映画人九条の会Mail No.45

2011.10.31発行
映画人九条の会事務局

目次

憲法審査会の始動は許さない! ─今まで以上の力を結集して、憲法をまもり活かす運動を!─

 10月20日参両院本会議で、憲法審査会委員の選任を民主・自民・公明各党の賛成多数で強行しました。

 安部政権下、当時野党であった民主党も反対する中、自民・公明両党が数の力で強行採決した「改憲手続き法」は、多くの国民の批判にさらされ、施行されても憲法審査会は始動させることができませんでした。2009年「国民生活が第一」とする公約に国民の期待を託され政権の座に就いた民主党も、「憲法審査会は始動させない」ことを明言していました。

 ところが、改憲論者である野田首相が新政権発を発足させるやいなや、「ねじれ国会では自民・公明両党の協力なしには法案が成立させられない」ことを口実に、審査会委員の選任が強行されてしまったのです。日本の国のあり方、民主主義の根本を決める憲法問題を、国会対策の一つとして党利党略的に利用するような政治は、決して許されるものではありません。

 また野田首相は米軍普天間基地について、名護市辺野古への移設を表記した日米合意遵守を改めて強調、閣僚が毎日のように沖縄に足を運び、「年内に環境アセスの報告書を沖縄県に提出し、基地建設に向けた手続きを開始したい」と公言しています。県知事も名護市長も断固拒否の姿勢をつらぬいていますが、野田政権は沖縄県民の意思を踏みにじってでも対米従属の方針を強引に推し進め、憲法9条を実質的に破壊しようとしています。 さらに、選挙制度改悪の動きも画策されています。10月19日より衆議院の選挙制度に関する各党協議会がすべての政党の参加のもとで始まっています。 現行の小選挙区制度は、4割の得票で7割の議席を独占できる、比較第1党に有利に民意をゆがめる最悪の反民主主義的な選挙制度です。ほとんどの政党が小選挙区制は政治の劣化を生み、民意を切り捨てるものだと批判していますが、民主党や自民党は、いちばん民意を反映する比例代表の定数の削減を目指しているのです。民意をゆがめている小選挙区制そのものこそ抜本的に見直されるべきです。

 福島第一原子力発電所の事故が収束の目処が断立たず、放射性物質の放出が続く中、野田総理は9月24日の国連演説で、「来夏にかけて原発を再稼動する、原発の安全性を高め、世界の原子力利用に供する(輸出を続行する)」と発言、これは脱原発依存から180度方向転換した「原発推進宣言」です。また、被災地の復興が遅々として進まない中、TPP(環太平洋連携協定)参加や「税と社会保障の一体改革」など、国民・被災者にさらなる犠牲を強いる政策を強引に推し進めようとしています。

 発足から2ヶ月足らず。国民が期待を託した公約をことごとくかなぐり捨て、自民・公明両党へすり寄る野田政権の執政は、「国民のために汗をかくどじょうのような政治」などでは決してなく、国民、被災者を食いものにして対米従属、財界奉仕に邁進しようとする政治に他ありません。

 3月11日以来、日本国憲法が保障する私たち国民の生存権がかつて無いほど脅かされてきましたが、野田政権の発足と彼らが推し進める改憲・原発推進・増税政策によって、日本国憲法そのものが存亡の危機に陥れられようとしています。

