あけましておめでとうございます

映画人九条の会Mail No.50

2013.1.21発行
映画人九条の会事務局

目次

憲法を守る勝負の年です!

 映画人九条の会の皆さま、新年あけましておめでとうございます。
 昨年12月の総選挙では自民党が大勝し、改憲派が衆議院の3分の2以上を占めてしまいました。6年ぶりに首相に返り咲いた安倍首相ははしゃぎ回り、安倍内閣発足直後の記者会見で早速、集団的自衛権の行使容認を検討する、と発言しています。
 集団的自衛権の行使とは、同盟軍であるアメリカが引き起こす戦争に日本も参加するというものですが、これは自民党政権も含めた歴代内閣が“憲法で禁止されている”としてきたものです。これを解釈改憲で覆してしまおうというのはアメリカからの強い要請によるものですが、集団的自衛権を容認して既成事実を作ってしまえば平和憲法を変えやすくなる、という思惑もあるからでしょう。しかしこれは、戦争への直線コースです。

 また安倍首相は9条改憲を進めるためにまず、衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要と定めた憲法96条の、改憲発議要件の改正に着手する方針を明らかにしています。これはあまりに姑息な手法ですが、憲法とは何かをまったく理解しない暴論でもあります。
 憲法とは、国家権力に歯止めをかけるための法であり、改正要件が厳しいのは、その時々の多数者が恣意的に変えようとするのを防いでいるのです。その改正要件を緩めるということは、権力者にとって都合のいい改憲案が通りやすくなるということを意味します。国家権力を縛るもの、という憲法の本質そのものを変えてしまう極めて危険な行為なのです。
 「天皇は国家元首」「国防軍」などという超タカ派的な条文で彩られた自民党の新しい憲法改正案は、基本的人権や国民の自由などを守ろうとする姿勢が大きく後退しており、憲法が国家権力を縛る法であるということをまるで理解せず、近代の立憲主義の精神に反しているものです。ですから憲法を、いつでも権力者の都合のいいように変えられるようにしよう、という発想が出てくるのです。

 しかし前号でも言いましたが、国民はこんな危険な流れを求めてはいません。国民が求めているのは、平和で安心して暮らせる社会です。
 総選挙で自民党が圧勝したと言っても、比例では得票を2,185,760票も減らしています。得票率は27.62%に過ぎません。全有権者対比でみれば、自民党の得票率は小選挙区で24.67%、比例代表は15.99%に過ぎないのです。自民党が議席を大量に奪い取ったのは、民主党の自滅と小選挙区制という制度によるものです。
 2013年は、憲法を守る勝負の年です。安倍首相は今年7月の参院選でも勝って、参院でも改憲派を3分の2以上にしようと目論んでいますが、そうはいきません。また改憲手続き法も欠陥だらけで、成立に際して付けられた「3つの付則」と「18の付帯決議」が求めた法整備などはほとんどが進んでいません。私たちには闘う時間も、手段もあります。
 かつて「九条の会」の草の根運動は、以前の安倍政権を崩壊に追い込みました。もう一度気を引き締め直して草の根の活動を活発に展開し、改憲をストップさせましょう。

 
映画人九条の会運営委員一同

映画人九条の会2・22学習集会 『近代日本の戦争と領土問題』

 映画人九条の会は2月22日(金)夜、東京・文京シビックセンターで「近代日本の戦争と領土問題──安倍政権の逆行」をテーマに学習集会を行います。講師は、映画人九条の会おなじみの明治大学教授・山田朗先生です。改憲を推し進める安倍新内閣の危険性にも触れながら、領土問題の本質を解明していただきます。ぜひご参加ください。

映画人九条の会2・22学習集会 『近代日本の戦争と領土問題 ─安倍政権の逆行─』
日時
2013年2月22日(金) 18:50〜20:30
場所
東京・文京シビックセンター4階ホール
東京都文京区春日1-16-21 電話03-3812-7111(文京区役所代表)
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩2分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩2分
参加費
800円
主催&問い合わせ先
映画人九条の会

映画「ひろしま」上映会、約90名の参加で成功!

