映画人九条の会Mail No.53

2013.11.01発行
映画人九条の会事務局

目次

集団的自衛権行使による「戦争する国」づくりに反対する国民の声を

 ★九条の会は10月7日、以下のアピールを発表しました。

──2013年10月7日 九条の会アピール──

 日本国憲法はいま、大きな試練の時を迎えています。安倍首相は、「憲法改正は私の歴史的使命」と憲法の明文を変えることに強い執念をもやす一方で、歴代内閣のもとでは「許されない」とされてきた集団的自衛権行使に関する憲法解釈を転換し、「戦争する国」をめざして暴走を開始しているからです。

 日本が武力攻撃を受けていなくともアメリカといっしょに海外で戦争するという集団的自衛権の行使が、「必要最小限度の範囲」という政府の従来の「自衛権」解釈から大きく逸脱することは明白です。それどころか、日本やアメリカの「防衛」ではなく、日米同盟を「世界全体の安定と繁栄のための『公共財』」(防衛省「防衛力の在り方検討に関する中間報告」)とみなし、世界中のあらゆる地域・国への武力介入をめざす体制づくりです。

 この企ては、本来なら衆参両院の3分の2以上と国民投票における過半数の賛成という憲法「改正」の手続きを経なければ許されない内容を、閣議決定だけで実現してしまうものです。そのため、長年にわたり集団的自衛権行使を違憲とする政府の憲法解釈を支えてきた内閣法制局長官の入れ替えまでおこないました。麻生副総理が学ぶべきと称賛したナチスがワイマール憲法を停止した手口そのものです。これは立憲主義を根本からつき崩すものであり、とうてい容認することはできません。

 それだけではありません。安倍内閣は、自衛隊を戦争する軍隊にするために、海外での武力行使に関する制約をすべて取り払い、「防衛計画の大綱」の再改定により、「海兵隊的機能」や「敵基地攻撃能力」など攻撃的性格をいちだんと強めようとしています。

 「戦争する国」づくりにも足を踏み入れようとしています。すでに安倍内閣は、防衛、外交に関する情報を国民から覆い隠し首相に強大な権限を集中する「特定秘密保護法案」や日本版NSC(国家安全保障会議)設置関連法案などを臨時国会に提出しようとしています。自民党が作成した「国家安全保障基本法案」では、「教育、科学技術、運輸、通信その他内政の各分野」でこれらの「安全保障」政策を優先させ、軍需産業の「保持・育成」をはかるとしているばかりでなく、こうした政策への協力を「国民の責務」と規定しています。これを許せば、憲法の条文には手をふれないまま自民党が昨年四月に発表した「日本国憲法改正草案」における第九条改憲の内容をほとんど実現してしまいます。

 さらには福島原発事故の無責任と棄民、原発技術輸出の問題、その他問題山積の現状があります。

 戦前、日本国民はすべての抵抗手段を奪われ、ズルズルと侵略戦争の泥沼に巻き込まれていった苦い経験をもっています。しかし、いま日本国民は国政の最高決定権をもつ主権者であり、さらに侵略戦争の教訓を活かした世界にも誇るべき九条を含む日本国憲法をもっています。いまこそ日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、歴史の教訓に背を向ける安倍内閣を草の根からの世論で包囲し、この暴走を阻むための行動にたちあがりましょう。

2013年10月7日
九条の会

12・2映画人九条の会9周年イベント 映画「はだしのゲン」上映会

──反戦名作映画連続上映第6弾──

 故・中沢啓治さんが自らの被爆体験を基に描いた漫画「はだしのゲン」は、650万部を超す大ベストセラーとなり、世界各国からも高い評価を得ている作品ですが、今年の夏、松江市教育委員会が市内の全小中学校に閉架措置を求めていたことが報じられ、大きな波紋を広げました。

 「はだしのゲン」は実写版映画や長編アニメにもなっています。映画人九条の会は9周年のイベントとして、実写版映画の第1作「はだしのゲン」の上映会に取り組むことにしました。名優・三國連太郎さん、左幸子さんが共演する反戦映画の傑作です。

 この機会にぜひご覧ください!

