強さは、「ロジャー&ミー」(1989年)で、ゼネラル・モータースの反労働者的リストラを正面から痛撃、「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)では米高校のライフル乱射事件から、アメリカの暴力的、侵略的伝統にまでメスを入れる。この映画が米アカデミー賞をとった授賞式で、ムーアはイラク戦争をはじめたブッシュ大統領に「恥を知れ!」と叫び、次作「華氏911」(2004年)はその怒りそのままのイラク反戦、ブッシュ告発の強烈な追求となった。常に問題の本質的な責任者=国のシステムそのものに、挑戦して止まない。今度の「シッコ」もいささかのためらいもない。

 巨大な保険企業が支配するアメリカ。いま日本のテレビをまかり通る医療保険CMは、ほとんどが米保険資本がスポンサー。この「シッコ」は米国内の医療制度がどれほど国民の健康や生命を犠牲にして、米医療産業の利益を図っているか、これでもかこれでもかと実例をあげて攻撃する。日本のことは一言も言わないけれど、私たちが見れば、一つ一つ日本で思い当たることばかり。ムーアはカナダやフランス、そしてラストはキューバへ飛び、アメリカと違いすぎる福祉・医療への行き届いたシステムに感動し、「なぜアメリカで出来ない!」と見る人に迫る。まったく同じ言葉が日本でも通用する。

 そして深刻なテーマと取り組み、真正面から本質に挑みながら、映画の出来は滅法おもしろい。日本映画、とくに記録映画のありように教えられるところが大きい。一層の奮闘を望みたい。

 英国映画もおどろくほど大胆な米体制批判を出した。ガブリエル・レンジ監督の「大統領暗殺」。現ブッシュ大統領が2007年10月19日、シカゴで暗殺されるという超近未来の設定。しかも記録映像からブッシュのさまざまな瞬間をえらび、たくみに再現映像にはめ込み、まるで本物が「暗殺」され、チェイニー副大統領が大統領に就任、前(?)大統領の葬儀まで出すさまを見せる。悪のり、悪趣味と避難されても仕方ないほどの、あけすけな描き方だが、実は大真面目な力作。つまりブッシュ暗殺のような事態が起きたら米政府はどう対処するか?を見せる一種のシミュレーション映画。「9・11」のとき米全土が臨戦態勢に置かれた以上の厳戒状況が出現、非白人系住民の超法規的な逮捕訊問が広がる。映画はそれをニューススタイルで見せ、ラストは意外な真犯人まで登場させる。その結末は伏せるが、この映画の基本姿勢をしめくくるにふさわしい結末とだけ言っておこう。

 もう一本、スティーヴン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット主演のハリウッド映画、「さらばベルリン」をすすめたい。全編モノクロで、1945年7月、廃墟のベルリンを舞台に、あの「カサブランカ」や「第三の男」思わせる展開を見せるが、そこに今日的な批判の眼が光っている。「カサブランカ」や「第三の男」を思い出してくらべると、まことに興味深く、米支配層の覇権主義をつくハリウッドのしたたかさを改めて教えてくれた思いがする。

 今日、日本映画の反撃が注目されるだけに、米英映画人の健闘に負けない、一層の踏んばりを期待したい。

(2007.8.27)

10月13日、赤狩り60年記念の集い/お知らせ

「ハリウッド・自由へのたたかい」 講演/山田和夫 + 映画「地の塩」上映
 ハリウッドの「赤狩り」で追放された映画人たちが、ニューメキシコの鉱山労働者とともに自主製作した長編劇映画(カルロヴィヴァリ国際映画祭グランプリ)。1954年。
  • シナリオ=マイケル・ウィルソン (「戦場に架ける橋」「アラビアのロレンス」etc)
  • 監督=ハーバート・ビーバーマン
  • 主演=ラケル・レブェルタス
■日時
2007年10月13日(土)、18:30より
■場所
東京・文京区民センター2A
■当日会員
1200円
■主催
エイゼンシュテイン・シネクラブ(日本)
■共催
日本映画復興会議
■後援
映画人九条の会

全労連が9条を守る500万署名を開始!

 労働組合の全国組織の一つである全労連が、「憲法改悪に反対し、第9条を守り、平和のために生かすことを求める署名」を開始しました。目標は500万。

 九条を守る署名活動は各地、各分野で行われていますが、労働組合が始めた署名活動とはいえ全国的な規模での統一署名活動は初めてだと思います。私たち映画人九条の会も協力したいと思います。

 署名用紙を添付しますので、ぜひご活用ください(メール送信の方には、署名用紙を添付します)。枚数が必要ならご連絡下さい。コピーして使われても結構です。集まった署名簿は、映画人九条の会事務局にお送りください。よろしくお願い致します。

【情報コーナー】

「日本の時代劇文化を守ろう!」署名も
里見浩太郎さんや高橋英樹さん、山田洋次監督など80名近い著名映画人が呼びかけ人になって、「日本の時代劇文化を守ろう!」という署名運動が始まっています。映画人九条の会も協力したいと思います。集約先は、署名簿にある「時代劇復興委員会」か、映画人九条の会事務局へ。
11月24日に「九条の会第2回全国交流集会」
 11月24日に行われる「九条の会/第2回全国交流集会」(東京・日本教育会館/10:30〜16:30)の実行委員会では、参加は所属する「会」の代表として申し込むこと、分散会の発言には
  1. どんな日常活動をしているか
  2. 会の輪を広げるためにどのような努力をしているか
  3. 財政をどうしているか
を含めること、などが確認されました。

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