 今まで以上の力を結集し憲法をまもり活かす運動で、この危機を乗り越えましょう。

映画人九条の会7周年の11月24日に、最新ドキュメンタリー映画「バベルの塔」上映と原発問題を考える集い

 あのチェルノブイリ事故から25年が経った今年、3月11日の東日本大震災とともに放射能の災厄がまたも日本を襲いました。あたかも「バベルの塔」の伝説のように。
 京都映画人九条の会会員で、おもに東映京都撮影所で助監督として働いている垣博也さんは、矢も楯もたまらずこのドキュメンタリー映画「バベルの塔」を制作しました。京都映画人九条の会が全面協力しています。
 映画「バベルの塔」は、長年にわたって国の原子力政策を批判してきた工学博士の安斎育郎さん、原発問題で一躍注目を集めている京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん、元静岡大学教授で核融合炉などを研究してこられた深尾正之さんの5時間に及ぶロングインタビューを中心に、六ヶ所村の再処理工場や、被災地福島県の20キロ警戒区域まで入って現地取材した、70分の最新ドキュメンタリー映画です。
 またこの映画は、原子力発電の基本的問題を分かりやすく解説しており、今後のエネルギー問題を考える上でも大いに参考になる映画です。
 映画人九条の会は、ちょうど満7周年にあたる11月24日、この映画「バベルの塔」を上映して原発問題を考える集いを企画しました。
 コメンテーターとして原発問題住民運動全国連絡センターの野村存生事務局次長も参加されます。
 映画人九条の会の皆さまだけでなく、原発問題に関心を持たれている多くの皆さまのご参加を、心からお待ちしています。

最新ドキュメンタリー映画「バベルの塔」上映と原発問題を考える集い
監督
垣博也(京都映画人九条の会会員)
日時
2011年11月24日(木)18:45〜20:30
場所
東京・文京シビックセンター5階・区民会議室AB
東京都文京区春日1-16-21 電話03-3812-7111
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
参加費
700円
コメンテーター
野村存生(原発問題住民運動全国連絡センター事務局次長)
主催
映画人九条の会

映画人九条の会へのメッセージ

ドキュメンタリー映画「バベルの塔」監督 垣 博也

 その光を見た時、この世の終わりを予感して身の毛がよだちました。北関東から東北はどうなるのだろうか? と暗澹たる思いになりました。福島原発の爆発の生中継を見た瞬間のことです。その後の報道は「直ぐにどうという事はない」「安全です」との連呼。ACのCMが耳につくと批判されましたが、それ以上に不快な思いをしました。
 ある年配の方は「今の原発報道は(戦時中の)大本営発表の様で怖い」とおっしゃっていました。それは市民感覚で感じた報道の危険性でしょう。同じ危険性を感じていて、マスコミの末端にいるものとして、映画人として、このままでいいのか? この淀んだ気持ちが、テレビが報道できないなら映画という媒体で原子力発電の真実を伝えようと決意させました。
 使用済み燃料が福島4号機の火災を発生させました。使用済み核燃料がいかに危険かが明確になり、そしてそれは1万年以上の管理が必要なものであるという途方もないゴミであります。使用済み核燃料を中心に構成することにしましたが、結局、そこに全ての問題が集約されていました。使用済み核燃料は放射能の塊であり、それが現在の東福島に被害を与えているのですから。
 撮影するにあたって、色々な団体に連絡を取ると、あっという間に絆が広がりました。特に、出版ネッツからは福島取材中のジャーナリストを紹介され、福島の20キロ放射能警戒地域の中へカメラを持ち込むことが出来ました。
 頭で知っていたことを直に学者の方々からお伺いすると、改めて驚きがあります。そして(というか、やはり)、原子力は戦争の技術であったことが明確になり、青森の方々は再処理工場が造られたことを差別と感じておられます。除染作業中の人に生の声を聴くことも実現。
 撮影スタッフには自転車をひたすらこいで電気を灯してくれた大学生や、図版を描いてくれたイラストレーターなど、多くの人が関わっています。
 被災地ではまだまだ大変な状況が続いています。映画にも登場されたエム牧場では、今も放射線量が高い数値を示していますが、「1年後、2年後にこの牛たちやその子牛がどうなっているか。その経過を観察するため」牛を飼い続けておられます。
 現実から目を離さないためにも、もっと多くの人にこの映画を見ていただきたいと思います。
 ドキュメンタリー映画『バベルの塔』はブルーレイ・ディスクを5万円+消費税にてレンタルします。有料無料を問わず上映会をしていただければありがたいです。

 連絡先は、「ドキュメンタリー映画『バベルの塔』製作委員会」080-1523-2162(垣)
 E-Mail babel2011@hotmail.co.jp。

【お薦め映画紹介】
─アラン・レネ、89歳にして新作発表。飛行機と操縦に関心を持つ、男と女のときめく心の交流─ 「風にそよぐ草」(仏・伊合作)