12・2映画人九条の会9周年イベント - 映画「はだしのゲン」上映会
日時
2013年12月2日(月) 18:50〜映画人九条の会9周年の訴え、19:00〜上映開始
場所
東京・東京しごとセンター・講堂(地下2F)
東京都千代田区飯田橋3-10-3 TEL03-5211-1571
JR飯田橋・東口、地下鉄大江戸線・有楽町線・南北線A2出口より徒歩7分
東西線A5出口より徒歩3分
参加費
1000円(予約不要)
主催&問い合わせ先
映画人九条の会

「降旗監督、最新作『少年H』を語る集い」、70名を超える参加で成功!

 映画人九条の会が2013年夏のイベントとして7月30日、東京・文京シビックセンター4階ホールで行った「降旗康男監督、最新作『少年H』を語る集い」は、70名を超える参加で成功しました。

 「戦争は急には起こりません。当時、私たちは時流に遅れないようにと、バスに乗るように戦争へと突き進んでしまいました。だからこそバスに乗る前に立ち止まって、そのバスの行き先を見て考えなくてはなりません。そして、どんな小さなことでも一人ひとりが声を出していかなくてはなりません。バスに乗ったら最後、目的地までバスが止まることはないのですから。『少年H』はそんな戦争を知らない世代のために送る映画です」と語った降旗監督の言葉が心に残りました。

 この集いの模様は、インターネット放送局「自由メディア」の6チャンネルで誰でも見られます。

憲法違反の秘密保護法を即刻廃案に!

 安倍内閣は10月25日、「特定秘密保護法案」を閣議決定し、開催中の臨時国会に提出しました。

 この法律は、「秘密保護」の名のもとに、安全保障に関する広範な情報を「特定秘密」に指定し、国民の知る権利を大幅に制約、言論表現の自由を著しく侵害して国民を統制・監視し、アメリカとの軍事一体化を促進しようとするものであり、日本国憲法の三原則「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を踏みにじる最悪の法律です。「秘密は戦争の始まり」というのは歴史の教訓です。日本を再び暗い戦争の時代に戻らせないために、秘密保護法案の成立を阻止しましょう。

 2010年秋の尖閣諸島周辺での巡視船と中国漁船の衝突映像公開問題をきっかけに、民主党政権下での秘密保全の法制化の検討が開始されたとされていますが、実は07年の自公政権時代にアメリカが日本に情報の管理の徹底を要求したところからすでに準備は始まっていました。安倍政権は、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法とセットで成立を図り、さらにその上位法として「国家安全保障基本法」を制定することによって、解釈改憲をいっそう推し進め、日本をアメリカと一緒に戦争できる国へと作り変えようと目論んでいます。

 この法律の基本的な枠組みは、(1) 「外交」「防衛」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」という4分野の情報について、担当大臣等「行政機関の長」が「特定秘密」を指定し、(2) 公務員等がその秘密を漏洩したり、何人であっても秘密保有者の管理を害するやり方で秘密を取得したりした場合は最高10年の懲役刑を科すとともに、それらに対する共謀・教唆・扇動にも重罰を科す一方、(3) 秘密を取り扱うことができるものを「適正評価」により選別された公務員等に限ることとする、というものです。国民の知る権利や情報公開の理念に真っ向から反する、憲法違反の内容です。

 法案には多くの問題が包含されています。まず、軍事・外交・治安の分野で安全保障に関する情報を政府自身が指定し、第三者によるチェックはなく、上限5年の有効期限が定められているものの半永久的に更新が可能となっていて、極めて恣意的にどんなことでもいつまでも秘密に指定することが可能となっています。何が「秘密」か、それ自体が秘密となのです。

 そして公務員の秘密漏洩に懲役最高10年、国会議員も5年、「管理を害する行為」でメディア・国民も懲役最高10年、「共謀」「教唆」「扇動」で漏洩がなくても広く処罰されることになっています。

