映画人九条の会Mail No.12

2006.02.24発行
映画人九条の会事務局

目次

来る3月8日に映画人九条の会学習会!「憲法と映画─映画が自由でなかったとき」

 改憲を推し進めている人たちは、現在の平和憲法を否定し、戦前の「大日本帝国憲法」にノスタルジーを感じているようですが、「大日本帝国憲法」下の戦前、戦中、映画人はどのような状況におかれていたのでしょうか。また、日本が中国大陸に侵略を進めていた昭和14年(1939年)10月には、「映画法」というものが施行されました。映画法のもとで映画は、映画人はどのような苦しみを味わわされたのでしょうか。

 このことを、私たち現代の映画人、映画ファンは思い起こさなければならないと思います。

 映画人九条の会は、映画評論家で、映画人九条の会呼びかけ人の一人でもある山田和夫さんを講師にお招きし、「映画と憲法」と題した学習会を計画しました。山田さんに、「映画が自由でなかったとき」のことをじっくりと語ってもらいます。どうぞご参加ください。

映画人九条の会学習会 「憲法と映画─映画が自由でなかったとき」
日時
2006年3月8日(水)18:45〜20:45
場所
東京・文京シビックセンター4F・シルバーホール
東京都文京区春日1-16-21 電話03-3812-7111
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
講師
山田和夫(映画評論家・映画人九条の会呼びかけ人)
参加費
700円 (どなたでも参加できます)

マスコミ関連九条の会連絡会が4月4日、九条を守る文学と音楽の夕べ

 新聞OB九条の会、出版OB九条の会、憲法九条にノーベル平和賞を(印刷)、民放九条の会、映画人九条の会、音楽・九条の会、マスコミ・文化九条の会所沢、マスコミ九条の会などで作る「マスコミ関連九条の会連絡会」は来る4月4日(火)、作家の辻井喬さんとピアノ演奏家の村上弦一郎さんを招き、「九条を守る文学と音楽の夕べ」を行います。ぜひご参加ください。

九条を守る文学と音楽の夕べ
日時
4月4日(火)18:00開場、18:30開演
場所
星陵会館
千代田区永田町2-16-2 電話03-3581-5650
講演
辻井 喬 「九条、そして思うこと」
ピアノ演奏
村上弦一郎 (ショパン「革命」、モーツァルト「トルコ行進曲」 他)
参加費
1000円
主催
マスコミ関連九条の会連絡会
連絡先/三枝(090-8580-6307)

1月25日「護憲派のための軍事講座」大盛況!

 1月25日に行った「護憲派のための軍事講座」(講師・山田朗)は、全水道会館大会議室がいっぱいになる大盛況でした(参加者140人)。

 山田先生は、「憲法を変えようという人は現状追認するだけだと言うが、その自衛隊の現状が歪んでおり、憲法のお墨付きを得た軍ができたら、軍を中心にした社会になってしまう」などと語り、会場からも多数の質問、発言がありました。現在、報告集を作成中です。

★12・13映画人九条の会一周年集会の報告集、完成!

 昨年12月13日に行った「映画人九条の会一周年集会──映画人、九条への想いを語る!」の報告集が完成しました。会員の方には本ニュースと一緒にその小冊子をお送りしますが、メールでニュースを受け取っている方は、申し訳ありませんが映画人九条の会HPでご覧ください。どうしても小冊子が欲しい方は、お申し出ください。なお、会員外には1部300円で配布します(数に限りあり)。

韓国映画人はなぜ立ち上がったか?―民族文化としての映画を守るたたかい―

【寄稿】 山田和夫 (映画評論家・映画人九条の会呼びかけ人)

 いま韓国映画界が大きくわき立っている。去る1月26日、政府は「スクリーン・クォーター制」と呼ばれる「国産映画義務上映制度」の大幅縮小を決め、すべての映画館が年間146日は自国映画を上映する義務を負っていたのを、半分の73日に減らした。映画人は猛然とこの措置に反対して立ち上がったのである。

