映画人九条の会Mail No.33

2008.12.10発行
映画人九条の会事務局

目次

オバマ(次期)米大統領に手紙を出そう!

 11月6日に「映画人九条の会4周年の集い」が行われ、参加された代表委員のジャン・ユンカーマン監督は、「アメリカ大統領選で当選したオバマ(次期)大統領に手紙を出そう」と訴えました。

 アメリカで黒人の大統領候補が当選したことは、本当に画期的なことです。ブッシュ政権への強烈な審判でした。しかしオバマ氏は、イラクからの撤兵は公約していますが、アフガン戦争は継続する姿勢です。日本など同盟国にいっそうの負担を求めるものとも言われています。

 そのオバマ(次期)大統領に、「武力では平和は生まれない」「日本には9条がある」ということを訴える手紙が、日本から数千、数万と届いたら、それは大きな意味を持つでしょう。皆さん、ぜひオバマ(次期)大統領に手紙を書きましょう。

【ホワイトハウスの住所】
President Barack Hussein Obama, Jr.
The White House, 1600 Pennsylvania Avenue NW
Washington, DC 20500, USA
【米大統領のEmail】
president@whitehouse.gov

 メールよりも手紙の方が効果があるかもしれません。英文で書かれるに越したことはありませんが、日本語でも構わないと思います。また、オバマ氏の大統領就任は来年1月20日ですので、それ以降に出してください。でないと、ブッシュ大統領に届いてしまいます。

★「映画人九条の会4周年の集い」の報告

 11月6日、「映画人九条の会4周年の集い」が東京・文京区民センターで行われました。DVD「地球の温暖化をとめて」上映のあと、ジャーナリストの伊藤千尋さんが記念講演として「活憲の時代──世界から見た9条」を熱く語り、参加者の共感を呼びました。

 記念講演のあと、代表委員で「日本に青空II〜いのち輝く里〜」を準備中の大澤豊監督、アニメーション映画監督の高畑勲さんが挨拶され、ジャン・ユンカーマン監督が上記のような訴えをされました。また、代表委員の羽田澄子さん、山田和夫さんからも以下のようなメッセージが届きました。

映画人九条の会4周年に際して  代表委員 山田和夫 (映画評論家)
 日本国憲法第9条を守り抜くため、心ある映画人、映画愛好者によって「映画人九条の会」が発足して、この11月24日で4周年を迎え、本日その記念の集いが開かれることを心から喜んでいます。当然出席すべく準備をしていましたが、小生検査のため入院する日程と重なり、欠席することをお詫びします。今月中には活動を再開でき、みなさまとともに力を尽くすことをお約束します。
 私たちの会を含め、全国7000を超す「九条の会」のねばり強い活動は、確実に改憲を目ざす勢力のくわだてを阻みつつありますが、なお「改憲」勢力の策動はさまざまな形で、手を変え品を変え、執拗な動きを止めません。私たちは映画に携わる分野の特性をいかし、「九条」の心をより多くの人びとのものとするよう、一層の努力を尽くしたいと思います。そして2009年11月24日の5周年記念は、さらに明るく、大きな展望をもって迎えるようにしましょう。
 この11月6日の集いが、そのための新しい決意の日となることを信じ、みなさまへの連帯のメッセージとします。
メッセージ  代表委員 羽田澄子 (記録映画作家)
 11月4日の午後はテレビに釘付けになっていました。とうとう史上初の黒人大統領が、アメリカに誕生したのです。これはアメリカの市民が現状に閉塞感をもっていて、大きな変革を望んでいる結果なのだと思います。
 それはアメリカの市民だけではなく日本の私たちも期待していたことでした。しかしだからといって、日米関係が変化し、憲法9条を守ることができるかというと、それはやはり難しい関係が続くような気がします。
 あの戦争を体験した世代としては、憲法9条は本当に多くの犠牲の上に獲得した素晴らしい憲法で、これを放棄することはできません。
 でも最近問題になっている航空自衛隊の前幕僚長の認識を知ると、本当に怖くなります。なんとしても、9条を守らなければと、改めて思っています。