 もし、この法律が成立すれば、衆議院の安全保障委員会の「秘密会」で明らかにされた情報の是非を専門家に相談した国会議員が懲役刑になり、パソコンやスマートフォンである情報を調べ、ブログなどに書き込んだら、ある日突然、事情聴取され、逮捕されることも起こりえます。原発事故の情報も特定秘密に指定されれば、原発の調査に出かけ、施設が望める場所から写真を撮り、ツイッターで呟いたら処罰された、というケースも生まれるでしょう。また、官庁街で情報を求める集会を開き、マイクで訴えていたら「秘密保護法に抵触する(扇動)に当たる」として警察に逮捕されることも十分想定されます。

 さらに秘密を取り扱う人への「適正評価」は、国による「身辺調査」法制化にほかありません。秘密を扱う公務員・民間企業社員が情報を洩らすおそれのある人物かどうかを、本籍、親族、学歴・職歴、外国への渡航歴、犯罪・懲戒の経歴、信用状態、薬物・アルコールの影響、精神疾患などを調べて評価することになっており、調査対象が家族、恋人、友人へと際限なく広がっておそれがあります。これはプライバシーの侵害以外の何者でもありません

 法案は秘密を取り扱う公務員・国民に重罰を科し、適正評価制度による選別で内部告発の回路を狭めて萎縮を促進し、取材者が入手できるはずの有用な情報を細らせ、枯渇させるでしょう。情報源との回路が閉ざされ、取材が制限されれば、真実の追求や調査報道、権力監視は成り立ちません。

 人々の注意や関心、問題意識や感動を喚起し、想像力に訴えかける映画の表現においても、致命的な打撃を被ることになるでしょう。ドキュメンタリー映画をはじめ、社会性をもった多様な表現活動や豊かな創作活動もできなくなってしまいます。

 安倍首相は10月25日の衆議院本会議で「早期成立に努める」と表明ましたが、共同通信が実施した世論調査では過半数が法案に「反対」を表明しています。憲法理念を踏みにじり、監視社会化と日米軍事一体化をもたらす秘密保護法案は即刻廃案にさせましょう。

【情報コーナー】

11月16日に「九条の会第5回全国交流・討論集会」
九条の会は11月16日(土)10時30分から、東京・日本教育会館で「九条の会第5回全国交流・討論集会」を開催します。
この全国交流・討論集会には、映画人九条の会を代表して運営委員会から数名が参加しますが、会員の皆さまでどうしてもこの集会に参加したい方は、申込締め切りが11月9日必着ですので、至急映画人九条の会事務局までご連絡ください。
憲法会議のリーフレット「集団的自衛権を考える」が好評です。
憲法会議が作成したリーフレット「集団的自衛権を考える──憲法9条を変えなくても『戦争する国』に」が好評です。
A4を3つ折した6ページ建て、単価3円(送料別)。ご注文・お問い合わせは憲法会議まで。
TEL 03-3261-9007 FAX 03-3261-5453 Eメール:mail@kenpoukaigi.gr.jp
12月5日、全労連会館で映画「放射線を浴びた〜X年後」上映会
南海放送が8年にわたるビキニ事件の取材活動を集大成してビキニ事件の真相に迫った映画『放射線を浴びた〜X年後』は、数々の賞を受賞し各方面から注目を集めてきました。
この映画『放射線を浴びた〜X年後』の上映会が12月5日(木)18:30から、東京文京区の全労連会館ホール(文京区湯島2-4-4)で行われます。
当日は上映とあわせて、伊東監督とフィールドワークを展開してきた青年たちのトークセッションや参加者とのリレートークなども予定されています。料金は上映協力券が1000円(前売)、当日1500円。連絡先は090-5548-4296/s.miyazawa@notaru.com(宮沢)。
11月21日(木)に、STOP!「秘密保護法」11・21大集会
憲法9条をしめ殺すような特定秘密保護法案が国会に提出されました。秘密保護法に反対するすべての人たちが大集合して国会にNOの声を届けようと、11月21日(木)18:30より東京・日比谷野外音楽堂で「STOP!『秘密保護法』11・21大集会」が行われます。集会後、国会までデモ行進も行われます。
秘密保護法反対の世論を盛り上げ、国会にNOの国民の声を届けるために、11・21大集会に参加しましょう!

映画人九条の会事務局
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