 映画人九条の会が昨年11月30日、映画人九条の会8周年イベント/反戦名作映画連続上映会第4弾として行った映画「ひろしま」上映会は、約90名の参加で成功しました。
 映画「ひろしま」が描いた原爆投直後の地獄絵図のような映像は、あまりに凄まじく、観るものを圧倒しました。
 映画人九条の会は、今年もこうした反戦映画の名作、問題作を掘り起こし、皆さまに提供していきたいと考えています。ぜひご期待ください。

2013年映画産業の情勢は (映演労連2013春闘方針案より抜粋)

 昨年2012年の映画興行収入は1900億円台半ばになるとみられているが、東日本大震災の影響を受けて過去10年で最低の成績となった2011年の1811億9700万円は上回るものの、2010年の興行収入2207億3700万円には遠く及ばない。

 邦、洋それぞれの作品別興収上位10作品について見ると、邦画では今年もTV局主導の作品が存在感を示した年となり、フジテレビ作品の「BRAVE HEARTS海猿」(73億3000万円)、「テルマエ・ロマエ」(59億8000万円)、「踊る大捜査線 THE FINAL新たなる希望」(59億円*12月12日時点)がトップ3を独占。8位の「ALWAYS三丁目‘64」が興収34億9000万円を、10位の「映画 怪物くん」が興収31億3000万円を記録するなど、東宝配給によるTV局主導の映画が今年も大きく数字をのばしている。

 また、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」を除いたすべてが東宝配給作品という結果になり、東宝ひとり勝ちの傾向に拍車がかかっている。ヒットの目安である10億円を超える作品が26作品、20億円以上が15作品、30億円以上が9作品で、年間700億円を超える成績を残し、東宝のシェアは37〜38%が見込まれ、磐石の度合いを増している。

 加えて2012年はアニメの健闘が挙げられる。上位10作品のうち、定番シリーズである「ドラえもん」(36億2000万円)、「ポケットモンスター」(36億1000万円)、「名探偵コナン」(32億9000万円)が今年も安定感のある数字をたたき出す一方、「時をかける少女」「サマーウォーズ」で注目を集めた細田守監督を起用した意欲作「おおかみこどもの雨と雪」が42億2000万円の大ヒットを記録。ジブリ作品の公開がないにも関わらず、30億を突破したアニメが5本ランクインしたのはここ10年では2012年だけである。

 一方洋画は、悪い方向で近年の傾向に拍車がかかっている。10作品中、定番作品とも言えるシリーズ作品、続編が8作品を占めているにも関わらず、ヒットの規模が縮小傾向にあり、結果、2011年の興収の邦洋のシェアが、邦画54.9%、洋画45.1%だったのに対して、2012年は更にその差が広がったものと思われる。

 映画スクリーンのデジタル化は驚くべき速度で進み、2012年末には85%を超えると予想されている。中小の老舗劇場の閉館が相次ぎ、シネコンも新規出店数が4年連続で1ケタにとどまった。2012年末時点での全国映画館数は、全体としては昨年に比べて50スクリーンほど減り(2年連続で減少)、3290スクリーン前後になると予想されている。

 映画業界では積年の目標として、入場者数2億人を掲げているが、1971年の2億1675万人を最後に、40年にわたって2億人を下回ったままである。

 デジタル化について、経費策費減や自然環境への貢献とともに、配給が容易になり、公開本数も多くなりお客様に多岐にわたる作品を提供できるようになった、と歓迎する声がある。

 しかし、マーケットシェアにおいて圧倒的優位に立つ東宝が勢いを増すのとは対照的に、デジタル化の波の乗れない中小劇場の閉館や、資本の論理で推し進めたデジタル化が、米イーストマン・コダックの連邦破産法11条適用申請、富士フイルムの映画用フィルムの製造・販売中止につながり、フィルム現像を担う東京現像所や東映ラボ・テックのリストラ「合理化」につながっていることを考えると、私たち映画労働者にとっては決して看過できない問題である。

