映画人九条の会Mail No.70

2017.6.15発行
映画人九条の会事務局

目次

憲法の最大危機!9条の死文化を狙う安倍改憲を阻止しよう!

 安倍首相は5月3日、日本会議系の改憲派集会にビデオメッセージを寄せ、「憲法9条1項、2項を残して、3項に自衛隊を明記する」「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」などという安倍改憲案を提案しました。また安倍首相は、同様の内容を5月3日の読売新聞に独占インタビューという形で発表しています。
 9条に3項を加えて自衛隊を明文化するという案は、もともと右翼団体の日本会議が提案していたものです。それを、憲法尊重擁護義務を負う安倍首相が受け入れて提起すること自体、明白な憲法違反であり、異常で異様な姿です。
 いくら9条の1項、2項を残しても、3項に自衛隊を明記すれば憲法9条は大きく変質してしまいます。集団的自衛権の行使容認と戦争法の強行によって9条2項には大穴が空きましたが、そこに自衛隊を書き加えて、海外で戦争し殺し殺される存在となった自衛隊を合憲化すれば、憲法9条自体が矛盾をはらみ、死文化して意義を失い、ついに「戦争する国」が完成することになります。
 しかも恐ろしいことに安倍首相はこの安倍改憲案を、マスコミを最大限利用して世論を誘導し、早期の実現をめざしていることです。安倍改憲案を独占インタビューした読売新聞は、すでに安倍首相の御用新聞になり下がっていることをカミングアウトしたようなものですが、安倍改憲案発表後のいくつかのマスメディアによる「世論調査」では、安倍改憲案賛成が過半数に達しています。自衛隊を容認する世論が9割近くもありますから、こうした結果になるのは目に見えていますが、政権の意向を忖度するマスメディアはこの「世論調査」結果を喧伝し、国民世論を誘導するかのような報道を続けるでしょう。
 首相が2020年施行という具体的改憲日程を示したことも異常です。2020年の東京オリンピックと、その前年の天皇の退位と代替わりなどで、マスコミはヒートアップするでしょう。それに乗じて「憲法を変えて新しい日本を」アピールしていく算段に違いありません。
 また安倍首相は、9条加憲とともに緊急事態条項や高等教育の無償化規程の新設をセットで提案していますが、これも危険な策謀です。国民投票が9条改憲一本にならないようにするためです。
 自民党はこの安倍改憲案を受けて、年内にも@9条3項に自衛隊の規定をおく、A高等教育の無償化、B非常事態規定追加、の3点で改憲案をまとめ、来年の通常国会に提出したいとしています。3点だけなら検討には時間がかからないからです。
 しかしこうした安倍改憲案は、安倍首相の焦りの表れです。安倍首相自身、国会答弁でこれまでの自民党改憲案では国会発議に必要な3分の2の賛成は得られず、国民投票でも過半数の賛成は得られない、と明言しています。野党共闘も進みだしており、このままでは改憲など到底不可能だと危機感を抱き、焦っているのでしょう。だからこそ裏技のような改憲策に出たのです。
 憲法の最大危機ですが、安倍改憲を阻止する決め手は、立憲野党と市民との共闘を実らせて総選挙や都議選で自民党・公明党を敗北に追い込み、安倍政権を打倒することです。そのために映画人九条の会としてもいっそう力を尽くしたいと思います。
皆さん、正念場です。平和憲法を守りぬくために頑張りましょう!

「日本国憲法施行70周年にあたって」

2017年4月27日 九条の会

 日本国憲法は今年、施行70年を迎えました。この70年、この憲法を「改正」しようとする攻撃が絶え間なくおこなわれてきたにもかかわらず、「再び戦争をしない」と決意した私たちは「9条守れ」の運動をねばり強く展開し、これをはねかえしてきました。
  しかしいま安倍政権は、アメリカに付き従った軍事同盟を背景に、「国益」、「安全」の口実のもと、集団的自衛権容認の閣議決定をおこなうとともに、秘密保護法制定、武器輸出三原則の撤廃、国家安全保障会議の設置、日米ガイドラインの締結、そして戦争法制定などを強行してきました。さらに通常国会冒頭の施政方針演説では「次なる70年に向かって」憲法「改正」を提案すると明言するなど、歴史逆行の暴走をエスカレートさせています。
  いま、アメリカではトランプ政権が誕生し、アジアでも大国主義的行動や軍事的挑発が繰り返され、20世紀以来の世界がめざしてきた戦争違法化の流れに逆行する軽視できない動きが強まっています。
  安倍政権の暴走は、こうした世界の逆流に便乗し、軍事力や恫喝が幅をきかす世界の中で、強国の一員としての座を占めたいという野望に基づいています。4月7日のトランプ政権によるシリア攻撃に対しても安倍首相はいち早く「米国政府の決意を支持する」ことを表明しています。こうした安倍政権の政治がアジアの緊張を高め、戦争と武力衝突の危険を拡大するものであることは明白です。
  こうした流れに対して、世界でも、武力や恫喝による解決に反対する市民の声が、当のアメリカも含めて噴出しています。9条を掲げる私たちの運動は、平和な世界の構築に向けて、その先頭に立って積極的な役割を果たすべき立場にあります。
  同時に、戦争法を廃止すること、南スーダンから自衛隊を即時撤退させること、沖縄辺野古、高江の基地建設を阻むこと、共謀罪法案の成立を許さないこと、何より明文改憲に「NO」をつきつけることは、日本国民を強権で統治して物言わぬ存在にしてしまおうとする安倍政権の企みを打破し、現状に危惧をもつ世界とりわけアジアの人々、国々に対して、9条をもつ日本の私たちに課せられた責任です。
  戦争法廃止の運動のなかでは、立憲主義擁護の一致点にもとづいてかつてない共同が実現しました。南スーダンからの自衛隊施設部隊の撤退決定もその運動の成果です。安倍政権の暴走にストップをかけるのはこの共同をさらに大きく、強固なものにしていく以外にありません。そして安倍政権を退陣においこむことです。
  13年前、九条の会の出発に際して発表した「アピール」の言葉を、いま、あらためて掲げます。「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」


