映画人九条の会Mail No.13

2006.04.03発行
映画人九条の会事務局

目次

“壊憲”のための国民投票法案を阻止しよう!

 平和憲法を破壊するための国民投票法案が、今国会に上程されようとしています。自公与党と民主党のすり合わせは迷走しているようですが、油断は出来ません。

 自公与党の国民投票法案骨子は、公務員・教員の国民投票にかかわる運動の禁止、マスコミの報道・評論の規制、国会の憲法改正の発議から最短で30日後の国民投票、一括投票の指向、最も少ない賛成で憲法改正が成立することになる有効投票の過半数という成立要件など、とんでもない内容です。有効投票の過半数でいいとなったら、50%の投票率だとして、その過半の賛成で改憲できることになってしまいます。極論すれば、国民の26%程度の賛成で改憲されてしまうのです。

 こんな法律は絶対に阻止しなければなりません。映画人九条の会の皆さん、自民党、公明党、民主党、そして衆議院憲法調査特別委員会に、ハガキやFAXなどで国民投票法案反対の声を集中しましょう。

【要請先】
自由民主党 総裁 小泉 純一郎
〒100-8910 千代田区永田町1-11-23 TEL 03-3581-6211 FAX 03-5511-8855
民主党 代表 前原 誠司
〒100-0014 千代田区永田町1-11-1 三宅坂ビル TEL 03-3595-9988 FAX 03-3595-0090
公明党 代表 神崎 武法
〒160-0012 新宿区南元町17 TEL 03-3353-0111 FAX 03-3353-9746
衆議院憲法調査特別委員会 委員長 中山 太郎
〒100-8981 千代田区永田町2-2-1 衆議院第一議員会館516号室 TEL 03-3508-7246 FAX 03-3580-0066

5月9日、ついに「軍旗はためく下に」の上映会! ──事前予約制

 映画人九条の会は来たる5月9日(火)、幻の名作と言われている深作欣二監督の「軍旗はためく下に」の上映を行います(先日メールでお送りしたチラシ参照)。この機会にぜひご鑑賞ください。

映画人九条の会/5・9「軍旗はためく下に」上映会
日時
2006年5月9日(火)18:45〜20:40
場所
飯田橋・東京しごとセンター(旧シニアワーク東京)講堂
参加費
1000円
定員300名の事前予約制
ハガキ・電話・FAX・メールなどによって申し込まれた方に「優先入場整理券」を送付します。

「軍旗はためく下に」の深作欣二

 深作欣二(1930.7.3〜2003.1.12)は、1958年、日本映画産業が映画館入場者数で最高に達したころ、東映に入社した。

 東映は当時6社体制と呼ばれた大手の一角を占め、抜群の量産体制で、日本映画市場の6割独占を目ざす冒険に出た。1960年に「第二東映」を発足させ、週新作2本立てで1社2系統に突入。この年すでに年間156本を生産。深作はその中で1961年、「第二東映」(ニュー東映)の監督としてデビュー、1年で「風来坊探偵―赤い谷の惨劇」「同 岬を渡る黒い風」「ファンキーハットの快男児」「同 二千万円の腕」「白昼の無頼漢」と実に5本を出した。いずれも1時間そこそこの準長編とはいえ、今日の量産王・三池崇史も及ばぬ生産性。しかもハリウッドばりのアクションに早くもプロフェッシュナルな技量を見せた。

 深作はこの1年5作の実績を買われてか、ついで最初の作家的挑戦を試みる。それが深作の名を進歩的映画論壇に印象づけた野心作「誇り高き挑戦」(1962)だ。ギャング・アクションの企画として難なく通過したが、その主題は米CIA(中央情報局)の日本における謀略活動。その真相を暴く一匹狼の記者(鶴田浩二)が、ラストで黒いサングラスを外し、国会議事堂を疑視するアップが忘れられない。深作作品の根底を貫く反国家権力の姿勢がはじめてその一端を見せた瞬間。

 今回、映画人九条の会が5月9日に上映する深作作品「軍旗はためく下に」(1972)は、非妥協的な反戦反軍国主義のテーマを押し出したけれど、それは決して偶然ではなかった。

