7月10日に投開票が行われた参議院議員選挙に際して、私たち映画人九条の会は「参院選は歴史的政治決戦」「改憲派を少数派に!」と訴えてきましたが、残念ながら改憲派の議席が3分の2を超える結果となりました。続く7月31日の東京都知事選でも、野党統一候補の鳥越俊太郎氏が、準備不足やスキャンダル報道などの影響もあって敗れました。
しかし参院選では、安保法制の廃止と立憲主義の回復、安倍政権打倒などで野党が共闘し、32の1人区すべてで野党統一候補が実現しました。これは「野党は共闘!」という声を上げ続けた市民の運動によるものであり、歴史上、初めてのことでした。そして11選挙区で野党候補が勝利したのです。
今後の野党共闘について一部野党の中でいろんな動きがあるようですが、野党共闘の効果は明瞭です。市民と野党の共闘は、歴史を動かす根源的な力であり、ここにしか希望はありません。
安倍政権による異常な野党共闘攻撃や、一部野党議員の野党共闘否定の動きに対しては、改めて私たち市民の側から「野党は共闘!」の声を上げ、運動を強めて、市民と野党との共闘をより強固なものにしなければならないと思います。
安倍政権は今、争点を隠し続けて得た議席で、いっそうの「戦争する国」づくりと改憲に突き進もうとしていますが、これは「だまし討ち」政治そのものです。
また安倍首相は、来年早々にも解散・総選挙を行い、そこでの「勝利」を功績にして総裁任期を延長し、自分の任期中になんとしても明文改憲を成し遂げようと企んでいる、と言われています。
こうした安倍政権の暴走と野望を打ち砕くのは、市民と野党の強固な共闘です。映画人九条の会の皆さん、安倍暴走政治に終止符を打つためにさらに声を上げ、行動を起こしましょう。
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超タカ派の稲田朋美が防衛大臣に就任した防衛庁は、集団的自衛権の行使容認と戦争法施行を受けて8月31日、2017年度軍事費の概算要求を決めました。総額は過去最大の5兆1685億円(16年度当初予算比2.3%増)です。安倍政権下で5年連続の軍拡予算を狙っています。
2017年度軍事費概算要求では、イージス艦に搭載するSM3ミサイルを改良した新型ミサイルの導入やイージス艦の増加、迎撃ミサイルのパトリオット改良型の導入、新型3000トン級潜水艦、空中空輸機KC46A、最新ステルス戦闘機F35六機、オスプレイ四機などを盛り込んでいます。これらは戦争法を具体化するもので、戦争法による新任務に対応できる新型兵器の配備です。
また、大学や企業に対して、軍事研究費を助成する「安全保障技術研究推進制度」に今年度18倍の110億円を計上しました。これは科学者や研究者、企業、大学を金でからめ捕ろうとするもので、許しがたい暴挙です。
11月には内戦状態が続く南スーダンに陸上自衛隊が派遣され、戦争法に基づく「駆けつけ警護」などの新任務によっていよいよ「殺し殺される」事態が生まれかねません。増大する軍事費とともに、暴走アベ政権は「戦争する国」づくりをどんどん進めようとしています。
『校庭に東風(こち)吹いて』
“子ども第一”を貫く教師の物語──今日の社会問題に向き合って
羽 渕 三 良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)
この映画は情緒的でなく、リアリズムで描いている点が見どころである。
今日、日本の教育は管理主義と競争主義で充満している。この映画のヒロインが転校してきた奈良県に近い京都府南部の山村の学校もまた、そうである。新任の三木知世先生(沢口靖子)の、自由で一人ひとりの子どもたちを大切にする教育のやり方も、校長に呼び出されて圧力を加えられている。
ところが、三木子先生はそれにもめげず、“子どもたちの成長を第一に”を貫いて教育活動をしていく。最初の三木先生の出勤日。自転車に乗って、登校する子どもたち一人ひとりに声をかける三木先生の姿は、『二十四の瞳』(木下恵介監督)の大石先生(高峰秀子)を思い出させる。
教室にインコ(小鳥)がまぎれ込んでくると、校長からは「教室で飼ってはいけません」と言われながら、三木先生のクラスはクラスでインコの世話をする。
子どもの貧国、生活保護の社会的問題にも踏み込んで教育にあたる
三木先生の受け持つクラスには、二人の問題児といわれる生徒がいる。一人は両親が離婚、母親一人で育てられ、母親はアルバイトで金をかせぎ、身体も弱く仕事を休む。その息子の順平は風呂にも入れず、教室では「臭い」とののしられ、クラスメイトと喧嘩になる。