共謀罪法案を強行採決!
安倍政権のおぞましさに慄然!

 暴走を続ける安倍政権は6月15日朝、委員会採決を省略して参院本会議にかけるという禁じ手で共謀罪法案を強行採決しました。これは、加計学園疑惑隠しのためでもあります。
 共謀罪法案は「テロ対策」を理由にしていましたが、それが真っ赤なウソであることは国会の審議などを通じて明白になりました。また、犯罪集団だけでなく一般市民も対象であることが明らかになりました。
例えば、共謀罪の対象犯罪には「組織的威力業務妨害罪」が含まれています。原発再稼働反対運動や環境破壊反対運動、公害反対運動、●▲▼建設反対運動などを行う団体は、目的達成のためにデモや抗議活動を行いますから捜査・監視対象になってしまいます。政治運動はもとより、国民の大半が何らかの形で参加している市民運動、住民運動、労働運動が捜査の対象になってしまうのです。安倍政権に異を唱える私たち映画人九条の会も当然、捜査・監視対象になるでしょう。
しかも共謀罪は、「内心」や計画、準備を処罰する法律ですから、捜査機関による日常的な盗聴や監視、情報収集、密告がなければ成り立たない法律です。治安維持法時代のあの暗い監視・密告社会がまたやってくるのです。
共謀罪は、まさに主権者・国民に牙をむく法律であり、それを強引に押し通した安倍政権は主権者・国民に牙をむくおぞましい政権です。慄然とします。絶対に許せません。長い闘いになりますが、安倍政権打倒と共謀罪廃止に向けて全力を挙げましょう。

国際社会からも強い批判!──安倍政権は世界の恥
 共謀罪法案については国連のプライバシー権に関する特別報告者ケナタッチ氏から、「プライバシー権や表現の自由が侵害される危険がある」という強い懸念が示されていました。アメリカ政府機関による大規模な個人情報収集を告発したスノーデン氏は、「共謀罪によって監視が日常的に行われる」と指摘しています。「国際ペン」のジェニファー会長も共謀罪に反対する声明を発表しました。
 またデービット・ケイ国連特別報告者は、特別秘密保護法などによって日本の報道が委縮しているとし、日本政府に秘密保護法の改正を勧告しました。
 安倍政権は世界の恥であり、日本は世界から民主国家として認められなくなっているのです。

国政を私物化する安倍首相!

 安部政権は、個人の内心を処罰対象とし、監視密告社会を招来する現代版治安維持法・共謀罪法案を、禁じ手を使ってまで無理やり成立させました。国民の声を無視した暴挙は断じて許されません。私たち国民が望んでいたのは共謀罪法案の廃案と、森友学園・加計学園疑惑の徹底究明です。
 森友学園への国有地売却に際しては8億円が値引きされて払い下げられ、加計学園・岡山理科大の獣医学部新設を巡っては、安倍政権による「国家戦略特区」指定によって、今治市による36億円の土地の無償譲渡、建設補助費96億円の支払いが決定されています。
 いずれの事例も、官邸、内閣府が、首相の意向を「忖度」し、省庁や関係者に働きかけて、「日本会議」など首相の極右人脈につらなる「お友達」に、えこひいきとしか言いようのない「規制緩和」で多大な便宜・利益が供与されたもので、国家権力の私物化以外の何物でもありません。
 そして「全体の奉仕者」(憲法15条)であるべき公務員が、「権力者の下僕」になることを強いられ、事態を憂慮した告発者に対しては一部メディアも加担した人権侵害が続いています。
 首相の国家権力の私物化を糾弾し、疑惑の徹底究明を求める声をさらに強めていきましょう!


