映画人九条の会Mail No.17

2006.10.13発行
映画人九条の会事務局

目次

安倍首相、5年以内の改憲を表明!

──「国民投票法案」と「教育基本法改悪」に反対を!──

 9月26日、「5年以内に憲法を改正する」ことを公然と掲げた安倍新政権が誕生しました。安倍新政権は、閣僚のメンバーを含めてウルトラ右翼の政権だと言われています。

 安倍新首相は、「美しい国・日本」を作るなどという嘘偽りのスローガンのもとに、今臨時国会で「国民投票法案」「教育基本法改悪」など数々の悪法を成立させようと企んでいます。

 「国民投票法案」は、前号でも指摘したように、国民投票とは名ばかりで、法案の中身は改憲を促進するための法案であり、改憲を金で買収するがごとき法案です。しかも与党案と民主党案は、90%が同じだと言われています。「国民投票法案」が成立すれば、国会の中に「憲法審査会」が設置され、「憲法改正」はレールに乗って一気に走り出すことになります。金持ち政党はマスコミを利用して改憲の必要性を大量宣伝するでしょう。巨額のお金がなければ反論できないテレビを使った意見広告を、民放連は受け入れる姿勢を示しています。憲法を守るためには、「国民投票法案=改憲促進法案」は絶対に成立させてはならない法案です。

 また「教育基本法改悪」は、次代を担う子どもたちに「愛国心」を植え付けようとするものですが、それはアメリカのために犠牲となることをいとわない国民づくりを狙ったものです。

 10月6日の新聞報道では、自民、公明両党の幹事長らが5日に会談し、臨時国会で教育基本法改悪法案、改憲手続き法案、防衛省昇格法案、テロ対策特措法延長法案、道州制特区法案の5法案を「最重要法案」と位置づけ、成立を目指すことで一致したと報道されています。

 事態は急を要してきました。私たち映画人九条の会も「国民投票法案」と「教育基本法改悪」に反対し、声を上げ、行動を起こしたいと思います。会員の皆さんも、ぜひ「国民投票法案」と「教育基本法改悪」の危険性を多くの方に訴え、反対の声を上げてください。

抗議FAX番号リスト
首相官邸FAX 03-3581-3883
自民党FAX 03-5511-8855
公明党FAX 03-3353-9746
民主党FAX 03-3595-0090

9・15「蟻の兵隊」上映会、超満員!

 9月15日の「映画人九条の会『蟻の兵隊』上映会は、始まる1時間も前から長蛇の列となり、定員を超える多数の方が参加されました。会場に入れず、ロビーのモニターで鑑賞する方や、やむなくお帰りになる方も多数いらっしゃいました。本当に申し訳ありませんでした。せっかくおいでになったにもかかわらず、会場に入れなかった方、鑑賞できなかった方には、心からお詫び申し上げます。

 映画「蟻の兵隊」は、戦後も中国山西省で1600名の日本兵が残留させられ、八路軍と内戦を戦って550名も戦死したという衝撃的な事実を私たちに突きつけ、残留兵士であった奥村和一さんらの国と軍の責任を追及する執念の姿を追う優れたドキュメンタリーです。奥村さんは、「売軍」の被害者であった証拠を中国各地に追い求めますが、自ら侵略軍の一員であったことに向き合わざるを得なくなります。奥村さんは、その事実から逃げません。映画が終わると、満員の会場から大きな拍手が沸き起こりました。

 映画上映後、監督の池谷薫さんと、歴史学者で明治大学教授の山田朗さんが舞台に上がり、熱のこもった対談が行われました。

 山田先生は、「現代の日本人には、日中戦争の記憶が非常に希薄になっている」 「日中戦争は始まるときも命令なくズルズルと始まったが、終わるときも大本営は中国戦線については最終的な停戦を命じないまま解散してしまった。当時の日本軍は、アメリカには負けたが中国に負けたとは思っていなかった」などと語りました。

 池谷監督は、「戦争は、参加した人にとっては死ぬまでついてまわるものだ」 「残留兵士のおじいさんたちは、今の状況が戦時下の状況にすごく似ていると言う。君が代・日の丸不起立で先生たちが処分されているが、戦争経験者は処分ということにすごく敏感で、戦時下と共通点を感じてしまうのだろう。彼らの危機意識を持った闘いは、次代の私たちのためだ」 「こうした裁判を、メディアは一切報道しなかった。私も知ったのは一審後だった」と語りました。また会場の中学生に「わあ、うれしいなあ」と語りかけ、「今は20年後30年後を決める大事な時だ。あの時の大人は何をしていたのか、と言われたくない」と述べました。

 映画「蟻の兵隊」は、東京・渋谷のイメージフォーラムでのロードショーが終わり、全国各地での公開が始まっています。
 全国の上映情報は「蟻の兵隊」公式HPをご覧いただくか、蓮ユニバースにお問い合わせください。TEL 03-5478-6077

