映画人九条の会Mail No.64

2016.3.24発行
映画人九条の会事務局

目次

アベ首相、在任中改憲に執念
市民の力で改憲の流れを断ち切ろう!

 改憲に前のめりのアベ首相は、3月2日の参院予算委員会で、憲法改正について「私の在任中に成し遂げたいと考えている」と強い意欲を示しました。そして7月の参院選では、9条2項を含めた改憲を争点にする、と強弁しています。
 これは、集団的自衛権の限定的容認や戦争法だけではアメリカの期待に応えられない、という焦りと、自分の力でなんとしても悲願の改憲を成し遂げたい、という執念によるものでしょう。
 アベ首相の秘蔵っ子と言われる稲田朋美・自民党政調会長は、2月3日の衆院予算委員会で「現実にまったく合わなくなっている9条2項をこのままにしていくことこそが、立憲主義の空洞化だ」という、驚くべき主張を展開しました。「あべこべ立憲主義」とでもいうべき倒錯した主張です。
 アベ首相はこれを肯定して、「憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いをもっている状況をなくすべきだとの考えもある」と答弁しました。
 現実が憲法のルールに反しているから、ルールを変えようというのです。憲法のルールを無視して現実を変えてきたのは歴代の自民党政権であり、その最たる人物がアベ首相です。自分たちでルールを壊してきながら現実に合わなくなったから憲法を変えようなどとは、盗人猛々しいにもほどがあります。これでは、憲法の存在意義も立憲主義もあったものではありません。
 憲法順守義務を負っているはずの最高権力者のあまりの暴論に呆れ果てますが、これはひっくり返してみれば、憲法9条はまだ死んでいない、という証左でもあります。集団的自衛権の全面行使と、完全な戦争する国のためには、9条2項などの明文改憲が必要だということです。ならばここは、平和と民主主義を守る市民の力を最大限に発揮して、改憲の流れを断ち切るしかありません。

「野党は共闘」の新たな流れを強く、大きく!

2月19日、民主党、日本共産党、維新の党、社民党、生活の党の5野党は共同で「戦争法廃止法案」を国会に提出するとともに党首会談を開き、(1)安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。(2)安倍政権の打倒を目指す。(3)国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。(4)国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。──の4項目で合意しました。
 これは歴史的な野党共闘合意です。そしてそれを支えたのは昨年来の市民の運動でした。この合意を受けて、参院選1人区での統一候補擁立も各地で進んでいます。
 映画人九条の会の皆さま、映画人・映画関係者の皆さま、そして映画ファンの皆さま、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すために、この流れをさらに強く、大きくして、なんとしても参院選で(あるいはダブル選挙で)自民・公明と改憲補完勢力を大敗北させ、改憲の流れを断ち切りましょう!

■九条の会緊急記者会見アピール

安倍首相の九条明文改憲発言に抗議する

 安倍晋三首相は、2月3日と4日と5日の連日、衆議院予算委員会の審議において、戦力の 不保持を定めた憲法9条2項の改定に言及しました。その際に、「7割の憲法学者が自衛隊に憲 法違反の疑いをもっている状況をなくすべきだ」という逆立ちした我田引水の理屈や、「占領時 代につくられた憲法で、時代にそぐわない」という相も変わらぬ「押しつけ憲法」論などを理 由に挙げました。これらは、同首相が、憲法9条の意義を正面から否定する考えの持ち主であ ることを公言するものに他なりません。
  昨年9月、政府・与党は、多くの国民の反対の声を押し切って、日本国憲法がよって立つ立 憲主義をくつがえし、民主主義をかなぐり捨てて、9条の平和主義を破壊する戦争法(安保関 連法)案の採決を強行しました。この時は、「集団的自衛権の限定行使は合憲」、「現行憲法の範 囲内の法案」などと、従来の政府見解からも逸脱する答弁で逃げ回りました。ところが今度は、そうした解釈変更と法律制定による憲法破壊に加えて、明文改憲の主張を公然とするに至った のです。それは、有事における首相の権限強化や国民の権利制限のための「緊急事態条項」創 設の主張にも如実に現れています。
 私たち九条の会は、自らの憲法尊重擁護義務をまったくわきまえないこうした一連の安倍首 相の明文改憲発言に断固抗議します。2007年、9条改憲を公言した第1次安倍政権を退陣 に追い込んだ世論の高揚の再現をめざして、戦争法を廃止し、憲法9条を守りぬくこと、その ために、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。