 映画労働者が先人から引き継いだ豊かな映像文化を次の世代にも残せるように、「映像文化の維持発展」のために今こそ議論を深めていく必要がある。

【お薦め映画紹介】 ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜

羽渕 三良 (映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 今日、「オール沖縄」のオスプレイ配備反対の声にもかかわらず、米軍はオスプレイの危険飛行をくりかえしている(日本政府は、これを容認)。さらに沖縄で相次ぐ米兵の性暴力をはじめとする不法暴力行為が。こうした今日、映画『ひまわり』はきわめてタイムリーな映画である。

宮森小学校への米軍ジェット戦闘機墜落事件とは──

 良太(長塚京三)は、今は妻を亡くし、娘が住む普天間基地がある宜野湾市に孫の琉一(須賀健太)と住んでいる。良太と琉一は04年8月18日、現場近くで沖縄国際大学の米軍機墜落事故に遭遇する。何事が起ったか、膨大な黒煙を吹き出しながら、米軍機が大学校舎に激突。火炎が激しく燃え上がる。大学教職員も中に入れず、米軍によって大学が管理される。良太はこの時、宮森小学校戦闘機墜落事件を思い出す。その事件とは──。
 1959年6月30日、沖縄県石川市(現うるま市)の宮森小学校の校舎に米軍ジェット戦闘機が激突。米兵は爆弾4個を海に捨て、パラシュートで脱出。戦闘機の機体は小学校校舎で爆発。それは良太が小学生の時である。良太はこの時左手に大量出血。子どもの親たちが心配して駆けつけても、銃をもった米兵のスクラムに阻止される。校庭の子どもたちが植えたひまわりも激しく火炎に燃え上がる。子どもたちは11人。住民6人、後遺症で亡くなった人18人。210人の重傷者がでる。

沖国大の学生たちが、沖縄の平和を願ってコンサートで立ち上がる。

 良太といっしょに住む琉一は、沖国大の学生である。琉一が所属するゼミでは沖縄と基地のことを話し合っている。その結果、学生たちは沖国大米軍基地墜落事件と宮森小学校ジェット戦闘機墜落事件を関連させ、調査・レポート活動を始める。
 さらにゼミの学生たちは、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク、アフガニスタンへと米軍が沖縄の基地から出撃。沖縄が今も加害者の役割を果たしているなど、歴史と事実を知る。そしてもう一つ。日米沖縄地位協定によって米軍が事件を起こしても「公務中」を理由に犯罪から逃れられる特権があることも知る。さて、琉一たちはどうするか。
 デモでも集会でもなく「ピース・スカイ・コンサート」を開催することを決意する。コンサートとは、大勢で一致して行動するという意味があることを胸中に秘めて。開催の趣旨として、「沖縄にきれいな海と空をとりもどすこと」「沖縄から世界へ平和を訴えて」。コンサートは大成功する。
 今回の日本の映画界を見る時、この『ひまわり』にように日本の現実を直視し、それを真正面から取り上げて展望を考える映画はほとんど無いといってよい。そうした中で『ひまわり』は沖縄の歴史と現実に向き合い、情熱をもって沖縄(日本)の未来を語りかけており、きわめて貴重な映画である。

 監督は及川善弘。東京・新宿武蔵野館(2013年1月26日)をはじめ各地で上映される。

9年目の活動を支えるカンパをお願いします

 映画人九条の会の運営費は、皆様方の任意のカンパなどによって賄ってきましたが、そろそろ底をつきつつあります。改憲阻止が緊急のものとなってきた今、9年目の活動をさらに飛躍させるために、皆様方に改めてカンパをお願い申し上げます。ぜひご協力ください。

郵便振替口座
本郷一郵便局
口座番号: 00140−9−278825
口座名: 映画人九条の会

【情報コーナー】

3月3日(日)、九条の会事務局が集団的自衛権問題で学習会
 改憲問題が緊迫してきていますが、九条の会事務局では、安倍政権が集団的自衛権行使容認の動きをすすめていることにたいして学習会を企画しています。詳細は追って発表されますが、ぜひご予定に入れておいてください。
 日時:3月3日(日)開場13:30〜  会場:東京しごとセンター講堂(千代田区飯田橋)

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