映画人九条の会Mail No.81

2019.9.24発行
映画人九条の会事務局

目次

参院選、改憲勢力3分の2割れ安倍改憲に終止符を!

 7月21日に行われた参院選で、自民・公明・維新などの改憲勢力は3分の2議席を割り込みました。これは極めて重要な成果です。安倍首相は「連立与党で71議席。改選議席の過半数を大きく上回った」と勝利を宣言しましたが、実は自民党は改選議席を10も減らしているのです。
 改憲勢力を3分の2割れに追い込んだ原動力は、市民と立憲野党との共闘です。市民連合と立憲野党が交わした13項目の共通政策をベースに、全国32の1人区のすべてで野党統一候補を実現し、10選挙区で野党勢力が勝利したことは、安倍改憲に痛打を与える決定的な成果であり、未来への展望を拓くものでした。
 しかし安倍首相は、こうした結果を受けても9条改憲を諦めることなく、「改憲の議論を進めよという国民の声をいただいた」などと述べ、野党の分断を策し、憲法審査会の開催に固執し、9月の内閣改造では改憲推進にシフトするなど、性懲りもなく改憲策動を続けています。改憲をあきらめたら自らの存在意義がなくなる、とでも思っているのでしょうか。
 参院選で下された「改憲勢力3分の2割れ」という審判は、「安倍改憲NO!」という民意を示したものです。今後はこの民意を踏まえて、映画人九条の会としても安倍9条改憲に終止符を打つ闘いに全力で取り組みたいと思います。
 そして、来るべき総選挙に向けて「13項目の共通政策」をベースに市民と野党の共闘をさらに大きく発展させ、安倍政権を倒し、憲法が活きる新しい時代を作り上げましょう。

★参院選の結果を受けて九条の会が声明
参議院選挙後の新たな改憲情勢を迎えて

九条の会 2019.07.29

 参院選を経て、安倍改憲をめぐる情勢は新たな局面に入りました。2017年5月3日の改憲提言以来、自民党は衆参両院における改憲勢力3分の2という状況に乗じて改憲を強行しようとさまざまな策動を繰り返してきましたが、その後2年にわたり市民の運動とそれを背にした野党の頑張りによって改憲発議はおろか改憲案の憲法審査会への提示すらできませんでした。そして迎えた参院選において、改憲勢力は発議に必要な3分の2を維持することに失敗したのです。
 3分の2を阻止した直接の要因は、市民と野党の共闘が、「安倍政権による改憲」反対、安保法制廃止をはじめ13の共通政策を掲げて32の一人区全てで共闘し、奮闘したことです。また、安倍9条改憲NO! 全国市民アクション、九条の会が、3000万署名を掲げ戸別訪問や駅頭、大学門前でのスタンディングなど草の根からの運動を粘り強く続けることで、安倍改憲に反対する国民世論を形成・拡大する上で大きな役割を果たしたことも明らかです。
 しかし、安倍首相は任期中の改憲をあきらめていません。それどころか首相は、直後の記者会見において「(改憲論議については)少なくとも議論すべきだという国民の審判は下った」と述べて改憲発議に邁進する意欲を公言しています。これは、安倍首相一流のウソを本当のように言うもので、参院選の期間中もその後も、「安倍政権下での改憲」に反対の世論は多数を占め、改憲勢力が3分の2をとれなかったことこそが真実です。
 ところが、安倍首相は、自民党案にこだわらないと強調することで、野党の取り込みをはかり3分の2の回復を目指すなど、あらゆる形で改憲強行をはかろうとしています。
 安倍9条改憲を急がせる圧力も増大しています。アメリカは、イランとの核合意から一方的に離脱し挑発を繰り返した結果、中東地域での戦争の危険が高まっています。トランプ政権はイランとの軍事対決をはかるべく有志連合をよびかけ、日本に対しても参加の圧力を加えています。こうしたアメリカの戦争への武力による加担こそ、安倍政権が安保法制を強行した目的であり、そして安倍9条改憲のねらいにほかなりません。辺野古新基地建設への固執、常軌を逸したイージスアショア配備強行の動きも9条破壊の先取りです。
 6年半を越える安倍政治への不信とあきらめから、投票率が50%を割る事態が生まれています。この民主主義の危機を克服し再生するためにも、市民一人一人の草の根からの決起が求められています。参院選で3分の2を阻んだ市民の運動に確信をもち、安倍9条改憲NO! の3000万署名をさらに推進し、広範な人々と共同して草の根から、9条改憲の危険性を訴える宣伝と対話の活動を強めましょう。
 同時に、どんな口実であろうと自衛隊の有志連合への参加・自衛隊の海外派兵、さらなる軍事力の増強を許さない闘いを、安保法制の全面発動、実質的な9条破壊を許さない闘いとして取り組みましょう。

