映画人九条の会Mail No.28

2008.05.12発行
映画人九条の会事務局

目次

映画人九条の会が抗議声明!

 去る3月27日、自民党・有村治子参議院議員は参院内閣委員会で映画「靖国」問題を取り上げ、専門委員(審査員)の思想・信条にまで立ち入り、一委員が「映画人九条の会」のメンバーであることを問題にしました。
 これに対して「映画人九条の会」は4月10日、「映画人九条の会」代表委員9名全員の同意と、運営委員会全員の同意を得て、以下のような抗議声明を発表しました。

映画「靖国」、上映妨害を乗り越えて公開始まる!

 自民党議員などの政治介入によって上映が危ぶまれていた映画「靖国」ですが、5月3日から9日まで東京・渋谷シネアミューズで公開されたほか、5月10日からは東京・シネカノン有楽町1丁目(レイトショー上映)、大阪・第七藝術劇場で公開され、その後も広島シネツイン新天地、京都シネマ・新潟・シネウインド、沖縄・桜坂劇場、東京・渋谷シネマアンジェリカ、福井メトロ劇場、福岡・シネテリエ天神、群馬・シネマテークたかさき、山形フォーラム、福島フォーラム、盛岡フォーラム、八戸フォーラム、苫小牧・シネマトーラス、十勝・シネとかちプリンス、函館・シネマアイリス、岩手・一関シネプラザ、新潟・十日町シネマパラダイス、山口・テアトル徳山、高知・あたご劇場、宮崎・宮崎キネマ館にて順次公開される予定です。これも「表現の自由を守れ」と声を上げた多くの国民の力です。

全労連と映演労連が文化庁に再申し入れ!

 全労連(全国労働組合総連合)と映演労連(映画演劇労働組合連合会)は4月7日、映画「靖国」の国会議員による事前試写会を仲介した文化庁芸術文化課と交渉しましたが、芸術文化課長は「今回の文化庁の対応は間違っていない」と強弁し、なんの反省も示しませんでした。

 映画「靖国」の国会議員事前試写会については、多くのマスコミ、ジャーナリスト、諸団体、識者らが「事前検閲に等しい」と指摘し、その仲介をした文化庁の責任を問うています。また、この映画「靖国 」上映妨害問題では、映画文化への公的支援のあり方を含めて、いくつかの重大問題が浮かび上がってきています。

 全労連と映演労連は4月23日、「貴庁が仲介した国会議員の事前試写会は事前検閲に等しいもので、それが上映中止の契機を作ってしまった。それでも貴庁は今回の対応は間違っていなかったと強弁するのか」「貴庁は製作会社やアルゴ・ピクチャーズに対して執拗に様々な『要請』をしてきたが、それが映画製作者への行政権力の圧力になると思わなかったのか」「今後も同じようなことを議員から要請されたら、同じようなことやるのか」「今後の専門委員の選任に当たっては、対象者の思想・信条を詮索せず、条件にしないと確約できるか」「貴庁自身が外部圧力となって『自粛』を呼び起こしたことを、貴庁はどう受け止めているか」などについて、改めて文化庁の見解を求めるべく、再度交渉を申し入れました。結果を注目しましょう。

映画人九条の会4・4学習集会、成功!

 21世紀の世界と日本の経済の行方、そして9条を守って希望ある日本をめざす運動の重要性について、じっくりとお話を聞く映画人九条の会学習集会「21世紀の世界と日本、経済の行方──そして9条」が4月4日(金)、東京・文京シビックセンター会議室で行われました。

 講師の友寄英隆さん(「経済」前編集長)は、豊富な資料と自作の近代史年表を駆使して米国発の21世紀型金融危機の行方を分かりやすく解明し、「日本資本主義は第三の歴史的変革期に入っている」として、“安保の日本”から“九条の日本”へと新たな「日本改革」をめざす闘いの重要性について語りました。

 小規模の学習会の予定でしたが、参加者は42名となり、資料も足りなくなるほどでした。映画人九条の会は、今後も時節に適ったテーマでこうした学習集会を企画していく予定です。

「京都映画人九条の会」が5月30日結成へ!

 映画人九条の会は昨年12月8日に行った「第2回交流集会」で、地域別・職場別・サークル別に映画人九条の会(映画人九条の会・○○)を作ることを提起しましたが、この提起に応えて、日本映画の発祥地と言われる京都で「京都映画人九条の会」が結成されることになりました。

 結成総会は5月30日(金)夜、京都教育文化センター(京都市左京区聖護院川原町4-13)で行われる予定です。全国の映画人九条の会の皆さん、京都の映画人、映画ファンに熱いエールを送りましょう。