安倍晋三ブレインに“赤狩り”礼賛者 ──改憲目ざす後継者に一層の警戒を!──

山田和夫 (映画評論家・映画人九条の会呼びかけ人)

 ハリウッド・スター、ジョージ・クルーニーは、初監督作品として自分も出演する「グッドナイト&グッドラック」を製作、今春日本でも公開された。映画の主人公は、1950年代米CBSテレビの人気キャスター、エド・マロー。彼は1950年2月に登場、そのヒステリックで暴力的な言論で反共旋風をまき起こしたジョセフ・R・マッカーシー上院議員と正面切って対決、ついにマッカーシーの政治的生命に終止符を打つ打撃をあたえた。

 実は“赤狩り”はマッカーシーがはじめたものではない。1947年10月、J・バーネル・トーマスを委員長とする米下院非米活動委員会(HUAC)聴聞会が、のちの大統領リチャード・ニクソン(当時下院議員)らの協力を得てハリウッドの“赤狩り”をはじめたことを出発点とする。その結果、1951〜55年の第二回聴聞会を経て約350人の映画人がブラックリストにのせられ、ハリウッドの職場を追われたが、マッカーシー上院議員の“赤狩り”は、その対象を無差別に広げ、“小泉劇場”ばりのハデなパフォーマンスと、口から出まかせの悪口雑言でメディアの注目をあつめ、“赤狩り”全体をさかのぼって「マッカーシズム」と呼ぶようになった。それは米ソ冷戦期の狂気の沙汰でもあったが、これに抵抗した人びとは、米合衆国憲法の修正第1条(言論・表現の自由)と修正第5条(黙秘権の保証)を掲げてHUACやマッカーシーと対決、その良心と信念のたたかいは、いまもアメリカで幅広い尊敬をあつめている。

 ところが日本の有名な右派ジャーナリズム『諸君!』(文藝春秋)2006年5月号を見て驚いた。「マッカーシーは正しかった」と題する文章が出ていた。筆者は京都大学の中西輝政教授。彼によると最近アメリカで公開された旧ソ連情報機関の暗号通信解読文書によると、米各分野の文化・知識人の間にソ連スパイ網が広く浸透していて、もしマッカーシーが摘発しなかったら、アメリカはどうなったかわからない、とまでマッカーシーの“赤狩り”を賞賛している。そして「この新事実にほおかぶりして、旧来通りマッカーシーを悪として描く映画「グッドナイト&グッドラック」が公開されようとしているのは笑止千万である」とまで言い切る。

 つまり中西教授は国家をスパイから守るためには“赤狩り”こそ必要不可欠だとまで主張する。ところが小泉政権の後継者として安倍晋三・官房長官(当時)が最有力視されてから「安倍晋三研究」がメディアをにぎわすようになり、8月29日付朝日新聞朝刊には、「国家観・歴史観に関する安倍氏の人脈」としてこの中西輝政京大教授の名が麗々しく並んだ。侵略戦争肯定史観の八木秀次・高崎経済大学教授(新しい歴史教科書をつくる会)らとともにである。

 安倍新首相は新政権の構想として「憲法改正」を大々的にぶちあげ、私たちの警戒感をかき立てているが、そのブレインとしてマッカーシズム=赤狩り礼賛の中西教授らが公然と名を出す事態となった。私たちはハリウッド・スター、クルーニーが自作の映画で赤狩りの再現を警告、信念と良心の抵抗を呼びかけたとき、それは決してアメリカだけのことではない、まさに日本のことであると痛感せざるを得ないのである。

ドキュメンタリー「もうひとつの日本を!」が完成!

 全労連「もうひとつの日本」闘争本部は、自公政権の「構造改革」と「小さな政府」を真正面か批判したドキュメンタリー映画「もうひとつの日本を!」を制作し、9月28日に完成プレス試写会を行いました。

 このドキュメンタリー映画「もうひとつの日本を!」は、映演労連が企画協力し、構成を映画人九条の会の事務局長でもある高橋邦夫(映演労連委員長)さんが担い、映画人九条の会の会員でもある田口仁(東映監督)さんが監督としてメガホンを取って作られたものです。

 映画に登場した発言者は、安斎育郎さん(立命館大学国際平和ミュージアム館長)、石堂佐和さん(首都圏青年ユニオン組合員)、伊波洋一さん(沖縄県・宜野湾市長)、大谷昭宏さん(ジャーナリスト)、大西照雄さん(ヘリ基地反対協代表委員・名護平和委員会会長)、尾木直樹さん(教育評論家・法政大学教授)、紺谷典子さん(エコノミスト)、品川正治さん(経済同友会終身幹事)、住江憲勇さん(全国保険医団体連合会会長)、高橋彦芳さん(長野県・栄村村長)、田中千恵子さん(日本医労連委員長)、二宮厚美さん(神戸大学教授)、坂内三夫さん(全労連議長)、藤崎光子さん(JR福知山線事故被災者の遺族)、山田朗さん(明治大学教授)の15名に及んでいます。

