映画人九条の会Mail No.19

2007.01.22発行
映画人九条の会事務局

目次

安倍首相の改憲宣言と対決の年!改憲手続き法案を廃案にしよう!

 映画人九条の会の皆さん、明けましておめでとうございます。

 安倍首相は「自分の任期中に改憲する」と言い、「改憲を参院選の争点にする」と公言しました。

 安倍首相の支持率は下降する一方で、その焦りから来る開き直りかも知れませんが、自民党も民主党も公明党も、改憲手続き法案を通常国会で5月3日までに成立させようとしています。

 これは危険な動きです。改憲を政治の軌道に乗せ、改憲を促進する改憲手続き法案は、なんとしても廃案にしなければなりません。

 3年目に入った映画人九条の会ですが、映画人、映画ファンに「九条の会アピール」をさらに広めるとともに、改憲手続き法案の危険性をもっと訴えなければなりません。2007年、がんばりましょう!

修正しても危険な本質は変わらない改憲手続き法案!

 昨年秋の臨時国会で、与党と民主党は改憲手続き法案の修正協議を繰り返し、ほぼ一致をみたと報じられましたが、その修正の中身を検証してみると、改憲手続き法案の危険な本質はほとんど変わっていないことが判ります。大きな問題点を列記します。

  1.  テレビ・ラジオによる有料CMについて、与党修正案は「14日前から投票日まで禁止」、民主党修正案は「A案.14日前から投票日まで禁止」「B案.14日前から投票日まで禁止+放送業者への賛否平等取り扱いの配慮規定」「C案.発議した日から投票日まで禁止」となっています。
    「14日前から投票日まで禁止+賛否平等取り扱いの配慮規定」あたりで合意されたら、平等取り扱いといっても放送料金の平等程度のようですから、投票日2週間前までは金持ち政党は圧倒的な改憲キャンペーンができることになります。金で憲法が変えられる事態になりかねません。
  2.  憲法改正の承認要件について、マスコミ報道等では与党と民主党とも「投票総数」の過半数にした、とされていますが、それは間違いです。与党修正案では、「投票総数」とは名ばかりで、「投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」となっています。白票は無効とされます。これでは「有効投票数」の過半数と変わりません。「有効投票数」を「投票総数」と言い換えただけのインチキです。
     民主党修正案は、「A案.投票総数の過半数」「B案.与党案と同じ投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」「C案.投票用紙に『棄権』記入欄を設けるものの、投票総数は賛成票と反対票を合計したもの」というもので、B案、C案は実質的には「有効投票数」の過半数に等しいものです。
     最低投票率も一致して拒否しており、「少数の賛成で改憲」の危険性は変わっていません。
  3.  公務員や教育者の運動については、与党修正案、民主党修正案とも、国民投票法上の罰則は設けないとなりましたが、「地位と影響力、便益を利用した運動の禁止」は残っており、行政処分の対象になります。東京都が「日の丸・君が代」で教職員の処分を乱発したような事態も想定されます。
  4.  投票権は「18歳以上」になりましたが、与党案では国民投票時までに公選法や民法等の規定が18歳に変わらなければ、投票権は20歳以上のままです。
  5.  一括投票か個別投票か、という点に関しては、与党案、民主党案とも当初から「関連する事項ごとに発議する」とあり、修正協議の対象になっていません。しかし、何をどこまで関連する事項とするのか、は不明のままです。

 ──どうですか。他にも問題点はいっぱいあります。改憲を促進する法律である危険な本質は、修正によってもまったく変わっていないのです。改憲手続き法案は絶対に廃案にしなければなりません。

映画人九条の会・交流集会の3月24日(土)開催決まる!

