映画人九条の会Mail No.67

2016.11.1発行
映画人九条の会事務局

目次

自衛隊を戦場へ送るな!

 10月24日安倍政権は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊部隊の派兵を、10月末から5カ月間延長し、2017年3月末までとすることを閣議決定しました。稲田防衛大臣は記者会見で、「PKO参加5原則は維持されている」とうそぶきました。
 PKO参加5原則とは、1:紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。2:当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が、当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊へのわが国の参加に同意していること。3:当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。4:上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することが出来ること。5:武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。──の5つですが、7月には首都ジュバを含む南スーダン全土で大統領派・副大統領派の激しい戦闘が発生して数百人が死亡、その後も各地で武力衝突が続き、国外逃亡中のマシャール前副大統領はNHKの取材に「和平合意は完全に崩壊した」と答えるなど、PKO参加5原則から逸脱した状況にあります。
 安倍政権は11月に派遣される部隊に憲法違反の「戦争法」に基づく「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」といった新任務を付与しようとしていますが、論外です。参加原則が完全に壊れた「殺し殺される」戦闘状態のただ中に自衛隊を送り込むことなど、許されるものでありません。このまま南スーダンへの自衛隊PKO派兵が執行されれば、日本は本当に「戦争する国」になってしまいます。直ちに撤退をこそ決断すべきです。その声を全国から上げていきましょう。

●九条の会事務局からの問題提起 (9月25日九条の会第6回全国交流討論集会)

九条の会事務局長 小 森 陽 一


 安倍政権は戦争法をいよいよ発動させようとしており、大きな正念場を迎えている。私は2015年安保闘争と呼んでいるが、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会が市民運動をしっかりと統一し、戦後の政治史の中で非常に大きな意味を持つ運動を展開した。そして総がかり行動実行委員会を中心に2015年安保闘争を担う運動体が1つになって「市民連合」が結成され、2016年参議院選挙で野党共闘が実現した。
 沖縄では野党統一候補となった伊波洋一さんが、圧倒的な勝利をおさめた。しかしその翌日から、高江で基地の建設の強行が再開され、機動隊を動員した暴力的な工事の再開が強行されている。
 今、戦争法に基づいて南スーダンに自衛隊を派遣して駆け付け警護など新しい任務につくことや、沖縄の基地建設の強行を許すか許さないか、これが安倍政権との大きな対決の軸になっている。衆参両院で3分の2議席を改憲勢力が取っている中で、あらためて九条の会の役割が重要な意味を持ってきている。
 日本の各界を代表する9氏が2004年6月10日にアピールを発表して九条の会を発足させてから12年以上が経った。これまでよびかけ人の体制を変えないでやってきたが、新しい、まさに国民総がかりの運動を展開していく上で、九条の会の運動をより強化、発展させていくために、よびかけ人を支え、九条の会の在り方などを論議するために、新たに12人の「世話人会」を発足させることにした。
 全国の草の根でどのような運動をこれから展開すべきか、本日の全国交流討論集会でしっかりと議論を進めていただきたい。
   (要約は映画人九条の会事務局)

【世話人会の構成メンバー】

愛敬浩二(名古屋大教授、憲法学)、浅倉むつ子(早稲田大教授、労働法)、池内了(名古屋大名誉教授、宇宙物理学)、池田香代子(ドイツ文学翻訳家)、伊藤千尋(元朝日新聞記者)、伊藤真(日弁連憲法問題委員会副委員長)、内橋克人(経済評論家)、清水雅彦(日本体育大教授、憲法学)、高遠菜穂子(ボランティア活動家)、高良鉄美(琉球大教授、憲法学)、田中優子(法政大総長、江戸文化研究家)、山内敏弘(一橋大名誉教授、憲法学)
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「沖縄県民の民意尊重と、基地の押し付け撤回を求める全国統一署名」に取り組もう!

 安倍政権と自公与党は、沖縄県民の民意を無視して米軍優先の政策を貫き、ただでさえ過重な負担にあえぐ沖縄に、さらに新たな基地負担を押し付けようとしています。7月の参議院選挙で勝利するや、沖縄・辺野古埋立てに反対する翁長知事を提訴し、あるいは北部のやんばるの森の中に大きなオスプレイ・パッド6基を建設するため、本土からも500人もの機動隊を投入し、連日、市民の抵抗を力で排除し続けています。また、自衛隊のヘリコプターまで使って工事用の重機や大型トラックを運ぶという異常事態になっています。
 この間、沖縄県民が、幾度もの県民大会や国政選挙、自治体選挙を通じ、また県議会や市町村議会で、米軍基地の県内移設やオスプレイの配備に反対し、普天間飛行場の閉鎖と速やかな返還、海兵隊の撤退、日米地位協定の抜本改定などを求める民意をはっきりと示してきたにもかかわらず、安倍政権はそれを踏みにじり続けています。この安倍政権の暴政をとめるには、ひとり沖縄県民だけではなく、日本全国の、また全世界の心ある人びとの意思表明と連帯の行動が必要です。
 今回、沖縄の「基地の県内移設に反対する県民会議」と、本土で辺野古埋立てに反対してきた「『止めよう!辺野古埋立て』国会包囲実行委員会」、そして戦争法反対で大きな運動を展開してきた「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の3団体が共同して、「沖縄県民の民意尊重と、基地の押し付け撤回を求める全国統一署名」を展開することになりました。
 多くのみなさんがこのあらたな署名運動に全力でとりくんでくださるよう、心から呼びかけます。
 署名用紙は、http://www.anti-war.info/shomei/からダウンロードできます。
 第1次集約は、2017年1月10日です。署名用紙の送り先は、〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-15 塚崎ビル3F 総がかり行動実行委員会。

