映画人九条の会Mail No.46

2012.1.23発行
映画人九条の会事務局

目次

国民を見ずに暴走する野田政権に、憲法の旗を!

 2012年も明けてすでに24日が過ぎましたが、今年もよろしくお願いいたします。

 昨年は震度7、M9という巨大地震と大津波、レベル7という最悪の原発事故、さらには台風、豪雨、洪水などが相次いで私たちを襲い、日本国民の生存権がおびやかされた年でした。

 憲法が保障する「平和で幸せに生きる権利」に基づいて、被災者本位の復興と被災者の救済、補償、原発事故の収束と脱原発などが緊急の課題として実行されなければならなかったのに、政治は政局に終始し、民主党政権3人目の首相となった野田首相は、「どじょう内閣」という触れ込みとは真逆の、国民無視の暴走を始めました。

 国のあり方を壊しかねないTPP交渉参加を強引に進め、「脱原発依存」に背を向けて原発輸出に踏み切り、「冷温停止状態」を理由に福島第一原発事故の「収束宣言」を行い、八ツ場ダムの工事継続を決め、普天間基地の辺野古移設問題で「環境影響評価書」を未明にこっそりと県庁の守衛室に運び込んだあたりで、皆さんの口は開いたまま塞がらなくなったでしょう。

 野田政権は昨年年末には更に消費税を2014年に8%、2015年に10%に増税するという「社会保障と税の一体改革素案」を決めました。「社会保障と税の一体改革」と言いますが、実態は社会保障改悪と消費税増税です。1月13日には内閣を改造し、しゃにむに増税と社会保障改悪、そして憲法改悪に繋がりかねない議員定数削減に突き進む構えです。

 国の公的債務は今年3月で1000兆円を超すと言われ、消費税増税は財政再建のために必須、などと言われていますが、消費税増税による財政再建の道筋はなんら示されていません。第一、経済専門家によれば、消費税増税で財政再建するには消費税を25%程度にまで上げなければ実現できないと言われています。政治の根本を変えることなしに増税だけしても財政再建などできるはずはないのです。消費はいっそう冷え込み、日本経済は破綻し、国民生活が破壊されるだけです。

 作家の高村薫さんも「これほど国民を見ていない政権もめずらしい」(2011年12月22日東京新聞夕刊)と語っていますが、野田政権が顔を向けているのは本当にアメリカと財界だけだということを痛感する日々です。

 国会が民意とかけ離れている状況の中で野田政権のこの暴走を止めるには、私たち国民が一人ひとり声を上げ、行動を起こす以外にありません。憲法12条には、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と書かれています。

 国民を見ずに暴走を続ける野田政権に「平和で幸せに生きる権利」を保障した憲法の旗を突きつけ、その「平和で幸せに生きる権利」を保持するために私たち国民は、憲法12条に基づいて声を上げ、署名を集め、デモや集会などの行動に参加しましょう。

 2012年という年は、そういう行動が必要な年になりそうです。まもなく3月11日もやってきて、さまざまな行動計画が組まれます。今年一年、皆さまとともに頑張りましょう。

映画人九条の会運営委員一同

1月24日、映画人九条の会7周年イベント 「バベルの塔」上映会大成功!

 昨年11月24日、映画人九条の会7周年イベントとして行われたドキュメンタリー映画「バベルの塔」上映会(於.東京・文京シビックセンター5階)は、会場の定員を上回る68名の参加で大成功しました。

 映画「バベルの塔」は、京都映画人九条の会会員での垣博也さんが監督した70分の最新ドキュメンタリー映画で、立命館大名誉教授の安斎育郎さん、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん、元静岡大学教授の深尾正之さんの5時間に及ぶロングインタビューを中心に構成され、六ヶ所村の再処理工場や福島第一原発の20キロ警戒区域まで入って現地取材した映画です。上映後の会場からは「私のところでもぜひ上映会をやりたい」との発言が相次ぎました。

 映画の上映後は、原発問題住民運動全国連絡センターの野村存生事務局次長がコメンテーターとして発言し、「この映画は原発と放射能の危険性を明らかにしているが、なんで日本はこんな危険なものを54基も作ったのか。その社会的、制度的な危険性にも眼を向ける必要がある」などと語りました。

