自民党改憲案は卑劣!
「自衛隊」を書き込む恐ろしさ
自民党は3月25日の党大会で、4項目の改憲条文案を確認しました。その中心は、9条改憲です。昨年5月に安倍首相が提起した「9条1項、2項を残して自衛隊を書き込む」という方針に従って「9条の2」を新設し、「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」という条文案を打ち出したのです。
安倍首相は「違憲論争に終止符を打つためだ」「憲法に自衛隊を明記しても現状は1ミリも変わらない」などと繰り返し弁明していますが、これは大嘘です。いくら9条2項を残しても、「前条の規定を妨げず」として自衛隊を憲法に明記すれば、戦力不保持を謳った9条2項は死文化し、その制約はなくなってしまいます。海外での無制限の武力行使を容認することになり、アメリカが起こす戦争に日本国民が巻き込まれる危険が一挙に高まります。
さらにこの自民党改憲案では、実力組織について、「必要最小限度」の文言すらも削っています。
そればかりではありません。自衛隊が憲法に裏打ちされれば、平和や人権、民主主義より軍事が優先される社会となり、福祉や社会保障費は削られて軍備がいっそう増強されるでしょう。自衛隊は「公の存在」「公共の存在」となり、自衛隊のための土地収用や、最悪は徴兵制も合憲と解釈される可能性さえ生じてきます。憲法に書かれてしまった自衛隊は、抑制が利かなくなってしまうのです。
また、「内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊」と定められてしまえば、自衛隊は首相直属の別格の組織となり、軍部が闊歩した戦前と同じ状況が復活しかねません。
「平和を守って活動している自衛隊を合憲にするためだ」「現状となにも変わらない」と言って9条に自衛隊を書き込み、しかもそれを「緊急事態への対処」「合区解消」「教育の充実」という耳ざわりの良い項目で9条改憲を包みこんで国民の支持をかすめ取ろうとする自民党改憲案は、卑劣そのものです。
憲法に自衛隊を書き込むことは、この国の根本を変え、この国を「戦争する国」に変えるための改憲なのです。憲法に自衛隊を書き込むことの恐ろしさを、私たちはしっかりと認識しなければなりません。
「緊急事態条項」の新設も危険です。緊急事態条項の本質は戒厳令であり、9条改憲に連動した基本的人権や私権の制限ですが、今回の自民党改憲案でも私権制限を否定していません。また、「大規模な災害」というのも、自然災害に限りません。
「合区解消」は、「法の下の平等」を犯す大改悪です。共同通信が4月25日に発表した「憲法に関する世論調査」では、賛成は33%に過ぎません。
「教育の充実」は、改憲の必要性がないものです。同じ共同通信の憲法世論調査では、「憲法改正の必要はない」が70%でした。
このような自民党改憲案を絶対に発議させてはなりません。自民党改憲案、9条改憲案に反対する国民の声をさらに大きくし、発議に持ち込めないだけの情勢を作りましょう。
「安倍改憲に反対」が61%の皮肉
モリカケ疑惑、虚偽答弁、公文書の改ざん・隠ぺい、セクハラ、シビリアンコントロールの不能などで崩壊寸前の安倍内閣ですが、安倍首相はそれでも9条改憲に執念を燃やしています。安倍首相にとっては、9条改憲に固執することこそが自分の存在意義であり、唯一の生命線のようです。
しかし、共同通信の憲法世論調査では「安倍首相の下での憲法改正」に61%が反対でした。安倍首相が続投すればするほど「改憲反対」が増え、退陣すれば「安倍改憲」は消えます。この皮肉は、安倍首相を悩ますでしょう。逆に、憲法を守ろうとする国民の側にとっては大きな励みと活力になります。
5.3憲法集会に6万人!
──改憲反対署名1350万筆突破
憲法記念日の5月3日、憲法を守る取り組みが全国各地で行われましたが、東京都江東区の有明防災公園で行われた「9条改憲NO!平和といのちと人権を!5.3憲法集会2018」では、昨年を超える6万人が参加し、「9条改憲NO!」「安倍政権退陣」をアピールしました。
また、「安倍9条改憲NO!全国統一署名(3000万署名)」の集約数は1350万筆を超えたことが報告されました。何としても3000万署名を集め切り、安倍9条改憲を葬り去りましょう。
3・28映画人九条の会学習集会「欠陥だらけの国民投票法」に大きな関心!
