映画人九条の会Mail No.37

2009.09.09発行
映画人九条の会事務局

目次

来る11月24日(火)、映画人九条の会5周年記念イベントとして 「原爆の子」上映会

 今年11月24日で結成5周年を迎える映画人九条の会は、5周年の記念イベントとして、11月24日(火)18:50から、東京・文京シビック小ホールで映画「原爆の子」の上映会を行います。

 映画「原爆の子」は、日本映画界を代表する巨匠・新藤兼人監督が、広島で被爆した子供たちが綴った作文をもとに脚本を書き、劇団民藝と共同で1952年に製作した、日本で最初の反核映画です。

 核兵器廃絶の世論が世界的に高まっている今、唯一の被爆国の人間として、憲法9条を持つ国の人間として、核兵器廃絶の声をあげることが求められていますが、映画人九条の会はこの映画の上映を機に、9条の運動と核兵器廃絶の運動がもっと強く結び付くことを願っています。

 映画「原爆の子」は、原爆投下の日、広島での保母をしていた教師が、7年後の夏休みにかつての園児たちを訪ねていくというストーリーを通して、原爆の悲惨さを日本映画として初めて描いています。主演は乙羽信子さんで、細川ちか子、清水将夫、滝沢修、北林谷栄、小夜福子、宇野重吉など民藝の皆さんが多数出演しています。

 この映画は、ほかではなかなか観られません。この機会にぜひご鑑賞ください。

日色ともゑさん(劇団民藝)と神山征二郎監督(映画人九条の会代表委員)が舞台あいさつ

 この「原爆の子」上映会に、「映画『原爆の子』は私の原点」と語る、劇団民藝の俳優・日色ともゑさんの舞台あいさつ(小講演)が決まりました。

 日色さんは、「原爆の子」を小学5年生の時に見て、「私の家は東京大空襲で焼け、祖母、叔母が亡くなったけれど、あの戦争で広島、長崎に原爆が落とされたことが私の胸に刻みこまれました」と語っています。

 また、新藤兼人監督のもとで助監督を務めてこられた神山征二郎監督が、映画人九条の会代表委員としてご挨拶される予定です。

日本初の反核映画! 巨匠・新藤兼人監督作品 「原爆の子」 上映会
1952年/100分/35ミリフィルム上映
■日時
2009年11月24日(火)18:50〜21:00
■場所
東京・文京シビック小ホール
東京都文京区春日1-16-21 TEL 03-5803-1100
地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩1分、都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩2分
■舞台挨拶
日色ともゑさん(劇団民藝)
神山征二郎監督(映画人九条の会代表委員)
■参加費
1000円 (協力券を事前に販売しています。電話、FAX、メールでも予約を受け付けます。)
■主催
映画人九条の会

「坂の上の雲」と司馬遼太郎

映画人九条の会運営委員 馬場和夫

 「たとえどんなに信頼できるプロデューサー、監督であっても、この作品の映画化は絶対にお断りする。それは映像化することによって、必ず軍国主義を肯定する結果になるからであり、それは私のこの作品の意図に全く反するからである」

 「坂の上の雲」の映画化の申し入れに対して、誰にでも一貫して拒否された司馬氏の言は、すべてこの言葉に尽きていた。

 私は1971年(昭和46年)、東宝が他社に先駆けた「合理化」第1号として、撮影所の映画製作部門を切り離した子会社(株)東宝映画を設立した時の専務に任じられ、企画の担当者としてこの作品を是非にと考え、企画部長でプロデューサーの故・椎野英之君や俳優座子会社「仕事」の社長の故・佐藤正之君とともに映画化の申し入れをした。当時、司馬作品の著作権関係を任されていた横浜の二橋進悟氏を介してねばり強く頑張ったが、司馬氏の姿勢は寸毫も動かなかった。

 同じ頃、後に大映を引き受けた徳間康快氏も山本薩夫監督で申し入れていたし、石原プロダクションも交渉していたが、お断りの理由は全く同一であった。

 映画、テレビを問わず、映像文化というものが、原作を離れて独り歩きする危険性を、司馬氏は明確に見通していられたのだと思う。

 先頃上映された映画「真夏のオリオン」は太平洋戦争末期の日本海軍潜水艦と米艦の一騎討ちのドラマだが、どちらの艦長も正義漢で、「こんな立派な戦争もあったのか」と錯覚を起こさせる極めて危険な作品であった。同じ戦争でも、正しい戦争と誤った戦争がある──というような意識を与える怖れに満ちているこの作品を観て、私は改めて司馬氏の確固とした姿勢に思いを強めた。

 司馬氏はこの作品の映像化拒否を遺言にまで残されていたと聞く。著作権の管理が財団に移されていて、ご遺族の意志に拘わらずにNHKのドラマは実現するようであるが、戦争ドラマの危険性をひしひしと感じる。

 どんな政権になっても、国民投票法を経て憲法改悪の道は近づいている。映画人である我々は、映像文化のもたらす人心への影響力の深さ、強さを充分に意識して闘い続けなければならない。

8・30総選挙、民主党が圧勝! 自公政権終焉 国民投票法の凍結・廃止を求める運動を大きく広げよう!

