映画人九条の会Mail No.41

2010.10.28発行
映画人九条の会事務局

目次

際限のない解釈改憲を続ける菅政権!

 今年9月10日、民主党政権下初となる「2010年度版防衛白書」が刊行されましたが、ここには公約を平然と破ってでも解釈改憲を押進め、米国軍事戦略に全面的に追従しようする菅政権の危険な安保政策が明確に示されています。

 白書は、「日米安全保障条約締結50周年」という節を設け、日米同盟を深化させ、安保協力を一層拡大するための協議を進めていることを明らかにするなど、米国の軍事戦略への全面的な追従の姿勢が示されています。昨年総選挙時の民主党のマニュフェストには、「対等な日米関係をつくるため、自主的な外交戦略を構築する」と掲げられていたはずです。

 また同マニュフェストでは、「米軍再編や在日米軍基地の在り方についても見直しの方向で臨む」としていたにもかかわらず、抑止力としての在日米軍駐留の意義を強調、在沖米海兵隊の意義・役割についても図表つきで解説し、「国外・県外への移設」を否定しています。

 さらに、民主党が以前批判していた自衛隊のインド洋やイラクへの派兵を、「わが国を含む国際社会の平和と安全の維持に資する」ものだったと評価、自衛隊海外派兵恒久法について「国際社会の平和と安定のため積極的な協力を行うに際し、行うべきかを含めさまざまな課題について研究していく必要がある」と表明し、海外派兵のいっそうの促進を打ち出しています。

 その上白書は、菅首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想──『平和創造国家』を目指して」(8月27日提出)の要約を掲載しています。

 これは、年末に策定予定の「防衛計画大綱」の基本的な内容を形成するという位置づけでまとめられたものですが、その内容は「基盤的防衛力」構想(侵略を阻止する最小限度の防衛力を保有する)すら否定して、「動的抑止」の有効性を説いて専守防衛政策からの脱却を促し、集団的自衛権行使の容認、政府の憲法解釈の変更をも促すなど、憲法上の歯止めを全面的に取り払う方向性を打ち出した極めて危険な内容です。

 「非核三原則」についても報告書は、「一方的に米国の手を縛る」のは「賢明でない」と言い、兵器の海外輸出を原則的に禁止してきた「武器輸出三原則」についても、財界や兵器産業界の要望を受け入れて国際協力の「妨げ」だと攻撃しています。

 菅政権は、自公政権時代の日米軍事同盟基軸論と米国の拡大抑止力依存政策を踏襲するだけでなく、加速強化しようとしていることは明白です。韓国の哨戒艦沈没事件や尖閣諸島問題などが起こってはいますが、アジアでも世界でも紛争を戦争でなく政治的に解決する流れが大勢となっているときに、「軍事脅威」をことさらあおり軍事力強化に突き進むのは、世界の流れに背くものであり、時代遅れで、憲法との矛盾を広げるものです。

 世界平和のために日本がやるべきは、軍事行動ではなく、憲法9条を生かして政治的外交的手段で平和に貢献することです。際限のない解釈改憲を続けて軍事大国への道を突き進むのではなく、9条を持つ国として、世界とアジアの平和の流れを加速することこそ日本が果たすべき役割であり、それが多くの国民の願いではないでしょうか。

民・自が参院「憲法審査会」の始動で一致!

 民主党の羽田雄一郎参院国対委員長と自民党の脇雅史参院国対委員長は10月19日、国会内で会談し、休眠状態となっている参院「憲法審査会」の始動に向けて審査会規程を制定し、委員を選任する方針で一致しました。

 「憲法審査会」は、2007年の改憲手続き法成立に伴って衆参両院に設置することになったもので、憲法改正原案の審査などを行う国会機関ですが、衆院は自公政権下の09年6月に規程を制定したものの委員はまだ選任されていません。参院では、民主党など当時の野党が多数を占めていたため、規程も制定されていませんでした。

 しかし審査会の規程がないことで、国民の権利が侵害された事実はどこにもありません。改憲手続き法に基づくものと言うなら、必要な法整備も進まない欠陥・改憲手続き法を凍結・廃止すべきです。

 結局この動きは、憲法9条を改憲する条件づくりにほかりません。国民の平和の願いに背く、改憲のための「憲法審査会」を始動させるくわだてに反対の声を上げましょう。

12月3日に映画人九条の会6周年の集い!

 今年11月24日に6周年を迎える映画人九条の会は、以下のように12月3日(金)の夜、東京・文京シビックセンターで「映画人九条の会6周年の集い」を行います。

 記念講演の講師は明治大学教授の山田朗先生、テーマは「民主党政権の危ない防衛政策と憲法」です。皆さん、ぜひご参加ください。

★映画人九条の会6周年の集い★ 民主党政権の危ない防衛政策と憲法
●日時
2010年12月3日(金)18:45〜20:30
●場所
東京・文京シビックセンター5階・区民会議室C
東京都文京区春日1-16-21 電話03-3812-7111
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分
都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
●資料代
500円
●講師
山田朗・明治大学教授

「国民生活第一」を掲げ、国民の大きな期待を担って政権交代したはずの民主党ですが、最近多くの皆さんがおかしいと感じています。菅政権になってからは、まるで小泉時代の対米従属・大企業べったりの「構造改革」路線に逆戻りした感があります。

 特に防衛問題でそれが顕著です。菅首相は「日米同盟を深化させる」とまで言い、沖縄・普天間基地の移転問題では、沖縄県民の総意を無視して辺野古への移転を決めた「日米合意」を強行しようとしています。

 菅政権になって初の「防衛白書」では、軍事力至上主義を掲げています。そして、民意を切り捨てる衆院比例定数80削減への固執です。その先には、憲法改悪が待っているのでは……。

 映画人九条の会は6周年の集いでは、軍事問題の第一人者である明治大学の山田朗教授に、「民主党政権の危ない防衛政策」をスバリと切ってもらおうと思います。

 民主党政権と憲法改悪に危機感を持っている皆さん、ぜひともご参加ください。

11月13日(土)は「東京・9条まつり」に参加しよう!

