映画人九条の会Mail No.29

2008.06.13発行
映画人九条の会事務局

目次

日本映画発祥の地・京都で京都映画人九条の会が結成!

 5月30日(金)、日本映画発祥の地・京都で、京都映画人九条の会が結成されました。

 映画人九条の会は昨年12月8日に行った第2回映画人九条の会交流集会で、「地域別、職場別、サークル別に映画人九条の会を作り(「映画人九条の会・○○」)、映画人九条の会の日常的な活動を全国に作っていく」という新しい運動方向を打ち出していましたが、京都映画人九条の会の結成はこの方針に応えたものです。東京から、映画人九条の会の高橋邦夫事務局長も結成総会に参加しました。

 結成会場となった京都教育文化センターには41名が参加。まず【第1部】結成総会では、呼びかけ人の一人である竹内守さん(映画センター代表)から、「京都は日本映画発祥の地、多くの映画関係者や映画愛好家がいる。映画を通じて平和の尊さ、戦争の無残さを伝え、平和憲法を京都府民に発信していきたい」との結成趣旨が報告され、続いて呼びかけ人代表となった土橋亨さん(映画監督)が代表挨拶を行った後、村主哲夫事務局長から「(1) 『九条の会』の集いに参加し、アピール賛同者を増やす。(2) 全国の『映画人九条の会』との連携を深める。(3) 京都での特色ある集いや映画会、講演会等を計画する。」などの運営事項の提案がされ、確認されました。京都映画人九条の会の呼びかけ人、事務局は、次の通りです。

呼びかけ人
土橋亨 (呼びかけ人代表・映画監督)
竹内守 (映画センター代表)
佐藤晴夫 (映画監督)
原田裕平 (キャメラマン)
高見哲也 (美術監督)
稲垣陽子 (女優)
土橋武 (京都映画サークル代表)
海老瀬弥一 (太秦映画の会代表)
浪江宏子 (子ども映画祭スタッフ)
事務局長
村主哲夫 (電話075-881-0566)

 【第2部】では、ドキュメンタリー映画「日本の憲法」が上映されました。この映画は、9条改憲の動きが強まってきた戦後20年の節目、1965年に京都で製作されたもので、蜷川虎三さん(元京都府知事)や太田薫さん(元総評議長)、沼田稲次郎さん(元東京都立大学総長)、大西良慶さん(元清水寺貫主)などの戦後歴史の著名人たちが平和憲法を守ることの重要性を熱く語っています。

 映画上映の後、映画人九条の会の高橋事務局長が連帯の挨拶と講演を行いました。高橋事務局長は映画人九条の会の4年間の運営と活動の特徴点を述べた後、「九条の会などの草の根運動と安倍政権崩壊で、改憲をめぐる状況は大きく変わった」と憲法情勢を語りつつ、「福田政権のもとで改憲戦略の手直しが図られている。海外派兵恒久法が最大の焦点になる」と訴えました。

 また高橋事務局長は、映画「靖国」問題について「上映中止問題が騒がれたが、公的助成のあり方を口実にした言論表現への与党議員の政治介入と、それに手を貸した文化庁の姿勢こそが大問題だ。芸術文化振興会の審査委員が映画人九条の会のメンバーであったことを理由に、国会で赤狩りのような追及までされた。文化庁の姿勢を批判し、公的助成への政治介入と歪みを正さなければ、多様な映画の発展はない」と強く訴え、「京都・太秦の撮影所も厳しい状況に置かれている。ぜひこの日本映画発祥の地で創意工夫した活動を展開し、九条の会運動を大いに盛り上げていただきたい」と訴えて講演を終わりました。

憲法9条を破壊する「恒久派兵法」との対決が最大焦点!

 アメリカの要請に応じて自衛隊をいつでも海外に派兵できる「海外派兵恒久法」づくりに向けて、自民・公明の与党プロジェクトチームの検討が進んでいます。通常国会末までに要綱案をまとめ、要綱案をもとに法案化し、8月末召集の臨時国会に提出・成立を狙っています。

 与党が恒久法を急ぐのは、来年1月に新テロ特措法の期限が切れるからですが、検討されている恒久法の内容は重大です。与党プロジェクトチームでは、人道復興支援だけでなく後方支援、警護、治安の活動、武器使用基準の緩和についても自衛隊の活動を認めることを検討しています。自衛隊がイラクで米兵や軍事物資を空輸することは米軍の武力行使との一体化にあたり憲法違反だ、とした名古屋高裁判決に真っ向から挑戦する違憲立法です。与党が民主党も巻き込んで成立を狙う「海外派兵恒久法」は、日本を自動参戦の道にひきこむ違憲立法なのです。