ハリウッドと対決して

 この制度は1966年、当時の軍事独裁政権による「映画振興法」で導入されたが、ハリウッド映画の大量流入を興行者が事実上容認、空文化し、韓国映画史上の7〜8割はアメリカ映画に独占された。1997年のキム・デジュン(金大中)大統領誕生で、民主化が一気に加速するなかで「映画振興法」が改正され、韓国映画の本格的振興に乗り出す。「スクリーン・クォーター制」もこの完全実施をめざす映画人、映画愛好者の監視団がつくられて全国の映画館を回った。この「監視団」は「スクリーン・クォーター文化連帯」委員会に発展、この制度の廃止または縮小を要求するハリウッドと米政府の圧力とたたかってきた。1999年6月、ソウルの中心街で自分の肖像写真に喪章をつけた有名な監督やスターたちが「スクリーン・クォーター」死守を掲げたデモを行ったのはその一例。

 以来、米側は繰り返しこの制度に攻撃をかけ、特にWTO(世界貿易機関)で、韓国との自由貿易協定(FTA)締結の条件として、新たに「制度」の撤廃か大幅縮小を要求してきた。1990年代末から韓国映画の躍進は目覚しく「シュリ」「JSA」「シルミド」「ブラザー・フッド」などのメガヒットが続き、市場での韓国映画比率が2004年6割を越えた。そのことも「制度」不要を唱える一連の論調を生み、他方FTAによる経済伸長を期待する韓国財界の意向も出てきた。その結果、映画人の強力な後押しに支えられて、頑強に「制度」死守を続けてきた韓国政府がついに後退したことになる。

立ち上がるスター、監督たち

 他方、映画人側はこの「制度」によって韓国映画の上映機会が大幅に増え、映画ファンの自国映画支持を大きく広げた実績を主張、「ハリウッドの巨大な資本力から民族文化としての韓国映画を守れ!」と「スクリーン・クォーター」死守に立ち上がった。2月4日、ソウル街頭に大スター、アン・ソンギが立った。「シルミド」や「眠る男」などで私たちにも親しい韓国の国民的俳優。彼は率先して「一人デモ」をはじめ、つぎつぎと映画俳優や監督が日替わりで街頭デモを続けた。カンヌ・グランプリをとった「オールド・ボーイ」の主役俳優チェ・ミンスクは、「一人デモ」に立つと同時にカンヌ受賞の際、政府からもらった勲章を突き返して強烈な抗議の意志をあらわした。イ・ビョンホン、チャン・ドンゴン、キム・ミョンジョン、カン・ヘジョンら、日本のファンに人気上昇中の韓流スターたち、「マラソン」のチョン・ユンチョル、「酔画仙」や「風の丘を越えて」の巨匠イム・クォンテクら監督たちも続いた。

 もう一つ大切なのは、韓国映画人の抗議行動について、日本のテレビなどのメディアが取り上げた際、「映画の公開を制限するのはおかしい」「文化が政府の庇護を受けてはいけない」「韓国映画は実力をつけたからもう保護の必要はないのでは?」のコメントが続出したこと。しかし、そこには大きな問題がある。映画を文化として考えるかどうかの基本姿勢である。

「民族文化」としての映画

 1993年、GATT(関税・貿易一般協定=WTOの前身)のウルグアイ・ラウンド(多国間交渉)で、米政府はハリウッド映画の「自由化」をヨーロッパ諸国に要求した。彼らは「スクリーン・クォーター」のような上映規制だけでなく、各国の映画に対する公的助成すべてを「保護貿易」と攻撃した。これに対してフランスのジャック・ラング文化大臣(当時)を先頭に「映画は民族の心に根ざした文化。他の貿易商品と同じではない」とヨーロッパ全体が一致してアメリカと対決、ついに映画を交渉外とする「文化的特例」を認めさせた。そして昨2005年10月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)第33回総会は「文化多様性条約」を圧倒的多数で可決した(反対は米、イスラエルだけ)。この条約はアメリカの「文化帝国主義」への防壁とするフランス、カナダの提唱による。条約は「文化的活動・財・サービスは、もっぱら商業的価値を持つものとして扱われてはならない」とし、各国は自国文化保護措置をとる「主権的権利」を認めた。

 韓国の「スクリーン・クォーター」はこうした国際的共通認識を基礎とした道義にかなう、大切な行動の一つ。日本は「文化多様性条約」に賛成していながら、「スクリーン・クォーター」は「WTOの自由貿易主義に反する」と反対している。要はこの「制度」が日本で実施できるかどうかの問題ではなく、映画を「民族文化」として対するかどうかだ。韓国映画人が私たちに突きつける重大な問題である。

(2006.2.20)

