映画人九条の会Mail No.51

2013.4.10発行
映画人九条の会事務局

目次

96条改憲反対の世論を広げよう!

 参議院選挙まで「安全運転」で行くかと思われていた安倍政権ですが、オバマ米大統領との会談を機にTPP交渉参加表明を行い、国会等で何度も改憲の意思を表明するなど、本性を露わにして牙をむき始めました。「高支持率」に浮かれて、参院選まで我慢できなくなったのでしょう。

まず解釈改憲で集団的自衛権行使を容認し、既成事実づくり

 安倍首相を中心とする改憲勢力は、平和主義を覆す明文改憲に向けて、巧妙に仕掛けを張りめぐらしていると思われます。その一つが、解釈改憲による集団的自衛権行使の容認と、米軍指揮下の軍事国家の既成事実づくりです。
 安倍政権は集団的自衛権の行使を容認するために、有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」を設置しました。7月の参議院選挙前後には集団的自衛権の行使を容認する安保法制懇の報告が出され、この報告を受けて安倍政権は、解釈改憲によって集団的自衛権行使を容認するという新しい「政府見解」を示すものと思われます。
 そして第2段階は、「国家安全保障基本法」を成立させて、立法措置による集団的自衛権の容認へと歩を進めるつもりでしょう。「国家安全保障基本法」と連動して、「国家の重要な情報」を漏らしたり、知ろうとした人を厳しく処罰する「秘密保全法」の強行も狙っています。
 こうして集団的自衛権を既成事実化したうえで国民の諦めを促し、国民を監視し、世論を誘導して、絶対に失敗しない大勢を作って明文改憲に打って出るのではないかと思われます。

96条改憲は「立憲主義」の否定!

 安倍首相は9条改憲の必要性を公言しています。その上で、維新の会やみんなの党などと組んでまず憲法96条を変え、改憲発議要件のハードルを衆参両院の2分の1に下げるようとしています。これは、近代民主主義の基礎である「立憲主義」を否定する暴論です。
 憲法は国民の側から国家権力をしばるための法であり、国の政治はその憲法に立脚して行われるべきだという考え方が「立憲主義」です。改正要件が厳しいのは、その時々の権力者が恣意的に変えようとするのを防ぐためです。改正要件を緩めるということは、権力者にとって都合のいい改憲案が通りやすくなるということを意味し、世界の国々が長い歴史の中で勝ち得てきた「立憲主義」を否定するものです。
 しかも96条改定論の本当の狙いは、9条改憲です。96条改定問題は、単なる手続き論や形式論ではありません。96条改定反対の世論をいち早く広げなければなりません。これまで以上の国民的共同が必要です。
 当面の闘いの結節点は7月の参院選です。自民党や維新の会などは、参院で改憲派3分の2をめざす、としています。思想信条の違いをこえて憲法を守る世論と運動を広げ、世論で改憲派を圧倒し、参院選で護憲勢力を前進させ、改憲派の野望を打ち破りましょう。

映画「想い出のアン」上映会中止のお詫び

 映画人九条の会は3月29日、反戦名作映画連続上映会・第5弾として映画「想い出のアン」上映会を行い、多数の方々にご参加いただきましたが、映写機の不調のため、上映開始5分で中止せざるを得なくなりました。このような事態を引き起こし、参加者の皆さまに大変なご迷惑をおかけしたことに運営員会一同、心からお詫び申し上げます。

映画人九条の会4・25憲法学習会 自民党の改憲草案を斬る! 講師/小森陽一・東京大学大学院教授

 民主党に取って代わって政権の座に着いた自民党は、昨年4月に新しい改憲草案を発表しています。その内容は、立憲主義の否定、天皇の元首化、国防軍の保持、国防義務、基本的人権の制限、表現・結社の自由の制限、軍法会議の設置等々、驚くべきものです。 映画人九条の会は4月25日(木)夜、東京・文京シビックセンターで、「自民党の改憲草案を斬る!」をテーマに憲法学習会を行います。 講師は、東京大学大学院教授で九条の会事務局長の小森陽一さんです。ぜひご参加ください。

映画人九条の会4・25憲法学習会/自民党の改憲草案を斬る!
日時
2013年4月25日(木) 18:50〜20:30
会場
東京・文京シビックセンター5階C会議室
東京都文京区春日1-16-21 電話03-3812-7111(文京区役所代表)
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩2分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩2分
参加費
800円
主催
映画人九条の会