 映画人九条の会の3年度の運動を検討してきた運営委員会は、来る3月24日(土)午後に、東京・文京シビックセンターで「映画人九条の会・交流集会」を開催することを決定しました。

 交流集会は、「改憲手続き法案の危険性(仮題)」と題した坂本修弁護士(自由法曹団前団長)の講演、「映画界で起こっていること(仮題)」と題した山田和夫さん(映画人九条の会呼びかけ人)の報告、ドキュメンタリー映画「戦争をしない国日本」(短縮版)の上映(予定)、映画「日本の青空」の予告編上映と大澤豊監督の完成報告(予定)に加え、映画人九条の会の運動などについて参加者の皆さんによる意見交換会などを予定しています。

 集会内容の詳細や参加要綱などは次号に掲載しますが、参加希望者はお早めに映画人九条の会事務局まで、メールまたはFAXでお申し込みください。

映画人九条の会・交流集会
日時
3月24日(土)13:30〜16:40
場所
東京・文京シビックセンター4F・シルバーホール
参加費
1000円(予定)
定員
100名
内容(案)
講演「改憲手続き法案の危険性(仮題)」=坂本修弁護士(自由法曹団前団長)
「映画界で起こっていること(仮題)」=山田和夫(映画人九条の会呼びかけ人)
ドキュメンタリー映画「戦争をしない国日本」(短縮版)の上映(予定)
映画「日本の青空」の予告編上映&大澤豊監督の完成報告(予定)
参加者の皆さんによる意見交換会など

マスコミ関連九条連・自由法曹団・JCJ・MIC+共同センターが、3・10改憲手続き法案反対シンポジウム!

 マスコミ関連九条連絡会(映画人九条の会も参加)、自由法曹団、日本ジャーナリスト会議、マスコミ文化情報労組会議の4団体と、憲法改悪反対共同センターが共同で、3月10日(土)午後、「3・10改憲手続き法案反対シンポジウム(仮称)」を開くことになりました。

 報告者に坂本修弁護士、パネラーに桂敬一さん(元立正大学教授)、斉藤貴男さん(ジャーナリスト)、岩崎貞明さん(メディア総研事務局長)などを予定しています。詳細が決まりましたらまたお知らせしますので、ぜひご参加ください。

3・10改憲手続き法案反対シンポジウム(仮称)
日時
2007年3月10日(土)13:30開始(予定)
場所
東京・社会文化会館

楽観できない情勢に立ち向かうために ─「映画人九条の会」2周年に─

山田和夫 (映画評論家・映画人九条の会呼びかけ人)

 昨年11月、「映画人九条の会」が結成2周年を迎えたとき、私は2本のアメリカ映画に意想外の衝撃と感動を受けた。クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」2部作である。

 前者は硫黄島のスリバチ山に星条旗を掲げた3人の兵士が、戦時国債の販売促進に奔走させられる姿を追い、「俺たちは英雄ではない!」との血を吐く叫びを突きつけた。祖国のために戦う兵士を「英雄」にしたいブッシュ大統領にとって、これほど神経を逆立ちさせられる異議申し立てはない。靖国神社に「英雄」として強引にまつり上げられている死者たちもまた、おなじ叫びを上げているに違いない。

 そして後者は硫黄島を守る日本軍将兵の運命を追う。あるいは日本兵の勇戦奮闘や名将栗林指揮官を美化しないか?と危ぶまれたけれど、いい意味で見事に裏切られた。いま「名将」ぶりを日本のメディアが讃える栗林中将もまた、日本の旧軍人の枠からのがれることは出来ず、最後は部下全員を玉砕に追いやる。そして無名の兵士たちの無残な死が一人一人克明に描かれる。そして一番意表をつくのは、銃後の描写だ。町内を巡回する憲兵は「日の丸を出していない家は非国民だ」とどなり込み、吠えつく犬を射殺する。召集令状で一家の柱が強引に戦場へかり出されるシーンもある。ハリウッド映画にこのようなシーンを見せられようとは!