2016 年2月8日 九条の会

「戦争法廃止を求める2000万統一署名」
スパートをかけよう!

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかけた「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」が今、全国各地で精力的に取り組まれています。
 3月15日には東京100駅・全国主要駅でいっせい街宣・署名行動が取り組まれ、映画人九条の会運営委員会も映演労連と共同で、ときおり強風が吹いて杉花粉が舞う中、東京都文京区・本郷三丁目駅付近で街宣・署名行動を展開しました。
 この2000万認署名活動は、戦争法廃止と立憲主義の回復の運動を支え、野党共闘を後押しする活動です。映画人九条の会も全力で取り組んでおり、すでに相当数の署名が事務局に寄せられていますが、まだまだ目標に足りません。
 目標は、5月3日の憲法集会までに全国で2000万筆を集めきることです。集めきれば、巨大な力となります。映画人九条の会の皆さま、署名活動にスパートをかけましょう。
 署名用紙は、ご連絡いただければ郵送します。署名用紙は「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」のサイト http://sogakari.com/?p=1095#a01 からもダウンロードできます。
 また集めた署名は、映画人九条の会事務局にお送りください。よろしくお願いいたします!

「緊急事態条項」=「国家緊急権」
国会緊急権の発動は憲法の死!

金 丸 研 治(映演労連委員長)

 東日本大震災・福島第一原発事故から5年という歳月が経過しました。今なお17万人強の方々が避難生活を余儀なくされています。原発事故収束は全く進まず、震災復興への道筋が見えない中、安倍政権は前のめりに明文改憲を押し通そうとする姿勢を強めています。
 安倍首相は年頭会見で、「参院選挙では『憲法改正』をしっかり訴え、国民的な議論を深めていきたい」と主張したのを皮切りに、「どの条項について改正すべきか新たな段階に入った」「緊急時の国家の役割を憲法に位置づけることは極めて大切な課題」などと述べ、3月2日の参院予算委員会では憲法改正を「在任中に成し遂げたい」と改憲時期にまで言及しました。
 首相の言動と軌を一にして、与党内からは、「緊急事態条項」を新設すれば“万能の備え”ができるかのような言説や、大半の国の憲法には緊急事態条項が設置されている、との主張が飛び交っています。彼らが大災害やテロへの不安を煽り設置の必要性を強調する「緊急事態条項」とはいかなるものでしょうか。
 自民党が2012年にまとめた「憲法改正草案」の第98条、第99条に緊急事態条項が規定されています。まず98条では「武力攻撃、内乱など社会秩序の混乱、大規模災害、その他法律で定める緊急事態に、首相は閣議にかけ緊急事態を宣言できる。」ことが規定され、99条では「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。」ほか、「内閣総理大臣は地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」とし、更に同条3項「何人も、国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。」、同条4項「 緊急事態の宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」と規定されています。
 つまり「緊急事態条項」は、緊急事態宣言の下、首相の権限を最大化させ、行政府(内閣)が立法権を簒奪(さんだつ)、国民に服務義務を強いて基本的人権を制限し、一定期間若しくは無期限に、憲法を停止状態に陥らせる、「国家緊急権」を定める条項にほかありません。
 想起されるのは1930年代のドイツです。当時最も先進的で民主的と賞されたワイマール憲法でしたが、一方で公共の秩序破壊など国家の危機に大統領が緊急令を出す権限(大統領緊急命令権)、即ち国家緊急権を認めていました。1933年、ヒトラー政権成立当初、ナチスの議席は40%に達せず他の保守政党との連立政権でしたが、ヒトラーは国会解散とともに大統領に「ドイツ民族民衆の保全のための緊急命令」を発令させ、選挙中も警察を使い政府批判を禁じ、国会議事堂放火事件に乗じて緊急命令を乱用し、共産党員を逮捕拘留、選挙後の国会で社会民主党を除くすべての出席政党の賛成で、行政府への立法権授権を認める「全権委任法」が可決されました。議会制民主主義は事実上停止し、4か月後ナチス以外のすべての政党活動は禁止されました。ナチスは民主主義のルールを犯すことなく、独裁政権を樹立しました。
 国会緊急権の発動は有事における権力集中と人権停止、即ち憲法の死を意味します。
 緊急事態条項はデモや集会の自由が軍事力で抑圧され、個人の尊厳が剥奪される「戒厳」にもつながる極めて危険な条項であり、全く不必要なものです。
 戦争法具体化の動きとともに、緊急事態条項新設を突破口にした明文改憲の動きを許さず、あらゆる憲法破壊を阻止するため全力で取り組みましょう。