 一橋大学大学院教授の渡辺治さんは今年3月27日、憲法改悪反対共同センター主催の学習講演会で「憲法をめぐる現局面と海外派兵恒久法」というテーマで講演しました。

 渡辺治さんは、「安倍政権の崩壊で改憲をめぐる状況は大きく変わった。福田政権は改憲戦略の手直しをしようとしている。その新戦略とは、改めて解釈改憲を先行し、自衛隊の海外派兵恒久法で民主党を抱き込み、それから明文改憲について民主党との協調を回復して、大連立で国会の圧倒的多数の賛成を得て国民投票に持ち込む──というものだ」と語り、「解釈改憲の先行という点では、海外派兵恒久法が最大の焦点になる。民主党は新テロ特措法のときに、海外派兵恒久法なら賛成する、という対案を出していた。これが自民党の計らいで継続審議になっている。海外派兵恒久法は究極の解釈改憲で、9条を壊す法律であり、これが通ったら改憲の新しい突破口となるし、これを潰せたら改憲は大きなダメージを二連発で食らうことになる。明文改憲の息の根を止めることができるかどうかは、この海外派兵恒久法との闘いにかかっている」と訴えました(この講演録は共同センターのHPに載っていますので、ぜひお読みください。

 9条を壊す「海外派兵恒久法」をなんとしても阻止するために、今年の秋が勝負です。皆さんの地域、職場で、知人、友人に「海外派兵恒久法」の危険性を伝え、「海外派兵恒久法」をつぶして改憲の息の根を止めましょう。

6・13講演「イラク派兵違憲判決の意義」&「サイボーグ009太平洋の亡霊」上映会成功! イラク派兵違憲判決を活かそう!

 映画人九条の会は6月イベントとして6月13日(金)、東京・文京区民センターで行われた講演「イラク派兵違憲判決の意義」と「サイボーグ009太平洋の亡霊」上映会は、80名を超す参加で成功しました。

 集いでは、最初に伝説の反戦テレビアニメ「サイボーグ009太平洋の亡霊」が上映されました。このアニメは1968年7月12日に放映されたサイボーグ009第1テレビシリーズの第16話で、原作は石森章太郎さん、脚本は辻真先さん、監督は芹川有吾さん、製作は東映動画です。

 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれた原爆慰霊碑が空軍機とカットバックされ、憲法9条全文がスーパーインポーズされると、参加者の目は画面に釘付けになりました。昔はこんなテレビアニメが放送されていたのか、という驚きが会場を包みました。

 続いて壇上に上がった山田朗教授(明治大学)は、自ら名古屋高裁でイラク派兵差し止め訴訟の証言台に立った経験をもとに、イラク派兵違憲判決の意義を語りました。

 山田教授はまず、「名古屋高裁の違憲判決の画期的な意義は、第一に憲法前文にもとづく〈平和的生存権〉の具体的権利性を認めたことであり、9条違反行為(戦争)やその遂行への加担・協力強制について、裁判所に差止請求や損害賠償請求等により救済を求めることができるとしたことです。第二に、細かく事実認定をして自衛隊のイラクでの活動が違憲であること、しかも9条1項違反であるとの判断を下したことです。第三に、自衛隊のイラクでの活動はイラク特措法にも違反していると判断したこと。第四に、司法による憲法判断を避けなかったことです」と述べ、違憲判決の意義を明快に語りました。

 山田教授は、名古屋高裁での自分の証言ポイントについても説明し、「私は軍事史の有効性に基づいて証言しました。『戦争』『戦闘』は実態に即して判断すべきであり、バグダッド及びバグダッド空港は『戦闘地域』に該当します。輸送・補給は戦争・戦闘の不可欠の要素。相手に反撃力があれば、必ず輸送部隊は攻撃にさらされます。航空自衛隊機はアメリカ軍の指揮の下に武装兵員を輸送しており、アメリカ軍の戦闘行為との一体性・密接性は明らか。96年には内閣法制局長官も、武力行使だけでなく『武力行使と不可分一体』の行為も違憲だと言っていました。また自衛隊はアメリカの戦略に対応して変貌しています」などと語りました。