 安倍内閣は参院選の争点を「憲法改正」と公言し、教育基本法改悪を強行し、「愛国心」教育を法律で決めた。防衛庁は「省」に昇格した。自衛隊が自民党改憲案のように「自衛軍」に「昇格」するまであと一歩、いや“赤紙”(召集令状)の悪夢が再現し、日の丸を出さないだけで「非国民」として追及される日も目の前。その仕上げが憲法「改正」だ。私たちは腰を落ちつけ、ねばり強く運動を続けなければならないけれど、「九条」を守る運動は安閑としていられる状況ではない。改憲手続き法=「国民投票法」案の早期成立もすでに政府は公言している現在だ。

 私たち映画人は、日本映画と日本映画人の誇るべき良心の伝統を貫き、あらゆる知恵と力を合わせたい。それは私自身の新しい決意に他ならない。

(2007年1月16日)

【お薦め映画紹介】 ドキュメンタリー映画 「戦争をしない国 日本」

羽渕三良 (映画人九条の会運営委員/映画評論家)

 井上ひさしさんらが呼びかけている「九条の会」の全国交流集会が、昨年6月10日に開催された。全国各地の「九条の会」から、1550人が参加し、300人を超える人たちが発言した。その300人の発言の内容を、「九条の会」のその報告集から、仔細に読んでみると、一つの特徴が浮かび上がってくる。それは、発言者300人のうち、およそ7パーセントの人たちが、『映画日本国憲法』(監督/ジャン・ユンカーマン)などの、映画会を行いながら、草の根の「九条の会」の運動を進めている、ことである。つまり、映画が、映画力を発揮しながら、活動が進んでいることが、読みとれる。

 そこで、もう一つ、憲法九条を守る闘いにとって、大きな映画力を発揮するであろう映画が出来上がった。それが、ドキュメンタリー『戦争をしない国 日本』(90分/監督/片桐直樹)である。

 この映画の特徴は何か。いくつかあげると――。その一つは、今日の切迫した情勢の下での、九条を守る大切な意味――つまり、日本政府がイラク特措法を成立させ、自衛隊をイラクへ派兵……。そして、教育基本法を改悪、防衛庁を防衛省に。九条による日本と世界の平和か、それとも、九条をなくし、「戦争をする日本か」。安倍首相が「5年をめどに改憲を」と言い、今年の5月3日の憲法記念日には、与党と民主党が、「国民投票法制」(=改憲手続き法)を、国会で成立させることを、大いに期待している、切羽詰った、今日の情勢の下、「改憲を許してはならない。憲法を作るのも、変えるのも、主権者である私たち国民である」、このことを、伝えようとしていること、である。

 二つは、アジア太平洋戦争と、その反省から誕生した新憲法。その直後から、アメリカ占領軍による改憲の動きと、その一つ一つの表れに、反対してきた国民の側の闘い。歴史的事実を積み重ね、過去に撮られてきた、それらの闘いの実写映像によって、説得力をもって、九条の重要性を伝えようとしている、こと。

 1953年の内灘の米軍基地反対のムシロ旗。1954年7月1日、自衛隊設立。「国土防衛に武力行使は憲法に違反しない」という大村防衛庁長官の発言。福島裁判長の自衛隊違憲判決。33万人の安保反対集会と銀座フランスデモ。1964年〜75年、沖縄の基地から飛び立つ米軍機。ベトナム・ソンミ村の虐殺写真……。そして、1999年5月21日「戦争法 ストップ大集会」で、訴える土井たか子氏と不破哲三氏。さらに、「九条の会」発足記念集会とアピール。

 また、この映画は、日本国憲法九条を広めようとする、世界の動きをも、伝える。1999年3月、ハーグ平和会議での「各国議会は、日本国憲法九条のような戦争放棄を採択すべき」や、アジア法律家太平洋会議での「九条は世界の人々の希望」など、など。

 最後に、この映画から、私が強く感じたことについて。50年6月以来、アメリカ占領軍と吉田茂内閣が、「人民広場」(皇居前広場)を集会に使用することを禁止していたが、1952年5月1日、警察当局は、デモ隊を「広場」内に導入。労働者、国民に向かってピストルで撃つ警官隊の記録映像など、これまで日本の記録映像作家たちが、記録してきた、いくつもの、そう見られそうもない、そして、当面の政治情勢によって、貸し出し不許可で、見られなくなるかもしれない、貴重な映像が、『戦争をしない国 日本』の中に、新たな生命力をもって、よみがえっていること。それぞれの記録作家は、望外の歓びではなかろうか。


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