安倍政権による恐るべき法案「共謀罪(テロ準備罪)」とは

 「テロ等組織犯罪準備罪」と名前を変えて過去3度も廃案となった、あの「共謀罪」がまたも浮上して来ました。共謀罪とは、複数の人が犯罪を行うことを語り合って合意(共謀)しただけで罪に問えるというもの。
 安倍政権は国連の国際組織犯罪防止条約批准のために共謀罪が不可欠だと強弁していますが、国連は決して共謀罪の新設を義務付けている訳ではありません。むしろ、現在の国内法でも既に国連がテロ対策として求めている措置はほぼすべて取られているのが実情です。
 今臨時国会では総選挙を視野に世論の反発を懸念して法案提出が見送られていますが、安倍政権の狙いは来年の通常国会での成立です。
 秘密保護法と今回の共謀罪が合わされば、メールやIP電話のやり取りが傍受されるなど、内心の自由も言論の自由も著しく制限されることになり、国家権力に狙われた一般市民は実行すらしていない犯罪で次々と取り調べの対象になりかねません。
 今年公開された映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』は米国CIAの暗部を暴いた作品ですが、私たちの住む日本でも通信傍受は技術的には可能でしょう。国家権力にその法的根拠を与えるのが、正にこの共謀罪だと言えるでしょう。

【お薦め映画紹介】



台湾ドキュメンタリー映画

『湾生回家(わんせいかいか)』

戦後70年、日本と台湾との原点を見る。戦争に翻弄された「湾生(わんせい)」の人たち
羽 渕 三 良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 太平洋戦争の日本の敗戦によって、中国東北地方(旧満州)や朝鮮半島、台湾などの植民地にいた日本人は、内地(本土)に引き揚げてきた。その数は軍人、軍属、民間人などおよそ660万人と推定されている。
 そのうち、中国大陸からの引揚者は、中国残留孤児のこともあって一般的に良く知られているが、台湾からの引揚者のことについてはあまり知られていない。この映画は、日本が台湾を統治した原点をさぐるドキュメンタリーである。
 日本が台湾を植民地としたのは、1895年の下関条約から1945年までの50年間で、日本の他の植民地より長期にわたった。当時、日本から台湾へ公務員、企業の駐在員、農業従事者らが海を渡り、日本の敗戦によっておよそ50万人が日本へ帰還した。50万人のうちのおよそ20万人は台湾で生まれ、台湾で育ち、台湾で一生涯を送るはずの人たちであった。
 敗戦によって故郷(台湾)から引き裂かれ、未知の国・日本へ強制送還されたが、日本にいても心はいつも台湾にある。映画はそういう人たちの存在を紹介し、「湾生」と呼んでいる。
 そしてこの映画は、「湾生」の人たちの複雑な心境をも聞き出し、紹介している。
 中村信子さん(85歳)は、日本に戻った後、台湾が日本の植民地であったこと、そこでは差別や不平等が横行していたことに気づく。
 松本洽盛さん(78歳)は、自らの土に還る所は故郷の台湾だ、と心に決めている。
 ドキュメンタリーで語る「湾生」人たちの言葉からは、台湾への熱い思いや絆、平和への願いが伝わってくる。戦争はいつも人間を翻弄させると、強く訴えている。
 この『湾生回家』は、台湾ではドキュメンタリー映画として異例の超ロングヒットを記録。公開劇場数は50劇場を超え、16万人以上の観客数を記録した。
 監督はホァン・ミンチェン(黄銘正)。111分。11月12日(土)から東京・岩波ホールでの公開を皮切りに全国上映される。

【情報コーナー】

●11月19日(土)、戦争法廃止!11.19国会議員会館前集会

 14:00〜15:30/予定

●12月10日(土)、沖縄大連帯集会

 13:30〜14:30日比谷野外音楽堂、終了後銀座デモ(詳細は未定)

●10月末、「九条の会第6回全国交流討論集会報告集」完成予定

 2016年9月25日に明治大学駿河台校舎リバティ・タワーで行われた「第6回全国交流討論集会報告集」が10月末に完成する予定です。FAXないしメールで、冊数とお名前・住所(送り先)を明記の上、九条の会までぜひお申し込みください。B5番76頁、1冊800円(メール便送料1冊82円)。
 主な内容/呼びかけ人あいさつ(澤地久枝)、問題提起(小森陽一)、世話人あいさつ・メッセージ(池内了、池田香代子、伊藤千尋、伊藤真、清水雅彦、山内敏弘、浅倉むつ子、高良鉄美)、分散会の報告(第1〜第7分散会の報告)。
 資料/九条の会のアピール、声明、自民党新憲法草案、自民党「日本国憲法改正草案」、九条の会アンケートから見た九条の会の現状と課題(2016.10.20九条の会事務局)など。


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