映画人九条の会Mail No.49

2012.11.6発行
映画人九条の会事務局

目次

改憲新党続々! しゃにむに改憲を押し付けようとする政治の流れ── 今こそ“九条の会”の出番

 全候補が改憲と集団自衛権の行使を競うような9月の自民党総裁選で、ガチガチの改憲・タカ派の安倍晋三元首相が新総裁に就任し、幹事長にはこれも改憲・タカ派の軍事オタク石破茂氏が就任しました。自民党は「国民政党」というよりも、「右翼政党」に変身したかのようです。

 民主党の代表選でも、保守政治家を自認する野田首相が再任されました。野田首相は、集団的自衛権の行使に向けて政府の憲法解釈を見直す議論がされてしかるべきだ、と公言しています。解釈改憲をさらに進めようとしているのです。

 橋下「日本維新の会」も競うように改憲と集団自衛権の行使を声高に叫んでいましたが、世論調査で「維新の会」の支持率が低迷するや、今度は突然、石原都知事が都知事職を放り投げて「たちあがれ日本」などと新党結成に突き進みました。「原発や消費税などの政策の違いは些細な問題」として、憲法改悪で「この国の根本を変えていくことで一致している」勢力を糾合して「第三極」を作ろうというものです。

 しかし、彼ら改憲新党は「第三極」と言えるでしょうか。「第一極」の民主党も、「第二極」の自民党・公明党も、「第三極」を自認する改憲新党も、みんなアメリカに追従して改憲(及び解釈改憲)と集団的自衛権行使の容認勢力です。元自民党総裁の河野洋平氏も、テレビで「第三極というが、右翼的な政治の選択肢が増えただけだ」と語っていました。

しゃにむに改憲を押し付けようとする危険な流れ

 まるで国民にしゃにむに改憲を押し付けようとするかのような政治の流れです。マスメディアも、領土問題を理由にナショナリズムを煽り立て、改憲新党を持ち上げて日本の政治の右翼的な流れを加速させています。

 しかし集団的自衛権の行使に踏み込めば、アメリカが起こす戦争に全面的に巻き込まれ、日本は戦争の当事者になってしまいます。なぜこんな流れになっているのか。

 今年8月15日、米新政権が民主・共和両党のどちらになろうと日米同盟に関する一貫した政策の遂行を求める目的でまとめられた「第3次アーミテージ報告」が発表されました。「アーミテージ報告」は、自衛隊の集団的自衛権行使容認を念頭に、米軍との共同対処を含めた日本の新たな役割の検討と任務の見直しを求めていますが、民主党も自民党もこの「アーミテージ報告」にひれ伏しています。

 なぜ民主党も自民党もひれ伏すのかと言えば、根本に日米安保条約があるからでしょう。

「九条の会」の草の根運動で、国民主権を取り戻そう!

 国民はこんな危険な流れを求めてはいません。国民が求めているのは、平和で安心して暮らせる社会であり、原発ゼロ、消費税増税反対であり、被災地と被災者の立場に立った復興であり、オスプレイ反対であり、雇用の確保と格差の根絶です。尖閣諸島などの領土問題にしても大半の国民は、武力的圧力の増強ではなく、話し合いと外交交渉による解決を求めています。

 ところが現実の政治は、アメリカと財界の言いなりで、国民の声とは正反対の政治がまかり通っています。今の政治状況は「主権在民」ではなく、「主権在米」「主権在財」です。主権者たる国民の声を無視する政治は憲法違反であり、憲法否定です。

 今こそ「九条の会」の草の根運動の出番です。かつて九条の会の草の根運動は、国民世論を護憲に変え、以前の安倍「改憲まっしぐら」政権を崩壊に追い込んだ経験を持っています。もう一度気を引き締め直して、「九条の会」の草の根の活動を活発に展開し、改憲の芽を摘み取り、国民主権を取り戻しましょう。

─反戦名作映画連続上映第4弾─ 11・30映画「ひろしま」上映会

映画「ひろしま」画像

映画人九条の会8周年イベント

 映画人九条の会は8周年イベントとして、幻の原爆映画と言われている「ひろしま」の上映会を行います。
 この映画「ひろしま」が描く原爆投直後の地獄絵図のような映像は、あまりに凄まじく、観るものを圧倒します。この機会にぜひ映画「ひろしま」をご鑑賞ください。
 出演は月丘夢路、岡田英次、山田五十鈴ら。
 関川秀雄監督作品 〔1953年/モノクロ/1時間44分/プロジェクター上映〕

11・30映画「ひろしま」上映会
日時
2012年11月30日(金) 18:50挨拶、19:00上映開始
場所
東京・文京区民センター3A
東京都文京区本郷4-15-14 電話03-3814-6731
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩5分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩0分
参加費
1000円
主催&問い合わせ先
映画人九条の会

映画用フィルムはその役割を終えたのか

 今年9月、「富士フィルム、映画用フィルムの生産停止」の見出しで報道がなされ、業界に激震が走りました。映画用フィルムは世界でも富士フィルムのほか、イーストマンコダック(米)、アグファ(独)の3強でほぼ独占されてきましたが、いずれも映画用フィルムを継続的に生産する可能性は低いと見られています。この100年余り、映画はフィルムによって作られ、上映され、保存されてきました。21世紀初頭のいま、映画フィルムの終焉が遂に訪れるのでしょうか。