日本映画界の状況

【寄稿】 映演労連書記長 梯 俊明

 日本映画製作者連盟(映連)は1月31日に2005年の映画統計を発表しましたが、それによると05年の興行収入は1981億6千万円(前年比94.0%)、観客動員数は1億6045万人(前年比94.3%)と、前年を下回りました。映連ではマイナス要因を洋画大作の不振と位置づけながらも、スクリーン数の増加に観客動員が追いついていない点にも警鐘を鳴らしています。

 数字の特徴としては、洋画の落ち込み(前年比88.3%)に対し、邦画が前年103.4%と数字を伸ばしたことで、大作アニメ「ハウルの動く城(196億円)」を筆頭に興収10億円以上の邦画ヒット作は26本にも達し、邦画と洋画の比率は41:59と好転しています。

 洋画の敗因とされるハリウッド大作の不振については、本国アメリカでも前年95%の興収が予測されているほか、メジャーで組織されるUIP(ユニバーサル・パラマウント)は35カ国の拠点のうち15カ国を解散(日本は存続)するなど厳しさが目立ちました。

 そうした中、ハリウッド作品一辺倒だった洋画の流れにアジア映画が大きく食い込んでいます。一昨年に引き続く「韓流ブーム」は衰えをみせず、昨年も「僕の彼女を紹介します(20億円)」「四月の雪(27億円)」「私の頭の中の消しゴム(30億円)」などが並びました。

 数字を伸ばした邦画ですが、10億円以上のヒット作26本のうち東宝配給の邦画作品は「NANA(40億円)」「交渉人真下正義(42億円)」など19本と独走状態となりました。中でも「星になった少年」のように、公開当初苦戦が伝えられた作品でも23億円を叩き出しています。東宝の劇場シェアは14%程度ですが、年間興収は推定で525億と、国内シェアの26.5%を占めています。シネマコンプレックス・シアター(シネコン・複合映画館)の台頭でヒット作へ観客が集中しやすい傾向は、東宝マーケットの寡占化で、より鮮明にその性格を現し始めたと言えます。

 興行情勢の面では、シネコンが05年一年間で23サイト、204スクリーン開業し、既存館と併せ全国で2926スクリーンに達したことで、シネコンの占める割合は67%に上昇しました。06年の開業計画だけでも約30サイトが予定されており、今年中に3000スクリーンに突入する見込みです。

 そのシネコン内にも再編の動きがあり、AMCがユナイテッド・シネマを通じて住友商事に買収されるなど、外資主導で始まった国内のシネコンは、いまや外資はワーナー・マイカル(ワーナー50%出資)のみへと変貌しています。逆に国内資本の角川が中国へ、シネカノンが韓国へそれぞれ進出を果たしています。

 今後配給・興行の流れを変えると言われるデジタル・シネマでは、東宝・ワーナー・NTTなどが協力し、光ケーブルを使ってハリウッドからの直接配信実験を昨年末から開始しました。米国や中国のような巨大マーケットで拡がりを見せていたデジタル・シネマですが、これまで国内ではフィルム代が解消される反面、観客へのメリットが見えないなど劇場側の設備投資は進んでいませんでした。

 しかし、デジタル・シネマ標準規格(05年7月に米メジャー5社で設立するDCIが定義)とされる4K(従来200万画素→800万画素=HDTVの4倍の精細度)も登場した今、約50カ所(1.8%)に過ぎない国内のデジタルシネマ・シアターに転機が訪れようとしています。上映に必要なデジタル対応のシステムは、当初設備費として2000万円とも言われていました。しかし、2K対応システムであれば現在では500万円程度でも導入可能と言われており、4K規格がまとまった今後は、インフラの整備に伴いさらなる設備費の圧縮も予想されます。

【情報】

5月9日に、幻の名作「軍旗はためく下に」上映会!
 映画人九条の会は、幻の名作と言われている深作欣二監督の「軍旗葉はためく下に」の上映を行うことを決定しました。日時は、5月9日(火)18:45から、場所は東京・飯田橋の東京しごとセンター(旧シニアワーク東京)地下の講堂です(16mm上映)。ぜひご期待ください!
九条の会が6月10日に全国交流集会!
 九条の会が6月10日(土)、東京・日本青年館で全国交流集会を開きます。全国で4000を超す九条の会が参加するので、代表参加になりますが、全国各地の九条の会の様々な経験を吸収してこようと思います。なお、映画人九条の会もその運営委員会に加わりました。

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