 高橋事務局長は、映画人九条の会の会員が1170名に達したことを報告し、さらに一回り大きく運動を広げて来年の5周年を迎えよう、と訴えました。会場では数名の新加入がありました。

記念講演 「活憲の時代─世界から見た9条」 (ジャーナリスト 伊藤千尋) 要旨

 朝日新聞の記者歴34年、中南米、ヨーロッパ、アメリカの特派員時代に世界で憲法を聞く機会が多かった。日本と違い、世界では国や国民が普通に憲法を使っている。
 その一つに、日本人が誰も知らないようなアフリカ沖の島に「日本国憲法9条の碑」がある。高速道路建設で偶然出来た空き地に、市民が平和を考える広場にしようということで、記念碑ができた。
 世界中の人が平和を考える原点は広島・長崎であり、その象徴は憲法9条である。憲法9条の問題は、私たちだけの問題と思いがちだが、世界には、9条を広げることが世界の平和につながると考える多くの人たちがいる。
 お隣の韓国では、アメリカ産牛肉の輸入制限を大統領が一方的に外したことで、食の安全の問題とともに、大統領の独断に対する国民主権の問題としての怒りが巻き起こり、連日抗議行動が行われた。「大韓民国の主権は国民にある」という「大韓民国憲法1条」を歌詞にした歌が多くの国民に歌われ、運動が広がった。
 南アメリカのベネズエラの露店の本屋では憲法の本が置いてあり、赤ん坊を抱えた若い母親が憲法の本を買っていった。彼女は私に対して「憲法を知らないで、どうやって生きていけというのか。憲法を知らないでどうやって闘えというのか」と言った。日頃の役所との交渉の際、憲法を知らなければ役人に誤摩化されるが、憲法を知れっていれば反論できる、と。
 いかに憲法を日常的に使うのか。憲法を使うことは市民の常識であり、世界の常識となっている。

 01年の9・11同時多発テロ後、アメリカの世論は愛国心一色となり、大統領に全ての権限を集中させる法律が次々と可決された。そうした状況の中でバーバラ・リー議員は、戦争する権限を大統領に一任する法律にたった一人で反対した。当初、多くの誹謗・中傷をあびたが、彼女は反対投票の説明集会を開き、合衆国憲法を読み解くことで、民主主義の原点である議会の役割、議員の責任、大統領へのチェック機能などを淡々と訴え続け、人々の心を捉えた。その結果、一年後、落選予想を覆し下院選挙を圧勝した。それは、イデオロギーや宗教ではなく、憲法を基本にしながら地道に人々を説得した結果であった。
 中南米のコスタリカは、日本と同じ平和憲法を持っている。しかし日本とは違い、本当に軍隊は持っていない。コスタリカは、内戦の反省から武器を無くし平和憲法を作った。今も国のあり方として平和憲法を使っている。平和憲法を持っている国は平和を輸出するという発想から、隣国との平和外交を積極的に行い、3つの国の内戦での対話の道筋を作った。
 同時に現実的な理由として、30%の軍事費では国は発展しないという考えのもと、「兵士の数だけ教師を作ろう」をスローガンに、軍事費を教育費に変えた。国連平和大学、難民の受け入れを実施し、尊敬される国になった。金の使い方は国の哲学の問題だ。
 日本は同じ平和憲法を持ちながら、アジアの戦争や貧困をなくすことをしてこなかった。国も国民も憲法を使ってこなかった。特に日本人は、自分を抑え自粛する風潮がある。自粛の対局は自立である。
 南米は90年代アメリカべったりの政権で、国をめちゃくちゃにされた。現在では、アメリカからの独立を目指し、左派が圧勝している。今やアメリカ経済への追随は、自滅の道である。アメリカも変わったが、日本だけが変わってない。しかし「九条の会」など、国民の中から自主的に運動が出てきたことは、今までの歴史に無かったことである。

 「一人の人間が平和であること」が「社会が平和であること」であり、そこから平和を語ることが必要である。
 「9条も着物も良いものだ」ということで、365日間着物を着て対話を広げている「憲法9条着物っ子」という女性がいる。個人が出来ることが運動に広がりを持たせる。それぞれ自分に出来ることが、自分自身の存在を変え、日本の社会を変えていくことにつながる。

 
(文責・映画人九条の会事務局)

侵略戦争は濡れ衣!? 暴論を繰り返す田母神・航空幕僚長を懲戒免職できなかった麻生内閣!

