映画人九条の会Mail No.55

2014.04.10発行
映画人九条の会事務局

目次

「集団的自衛権の行使」は 海外で戦争すること!

 ──解釈で憲法9条を壊すな!4・8大集会アピールより──

 安倍首相は、自身の私的諮問機関にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が準備している「報告書」をもとにして、憲法9条の解釈を変更し、歴代内閣が固く禁じてきた集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとしています。

 集団的自衛権を行使するということは、日本がアメリカとともに海外で戦争をする、場合によっては日本独自にでも海外で武力行使をするということであり、憲法9条を根本から破壊するものです。しかも憲法解釈の変更を「閣議決定」でおこなうことは、立憲主義を否定して、国会さえもないがしろにするもので、断じて許すことはできません。

 安倍内閣は、その口実に中国、韓国、北朝鮮とのさまざまな“摩擦”をあげ、「積極的平和主義」と称して、軍事力と日米軍事同盟の強化で押し切ろうとしています。 そのため、すでに武器輸出3原則を破壊し、さらに自衛隊法、周辺事態法、PKO協力法などを改悪し、武器輸出や使用を無限定にし、年末の日米防衛協力のガイドライン改定に結び付けようとしています。

 安倍内閣は、秘密保護法の制定強行、沖縄・辺野古への新基地建設、原発再稼働、教育の国家統制の強化、消費税の増税、TPP参加、国家戦略特区設置の推進、非正規労働者を大量に生み出すなど、“強い国家づくり”と社会の軍事化、庶民のくらしの圧迫、格差の拡大などの強行で、人々を戦争政策にかりたてようとしています。
 安倍政権の暴走をこれ以上許してはなりません。安倍政権の解釈改憲の動きには、自民党内や内閣法制局長官経験者ら、海外からも批判が相次いでいます。世論の多数も反対していることが最近のいくつもの調査などで明らかになっています。

 集団的自衛権の行使容認を許すことなく、日本国憲法の平和主義・主権在民・基本的人権の尊重の原則と平和的生存権が生きる社会を実現するために、多くの団体・個人が協力して行動し、いのちとくらし、平和と人権と民主主義が大切にされる社会と未来をみんなの力でつくっていくことを呼びかけます。

改憲手続き法改定案は改憲の条件づくり!

 「解釈で憲法9条を壊すな!4・8大集会」が行われた4月8日、自民、公明、民主、維新、みんな、結い、生活、の7与野党は、衆院に改憲手続き法(国民投票法)改定案を提出しました。
 改憲手続き法は国民投票の投票年齢を18歳に引き下げていましたが、改正案はこれを法施行から4年間は20歳以上にする、というもので、明文改憲の条件づくりを進めようとするものです。
 解釈改憲のあとは明文改憲に進むことは明らかですが、大半の国民は9条改憲を望んでいません。明文改憲の条件づくりには、声を大にして反対したいと思います。

熱気あふれた2・26「『自衛隊協力映画』の急増をどう考えるか」講演会!

 自衛隊が全面協力する映画やアニメ、テレビドラマが急増していますが、映画人九条の会は2月26日夜、「自衛隊協力映画」を研究してこられた須藤遙子(すどうのりこ/愛知県立芸術大学非常勤講師/大月書店「自衛隊協力映画」著者)先生を講師にお招きし、東京・文京シビックセンターで「自衛隊協力映画」の急増をどう考えるか、という講演会を行いました。

 防衛省・自衛隊が公式に協力を決めた「自衛隊協力映画」には、戦車や戦闘機やイージス艦がいくら出てもすべて「タダ」。しかし協力を得るために、防衛省・自衛隊からの注文、作品内容への干渉を受け入れざるを得ないケースも多々あること、ヒューマンドラマとして「自己犠牲」が強調された「自衛隊協力映画」が増えていること──などが話されました。

 参加者は約90人で、会場には若者の顔も多く、講演後の質疑応答では活発な意見交換がなされ、熱気あふれる講演会となりました。

秘密保護法の廃止を求める3・27「密約」上映会も大盛況!