 またこの上映会には、映画人九条の会代表委員の神山征二郎監督、高畑勲監督、ジャン・ユンカーマン監督も参加され、それぞれ挨拶されました。ジャン・ユンカーマン監督は「九条を守ることで集まった九条の会が、原発問題を取り上げていることにびっくりした。でもそれは、やるべきことだ。軍事問題とエネルギー問題はどこかで繋がっているから」と語りました。

映画人九条の会7周年に寄せられたジャン・ユンカーマン監督(代表委員)のメッセージ
7年間お疲れ様です。これからも力合わせて戦争のない、原発のない世界へ進みましょう。
映画人九条の会7周年に寄せられた高畑勲監督(代表委員)のメッセージ
このたびの原発事故への政府やマスコミの対応に、戦時中の大本営発表や翼賛体制を思い出さずにはいられませんでした。そして同時に、憲法九条の歯止めがなくなったとき、この國で起こるであろうことの恐ろしさに思いを致し、慄然としました。
今こそ、核のない世界で平和のうちに暮らす権利を主張し、日本国憲法前文・九条・二十五条を真に意味あらしめようとする人々が、さらにさらに増えてほしい。映画人九条の会七周年にあたり、それを私は心から願います。

●日本映画産業の状況 スクリーン数は減少に転じ、興行収入は80%に落ち込む!

 2011年の映画界は、3月11日の東日本大震災の影響が長引いた一年でした。マグニチュード9.0の大地震とそれに伴う大津波によって、東北〜北関東の映画館が直接的な被害を受けました。そこに電力不足による計画停電や営業自粛が追い討ちを掛けました。一連の大震災によって、泉コロナシネマワールドとシネマックス鴻巣などが閉館に追い込まれ、仙台コロナワールドやシアターフォルテなどが長期的な休館を余儀なくされています。

 また、多くの作品の上映・製作が、中止・延期されました。「のぼうの城」は、内容面から公開を一年延ばし、「唐山大地震」は上映のめどが立っていません。山田洋次監督「東京家族」、北野武監督「アウトレイジ2」などの製作が延期となりました。

 こうした震災の影響もあり、昨年の日本映画界の興行収入は2010年対比80%の1800億円前後に落ち込みました。100億円を越えるビックヒット作は皆無で、邦画では50億円以上の作品も出ませんでした。

 その中でも健闘した作品は、TV局が主導して製作する東宝配給作品と、3D洋画大作が大部分を占めています。これは、過去最高の興行収入を上げた前年と同様の傾向であり、パイが縮小する中で優勝劣敗がはっきりしていることを示しています。

 また、2011年はスクリーン数が減少を始めた年として記憶されることになるでしょう。72スクリーンも減少したのです(長期的な休館劇場を含む)。これはシネコンが日本に登場した1993年以来、実に18年ぶりの減少です。2012年もシネコンの開業予定が少ないことから、引き続き大幅なスクリーン減が予想されます。

 昨年は劇場のデジタル化が一気に進んだ一年でもありました。VPF(ヴァーチャル・プリント・フィー)の仕組みが成立し、スクリーンの過半数がデジタル化されました。2012年はさらにデジタル化が加速していく見通しですが、その一方でデジタル化の波に乗れないインディペンデント系の興行会社の経営が立ち行かなくなる可能性が出てきています。また、35mmプリントの制作を請け負ってきた現像所の経営基盤も大きく揺らいでいます。世界一の映画用フィルム製造会社であったイーストマン・コダック社の倒産も大きな影響を及ぼすでしょう。

 2012年も昨年同様に興行収入の低迷が続くようだと、経営体力のない興行会社や中小規模の配給会社の経営悪化がいよいよ深刻さを増します。日本の映画界は、新たな危機と大きな変化の節目に立たされていると言えるでしょう。   (映演労連2012年春闘方針書より抜粋)

【お薦め映画紹介】 ドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」DVDが発売に!