【お薦めDVD紹介】

ドキュメンタリー映画 『一歩でも二歩でも』

平 沢 清 一(映画人九条の会運営委員/映画ライター)

 核兵器廃絶と原水禁世界大会の成功、戦争法反対を訴え、「一歩でも二歩でも、ともに歩きましょう!」と呼びかけ歩く──2015年の国民平和大行進を記録したドキュメンタリー映画『一歩でも二歩でも』のDVDの普及がすすめられています。
 戦後30年に平和行進の記録『歩く』(板谷紀之監督)をプロデュースした山口逸郎さんが、被爆70年に東京・夢の島から広島・平和公園まで91日間・1000キロを自ら通しで行進し、再び映画の製作に挑んだ作品です。
 監督・脚本の有原誠治さん(『うしろの正面だあれ』『原爆症認定集団訴訟の記録 おりづる』など)も、ほぼ全行程を山口さんに密着し、数々の感動的な出会いとドラマの「素晴らしき平和行進の世界」をカメラに記録しています。ナレーションを、カレーパンマンなどの声優で活躍する柳沢三千代さんが担当しています。
 まもなくスタートする平和行進を取り組んでいく上での絶好の「参考書」でもあります。

 (家庭・個人用DVD価格 \4000円、「一歩でも二歩でも」製作委員会 TEL 090−4135−2563)

【情報コーナー】

●3月26日(土)、原発のない未来へ!3.26全国大集会

 12:30〜メイン集会(代々木公園)、集会後14:40〜デモ行進(3コース)

●3月29日(火)、戦争法発動反対!戦争する国許さない3・29国会正門前大集会

 戦争法が施行されるこの日、総がかり行動実行委員会などの主催で戦争法発動に反対する国会正門前大集会が行われます。場所は、国会正門前・南庭・北庭前、並木通りなど。
第1部18:30〜19:30(主催:総がかり行動実行委員会)
第2部19:30〜   (主催:SEALDs+学者の会)

●4月19日(火)、戦争法廃止!安倍内閣退陣!4.19総がかり行動

 18:30〜衆議院第2議員会館〜参議院会館前(予定)

●5月3日(火)、明日を決めるのは私たち─平和といのちと人権を!5・3憲法集会

 憲法記念日の5月3日(火)、東京・有明防災公園で「明日を決めるのは私たち─平和といのちと人権を!5・3憲法集会」が行われます。映画人九条の会の皆さま、ここに大集合しましょう!
12:00〜コンサート、13:00〜集会、14:30〜パレード。会場;有明防災公園。

●5月28日(金)、第30回憲法フェスティバル

13:00開演〜17:30終演、会場:東京・銀座ブロッサム、参加券:前売1,800円/当日2,300円
主催:憲法フェスティバル実行委員会/TEL・FAX 03-5211-2022


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