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★11・29映画人九条の会15周年の集い
今こそ「憲法の力」をつけよう!安倍改憲に終止符を打つために
講師は“憲法の伝道師”伊藤 真 弁護士(伊藤塾塾長・弁護士・日弁連憲法問題対策本部副本部長)

itobengoshi.png  7月の参院選で改憲勢力は3分の2を割り込みました。しかし改憲に異常な執念を燃やす安倍政権は改憲をあきらめず、野党の分断を狙うなどさまざまな改憲策動を繰り返しています。憲法の危機はまだ続いています。
 映画人九条の会15周年の集いは記念講演の講師として、伊藤塾塾長、日弁連憲法問題対策本部副本部長であり、“憲法の伝道師”として憲法の価値を実現すべく様々な活動を行っている伊藤真弁護士をお招きし、「今こそ『憲法の力』をつけよう!〜安倍改憲に終止符を打つために」を存分に語っていただきます。皆さま、ぜひご参加ください。



  ●日時/2019年11月29日(金)18:50〜20:30
  ●場所/東京・文京シビックセンター4階・シルバーホール 東京都文京区春日1-16-21
      地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分/都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
  ●資料代/700円
  ●主催/映画人九条の会
   〒113-0033東京都文京区本郷2−12−9 グランディールお茶の水301号
   電話 03-5689-3970 FAX 03-5689-9585 メール webmaster@kenpo-9.net


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米国のいいなりに、歯止めなく膨張する防衛費!

 財務省は9月5日、2020年度予算の概算要求を発表しました。一般会計の総額は、過去最高の約105兆円となっています。
 その中でとくに際立っているのが防衛費です。これも過去最大の5兆3223億円で、15年度より6年連続の過去最大更新です。日本の防衛費は歯止めなく膨張を続けているのです。
 中身を見てみると、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機のF35B戦闘機が発着艦できるように改修する経費31億円を計上し、併せてF35Bを6機取得するために846億円を盛り込んでいます。これは事実上の攻撃空母化で、専守防衛からの明らかな逸脱です。
 世論が圧倒的に反対している陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」についても、ミサイル垂直発射装置の取得など関連経費122億円を盛り込んでいます。
 さらに概算要求では、F35A戦闘機3機の追加取得費310億円、同機に搭載する長距離巡航ミサイル「JSM」を引き続き調達するための経費として102億円を求めており、新型空中給油機KC46Aを新たに4機導入する経費1121億円も要求しています。
 これらF35AやF35B戦闘機、KC46A空中給油機、「イージス・アショア」配備などは、トランプ米政権が大量購入を繰り返し迫っている米国製兵器です。
 米トランプ大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に追従し、このままアメリカの言いなりに歯止めのない軍拡を続けていけば、日本の防衛どころか、日本自身が東アジアの脅威になりかねません。今こそアメリカ追従の軍拡路線から抜け出すことが必要です。

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消費税増税に伴う「インボイス制度」が、映像労働者を襲う!

 10月予定の消費税増税。応能負担原則を逸脱した消費税自体が大問題ですが、さらに2023年に待ち構える恐るべき関連法、それが「インボイス制度」です。前年度売上1000万円に満たない商売は廃業するか、それが嫌なら90万円相当を余計に納税しろ、というもの。
 商品を販売した際には消費税が課されます。販売した業者は顧客が支払った売上納税額から仕入れた際の消費税を差し引くことができます。一方で、前年度売上が1000万円以下の事業者は消費税納税が免除(=免税事業者という)されています。
 2023年以降は、販売業者が仕入れに掛かる納税額を免除するためにはインボイスなる証明が必要となります。インボイスの交付には消費税納付が必要ですので、免税事業者はインボイスを発行できません。従って販売業者としてはインボイスを交付できない免税事業者から仕入れたくなくなるのは当然です。そうなると年商1000万円以下の商店は得意先から取引停止になるか、無理してでも消費税を払ってインボイス交付資格を得るしかありません。
 これと同じ図式が映画演劇業界にも及びます。年収1000万円以下の個人事業主(フリーランサー)です。低い報酬に据え置かれたフリーの映像制作スタッフやアニメーターにも同じことが起こり得るのです。もともと低所得層への負担を強いてきた消費税ですが、今回の増税は軽減税率とインボイスの両面で、より貧富の格差を増大させる不公平な仕組みが埋め込まれているのです。消費税そのものが憲法違反であり、憲法遵守の立場からも消費税に反対しましょう!