 東京中の九条の会が一堂に集まって、学んで、交流して、元気百倍で9条をひろげようという「東京・9条まつり」が11月13日(土)、東京・大田区産業プラザP10(京急本線蒲田駅徒歩4分、JR蒲田駅・池上線蒲田駅とも徒歩12分 電話03-3733-6600)で行われます。

 お祭り広場や小森陽一さんのビッグ対談、映画上映、日野原重明さんの特別スピーチ、合唱「ぞうれっしゃがやってきた」、ピアノと歌、雨宮処凜さん、蓮池薫さんのトーク、落語、五日市憲法草案などなど、魅力いっぱいです。映画人九条の会も映画「加藤周一幽霊と語る」、日本初公開の「ハーツ・アンド・マインズ(ベトナム戦争の真実)」の上映を行います。

 オープニングは11時、ジェームス三木さんの登場です。皆さん、ぜひご参加ください。

 成功協力券は1,000円、問い合わせ・申し込みは「東京9条まつり実行委員会」(〒101-0061 東京都千代田区三崎町3-3-3 太陽ビル503 TEL:03-3239-6716 FAX:03-3239-6717 メール:mail@9jo-tokyo.jp)。

【投稿】 危機を深める映画産業

映演労連副委員長 河内 正行

 昨年、映画『沈まぬ太陽』を公開した角川映画だが、角川映画自体は3期連続の赤字を記録していた。4期連続の赤字に突入するのではないかと心配されていたこの秋、なんと角川ホールディングスは、2011年1月1日付けで角川書店と角川映画を合併すると発表した。存続会社は角川書店で、映画会社としての角川映画は無くなる。旧・大映を引き継いだ角川映画は、出版社の一部門になるのだ。

 私たちがもっとも危惧するのは今回の合併での従業員に対するリストラだが、すでに10月1日より「早期退職優遇制度」が実施され、個人面談も始まった。来年の合併後は、広域配転や映画事業の縮小も予想される。私たち映演労連は、今回の合併問題を注視し、映画事業縮小やリストラに対しては毅然と闘う準備を進めている。

 また9月28日には、東宝がTOBによる国際放映の完全子会社化を発表した。来年以降、どういう運営がされるのか、ここも赤字を理由にしたリストラに注意していく必要がある。

 上記2社は、赤字子会社を親会社が飲み込んでいく動きだが、改築による歌舞伎座閉館で演劇部門の柱が無くなった松竹では、映像部門再編の動きが加速しており、労働組合との労使協議が続いている。

 ワイズポリシーやシネカノンなど中小の配給会社の倒産も相次いでおり、独立系の映画会社の経営危機が続いている。

 アニメ産業もDVDの不振や作品数の減少で、『まんが日本昔ばなし』などの製作で知られるグループ・タックが倒産するなど、中小の製作会社の経営危機と、東映アニメーションやトムスなどの大手製作プロダクションのリストラ「合理化」が始まっている。

 昨年の映画興行成績は前年を上回り、邦画の興収も洋画を上回ったと言われているが、邦画のヒット作はテレビ局が主導する一部の「大作」に一極集中しており、若年層の映画離れも深刻になっている。

 スクリーン数は前年より37増加し、3,396スクリーンとなり(今年7月現在3,408スクリーン)、シネコンが占める割合は80.2%になった。この3,396スクリーンのうち、デジタル機器を備えているのは413スクリーン、さらにその内3D上映に対応できるのが325スクリーンとなっている。東宝シネマズが2012年の春までにデジタルシネマを全スクリーン対応させると発表(全て3Dにも対応)したことからも、今後3Dを含むデジタルシネマの急速な普及が予想される。しかしその負担は、劇場経営を大きく圧迫し始めている。

 洋画の低迷、シネコンの拡大と劇場経営の悪化、不況による製作スポンサー離れ、中小映画各社の経営危機──。DVD市場の低落で映画製作費の回収システムも崩れつつある。さらに経済不況がそれに輪をかけており、映画産業を取り巻く状況はますます厳しくなっている。

 中でも放送外収入に活路を得ようとするテレビ局主導の映画作りは、その宣伝戦略で映画会社を圧倒し、映画産業を席巻しようとしている。テレビ局による映画産業の変質と、「テレビドラマ的」な映画の増大は、私たちに不安と危機感を抱かせている。

【情報コーナー】

11月27日(土)、九条の会事務局主催「学習会」

 菅首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」から、「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想──『平和創造国家』を目指して」という報告書がでました。重大な解釈改憲の報告書です。
 九条の会事務局は11月27日(土)、この問題をテーマに東京で公開の学習会を行います。

  • テーマ:新安保防衛懇報告「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想──『平和創造国家』を目指して」について(仮称)
  • 日時:11月27日(土)15:00〜18:00(予定)
  • 講師:半田滋さん(東京新聞編集委員)、渡辺治さん(九条の会事務局)
  • 会場:在日本韓国YMCA地下ホール(水道橋駅下車)
  • 参加費:1000円
  • 主催:九条の会事務局

映画人九条の会事務局
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