羽渕 三良(映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 女性は名前をマルグリットと言い、30歳代の独身の歯科医師である。ある日街に靴を買いに出て、靴を買って店を出た直後、若い男にバッグを引ったくられるという突発事故に遭う。
 他方、男性は定年後を家庭でおくる初老で、名前はジョルジュという。時計の電池を店に取り換えに行く。車の駐車場にもどって、真っ赤な色の財布を拾う。お金はすでに抜き取られていて、小型飛行機の操縦免許証が入っている。男はその免許証に貼付されている女性、マルグリットの写真を見て、伝説的な女性飛行士に似ていることから、心の中で何かがはじける。男はどのようにして女に財布を届けようか、といろいろ思案した結果、警察にその赤い財布を届ける。
 翌日のことだった。子どもたちと夫婦で食卓を囲んで食事をしようとしている時、女性のマリグリットから電話がかかってくる。
「なんでしょうか」(ジョルジュ)
「お礼を」(マルグリット)
 ただそれだけ。男はマルグリットの対応にがっかりする。
 男は女の住宅を訪れて、かつて飛行機を操縦することが自分の夢だったことを書いた手紙をポストに入れる。彼女からは返事が来ない。男は女の車のタイヤをナイフで引き裂き、これが警察沙汰となって進む。二人の交流は縺れながら進展する。
 何日かたってマルグリットは夜、ジョルジュに電話を入れる。妻から映画館に出かけていると聞き、彼女は「シネマ」というネオンサインが輝いている映画館街のカフェで待つ。男が観ている映画は、飛行機が飛び交う、朝鮮戦争の映画。映画が終わって男が姿を現し、女が男を追う。女は心の中で情熱に火がつき、もうこのままでは収まりがつかないことに気づく。さあ、ラストまでどう展開するか──。
 この作品の監督は、フランスの巨匠アラン・レネ。1922年生まれの89歳。ヌーヴェル・ヴァーグ(「新しい波」という意味。1958年頃からフランス映画界に登場した映画革新運動)のセーヌ左岸派の一人。日本では、記憶と忘却をテーマに、原爆を受けた広島を舞台にした、フランス女性と日本人男性との邂逅を描いた『二十四時間の情事』(1959年=主演エマニュエル・リヴァ/岡田英次)で有名である。
 この作品はカメラが自由自在。上からの鳥瞰や、左から右へ、右から左へと流麗に流れる。熟達した映像表現。大人の遊びの精神と、観客に挑戦してくるような映画作り。これらがこの映画の大変な魅力である。
 12月17日(土)から岩波ホールほか全国で順次公開される。

【情報コーナー】

12月3日(土)に、「脱原発でひらく新しい日本」集会!
 映画人九条の会も参加するマスコミ関連九条の会連絡会主催の「脱原発でひらく新しい日本」集会が12月3日(土)10:30〜16:30、東京・内幸町のプレスセンターホールで行われます。
 10:30からの第1部は、「フクシマ」克服の道筋を問う、をテーマに、岡本厚さん(「世界」編集長)の司会で澤地久枝さんと金子勝さん(慶応大学教授)が講演します。
 12:45からの第2部は、脱原発と政治の役割・課題をテーマに、各政党の代表者が発言します。社民党からは福島瑞穂さん(党首)、日本共産党からは小池晃さん(政策委員会委員長)が参加します。民主党議員にも要請中です。
 14:30からの第3部は、メディアの責任とジャーナリズムの課題をテーマに、桂敬一さん(マスコミ九条の会呼びかけ人、元東大教授)の司会で、鎌田慧さん(ノンフィクションライター)、佐藤敦さん(東京新聞社会部長)、松元剛さん(琉球新報政治部長)、岡本厚さんらによるパネルディスカッションです。参加費は資料代として1000円。ぜひご参加ください。
12月14日(水)には、「さようなら原発。平和・九条」音楽と講演のつどい!
 九条の会東京連絡会は12月14日(水)19時より、東京・なかのZERO大ホールで2012年への新たな展望をきりひらくことをめざして、「さようなら原発。平和・九条」をテーマに「音楽と講演のつどい」を開きます。歌はテノール歌手の新垣勉さん、講演は小森陽一さん。参加費2000円。申込は九条の会東京連絡会 TEL03-3518-4866

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