 深作は当時「誇り高き挑戦」を会社のスキを突いた「ホーム・スティール」と語っていた。当時の大川東映社長にお叱りをこうむり、しばしギャング・アクションのパターンに埋没させられた。しかし、スピーディーなカッティング、歯切れのよいカメラワークはますます磨きがかかり、彼の本音もしばしば突出してくる。

 黒澤明のシナリオで谷口千吉監督作品のリメイク「ジャコ万と鉄」(1964)は、ニシン漁業の労働者たちの闘争をオリジナルより踏み込んで描き、現代ヤクザ物の「狼と豚と人間」(1964)は、一匹狼と卑屈な豚の生き方をともに否定し、信頼を裏切らぬ「人間」の生きざまを断固主張した。現代ヤクザの社会的役割を活写したのが「血染の代紋」(1970)。京浜工業地帯の建設に雇われ、貧民街の暴力的立ち退きを強行した暴力団を描き、ラストで主人公がその悪業に復讐して果てたあと、工業地帯の航空撮影シーン、そして「日本が生産力世界第2位になったのは、それから数年後である」のタイトルでしめる。

 そして結城昌治の『軍旗はためく下に』が出版されると、自ら原作権を買い、独立プロ(新星映画)と東宝の提携で映画化を実現させる。そこには国家権力最大の罪悪、軍隊と戦争への強烈な怒りがたぎっている。

 深作監督といえば、とかく「仁義なき戦い」シリーズ(1973〜)が取り上げられるが、そこでも現代ヤクザの醜悪卑劣な暴力紛争がこれでもか、これでもかとむき出しにされるだけではない。第2作「仁義なき戦い・広島死闘篇」(1973)では、北大路欣也の予科練くずれが、下士官帽をかぶり、予科練の歌を口ずさみつつ自決する悲痛なシーンがある。ときに激しすぎる暴力描写の底にも、深作のどのような思いが貫いていたか? 私たちはもう一度たしかめたい。「軍旗はためく下に」上映会はその最良の機会となるに違いない。 (K)

憲法九条を護るためにやるべき仕事

【寄稿】 大澤豊(映画監督/映画人九条の会呼びかけ人)

 一昨年六月、日本の知性と良心を代表する九人の長老が“平和を求める世界の市民と手をつなぐために、改めて憲法九条を激動する世界に輝かせたい”と訴えました。

 そのアピールは、眠っていた私の脳細胞を刺激し、翌七月の「九条の会」発足記念講演会に私を駆り立てました。

 会場を埋め尽くした聴衆の前で、それぞれ九条への思いを語る長老たち。その老いてなお闘志溢れる姿に私の心は揺さぶられ、同時に切迫した事態への対応を痛感させられたのです。

 振り返ってみれば、私のこれまでの作品群には、広島や長崎を舞台に描いた核兵器廃絶への願い。軍隊の内務班さながらの学童集団疎開。一夜にして10万人余を焼死させた東京大空襲。一母親の視点で捉えた地獄の沖縄戦。というように、いずれも反戦平和を希求したものが多くあります。

 それらの創作の原点は、私が少年期に体験した戦争の悲惨さ、飢えることの辛さを再び子どもたちにさせてはならない。そのためには二度と戦争をしてはいけないのだ。そんな思いの中で一本一本の映画をつくり上げて行ったのです。それだけに、憲法九条を改悪して「戦争する国」に変えるなど以ての外、断じて許すことは出来ません。

 とは言っても、九条を護るために私に何が出来るのか……。一介の映画監督に出来ることといえば、やはり映画をつくることです。そこでいま「日本の青空(仮題)」という映画をつくる準備を始めています。

 その内容は、治安維持法下で弾圧されながらも、自由民権私擬憲法草案や海外との比較憲法の研究を重ねていた、在野の憲法学者、鈴木安蔵を中心に展開されます。

 よく、いまの憲法はGHQから押しつけられた憲法だと言われますが、そのGHQが押しつけたという草案こそ、実は鈴木安蔵たち民間人グループがつくった憲法草案を手本にしてつくられていた、という歴史的事実に基づいた憲法成立の真相を描くものです。

 「九条の会」のアピールの最後に“日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めよう”と呼びかけています。

 そして私は、憲法九条を護るためにやるべき仕事の一つとして映画の完成に努力して参りたいと思っています。

3月8日「憲法と映画」学習会に90人!

