映画人九条の会Mail No.63

2016.1.18発行
映画人九条の会事務局

目次

アベ暴走政権VS国民
戦争法廃止と立憲主義を 取り戻す新たな闘いを!

 映画人九条の会の皆さま、あけましておめでとうございます。

 大変くやしいことに暴走アベ政権は昨年9月19日未明、違憲の「戦争法案」を暴力的に強行「採決」しました。立憲主義を踏みにじり、民主主義を破壊する許しがたい暴挙でした。
 戦争法は3月末にも施行される見通しです。戦争法の施行を受けてアベ政権は、例えば自衛隊を南スーダンへの「駆けつけ警護」に就かせようと画策していますが、それが実施されれば自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性は一気に高まります。自衛隊員が多大な犠牲を被るリスクも、飛躍的に増大します。戦争法の成立によって、南シナ海でも、対IS軍事行動でも、アメリカに要請されて自衛隊が戦争行為を行う可能性を否定できなくなりました。この国が憎悪の連鎖に組み込まれ、「殺し、殺される」関係になる危険が現実になりつつあるのです。

 しかし一方で、「戦争法案」反対の運動の中で、これまでにない新しい、力強い市民の運動が生まれ、大きなうねりとなって全国に拡がりました。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を中心に、「シールズ」や「ママの会」「学者の会」など多くの団体・個人が重層的な共闘関係を作りあげ、昨年12月20日にはついに「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(略称;市民連合)が結成されました。また総がかり行動実行委員会を中心に29団体が共同して、昨年11月から「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」運動を開始しています。これらの運動は、必ずや政治の変革に結びついていくでしょう。

 今年7月には参議院議員選挙が行われますが、アベ首相は改憲を参院選の争点にすると明言しています。改憲のテーマは「緊急事態条項」の新設だそうですが、それは9条改憲の突破口であるだけでなく、それ自体がとてつもなく恐ろしいものです。緊急時に政府は法律と同じ効力を持つ政令を制定でき、地方自治体に指示ができ、基本的人権が制限できるようになります。まさに「戒厳令」であり、「独裁国家」そのものです。絶対に許すわけにはいきません。

 今この国の状況は、アベ暴走政権VS国民、という構図になっていると思います。暴走アベ政権を倒して戦争法廃止の連合政府が実現できるかどうかは、ひとえに国民の運動と世論にかかっています。間違っても参院選で自民・公明と、おおさか維新の会などの改憲勢力に3分の2以上の議席を与えてはなりません。
 私たち映画人九条の会は、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すための新たな闘いの一翼を担って、今年も意気高く活動する決意です。映画人九条の会の皆さま、映画人・映画関係者の皆さま、そして映画ファンの皆さま、戦争法廃止と立憲主義を取り戻すために、ともに頑張りましょう!

映画人九条の会運営委員一同

「戦争法廃止を求める2000万統一署名」
に全力で取り組もう!

 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が中心となり、29団体が共同で呼びかけた「戦争法廃止を求める2000万人統一署名」が全国各地で取り組まれています。
 この署名活動は、戦争法廃止と立憲主義回復の土台となる活動です。映画人九条の会も昨年11月の11周年の集いで、この署名活動に全力で取り組むことを確認しました。
 5月3日の憲法集会までに2000万筆を集めきることが目標です。2000万人もの署名を集めることは並大抵ではありませんが、集めきればそれは巨大な力となります。映画人九条の会の皆さま、最大限の努力と創意工夫でこの署名を集めましょう。
 本ニュースの郵送者には、署名簿を同封します。足りなければコピーしてお使いください。
 本ニュースをメールで受信されている方は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」のサイト http://sogakari.com/?p=1095#a01 から署名用紙をダウンロードしてください。
 また集めた署名は、映画人九条の会事務局にお送りください。よろしくお願いいたします。

★11・16映画人九条の会11周年の集い・報告

違憲の戦争法廃止へ― これからの憲法闘争の方向と展望 講師/小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授) 違憲の戦争法廃止へ― これからの憲法闘争の方向と展望 講師/小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授)



 戦争法が強行「成立」された情勢の中で、戦争法廃止に向けてどう闘えばよいのか、これからの憲法闘争はどういう方向をめざすべきなのか、闘いの展望はあるのか──
 2015年11月16日、東京・文京シビックセンターで行われた映画人九条の会11周年の集いでは、小澤隆一・慈恵医大教授に「これからの憲法闘争の方向と展望」を語ってもらいました。その講演概要をお伝えします。
 また、11周年の集いで採択された「映画人九条の会11周年声明」を掲載します。