 最後に山田教授は、名古屋高裁判決をどう生かすかについて語り、「イラクの実態、自衛隊の活動の実態を明らかにする作業をさらに進める必要性があります」「全国13地域で14件の差止訴訟が行われており、名古屋高裁の成果と課題を広める必要があります」「戦争の実態や、『戦闘行為』と『輸送』『補給』との不可分性を多くの市民が知り、市民が軍事を監視し、コントロールする力を強めていくことが重要です」と訴えました。

 山田教授の講演は、素晴らしい講演でした。いよいよこれから、名古屋高裁判決を「そんなの関係ねえ」とばかりに真っ向から踏みにじろうとする「海外派兵恒久法」との対決の時期になります。名古屋高裁のイラク派兵違憲判決の画期的意義をしっかりと頭に叩き込んで行動していきましょう。

日本映画復興会議が7月12日にシンポジウム 「映画の自由と公正な映画助成を考える」 ──映画人九条の会も協賛──

 日本映画復興会議は来る7月12日(土)13:30から、東京・中央区京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで「映画の自由と公正な映画助成を考える」と題したシンポジウムを行います。映画「靖国」問題では、外部からの不当な介入によって「公的な映画助成」の基本であるべき言論表現の自由が揺らぎました。シンポジウムではこの問題を多角的に議論します。ぜひ多くの方のご参加をお願いします。

シンポジウム「映画の自由と公正な映画助成を考える」
日時
7月12日(土)13:30〜18:00
場所
東京・中央区京橋・東京国立近代美術館フィルムセンター6階会議室
パネラー
阪口正二郎 (一橋大学大学院教授)
岡田裕 (アルゴピクチャーズ社長)
大澤豊 (映画監督)
司会
山田和夫 (映画評論家)
発言者
羽田澄子 (記録映画監督)他
参加費 (資料代)
500円

【情報コーナー】

NHK番組改ざん裁判で最高裁が不当判決!
 2001年1月に放映されたNHK「戦争をどう裁くか──問われる戦時性暴力」が、安倍晋三官房副長官(当時)らによる政治介入で改ざんされた問題で6月12日、最高裁は政治家の政治介入を無視し、原告逆転敗訴の不当判決を下しました。露骨な政権寄りの判決を下した最高裁には、失望するばかりです。
 与党政治家の番組介入は、公的助成を口実にして与党議員が言論表現に介入した映画「靖国」と同じ構造です。今後、与党議員による言論表現への政治介入にますます警戒が必要です。
九条の会が11月24日に第3回全国交流集会!
 九条の会は11月24日(月・祝日)10:30から、日本教育会館で第3回全国交流集会を行うことを決めました。
 海外派兵恒久法の制定や憲法審査会の始動を許さず、九条改憲反対の国民世論をさらに大きく広げることをめざす九条の会運動の新たな挑戦のあり方を、全国の経験を持ちよってともに模索しようというものです。映画人九条の会は、その運営委員会から参加します。
九条の会東京連絡会(仮)が10月24日発足へ!
 東京にある九条の会の連絡会を作ろうと、何回かの相談会、準備会が行われてきましたが、6月2日に行われた第2回準備会は、来る10月24日(金)18:30から東京・池袋の豊島公会堂で「九条の会東京連絡会(仮)」の発足記念集会を開くことを決めました。1000人規模の集会をめざしています。
 「九条の会東京連絡会(仮)」は、東京にある約800の九条の会の連絡ネットワークです。
映画「ひめゆり」、6月〜8月全国特別上映会
 生き残った「ひめゆり学徒隊」の人々の証言でつづる長編ドキュメンタリー映画「ひめゆり」(監督・柴田昌平)の6月〜8月全国特別上映会がスタートしています。
 6/7(土)〜6/20(金)横浜・ジャック&ベティ、6/14(土)〜6/27(金)川崎市アートセンター、6/14(土)〜6/27(金)東京・ポレポレ東中野──という予定です。詳しいことや地方での上映会については、映画「ひめゆり」を観る会にお問い合わせください。TEL 042-497-6975・メール: himeyuri@asia-documentary.com
あぶない!言論の自由が!ビラ配布の自由を守る7・9集会
 7月9日(水)18:30から、東京・日本教育会館一ツ橋ホールで「ビラ配布の自由を守る7・9集会」が行われます。一橋大学大学院教授の渡辺治さんが「ビラ配布の自由と日本国憲法」と題した記念講演を行います。映演労連委員長の高橋邦夫さん(映画人九条の会事務局長)も、連帯のあいさつで映画「靖国」への政治介入問題を訴えます。参加費は500円。

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