 品川正治さんは「一番大事なものは市場はやれません」「アメリカは戦争している国なんです」と語り、山田朗さんは「構造改革の行きつくところは、アメリカ型の格差社会です」と告発し、大谷昭宏さんは「間違いなく徴兵制ですよ」「格差社会も憲法9条も小さな政府も、みんな連動している」と語っています。

 26時間分に達したビデオテープは1ヶ月かけて編集され、「構造改革」批判という難しい内容がテンポよく解明され、安倍新首相も「継続・加速する」と言っている「構造改革」の行きつく先が格差社会で、それが憲法九条改悪に繋がっていることが、多彩な発言者の言葉で明らかになり、説得力を持ちました。

 映画人九条の会の呼びかけ人の一人である大澤豊監督は、「まさに時を得た作品である。構造改革の名のもとに、小泉政権がいかに国民を苦しめてきたか。自民党ならぬ日本をブッ壊してきた五年余り、自公政府の無責任極まりない悪政を、政治・経済・教育・医療・米軍基地再編等々、あらゆる角度から検証する。その多彩な発言者の顔ぶれもさることながら、見終わって深い憤りを感じると同時に、ポスト小泉(安倍)に無謀な攻撃路線を踏襲させてはならぬと強く思う。『もうひとつの日本を!』つくるために、必見の作品である」とのコメントを寄せています。

 完成試写会に出席された品川正治さんも「小泉内閣はどしゃぶりの雨だったが、安倍内閣はそのうえに風が吹いて嵐になる」と、改憲に突き進む安倍政権の危険性を指摘しつつ、「財界人の良心としてドキュメンタリーに出演した」 「このドキュメンタリー映画を一人でも多くの人に見てもらうことが大事だ」と語りました。

 ナレーターは「ちびまる子ちゃん」の友蔵じいさんの声でお馴染みの青野武さん、音楽はカシオペア・向井実さんのオリジナル。映画人九条の会の皆さんにもぜひ見てもらいたいドキュメンタリー映画です。

 上映時間は44分。DVDに収録され、送料含めて1000円で頒布しています。お申し込みは、全労連「もうひとつの日本」闘争本部まで。低画質版は全労連のHPで見られます。

全労連「もうひとつの日本」闘争本部
〒113-8462 東京都文京区湯島2-4-4全労連会館4F
TEL 03-5842-9339 FAX 03-5842-5620
ホームページ / E-mail: mail@another-japan.jp

映画人九条の会が結成2周年記念として、発言集「九条の国の映画人」(仮題)発行を計画

 映画人九条の会運営委員会は、映画人九条の会結成2周年の事業として「九条の国の映画人」(仮題)と題する著名映画人の発言集を制作、発行することを検討しています。

 制作が正式に決定しましたら、映画人九条の会の皆さまのご協力をお願いいたします。

【情報】

「九条の会」が11月25日に九条の会第1回憲法セミナー
 九条の会は、11月25日(土)に「九条の会第1回憲法セミナー」を行う予定です。詳細が決まり次第、ご報告します。
「映画人九条の会・ふくおか」結成
 今年5月に、九州・福岡で「映画人九条の会・ふくおか」が結成されました。10月22日(日)には伊藤千尋さんをお招きし、映画と講演のイベントを行う予定です。
「映画人九条の会・ふくおか」主催 映画と講演イベント
日時/10月22日(日)14:00〜16:00
会場/福岡市美術館行動(大濠公園)
映画/ドキュメンタリー「魔法のランプのジニー」(16分)
講演/「映画から見えてくる日本国憲法──世界を駆ける特派員の映画ルポ」/講師=伊藤千尋
「トンマッコルへようこそ」がいよいよ10月28日からロードショー
 「映画人九条の会Mail No.15」で紹介した韓国映画「トンマッコルへようこそ」が、いよいよ10月28日(土)から全国でロードショー公開されます。
 この映画「トンマッコルへようこそ」は、朝鮮戦争時代、山奥の戦争を知らない村・トンマッコルに米軍と北朝鮮と韓国の3組の兵士が迷い込んだことから起こる奇跡と感動のドラマです。平和への熱い思いが込められた、この秋一番のお薦め映画です。本当に面白いですよ。
「さらば戦争!映画祭2006」
 今年も11月18日(土)に「さらば戦争!映画祭」が行われます(会場・発明会館ホール/10:00〜20:00)。上映作品は「蟻の兵隊」「アンゼラスの鐘」「Marines Go Home」「Dear Pyongyang」。前売券2000円、当日券2500円。
 お問い合わせは「さらば戦争!映画祭」実行委員会 TEL 03-5807-3101、info@eigasai-60.com まで。

映画人九条の会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301号
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