【小澤隆一講演概要】

 抜きがたい排外主義思想を持つ安倍首相がいまだ政権の中心に座り、戦争法の先に明文改憲を見据えているのだとすれば、私たちは直ちに退陣を迫らなければならない。
 「選挙によって多数を取り、戦争法廃止の政権をつくる」運動を着実に進めるために、ほぼ70年前に日本国憲法が生まれた意味、その前段に受託されたポツダム宣言とは何だったのかを主権者としてとらえておく必要がある。
 鈴木貫太郎首相による「徹底抗戦」談話、ポツダム宣言「黙殺」談話によって原爆投下が決定的になったというのが歴史的経緯であるが、「ポツダム宣言というのはアメリカが原子爆弾を二発も落として……『どうだ』とばかりに叩きつけたもの」という、安倍首相の順序を完全に取り違えた解釈は、広島・長崎の犠牲者への冒涜以外の何物でもない。
 ポツダム宣言が日本に求めたものは、
@ 軍国主義勢力の除去
A 主主義的傾向の復活強化、基本的人権尊重の確立
B 「日本国国民の自由に表明せる意思に従い、平和的傾向を有する責任ある政府」の樹立
──であり、日本国憲法の基本原理(平和主義 国民主権、基本的人権)が盛り込まれている。
 制定当初の吉田茂首相の衆議院における答弁のように、9条は「一切の戦力の不保持」「自衛のための武力の行使の否定」を謳ったものと受け止められていた。
 ところがサンフランシスコ講和、日米安保条約締結によって9条がねじ曲げられ、今に続く沖縄の米軍従属がもたらされる。そして自衛隊設立(1954年)が「個別的自衛権合憲・集団的自衛権違憲」論の起点となった。
 1960年には軍事同盟としての本質を覆い隠して日米安保条約が改定されたが、共同防衛について米国は集団的自衛、日本は個別的自衛と規定されていた。一方国民的な反対運動の盛り上がりによって集団的自衛権を正面突破できなくなった政府は、個別的自衛権のみが合憲としつつ自衛隊海外派兵の歩みを進め、これが「米国の日本に対する軍事分担拡大の要求書」として日米ガイドラインにつながっていく。
 1978年ガイドラインでは周辺事態は研究課題とされたが、1997年ガイドライン及び1999年の周辺事態法によって、「後方地域支援」は合憲と強弁されるようになる。 2015年日米ガイドラインの目玉である「同盟要請メカニズム」即ち、「同盟として対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に切れ目のない形で実効的に対処する」ことを実現するために用意されたのが「戦争法」である。
 南シナ海をでは米中両国の軍事的なさや当てが続いているが、「戦争法」によって日本は米国側につくことを決めた。自衛隊は「武器等防護」の名目で武器使用が可能となった。
 今回の戦争法が規定する「重要影響事態」での海外派遣は「後方支援」となり、自衛隊は「軍隊ではない」「捕虜にもなれない・民間人でもない」不安定な地位におかれてしまう。すべての矛盾・しわ寄せが派遣される自衛隊員に背負わされようとしている。
 戦争法案の廃案を目指す中で総がかり運動など、平和と民主主義の新局面が生まれた。強行成立直後には共産党による「戦争法廃止の国民連合政府」の提起があった。「九条を守る」という立脚点、九条の会の原点を再確認しながら、米軍基地抑止力論を峻拒し、沖縄の県民総ぐるみの闘いに学び、「平和的生存権」を結節点として、戦争法廃止の国民世論を多数派にしていく運動、憲法の理念に基づいた世界の人々との共生をめざす運動に、ともに取り組んで行きたい。

(要約・文責=映画人九条の会事務局)

──映画人九条の会11周年声明──
違憲の戦争法廃止へ、立憲主義と民主主義を取り戻す闘いを!