梯 俊明(映演労連書記長/映画人九条の会運営委員)
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【お薦め映画紹介】

『蜜蜂と遠雷』
──音楽とは何か、ピアニストとは何か。ユニークで楽しい見解を訴える──

羽渕三良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 直木賞と本屋大賞をW受賞した恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』は、文字から音が聴こえてくる、とまで言われたが、映画化された『蜜蜂と遠雷』も圧倒的な音楽描写いっぱいの映画である。監督は新鋭・石川慶。
 国際ピアノコンクールに出場する栄伝亜夜(松岡茉優)、マサル(森崎ウィン)、風間塵(鈴鹿史士)、高島明石(松坂桃李)の4人の若きピアニストの挑戦、才能、成長、考え方が縦横に描かれ、見ていて楽しく迫力があり、質が高い作品となっている。
 演奏会は二回ある。一回目は課題曲『春の修羅』をピアニストたちが自由闊達に弾く。4人の中でも私が強い印象を受けたのは、明石の「音楽は生活の中にある。生活の中で生きているものに勝てない。生活者の音楽をかかげて弾く」という言葉だ。明石は楽器店で働きながらピアノを弾き続けてきた。
 本選が始まる。音楽とは何か、ピアニストとは何か、本選に残った人々が掘り下げていく。「ピアニストは誰よりも自分が楽しむために弾き、聴衆も楽しませるために、愉快にさせるために弾く」。
 本選終わりに弾く栄伝亜夜は、将来を嘱望された天才少女だった。母親の死を期に表舞台から姿を消していたが、「音楽とは大自然である」「音楽とは観客を自由な喜びの世界へ運んでいくもの」と、今回のコンクールに再起をかける──。
 この作品は大変魅力がある、なかなか見られない映画だ。10月4日(金)より全国公開。


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【今後の主な行動予定】

●「高畑勲展」開催中
 映画人九条の会の代表委員でもあった高畑勲監督の「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」が10月6日まで東京近代美術館で開催されています。日常のリアリティーとアニメーションの新しい表現を求め続けた高畑監督の創作の過程が余すところなく展示され、見応えがあります。
 文庫版として7月に発売された高畑監督著「アニメーション、折にふれて」(岩波現代文庫)も、ぜひご一読ください。映画人九条の会での講演「戦争とアニメ映画」も収録されています。


●「対米従属の起源『1959年米機密文書』を読む」をぜひ
 安保条約改定前夜、親米国家日本を作るためにUSIS(アメリカ広報・文化交流局)ジャパンが行った「文化工作」の全貌を暴いた翻訳本「対米従属の起源『1959年米機密文書』を読む」(大月書店)が出版されました。谷川建司さん(早稲田大学客員教授・映画ジャーナリスト)と、映画人九条の会で「自衛隊協力映画」について講演されたこともある須藤遙子さんの翻訳によるものです。
 USISによる文化人や大学教員、マスコミ利用、反共的映画の制作などが詳細に記されています。


●10月15日(火)、ねりま九条の会15周年記念集会
 「国境を越えた平和の旋律(うた)と言葉」
        【昼の部】14時〜16時30分(開場13時30分)
    やぎりんトリオ・リベルタ×大前恵子 講談:神田香織 お話:伊藤千尋(国際ジャーナリスト)
        【夜の部】18時30分〜21時(開場18時)
         やぎりんトリオ・リベルタ×大前恵子 講談:神田香織 お話:高遠菜穂子(イラク人道支援ワーカー)
        ■会場:練馬文化センター・小ホール ■参加費:前売券1000円(当日券1200円)


●10月18日(金)、「教育と憲法 私たちの未来」 元文科省事務次官前川喜平講演会
        ■時間&場所:18:30〜東京芸術センター21階「天空劇場」(北千住駅西口徒歩10分)
        ■主催:千住九条の会/東京民医連東部東葛ブロック
        ■参加費:無料 ■連絡先:090-6953-7144(中田)


●10月19日(土)、安倍9条改憲NO!10・19国会議員会館前行動
        ■時間&場所:15:00〜衆議院第2議員会館前を中心
        ■主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会
        戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会


●10月26日(土)、損保9条の会・生保9条の会合同講演会
        ■時間:13:00開場、13:30開会〜16:30   ■場所:北とぴあ3Fつつじホール(王子駅より徒歩2分)
        ■参加協力費:1,000円                           ■主催:損保9条の会/生保9条の会
        【第一部】平和の歌声と朗読
        【第二部】講演「戦争化する世界と非戦の思想」
        講師:西谷修(東京外国語大名誉教授・立憲デモクラシ―の会呼びかけ人)


●11月3日(日)、安倍改憲発議に反対する全国統一行動・国会前大集会
        ■時間&場所:14:00〜15:30国会正門(詳細は未定)  ■主催:総がかり行動実行委員会


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