森友疑惑追及と安倍内閣の総辞職を求める国会前連続行動が行われていた3月28日、東京・文京シビックセンターで「3.28映画人九条の会学習集会/欠陥だらけの国民投票法」が開催され、約50名が参加しました。
講師の山口真美弁護士(前自由法曹団本部事務局長、常任幹事、改憲阻止対策本部事務局長)はまず、「憲法9条1項、2項をそのまま残しつつ自衛隊を明文で書き込む」という昨年5月3日の安倍首相のビデオメッセージから明文改憲をめぐる情勢が大きく動いたと語り、本丸の9条から正面突破で改憲をやることを安倍首相自身が宣言したと述べました。
その上で、そもそも国民投票とは何かということを明らかにし、国民投票の手続きの中で、国民の意思がきちんと正確に反映されるかどうかがとても大切になると語りました。
また国民投票までの道のりは実に長く、私たちは今、安倍改憲スケジュールの中の最初の部分に入るか入らないかの所にいる、と述べました。
そして、来年には統一地方選や天皇の退位と新天皇の即位、参院選があり、改憲には非常にタイトな政治日程であることを明らかにし、この日程をずらせばずらすほど安倍改憲は難しくなると語りました。
次に山口弁護士は、現在の国民投票法は9条改憲を有利にするためにアンフェアなルールとして安倍首相自身が作った「改憲手続法」であることを指摘し、改憲派には自由を与え、護憲派には規制を課すという重大な欠陥があると述べました。
欠陥の1は、最低投票率の定めがないこと、一番母数の少ない「有効投票総数」の過半数を採っていることによって少数の賛成で改憲されるおそれがあること。欠陥2は、国民の運動を規制するおそれがあること。そして最大の欠陥は、改憲派の宣伝が溢れる危険性があることだと語りました。
テレビ・ラジオを使った有料意見広告は宣伝効果が絶大ですが、禁止期間が投票日前のわずか2週間だけで、国民投票までの期間中(60日〜180日)、資金力のある改憲派が有料広告をガンガン流してしまうことが想定され、改憲派の有料意見広告がメディアを席巻すると、草の根からの運動とは大きな力の差が出てしまう、と声を強めました。
さらに山口弁護士は、欧米諸国ではメディアの有料意見広告は非常に規制されている実態があると述べ、イタリア、フランス、イギリス、スペインのテレビスポット禁止の具体例を示しました。
そして最後に、憲法9条は日本と世界の宝であると語るとともに、9条に自衛隊を明記することの危険性と、それで国民が失うものの大きさを語り、改憲を絶対に発議させない取り組みが大事だと結びました。
会場からは多くの質問と意見が出されましたが、いくつもの改憲案の「一括投票」について山口弁護士は、「さすがに『関連する事項ごと』と言っているので、改憲が4項目であれば、おそらく自衛隊もの、緊急事態条項もの、合区解消もの、教育ものごとの投票になるのではないでしょうか」と述べました。
この「欠陥だらけの国民投票法」講演録は、映画人九条の会HPに全文掲載されています。
「欠陥だらけの国民投票法」講演録
また、印刷した講演録パンフも完成しています。頒価 200円(+送料)です。ご希望の方は映画人九条の会事務局までご連絡ください。
高畑勲監督、逝去
日本を代表するアニメーション映画監督であり、映画人九条の会代表委員であった高畑勲(たかはた・いさお)さんが4月5日、肺がんのため逝去されました。82歳でした。
突然の訃報に驚くとともに、大きな悲しみにおそわれました。残念です。心から哀悼の意を表します。
なお、「高畑勲お別れの会」が5月15日(火)11時30分より、三鷹の森ジブリ美術館で執り行われます。
【お薦め映画紹介】
『トランプのアメリカ 希望と勇気を探す旅 』 映画『ザ・思いやり』シリーズで「思いやり予算」の驚愕の実態をユーモラスな視点で痛快に暴露した、日本に住むアメリカ人のリラン・バクレー監督が4月末に完成させた最新作です。
トランプ政権の誕生に衝撃を受けたバクレー監督は、移民排斥など分断の危機が強まる中で、アメリカ人を元気づけたいとコメディアンの松元ヒロさんを半ば強引に連れ出して、アメリカの首都・ワシントンD.C.に旅立ちます。
英語が片言のヒロさんは戸惑いながらも、カイド役のバクレー監督と通訳の中村みずきさんとともにさまざまな立場、人種の市民と交流しながら、ジェファーソン記念堂、アーリントン国立墓地、全米ライフル協会博物館、ベトナム戦争戦没者慰霊碑など、戦争とアメリカの歴史を刻んだ施設をめぐります。
「不法な人間は誰もいない」など心にしみる曲を歌ってトランプ大統領に抗する移民のミュージシャン・リロ・ゴンザレスさん(内戦の弾圧を逃れたエルサルバドル難民)、性的少数者の人権を擁護するグレゴリー・アンゼロさん(共和党LGBTの会会長)、息子を警官に殺されて裁判で争うビバリー・スミスさん(警察暴力による犠牲者の親の会)、アメリカの原爆投下を厳しく批判する反戦活動家サンフォード・ケルマンさん(平和のための退役軍人の会元会長)、アメリカの「言論の自由」の虚構を暴くネッファ・フリーマンさん(黒人市民運動家)らとの会話を重ねていくヒロさんは、戦争や差別、人権侵害と粘り強く闘う、知られざるアメリカの市民たちに心を打たれ勇気づけられます。
そして、ヒロさんとバクレー監督が黒人の活動家とともに「私には夢がある」と公民権運動のキング牧師が演説したリンカーン記念堂のその場所に立ち、希望と夢を語り合って連帯を深める場面は感動的です。
アメリカ人を笑いで励まそうと、ヒロさんは単独ライブに挑みます。同時に、憲法9条の素晴らしさもアピールしようと試みます。はたしてアメリカの観客の反応は?
監督/リラン・バクレー、撮影・編集/伊藤ニコラ、出演/松元ヒロ、2018年、90分。
上映などのお問い合わせは TEL : 090(4135)2563 メール : zaomoiyari@yahoo.co.jpまで。
『空飛ぶタイヤ』
人気テレビドラマ『半沢直樹』や『陸王』の原作者である池井戸潤氏の小説の初の映画化作品。巨大企業の不正に挑む熱い男たちの、逆転のドラマです。監督は本木克英さん。上映時間2時間。6月15日(金)から全国で一斉公開されます。
『コスタリカの奇跡』
5月23日(水)、ドキュメンタリー映画『コスタリカの奇跡』上映会
東京・なかのZERO小ホール(JR中野駅南口徒歩8分)
■第1回13:30〜 第2回16:00〜 第3回19:00〜 ■入場料:1000円(大学生以下500円)
■共催:中野革新懇、三多摩革新懇、東京革新懇