 自衛隊の現役航空幕僚長であった田母神俊雄氏が、民間企業の懸賞論文に応募し、過去のアジア諸国への侵略を正当化する自説を展開、最優秀賞を受賞していたことが明らかになり、10月31日浜田靖一防衛相によって更迭されました。

 論文の内容は「(日本が)侵略国家だったなどということは正に濡れ衣だ」とし、集団的自衛権の行使と攻撃的兵器の保有を主張するという、特異な歴史認識、戦争観、国家観に基づいたもので、近隣諸国の植民地支配と侵略を謝罪する「村山談話」を踏襲する政府見解を公然と否定するものです。

 懸賞論文を募集していたのは、耐震偽装発覚が記憶に新しい「アパグループ」で、代表の元谷外志雄氏は安倍元首相の後援会組織「安晋会」の副会長を務めていた人物です。そして田母神氏は明文改憲を標榜する安倍首相(当時)によって空幕長に任命されました。

 田母神氏はそれ以前にも隊内誌に専守防衛を逸脱する論文を寄稿したり、様々な機会での「訓話」や「講話」で同様の主張を繰り返し、統合幕僚学校長だった2004年には幹部教育に「国家観・歴史観」を新設し、受講した自衛官は400人に達することも明らかになっています。

 麻生内閣は田母神氏を懲戒免職できず、「更迭」と定年退職で収拾を図ろうとしましたが、事態は深刻です。実力組織である自衛隊の長が憲法も政府見解も否定する侵略戦争美化の主張を繰り返し、幹部教育を体系的に行っていたというグロテスクな暴走を許し、シビリアンコントロールの形骸化を招いたことについて、内閣総理大臣の任命責任・管理責任は重大です。

 麻生内閣は問題の全容解明に全力を尽くし、直ちに憲法に立脚した自衛隊教育の建て直しを行うべきです。

※田母神氏は防衛相からの退職金の自主返納の呼びかけに応じず、11月27日、防衛相は約7000万円と推定される退職金の支払いを開始しました。

九条の会第3回全国交流集会に参加

 11月24日(月)10:30から、東京・日本教育会館で九条の会第3回全国交流集会が行われ、全国の地域、分野の「会」から会場いっぱいの926名が参加しました。小森陽一事務局長は開会あいさつのなかで、この1`年間に地域・分野の「会」は493増えて7294になったことを報告しました。

 映画人九条の会からも4名が代表として参加、スタッフとしても3名が参加しました。

 当日発表された「九条の会」からのよびかけは、以下の通りです。

【九条の会からのよびかけ】
  1. 一人ひとりの創意や地域の持ち味を大切にした取り組みで、憲法を生かす過半数の世論を。
  2. 継続的・計画的に学習し、条文改悪も解釈による憲法破壊も許さない力を地域や職場に。
  3. 思い切り対話の輪を広げ、ひきつづき小学校区単位の「会」の結成に意欲的取り組みを。交流・協力のためのネットワークを。

【情報コーナー】

全国スクリーン数3360、シネコン・シェア80%!
 12月1日に行われた「映画の日」中央大会で映団連の松岡功会長は、「今年の国内の映画興行は10月末で前年並み、正月作品の成績次第では昨年実績を超える可能性もある」と述べるとともに、「全国のスクリーン数は3360(前年比139スクリーン増)で、シネコンのスクリーン・シェアは80%(前年比4%の増)程度になる見込みだ」と語りました。
 シネコンのシェアが80%とは、恐るべしです。ただそのシネコンも、経営は各地で厳しくなっていると言われています。
東京ドームで沢田研二が「我が窮状」を熱唱
 12月3日、東京ドームで行われた「人間60年 ジュリーまつり」で沢田研二は「我が窮状」を熱唱しました。その熱唱に贈られた3万1千人の観客の盛大な拍手は圧巻であり、感動的でした。
 「我が窮状」をまだ聴いたことがない方は、ぜひ一度聞いてみてください。

映画人九条の会事務局
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