 秘密保護法案の強行採決に抗議し、その廃止を求めて3月27日夜、東京・文京シビック小ホールで行われた映画人九条の会3・27「密約─外務省機密漏洩事件」(1978年製作/原作・澤地久技/監督・千野皓司/出演・北村和夫・吉行和子ほか)も、約200人の参加で大盛況でした。
 この映画は、沖縄返還にまつわる機密を取材し国会議員に漏らしたことで有罪にされた毎日新聞記者の事件をモデルにした映画です。監督の千野皓司さんが舞台あいさつし、国家が国民の知る権利と報道の自由を奪う恐ろしさを訴えました。

2014年の映画産業はどうなる?

──2013年映画統計では入場人員は0.5%増、興行収入は0.5%減。 邦画の実写映画は低迷!

 1月28日に映連(日本映画製作者連盟)から発表された2013年全国映画概況によると、2013年の入場人員は1億5588万8千人と前年比100.5%の微増でしたが、興行収入は1942億3700万円で前年対比99.5%と若干減る結果となりました。
 邦画興収は1176億8500万円(前年比91.8%)、洋画興収は765億5200万円(前年比114.2%)となり、その比率は邦画が60.6%、洋画が39.4%と前年よりも多少差は縮まりました。東宝は、洋画で2・3・7・10・11位を占めた東宝東和作品と合わせて興収の46%を占め、2013年も寡占傾向でした。
 邦洋合わせた作品別興収のトップ3は、1位『風立ちぬ』(120億2000万円)、2位『モンスターズ・ユニバーシティ』(89億6000万円)、3位『ONE PIECE FILM Z』(68億7000万円)とアニメ作品が占め、邦画だけを見ても上記2作品に『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』(39億8000万円)、『名探偵コナン 絶海の探偵』(36億3000万円)の2作品を加え、上位4本がアニメ作品となり(邦画ベスト10の中では6本がアニメ)、もはや映画興行界の中軸になりました。
 12年はテレビ局主導のシリーズもの作品が絶好調だった邦画でしたが、13年は強力作品が少なく、フジテレビ作品の『真夏の方程式』(5位、33億1000万円)、『映画 謎解きはディナーあとで』(6位、32億5000万円)はヒットしましたが、他局の作品は上位に食い込めず、アニメ作品が占める中でTV局主導作品のヒット数の減少が実写邦画作品の低迷につながる皮肉な結果になりました。
 ここ数年元気のない洋画は13年も微増はしたもののいまいち奮わず、大作と期待された『007 スカイフォール』(5位、27億5000万円)、『アイアンマン3』(6位、25億7000万円)などは30億円を超えず、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(20位、10億8000万円)に至ってはかろうじて10億円台。本国での成績が必ずしも日本でのヒットにつながらない現実が顕著になりました。
 スクリーン数は3年ぶりに回復し、28スクリーン増えて3318スクリーンとなりました。スクリーンのデジタル化は95%を超えたようですが、本場アメリカですらスクリーンのデジタル化は60%台であり、急激なデジタル化は様々な弊害を生んでいます(そのアメリカでもフィルム現像所の閉鎖が相次いでいます)。
 さて、4月1日から消費税増税が実施されました。大半の映画館は一般入場料金の1800円を据え置いたものの、シニア料金やレディースデイは1100円に値上げしました。この影響がどう出るか注目されますが、それよりも消費税増税による消費控えや景気低落が映画館を直撃するのではないかと懸念されます。制作現場もいっそう厳しくなります。増税されても、入場料金が上がっても、客がどうしても観たいと思う映画でなければヒット作は出ないでしょう。そういう力のある映画が今後のラインナップに並んでいるかと言えば、首を傾げざるを得ません。特に邦画の実写映画はより厳しい状況に陥るのではないかと心配されます。