もう一人は、「場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)」といって、家では話ができるが、社会不安のために学校など特定の場所では、全く話すことができなくなる、ミチルという女子生徒。
三木先生は家庭訪問をし、家庭の状況を具体的につかみ、対応する。順平には、母親と話し合って、三木先生が市役所に出かけ、生活保護を受けられるようにする。ミチルとは、「家庭ノート」を作り、学校と家庭の風通しをよくする。三木先生の教育活動を先生の家族も支える。
こうした三木先生の努力の結果、順平とミチルはどうなっていくか。この映画のラストが圧巻である。
主演の沢口靖子さんについては、9年ぶりの映画出演。TVドラマ『科捜研の女』シリーズで活躍中。映画『校庭に東風吹いて』は、沢口さんの真面目な人柄と熱演によって「名作」となった、と言ってもよいであろう。
112分。原作は柴垣文子(新日本出版社)。監督と企画・製作は、『アンダンテ〜稲の旋律〜』『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』の金田敬(さとし)さんと桂荘三郎さんのチームである。
9月17日(土)から9月30日(金)まで東中野ポレポレで上映される。そして全国上映される。
ドキュメンタリー映画 『不思議なクニの憲法』
松井久子監督「この映画は、憲法論議が政治によって進められるのでなく、主権者である私たち国民の間に広がることを願ってつくられたものです。
国のかたちをきめる憲法に、誰もが当たり前に関心を持ち、正しい知識を得、そして理解を深めるために、歴史的事実を重んじながら『意見』よりも日常に根ざした『人びとの声』に耳を傾けます。
怒りや憎しみから出発する議論は広がっていきません。対立よりも冷静な選択を──。
私たち一人ひとりが個として大切にされる自由な社会を守りたい。映画にメッセージがあるとすれば、その一点の『希い』のみです」──「不思議なクニの憲法」HPより
映画は、瀬戸内寂聴さん(作家)や孫崎享さん(元外交官・評論家)、長谷部恭男さん(憲法学者)ら20数名の方々が立憲主義や日本国憲法の歴史、国民主権、基本的人権の尊重、封建的家族制度からの解放、憲法の空文化、若者の政治参加などについて語ります。ナレーターは竹下景子さん。
東京・渋谷シネパトスでの上映は終了しましたが、順次全国で公開されます。また、自主上映会が全国で活発に開催されています。自主上映会の申し込みは(株)エッセン・コミュニケーションズ(FAX:03-3523-0212 メールアドレス:info@essen.co.jp)まで。
●9月19日(月・祝)、強行採決から1年!戦争法廃止!9.19国会正門前行動
15時30分〜17時、国会正門前
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
──映画人九条の会は憲政記念館付近にのぼり旗を立てる予定です。
●9月22日(木・休)、さようなら原発 さようなら戦争 9.22大集会
12時〜第1部(トーク&ライブ)、13時30分〜第2部(トーク)、15時〜デモ
場所:代々木公園B地区・けやき並木
主催:「さようなら原発」1000万署名市民の会
協力:「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲行動実行委員会、総がかり行動実行委員会
13:30開場、14:00開会〜16:30 会場:月島社会教育会館ホール(地下鉄月島駅徒歩5分)
資料代:500円
主催:日本ジャーナリスト会議、日本マスコミ文化情報労組会議、マスコミ九条の会
TEL・03-3291-6475&三枝090-8580-6307
●10月6日(木)、10.6総がかり行動シンポジウム
「戦争法廃止・憲法をいかそう──さらなる広がりを求めて」
日時:10月6日(木)18時30分〜 ※先着1300人まで
場所:北とぴあ・さくらホール(東京都北区・王子駅前)
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
映画人九条の会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301号 映演労連気付
TEL 03-5689-3970 FAX 03-5689-9585
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