九条の会、7039に!──「九条の会」メールマガジン第45号より転載

 九条の会事務局は4月25日、参議院議員会館で記者会見を行いました。会見では司会を高田健事務局員が務め、事務局を代表して小森陽一事務局長が、要旨、以下の報告をしました。
 全国の地域・職場・学園・分野・草の根の「九条の会」の結成状況は4月25日現在で、7,039カ所になりました。この中では広島市西区や新居浜市などで各中学校区に結成する運動をしていることに見られるように、九条の会を草の根にきめ細かく組織する動きが見られるのが特徴です。
 「九条の会」は当初は各地で大規模な講演会を開催してきましたが、2年目以降、「憲法セミナー」という方式で、9条についての認識を理論的にも深めながら、各地に憲法の語り部を増やすようにしてきました。こういった運動方向に沿って、6月には岐阜市で憲法セミナーを開き、7月には宮崎市で開催します。
 市民の自発的な努力により、九条の会の運動が大きく前進してくる中で、これに不当な規制・干渉する動きが目立ちます。神奈川県の箱根町教育委員会の箱根町九条の会の活動に関する不当な干渉や、先の映画「靖国」をめぐる動きの中で、助成の選定にあたった専門委員の1人が九条の会に属していることを理由にその「中立性」を問題にするような動きがありました。私たちはこれに以下の「事務局見解」をもって反論します。
 つづいて小澤隆一事務局員が「事務局見解」について説明をしました。その後、参加した記者の皆さんとの間で、活発な質疑応答がありました。
 この日発表されました「九条の会事務局見解/憲法9条を守る運動に対する不当な規制・干渉に抗議する」は以下の通りです。

■九条の会事務局見解/憲法9条を守る運動に対する不当な規制・干渉に抗議する

 今年の3月4日に、「新憲法制定議員同盟」の総会が開催され、「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力」(同同盟幹事長の愛知和男衆院議員の表現)が全国に細かく組織作りができているとして、「九条の会」への対抗意識をあらわにし、「拠点となる地方組織」を作っていくことを方針に掲げました。
 私たち「九条の会」の運動は、憲法9条の「改正」に反対し、9条を守り実現しようと市民が進めているものであり、憲法9条の擁護は市民の自由闊達な議論を通じてこそ実現できると確信しています。それだけに憲法「改正」の是非をめぐる旺盛な議論の自由は絶対に守られなければなりません。
 ところが、この間、こうした市民の言論や九条の会の活動を権力的に押さえ込むかのような、表現の自由や集会の自由に対する規制や干渉が目立っています。
 神奈川県の箱根町では、地域の九条の会が会合のために公民館を借りた際に「9条堅持に偏って主張することは避ける」などとの条件を町教育委員会からつけられたり、施設に掲示された「憲法9条が危ない情勢」という表現について「内容が中立的でない」として紙で覆い隠したりされました。これは、町教育委員会による検閲にほかならず、憲法が保障する表現の自由、集会の自由に対する明らかな侵害です。また、憲法の趣旨に沿って公の施設の平等な利用を定めた地方自治法や、公民館の目的を住民の教育・学術・文化に関する事業とし、その事業のなかに「討論会」も含めている社会教育法にも反する違法な規制です。
 また、映画「靖国」が日本芸術文化振興会から助成を受けたことを問題にした自民党の議員は、国会の質問で、助成対象の選定にあたった専門委員の一人が「映画人九条の会」のメンバーであることを取り上げて、「専門委員の中立性」を問題にしています。しかし、文化的な活動への助成の内容に党派的な国会議員が干渉することこそ、文化行政の公正さ・中立性を損なうといわねばなりません。
 こうした規制や干渉の口実として、憲法9条の擁護を訴えることは「政治的」で「偏った」言動だという主張がありますが、憲法をめぐる議論は決して一党一派の立場を主張する「政治」的言論ではなく、むしろ自由な社会では最も手厚く保障されるべき言論です。
 私たち「九条の会」の運動が地域や職場に広がる中で、憲法9条を守ろうという声は着実に大きく確固としたものになってきています。4月8日に読売新聞が発表した世論調査で、憲法「改正」に「反対」(43.1%)と答えた人が「賛成」(42.5%)と答える人を上回り、9条の明文改憲に否定的な回答が60.1%にのぼったことは、その一端を示すものです。
 そうした中で9条改憲をもくろむ勢力のあせりが、権力の側から国民運動の提起や言論・表現・集会の自由の侵害という形で現れているのです。私たちは、こうした規制や干渉に断固抗議するとともに、今後とも、憲法9条を守る運動を進めていく決意を表明するものです。

2008年4月25日

【情報コーナー】

イラク派兵に違憲の判決!──「そんなの関係ねえ」?
 4月17日、愛知県などの住民が自衛隊のイラク派兵は違憲だとして差し止めを求めた「イラク派兵差止訴訟」の控訴審判決が名古屋地裁であり、青山邦夫裁判長は「航空自衛隊の米兵などの空輸活動は憲法9条に違反」「平和的生存権は憲法上の法的権利」などとする画期的な判決を下しました。
 この違憲判決は確定しましたが、福田首相や町村官房長官はこの判決を無視して空自派兵を継続するというコメントを発表しました。航空自衛隊トップの田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長は「そんなの関係ねえ、という状況だ」とまで言いました。トコトコン憲法違反を続ける自公政権と自衛隊トップにも、私たち国民から“違憲”の審判を下してやりましょう。
読売世論調査──「改憲反対」が賛成を上回り、「9条守れ」が6割に!
 読売新聞が81年から実施している「憲法世論調査」で、一時は65%もあった「憲法改正」賛成が42.5%(前年比3.7ポイント減)に落ち込み、逆に反対が43.1%(前年比4.0ポイント増)となって15年ぶりに賛成を上回りました(4月8日報道)。また「9条を守る」は60.1%となり、「9条改正」は30.7%(前年比5ポイント減)に大きく後退しました。
 5月3日付けの朝日新聞の世論調査でも、憲法9条を「変えない方がよい」が66%でした。
 全国の「九条の会」など草の根の運動の力が、こうした世論調査の数字に反映していると思われます。私たちの運動に確信を持ち、さらに“9条守れ”の声を上げていきましょう。

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