 暴走する安倍・自公政権は9月19日未明、圧倒的な反対世論を無視して違憲の「戦争法案」を国会内の多数の暴力で強行「成立」させた。これは立憲主義を踏みにじり、国民主権と民主主義を破壊する許しがたい暴挙である。平和憲法をズタズタにし、この国を「アメリカのために戦争する国」にする売国的蛮行である。私たちは9.19を絶対に忘れない。
 「戦争法案」反対の運動は、巨大なうねりとなって全国に拡がり、歴史に残る大闘争になった。若者たちも立ち上がり、民主主義運動の新たな高揚を示した。8月30日の「戦争法案廃案!安倍政権退陣!8.30国会大行動」に12万人以上が結集したのをはじめ、国会前は連日、数万人の市民で埋め尽くされた。
 映画人が6月中旬に発した「戦争法案」反対映画人アピールには、日本映画界を代表する方々、巨匠と呼ばれる方々が賛同の声を挙げ、戦争法案反対の運動に大きな力を与えた。
 暴走・安倍政権はこれから戦争法の発動、軍拡、明文改憲へと突き進み、メディア支配や言論規制も強めてくるだろう。しかし、国民の大多数は戦争法の廃止を求めており、戦争法廃止の運動はすでに始まっている。
 戦争法廃止の運動と世論に押されて、野党も新たな動きを見せている。「戦争法廃止の連合政府を作ろう」という提起には、私たちも大きな期待と希望を持っている。
 戦争法を廃止できるか、安倍政権を打倒して戦争法廃止の連合政府が実現できるかどうかは、これからの戦争法廃止運動の発展如何にかかっており、それはまさに、私たち自身のこれからの闘い如何にかかっている。
 私たち映画人九条の会は、映画人九条の会11周年に当たり、違憲の「戦争法案」強行採決を満身の怒りを込めて糾弾するとともに、立憲主義と民主主義を取り戻すために、暴走・安倍政権の即時退陣と戦争法廃止に向けて全力を尽くす決意である。
 その一つのとして映画人九条の会は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が提起している「戦争法廃止統一署名」運動に全力を挙げて取り組み、映画人、映画愛好家の中に戦争法廃止の声をさらに大きく広げていく。
 ズタズタにされても憲法9条はまだ生きている。憲法9条がある限り、戦争法は違憲であり無効である。9条を柱にして多くの国民が手を結び、違憲の戦争法を必ず廃止しよう!

2015年11月16日
映画人九条の会・11周年の集い

【お薦め映画紹介】

ドキュメンタリー映画 『ザ・思いやり』

平 沢 清 一(映画人九条の会運営委員/映画ライター)

 日本が負担する在日米軍の駐留経費、いわゆる「思いやり予算」。法律や条約の規定もないのに、34年間で6兆円以上、米兵一人あたり年間1300万円という莫大な額が費やされてきました。『ザ・思いやり』は、アメリカ人のリラン・バクレー監督が、自らレポーターとして登場し、そのありえない驚くべき実態を明らかにしていきます。
 神奈川県の厚木基地近くに16年住むバクレー監督。大学や塾で英語を教え、地元の自治会活動にも積極的に参加しています。ある日「思いやり予算」に関する記事を目にします。「日本人は通れない米軍専用の駅改札口」「ぺット世話係の給料も日本負担」「電気・水道・ガスはタダで使い放題」「米兵による凶悪犯罪の賠償金に日本の税金が」などなど、「思いやり予算」による米兵とその家族の信じられないような豪華で贅沢な生活に驚愕します。
 日本人の暮らしが厳しい状況で、なぜ米軍をここまで思いやらなければならないのか?そもそも憲法九条がありながら、なぜ日本国中に米軍基地があり、オスプレイや原子力空母が配備され、44,000人もの米兵が駐留しているのか?横須賀・沖縄・グアム・カリフォルニア・石巻など、バクレー監督の「オモイヤリヨサン」の疑問に挑む旅が始まります。
 日本が移転費を負担する、沖縄の海兵隊の移転先グアムでの人権侵害、「思いやり予算を被災地へ」の署名活動、米軍住宅の豪華さに唖然とする東北の仮設住宅の被災者など、「思いやり予算」の不条理で矛盾した状況が浮かび上がっていきます。シリアスなテーマでありながら、抜群のユーモアのセンスでエンターテインメント映画としても楽しめます。
 「世界で一番気前のいい同盟国」と揶揄される日本。こんなひどい日米関係のまま、戦争法で全面的に米軍へ組み込まれていってしまっていいのか、アメリカ人監督が日本に鋭く問いかけています。全国で自主上映中。

お問合せ:電話090-4135-2563(事務局)メールzaomoiyari@hotmail.co.jp

【情報コーナー】

●1月19日(木)、「19日」行動・国会前集会

 総がかり行動実行委員会による1月の「19日」行動は、都内では明日1月19日(火)18時30分〜19時30分、衆議院第2議員会館〜国会図書館前で集会が行われます。

●1月23日(土)、市民連合シンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」

 1月23日(土)14時〜16時30分、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合主催のシンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」が行われます。会場は東京・北とぴあ・さくらホール(北区・王子)。登壇者は、金子兜太・柄谷行人・山口二郎・青井美帆・三浦まり・森達也・諏訪原健各氏の予定。

●2月14日(日)、安倍政権NO!大行進☆in渋谷

 2月14日(日)、東京・渋谷で「民主主義を取り戻せ!戦争させるな!安倍政権NO!大行進☆in渋谷」が行われます。13時から代々木公園ケヤキ並木で出発集会、14時からデモ行進です。

●2月19日(金)、「19日」行動・国会前集会

 総がかり行動実行委員会による2月の「19日」行動は、都内では2月19日(金)18時30分〜19時30分、衆議院第2議員会館〜参議院会館前で集会が行われます。


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