映画『ザ・思いやり』上映会、大成功!

映画人九条の会が4月11日に行ったドキュメンタリー映画『ザ・思いやり』上映会は、90名以上が参加して大成功しました。駐留アメリカ軍へのあまりの経費負担(思いやり予算)に驚き、呆れ、怒りがこみ上げてきました。
『ザ・思いやり2』も間もなく完成するようですが、映画人九条の会としてはまた上映会を計画したいと思いますので、ご期待ください。

【気になる映画&DVD紹介】

『ヒトラーへの285枚の葉書』
 ヒトラー映画がまた来ます。ドイツ人作家ハンス・ファ
ラダがゲシュタポの記録文書を基に書き上げた世界的ベストセラー「ベルリンに一人死す」が原作の『ヒトラーへの285枚の葉書』。ペンと葉書だけを武器にしてヒトラー政権に抵抗したごく平凡な労働者階級の夫婦の驚くべき物語です。
 監督・脚本はヴァンサン・ペレーズ。1時間43分。7月8日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町や新宿武蔵野館ほかで全国順次上映。

『海辺のリア』
 すでにテアトル新宿などで公開中ですが、『春との旅』『日本の悲劇』などを作ってき
た小林政広監督の新作『海辺のリア』も注目の一作です。
 かつての大スター桑畑兆吉(仲代達矢)は認知症を疑われ、老人ホームに入れられますが、脱走し海辺を彷徨います。兆吉に「リア王」の狂気が乗り移った時、人生最後の輝きが訪れます。
 共演は黒木華、原田美枝子、小林薫、阿部寛。1時間45分。



 68号で紹介した『スノーデン』が、7月5日にDVD発売されます。米国政府が膨大な個人情報を監視していたことを暴露したNSA職員エドワード・スノーデンの実話を映画化したものですが、共謀罪が強行採決された今、必見の映画です。
 同じく68号で紹介した韓国映画『弁護人』もDVD化されています。現代の治安維持法ともいうべき共謀罪が強行された今、これも必見の映画です。
 また、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の創立50周年映画として作られた『種まく人びと』もぜひ見てください。治安維持法によって弾圧された犠牲者のドキュメンタリー映画です。1枚1,000円でDVDが頒布されています。
 電話03-5842-6461。



『ザ・思いやりパート2〜希望と行動編』
平沢清一(映画人九条の会運営委員/映画ライター)

 年間7,916億円も日本の税金が使われている在日米軍駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」。ドキュメンタリー映画『ザ・思いやり』(リラン・バクレー監督)は、その危険なうえに信じられないほど贅沢な驚愕の実態を暴露しました。 全国的に自主上映会が取り組まれ、斬新でコミカルな切り口に広範な観客の関心と共感が集まりました。
 現在、第2弾の『ザ・思いやりパート2〜希望と行動編〜』の製作中です。「思いやり予算」は、さらに5年更新され133億円が増額されました。第一弾で明らかにされた「思いやり予算」のその後の実態や、在日米軍が日本や世界で何をやっているのか、北朝鮮問題などで緊張が煽られる状況の中で、本当に日本は米軍基地によって守られているのかなど、さらに「思いやり予算」の金額の大きさだけではない倫理的な問題の疑問に、ユーモアを交えながら鋭く切り込んでいきます。
 基地建設が暴力的に強行される沖縄の辺野古や高江の理不尽な状況、防音など500億円もの基地周辺対策費が使われている厚木基地のすさまじい騒音の中での暮らし、米軍犯罪者の賠償金を日本国民が支払っている不条理な問題など、米軍基地の脅威や被害に苦しめられながらも、それでも希望を持って行動している人々の姿に迫っていきます。
 さらに松元ヒロさんの爆笑痛快な風刺漫談、相模補給廠「戦車闘争」の反戦歌を熱唱する横井久美子さん、米軍機が墜落した沖縄国際大学の前泊博盛教授の詳細で分かりやすい「思いやり予算」の解説なども取材し、平和な社会への希望と展望を広げていきます。今年6月中の完成予定で、製作費の支援と上映会の企画を呼びかけています。
 「ザ・思いやり」事務局 090-4135-2563 メール zaomoiyari@hotmail.co.jp

【今後の主な行動予定】

●6月19日(月)、共謀罪廃止!安倍政権退陣!6.19総がかり行動

 ■時間:18:30〜
 ■場所:国会正門前
 ■主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

●6月20日(火)、九条の会事務局主催学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」

 ■時間:18:30〜21:00
 ■場所:韓国YMCA地下スペースY
 ■講演:浦田一郎さん(一橋大学名誉教授)、渡辺治さん(一橋大学名誉教授)
 ■参加費:1000円


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