【お薦め映画紹介】

アンジェイ・ワイダ監督の最新作

「ワレサ 連帯の男」
──労働者は自由と未来のために立ち上がった──


羽 渕 三 良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 1970年代から80年代のポーランドは、旧ソ連の覇権主義の下におかれ、労働者・市民は検閲と思想統制のきわめて不自由で厳しい日常生活をしいられていた。1970年12月、労働者・市民はそうした生活に堪えきれず、食糧暴動を起こす。
 これに対して、旧ソ連に追随するポーランド政府は軍隊を出動させ、鎮圧する。戦車が労働者を踏みつぶして進む悲惨な実際のアーカイブ映像を取り入れて映す。この時、死者41名、負傷者1,164名。一人の電気工だったワレサ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)もこの闘争に参加。政府に対して労働者の日常生活に必要な要求をかかげ、一つひとつの要求を勝ち取りながら、ワレサは労働者のリーダーへと大きく成長していく。
 ここで興味深いのは、ワレサを英雄としてでなく、家族思いであるとともにユーモアもあり、さらに弱くて傲慢な人物として、また彼のリーダーとしての背景には彼の妻ダヌク(アグニェシュカ・グロホフスカ)の存在があったこともたっぷりと描いていること。
 そして1980年9月、独立自主管理労組「連帯」を発足させる。当時のポーランドの総人口が3,800万人で、「連帯」に参加した労働者は1,000万人。ワレサはレーニン造船所のストライキを指導し、委員長として政治的課題──自由と権利の要求をかかげてたたかう。
 その後、1981年ワレサは逮捕される。他方、旧ソ連ではブレジネフ書記長が死去。その直後にワレサは解放され、ふたたび「連帯」の活動に加わり、1983年10月、ノーベル平和賞を受賞。出国できないワレサに代わって、妻のダヌクが授賞式に参加する。
 この映画は1989年6月4日の「自由選挙」の第一回投票で「連帯」が圧勝するまでを描く。
 歴史的にはその後、1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊。1990年1月29日、統一労働者党(共産党)が解党。1990年の大統領選挙でワレサが当選。
 この作品は、労働者・市民の連帯と団結で、ねばり強くたたかえば政治は変えられることを、歴史にもとづいて力強い演出により訴えている。
 4月5日(土)から東京・岩波ホールで上映中。続いて順次全国で公開される。

【情報コーナー】

●5・3憲法集会&銀座パレード2014に参加しよう!
 憲法記念日の5月3日(土)、東京・日比谷公会堂で「5・3憲法集会」が行われ(11:00入場券配布、12:00開場、13:00開会/入場無料)、引き続いて15:30から銀座パレードが行われます。
 集会では、青井未帆さん(学習院大教授)、津田大介さん(ジャーナリスト)、志位和夫さん(共産党委員長)、吉田忠智さん(社民党党首)が講演します。
 この国を戦争する国にしないために、一人ひとりが声を上げましょう。5月3日はみんなで日比谷に集まりましょう。
●5月5日(月)、第28回憲法フェスティバルにも参加を!
 今年で第28回になる憲法フェスティバルが5月5日(月)、東京・日本橋公会堂ホール(日本橋劇場)で行われます(前売券2,000円、当日券2,500円)。今年のフェスティバルの内容は、大林宣彦監督作品「この空の花―長岡花火物語」の上映、大林宣彦監督のトークショー、松元ヒロさんのスタンダップ・コメディーなどです。
 主催・問合せ先は憲法フェスティバル実行委員会(南北法律事務所)Tel/Fax 03-5211-1773
●6月4日(水)は「『戦争する国』、ゴメンです。6・4九条の会東京のつどい」
 会期が6月22日までの第186通常国会は、憲法第九条をめぐって今年前半の最大の攻防となります。そこで九条の会東京連絡会は実行委員会を結成し、「戦争する国」づくりを断じて許さないために6月4日(水)、全都規模の九条の会総決起の大集会「『戦争する国』、ゴメンです。6・4九条の会東京のつどい」を開催します。
 会場は東京・なかのゼロ・大ホール(18:00会場、18:30開演)。参加費は999円。出演は孫ア亨さん(元・外務省国際情報局長)、青井未帆さん(学習院大教授)、小森陽一さん(九条の会事務局長)、松元ヒロさん(コント)などです。
 連絡先は九条の会東京連絡会事務局(Tel 03-3518-4866 Fax 03-3518-4867)
●6月10日(火)は、「結成10周年記念・九条の会講演会」!
 九条の会は今年6月10日(火)に10周年を迎えますが、それを記念して同日18時から、東京・渋谷公会堂で「結成10周年記念・九条の会講演会」が行われます。
 大江健三郎さん、奥平康弘さん、澤地久枝さんの呼びかけ人3氏の講演のほか、ゲスト・スピーカーとして元内閣法制局長官・阪田雅裕さんの参加が決まっています。詳細は追って発表されます。

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