「映画人九条の会2・22学習集会/近現代の日本の戦争と『領土問題』」大好評

 映画人九条の会が2月22日に行った「映画人九条の会2・22学習集会/近現代の日本の戦争と「領土問題」──安倍政権の逆行」(講師/山田朗・明治大学教授)は、「領土問題の本質が良く分かった。腹に落ちた」と大好評でした。

 その講演録を同封しました。すでにメールでもお送りしていますが、印刷小冊子をご希望の方はご連絡ください。会員は無料、会員外は1部200円です(ともに送料別)。

フィルム映画文化はどうなるか

 デジタル化の急速な進行や富士フイルムの映画用フィルムの生産中止、米イーストマン・コダック社の会社更生法適用などによって、100年以上続いてきたフィルム映画文化が危機に瀕しています。映演労連は昨年11月20日に「フィルム映画文化の維持と映画原版保存に向けた要請書」を経産省と文化庁に提出し、今年に入って経産省・メディアコンテンツ課、文化庁・芸術文化課と交渉を行いました。

【1月28日、経産省交渉】

 経産省・メディアコンテンツ課との交渉は1月28日に行われました。担当官は、「要請されたことについて、政府として動いていません。平成26年度要求でこの議論をスタートできるかどうか、まさに文化庁と経産省でやっていかなくてはならない部分かと思います。フィルム維持とデジタルと、両輪でやっていかなくてはならないと思いますので、おそらく研究会なりを立ち上げなければできないかな、というふうに考えています」「ただ経産省には、経営を助けるための助成というのがない。国が経営を助けるということになると、それなりの理由が必要になります。将来まで見据えてアーカイブしていくという予算をずっと取り続けられるかというと正直、経産省としての枠組みの中にない」などと答えました。
 また、「カバーするなら全部をカバーするぐらいの規模でやらないと。焼け石に水のようなお金を入れて、こうやって官はやりました、というやり方が良いとは思っていません」「この議論をやるときに、おそらく映画会社や技術者、映画関係会社、製作現場や現像所の方々など各プレイヤーを全部そろえなきゃならない場なんだろうと思います」などと語りました。
 映画のデジタル保存については、「どうやって保存するか、そのゴールが固まっていないと、政府がお金を流したとしても、それが正解じゃない可能性がある。そうすると、また同じ費用が別にかかる。ルールというか、そこを先に決めないと進めない」と、標準規格を決めるのが先だとの認識を示しました。

【2月8日、文化庁交渉】

 文化庁・芸術文化課との交渉は2月8日に行われ、文化庁サイドは課長補佐を筆頭に6名もの担当官が対応しました。
 まず「映画フィルム製造継続への支援」について、「文化庁としては企業支援はできない」という、いつもの官僚的紋切り型拒絶答弁でしたが、映演労連は「そんなことを言っていられない緊急事態だ。コダック社が映画用フィルム生産を中止すれば、世界中のフィルム映画文化が消滅する。フィルム現像所もいったんフィルム現像部門を廃止すれば、復活は困難だ」と訴え、文化庁の姿勢転換を強く求めました。
 原版保存については、「フィルムセンターでやっているが、まず保存できる体制を作ることが重要だ。映画各社と連携を深めていきたい」と語る一方で、「デジタル原版保存については、現在のところ様子見の状態です。まず映画業界でどうするか考えてほしい」と消極姿勢でした。
 権利が不明になっている「オーファンフィルム」については、「現在、現像各社に所有者などの状況調査をお願いしている段階です。状況調査がまとまったところでどうするか考えたい。所有権は強い権利なので、所有権者不明のままではフィルムセンターで預かるだけでもリスクがあり、すぐにはできません」と答えるだけでした。
 課長補佐は「多々問題があることは理解しましたが、業界側でもどうするか意見集約をしてほしい。また、映画保存について国民の側の理解を促すため、保存の重要性などについて気運を盛り上げてほしい」などと述べるに止まりました。
 経産省からも文化庁からも、明確な答はありませんでした。しかし映演労連の問題提起で事態が少しずつ動き始めたことは間違いありません。映演労連は今後ともフィルム映画文化の維持と原版保存に向けて運動を強めていきます。

【お薦め映画紹介】 「天使の分け前」

高橋 邦夫 (映画人九条の会事務局長)