 8月30日に行われた総選挙は、民主党が308議席を獲得して圧勝。与党は自民党が119議席と歴史的な大敗を喫し、公明党も21議席と大幅に議席を減らし、ついに自公政権は終焉を迎えて政権交代が実現しました。

 共産党9議席、社民党は7議席と、それぞれと改選前の議席を維持しています。その他は、国民新党が3議席、新党日本1議席、みんなの党5議席、諸派・無所属が7議席となっています。

 大勝した民主党は選挙協力を行った社民党、国民新党との連立協議を開始し、9月16日には鳩山内閣が発足する見通しです。

 この政権交代で、憲法九条をめぐる動向はどのように変化するのでしょうか。

 2007年安部政権下、与党は憲法改正手続きを定める「国民投票法」を強行採決しました。また麻生政権下の今年6月には、衆院憲法審査会の委員数や手続きの規程を可決しました。国民投票法は、法案成立から3年を経て来年5月18日に施行されます。

 「護憲」を掲げる社民党が連立政権に加わることになれば、改憲に向けた動きに一定の歯止めがかけられることになるかもしれません。しかし前号でも指摘したとおり、鳩山代表はれっきとした改憲派です。2005年に発表した彼の「新憲法試案」の特徴は、交戦権を否定した憲法9条2項を「最も欺瞞的」として強く批判し、「自衛軍を保持する」としていることです。

 自民党が衆参両院で第2党に転落したことによって、改憲の主導権を握ることになったのは民主党です。民主党内部には改憲どころか、先制攻撃論を唱える議員までいることは周知の事実です。しかも民主党で新しく議員になった143人の憲法観がどんなものなのか、良く分かっていません。政権与党がどのような連立体制を構築し、どのような外交・安全保障政策を打ち出すのか、憲法審査会の始動が容認されることになるのか、当面凍結されるのか、など警戒が必要です。

 国民投票法は、国会成立時に18もの付帯決議が付けられた問題だらけの法律です。付帯決議の主なものは、「国民投票の対象・範囲について憲法審査会で検討し、適切な措置を講じるよう努める」「成年年齢に関する公選法、民法などの関連法令について国民の意見を反映させて検討し、施行までに必要な法制上の措置を完了するよう努める」「憲法審査会で最低投票率制度の意義・是非について検討する」「公務員および教育者の国民投票運動の規制は意見表明、学問、教育の自由を侵害しないよう特に慎重な運用を図り、禁止行為と許容行為の明確化などを検討する」「罰則適用に当たり国民の意見表明・運動が委縮、制約されないよう慎重に運用する」「テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するためのメディア関係者の自主的な努力を尊重するとともに、本法施行までに必要な検討を加えること」などです。特に「年齢要件」「CM規制」については、「本法施行までに検討する」という期限も設けています。

 しかしこれらの検討は全く進んでおらず、必要な法改正は手付かずです。にもかかわらず総務省は、この法律を国民に周知させるために500万部ものパンフレットを作成して配布しています。

 憲法を改悪するためだけのこんな法律は無用です。九条の会としても、国民投票法の凍結・廃止を求める運動を大きく広げていこうではありませんか。

【情報コーナー】

九条の会東京連絡会が、1周年目の二つの集い
 まもなく1周年を迎える「九条の会東京連絡会」は、連続して二つの集い(講演会)を開きます。
〔10月24日(土)、生き生き憲法。98歳からのメッセージ〕
*10月24日(土)、13:00開場、13:30開会 於.日本教育会館8階会議室
聖路加国際病院理事長の日野原重明さんの講演、九条の会東京連絡会事務局代表の都丸哲也さんの報告、劇団民藝・日色ともゑさんの詩の朗読。
〔11月13日(金)、どうなる日本とアジア。北朝鮮と覚密約と憲九条〕
*11月13日(金)、18:00開場、18:30開会 於.豊島公会堂
蓮池透さんと小森陽一さん(九条の会事務局長)、桂敬一さん(日本ジャーナリスト会議会員)のトーク、きたがわてつさんの歌。
★「九条の会東京連絡会」の連絡先 TEL 03-3239-6717 メールアドレス mail@9jo-tokyo.jp
憲法改悪反対共同センターが9月16日に5周年集会
憲法改悪反対共同センターが、9月16日(水)18:30から、東京都文京区湯島の全労連会館ホールで5周年記念集会を行います。一橋大学教授の渡辺治さんが「総選挙の結果と憲法をめぐる動向」を講演し、自由法曹団の田中隆弁護士が「改憲手続き法をめぐる到達と課題」を講演します。

映画人九条の会事務局
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