 映画人九条の会が3月8日に東京・文京シビックセンターで行った学習会「憲法と映画──映画が自由でなかったとき」(講師/映画評論家・山田和夫)は、予定人数の倍以上の90名の参加で、大成功しました。

 講師の山田さんは冒頭、映画「男たちの大和」に触れ、「戦争の悲惨さや悲しみは描いているが、あんな馬鹿な作戦を立てた者への怒りがきちんと描かれていない。そこが危険な要素になる」と語りました。

 山田さんは、戦前戦中の映画が自由でなかった時代、「大日本帝国憲法や治安維持法、映画法の下で、映画は徹底的に事前検閲され、映画人は登録制で思想チェックされ、国策で映画会社が整理・統合された」「闘って投獄された亀井文夫監督、映画会社の整理統合に反対して『映画を作ってきたのは従業員だ』と反論した伊丹万作監督などもいたが、多くの映画人は心ならずも国策に協力させられた」と語り、「あの時代を二度と繰り返さないためにも、映画人は九条を守らなければならない」と訴えました。

「護憲派のための軍事講座」報告集が完成!

 映画人九条の会が今年1月25日に行った講演会「護憲派のための軍事講座──自衛隊が《軍隊》になるとどうなる?」(講師/明治大学教授・山田朗)の報告集が完成しました。大変好評だった講演会の報告集です。ご住所を登録してある映画人九条の会会員の皆さまには、全員に送付いたしますので、ぜひお読みください。ご住所を登録しておられない方は、ご住所をお知らせいただければ郵送します。

 また、会員以外の皆さまには、1部300円でお分けします。

映画人九条の会の活動にカンパを!

 映画人九条の会は会員の皆様方からのカンパなどで運営してきましたが、かなり活発に運動を進めてきたために、そろそろ運営資金の底が見えてきました。今回、振込用紙を同封いたしましたが、会員の皆様方に改めてカンパをお願いする次第です。なにとぞよろしくお願い申し上げます。振込先は以下の通りです。

【郵便振替口座】
本郷一郵便局
口座番号/00140−9−278825
口座名/映画人九条の会

【映画情報】

池谷薫監督の「蟻の兵隊」が完成!
 「延安の娘」の池谷薫監督(映画人九条の会会員)の新作ドキュメンタリー「蟻の兵隊」が完成しました。第二次世界大戦の終結後、中国山西省に駐屯していた北支方面軍第一軍の将兵1万人は、武装解除を受けることなく、敵であった国民党の司令官に引き渡されました。世界の戦争史上、類をみないこの売軍行為は、戦犯逃れを目論む日本軍司令官と、共産軍の圧力を恐れた国民党司令官の密約によって引き起こされた一大スキャンダルでした。残留を余儀なくされた2600名余りの将兵は、戦後なお4年間も共産軍と戦い、550名が戦死するなど多くの悲劇を生みました。
 この「蟻の兵隊」は、北支方面軍第一軍の日本兵だった奥村和一さんが執念で戦争の軌跡をたどり、驚くべき残留の真相と戦争の実態を暴いたドキュメンタリーです。
 上映スケジュールなどのお問い合わせは、(有)蓮ユニバースへ。
〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-44-10-504 TEL 03‐5478‐6077 FAX 03‐5478‐6078
e-mail gon-ren@wa2.so-net.ne.jp  http://www.arinoheitai.com
鎌仲ひとみ監督の「六ヶ所村ラプソディー」も完成!
 映画「ヒバクシャー世界の終わりに」の鎌仲ひとみ監督(映画人九条の会会員)の新作「六ヶ所村ラプソディー」も完成し、全国で上映会が始まっています。
 上映スケジュールなどのお問い合わせは、東京都新宿区1-11-13 トラスト新宿ビル4階 (株)グループ現代 「六ヶ所村ラプソディー」制作プロジェクトへ。
TEL 03-3341-2863 FAX 03-3341-2874 オフィシャルブログ http://rokkasho.ameblo.jp/

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