 急速なデジタル化の波は、撮影現場から浸透し始め、最近では国内作品の8割近くがデジタル撮影で作られています。映画館もこの2年で急激にデジタル上映設備が普及し、来年中には全国のシネコンでその導入が完了するといいます。

 しかし、映画フィルムがその役割を終えたとは言い切れません。フィルムとデジタルの表現方法にはそれぞれに有意性があると言われ、「東京家族」や「北のカナリアたち」のようにフィルム撮影で製作される映画が今なお続いているのです。

 映画の保存も危機的です。フィルムは100年以上に渡る保存が実証済みですが、デジタルによる映画の保存は未知の領域で、識者はフィルムに勝る保存法はないと公言します。国立近代美術館フィルムセンターの収蔵作品は6万5千本と言われ、その全てがフィルムです。フィルムメーカーがその製造を停止することで、収蔵された過去の旧作名作の修復、再上映、複製が危機に晒されます。

 経済的効率的な理由が原因で映画フィルムが姿を消そうとしていますが、映画の作り手、映画館、そして保存の各分野で映画フィルムはその役割を終えるどころか、その必要性が今なお強く叫ばれているのです。

(梯俊明/映演労連書記長)

【お薦め映画紹介・1】 「希望の国」

いま一番のお薦め映画は、園子温監督の──「希望の国」

高橋 邦夫(映画人九条の会事務局長)

 いま一番のお薦め映画は、園子温監督の「希望の国」だ。「希望の国」は、これまで性と暴力の激しい描写で数々の衝撃的な映画を作ってきた園子温監督が、原発問題にストレートに向き合って作った人間ドラマである。
 福島原発事故の数年後、九州の原発がまた事故を起こす。“希望のない国”で希望を求めながら一歩一歩あるくしかない人々の姿が切ない。認知症の母親役を演ずる大谷直子の姿が、たまらなく切ない。
 今年のトロント国際映画祭で「最優秀アジア映画賞」を受賞した。すでに10月10日より新宿ピカデリー他でロードショー公開されているが、今後も全国の劇場で公開が予定されている。ぜひ観てほしい映画である。

【お薦め映画紹介・2】 「東京家族」

山田洋次監督の50周年記念作品 「東京家族」

梯 俊明(映画人九条の会運営委員/映演労連書記長)

 瀬戸内海の島で隠居生活を送る老夫婦(橋爪功・吉行和子)が東京に居を構える子供達を訪ねて上京するも、多忙な日常を送る子供らからは敬遠される。気を利かせてプレゼントした豪華ホテル宿泊も、老夫婦には馴染めず一泊しただけで戻ってしまう。大切なはずの家族なのに、時として煩わしく思ってしまう……。
 本作は山田洋次監督50周年の記念作品として、周知の名作「東京物語」をモチーフに製作された映画です。故・小津安二郎監督の「東京物語」は公開から歳月を経る中で、今では世界的にも極めて評価の高い映画と位置付けられています。観る側の立場としましても、それを意識せずに本作を鑑賞することは困難かも知れません。
 しかし、両作品に通ずる家族という普遍的なテーマは、戦後間もない昭和の姿と震災から間もない現代のそれとを、何の違和感もなく射抜いて見せます。同時に、社会的不安の拡がる今だからこそ描かれる家族、人と人とのつながりが画面を通して感じることの出来る作品だと思います。
 出演は橋爪功、蒼井優、妻夫木聡、吉行和子など。2013年1月19日全国公開。

「山田和夫さんのお別れ会」に約130人が参列

 今年8月11日に亡くなられた山田和夫さん(映画人九条の会代表委員/映画評論家)のお別れ会が11月4日、東京・新宿住友ビル49階スカイギルドで行われました。会場を埋めた130人の参列者は、個人を偲び、慰霊に献花してお別れを告げました。
 日本映画の民主的復興に向けて一貫して闘い続け、映画人九条の会の結成に尽力された山田和夫さんに、映画人九条の会としても心からのご冥福をお祈りいたします。

【情報コーナー】

11・11反原発100万人大占拠に
 首都圏反原発連合は11月11日(日)、東京の永田町・霞ヶ関一帯で100万人規模の超大規模大占拠行動を行います。原子力ムラの本拠地とも言えるこの場所で、「原発はいらない!」の強大な声を上げましょう。行動の詳細は、反原連のHPなどでご確認ください。
 またこの日は、全国各地で「なくせ原発11・11行動」が展開されます。
「九条の会」からの訴え
 「九条の会」は9月29日、東京・日比谷公会堂で「九条の会講演会──今、民主主義が試されるとき」を開き、1800人が参加しました。講演会では、呼びかけ人の大江健三郎、奥平康弘、澤地久枝の3氏が、九条をめぐる危険な動きなどが語られ、小森陽一事務局長から以下の訴えが紹介されました。
 「明文改憲、集団的自衛権の行使容認などの解釈改憲の動きが強まる重大な情勢のもとで、学習と対話活動が重要になっており、草の根からの世論の盛り上げが重要になっています。
 『九条の会』は呼びかけ人などによる憲法セミナー、事務局主催の学習会を開きます。各地の九条の会も草の根の学習会を連続して開きましょう。
 来年の秋には憲法についての討論集会を開きます。全国から結集しましょう。」

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