名匠ケン・ローチ監督の粋な最新作

 名匠ケン・ローチ監督の最新作がやってきた。ケン・ローチ作品の中でイギリスにおける最大ヒットとなった「天使の分け前」だ。
 “天使の分け前”というのは、ウィスキーが樽の中で熟成されている間に、年に2%ほど蒸発して失われる分のこと。この映画「天使の分け前」は、イギリスの落ちこぼれ小悪党4人が、その“天使の分け前”をいただこうという、ちょっと粋で痛快なコメディータッチの映画である。
 小悪党4人というのは、暴力事件や盗みなどの罪を犯して刑務所送りの代わりに社会奉仕活動を命じられたロビー(ポール・ブラニガン)、アルバート、ライノ、モーの若者4人。
 主人公のロビーは、スコットランドのグラスゴーで暮らしているが、育った環境が悪いせいかケンカ沙汰が絶えない。恋人との間に子供が生まれるというのに、まともな職もない。社会奉仕活動の現場でアルバートたちと知り合うが、彼らもみんな失業中で行き場を失った若者たちだった。イギリスの失業中の若者は100万人を超えたと言われているが、それは日本社会の現状にも重なる。
 ケン・ローチ監督は、「ここに登場するのは、その100万人の内の4人なんだ」「今を生きる若い世代の多くが空っぽの未来に直面している問題について物語を作りたいと思った」と語っている。
 ロビーは、社会奉仕活動の現場監督をしているハリーと出会う。ハリーは人間味にあふれた善意の塊のような人だった。ロビーはハリーに励まされて、少しずつ生活を立て直していく。
 ウィスキー好きなハリーはある日、ロビーたちを郊外のウィスキー蒸留所見学に連れ出した。スコッチウィスキーの本場に住んでいながらウィスキーをたしなむ余裕もなかったロビーたちには、見るものすべてが新鮮だった。ウィスキーの奥深さに惹かれたロビーは、ティスティングの才能に目覚めていく。そしてロビーたちは、ひと樽100万ポンド(約1億4千万円)以上もするウィスキーが競りにかけられることを知り、どうしようもない現実から抜け出すために、ある行動に出るのだった。
 ウィスキーを飲む余裕もない多くの若者たちがいる一方で、上流階級の人々はひと樽に100万ポンドも払おうとする姿を、ケン・ローチ監督は皮肉たっぷりに描きつつ、日常の中にかけがいのない出会いがあり、それによって人は人生の転機と未来を手繰り寄せることができる、と語りかける。「天使の分け前」は、ケン・ローチ監督のさらなる熟成を示す逸品である。

 2012年制作。1時間41分。2012年カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。閉館が決まった銀座テアトルシネマの最後の映画で、4月13日よりロードショー公開。

多額のカンパ金、ありがとうございました。

 映画人九条の会は昨年末から9年目の活動を支えるカンパをお願いしてきましたが、4月5日現在433,905円が集まりました。心から御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 いただきましたカンパ金は、会の活動資金として大切に使わせていただきます。

【情報コーナー】

「バベルの塔」の続集、「ソドムの嘘、ゴモラの呪縛」が完成
京都・映画人9条の会などが協力して制作された原発ドキュメンタリー映画「バベルの塔」の続集、「ソドムの嘘、ゴモラの呪縛」が完成しました。上映等については、「ドキュメンタリー映画『バベルの塔』製作委員会」080-1523-2162(垣)か、E-Mail eigazin9kyouto@hotmail.co.jp にお問い合わせください。
「九条の会」の新しいポスター、申し込み受付中
「九条の会」の新しいポスターができました。3代目のポスターです。安倍政権の下で強まっている改憲策動を阻むために、大いにご活用ください。
http://www.9-jo.jp/news/news_index.html#2013poster
頒価は1枚50円、3枚100円、15枚500円、30枚1000円。送料は別途。お申し込みは九条の会事務局まで。電話 03-3221-5075 FAX 03-3221-5076 mail@9jounokai.jp
5・3憲法集会&銀座パレード2013に参加しよう!
憲法記念日の5月3日(金)、東京・日比谷公会堂で「5・3憲法集会」が行われ(11:00入場券配布、12:00開場、13:00開会/入場無料)、引き続いて15:30から銀座パレードが行われます。
平和と生命と人権を保障する憲法を守るのは、私たち一人ひとりの意思と行動です。5月3日はみんなで日比谷に集まりましょう。

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