 北緯61度14分、東経21度28分に位置するフィンランド・オルキルオト島に、世界初となる高レベル放射性廃棄物の最終処分施設「オンカロ」(フィンランドで「隠し場所」の意味)が建設されています。

 「100,000年後の安全」はこの「オンカロ」を取り上げたドキュメンタリー映画で、マイケル・マドセン監督によって2009年に製作され、公開と同時に各国で大きな反響を呼び、2010年パリ国際環境映画祭グランプリ、2010年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭最優秀グリーン・ドキュメンタリー賞、2010年コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭有望監督賞などを受賞した作品です。

 日本での公開は2011年4月。東日本大震災発生直後に引き起こされた福島第一原子力発電所事故の実態が、政府・東京電力・経産省原子力安全・保安院によってひた隠しにされ、メディアには連日のように原子力発電推進派の専門家が登場して「安全」が強調される中で、国民の不信と不安が極限にまで高まっていた時期の緊急公開でした。渋谷アップリンクを皮切りに、静かな衝撃と波紋を広げながら、2011年10月には公開劇場が70館を越え、現在に至るまで全国各地での上映が続いています。そして2011年12月23日にはDVDが発売されました。

 原子力発電によって発生する高レベルの放射性廃棄物は世界に少なくとも25万トンあり、放射能レベルが生物にとって無害となるまでには最低10万年を要する。この厳然とした事実を見据えるところから映画は始まります。

 原子力を発電に利用すると高い発熱・強い毒性・長い半減期を持つ高レベル放射性廃棄が必ず発生する、つまり原子力発電所とは高レベル放射性物質の製造装置であるとも言えるわけですが、大量に発生し続けるこの「核のゴミ」の最終処分は現在、世界のどの国においても実施されていません。

 使用済み燃料や、再処理で製造したガラス固化体はいずれも高レベル放射性物質で、発熱が一定程度にさがるまでの期間(数十年〜100年)、中間貯蔵施設に貯蔵され、その後、最終処分されることになるはずなのですが、いずれの国もこの中間貯蔵までしか行っていません。大量の「核のゴミ」が未来の子どもたちへ押し付けられようとしているのです。

 恒久不変な解決法あるいは長期的で安全な解決法はあるのでしょうか?

 フィンランドの選択は永久地層処分です。強固で安定した岩盤を地下深く掘削して10万年の耐性をもった堅固な最終処分場を建設し、そこに中間貯蔵を終えた高レベル放射性物質を埋設する。埋設が完了した時点で施設を閉鎖・封印し10万年に渡って人類や生物から隔離し続ける……。

 10万年という気の遠くなるような時間、人類誕生から今日に至るのと同程度の時間をコントロールするというこの壮大なプロジェクトは果たして成功し、恒久不変な解決法となりえるのでしょうか?

 プロジェクトに携わる、研究者、管理会社の経営者、建設作業員や、神学・哲学者など様々な人々へのインタビューと美しい映像・音楽によって構成される本作は、「核」を手にしてしまった21世紀の人類の責任と課題を私たち一人一人に問いかける力作です。

【情報コーナー】

映画人九条の会、反戦映画の名作連続上映会を企画
映画人九条の会は今年の中心的な活動として、反戦映画の名作を連続上映することを計画しています。第一回は3月か4月に、武田敦監督の「沖縄 第一部/一坪たりともわたすまい」(1970年/主演・佐々木愛・地井武男)、第二回は6月頃に木下恵介監督の「陸軍」(1944年)、第三回は8月頃に今井正監督の「あゝ声なき友」(1972年/主演・渥美清)を予定しています。
来たる3月11日、全国で「なくせ原発!一斉行動」が
まもなく東日本大震災と原発事故から1年になろうとしていますが、3月11日は全国で「なくせ原発!震災・原発事故からの復興を!3・11全国一斉行動が」取り組まれ、東京集会も予定されています。
また2月11日には「さようなら原発1000万人アクション」が行われ、東京では13時半から代々木公園で集会などが行われます。
JCJCASTに注目を!
USTREAM(ユーストリーム)のJCJCASTにご注目ください。USTREAMはネットを使った無料の動画共有サービスで、放送局が行っているのと同じようにライブ映像を全世界に向けて放送できるサービスですが昨年、マスコミ九条の会やJCJ(日本ジャーナリスト会議)の有志によってJCJCASTが開設されました。
JCJCASTは、「9.19さようなら原発集会」「なくせ!原発10.30大集会in福島」「12.3脱原発でひらく新しい日本集会」「さようなら原発。平和・9条音楽と講演のつどい/小森陽一講演」などを生中継してきています。これらの映像は、今でもJCJCASTで視聴できます。パソコンをお持ちの方、ぜひ一度JCJCASTをクリックしてみてください。

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