映画人九条の会Mail No.8

2005.09.02発行 【部内資料】
映画人九条の会事務局

目次

映画人九条の会の皆さんに訴えます!
総選挙、私たちの争点は憲法です。九条を守る力に応援を!

映画人九条の会運営委員会は、9・11総選挙に当たって、映画人九条の会の皆さまに以下のことを訴えます。

 映画人九条の会の皆さんに訴えます。

 「郵政民営化法案」が参議院で否決されたことによって、国会は解散となり、総選挙に突入しています。

 小泉首相は「郵政民営化に賛成か、反対か」を唯一の争点にし、郵政民営化法案に反対した議員に「刺客」候補を送るなどの小泉パフォーマンスをマスコミは「小泉劇場」と煽り立てています。

 総選挙の争点は本当に郵政民営化だけでしょうか。自民党は来年の国会でサラリーマン大増税を狙い、自民、民主、公明の各党は2007年度をめどに消費税を引き上げることを明言しています。これらは重大な選挙争点のはずです。

 しかし、隠された本当の争点は、平和憲法をめぐる問題ではないでしょうか。自民党は8月1日、「自民党新憲法起草委員会・新憲法第一次案」を発表しましたが、その最大の特徴は、第九条を全面的に書き換えて「自衛軍の保持」を明記し、「世界各国で戦争する国」になろうとしていることです。また国民には自衛軍への協力を強い、国民の自由と権利を制限して「国民の責務」を強調し、「公益及び公の秩序」に反する行動を抑圧しようとしています。これは、国民が国家権力を規制する「立憲主義」の立場ではなく、国民を統制しようとする方向をめざすものです。

 「立憲主義」を放棄し、むきだしで「戦争する国」をめざし、国民を統制しようとする「改憲」は、すでに「改憲」の域を超えており、国のあり方を根本から変えてしまおうとする、クーデターにも等しい暴挙です。私たちはこんなことを絶対に許すわけにはいきません。

 改憲をめざしているのは自民党だけではありません。民主党も、来年2006年に改憲草案を発表するとしています。そして、自民党、公明党、民主党の三党よって、共同で「憲法改正案」を作るすり合わせ作業が行われる予定です。

 こうした国の根幹に関わる問題こそ、総選挙の最大の争点であるべきです。平和憲法をめぐる最大の争点が隠されたまま選挙が行われ、改憲に突き進む小泉自民党など改憲勢力が国会の多数を占めるとしたら、恐ろしい事態となります。

 映画人九条の会の皆さん、今度の総選挙では、候補者や政党の主張をよく聞き、よく見極めて、憲法九条を守る力を応援しようではありませんか。私たち映画人九条の会は、今度の総選挙に当たってそのことを心から訴えるものです。

2005年9月2日
映画人九条の会(2005年8月31日、映画人九条の会運営委員会)

映画人九条の会一周年イベント、決まる!

 映画人九条の会は8月24日、拡大運営委員会を開きました。呼びかけ人の大澤豊監督、降旗康男監督、映画評論家の山田和夫さんなど18名が参加し、9・11総選挙に当たって映画人九条の会会員の皆さんに平和憲法を守る力を応援しようとの訴えを出すこと、映画人九条の会の結成一周年イベントを行うこと、などを確認しました。

 結成一周年イベントについては、8月31日の運営委員会で以下のように具体化されました。

12・13映画人九条の会一周年集会
映画人、九条への想いを語る!
日時/12月13日(火)18:45〜21:00
場所/東京・文京シビック小ホール
出演者/著名映画人に出演依頼する。

 映画人九条の会会員の著名映画人6〜7名の皆さまに、憲法九条への想いを語っていただく、リレートーク集会です。出演者が決まり次第、またお知らせいたします。

 ぜひ今から12月13日のスケジュールを空けておかれるよう、お願いいたします。

「映画と講演の集いII/7・27『にがい涙の大地から』上映会」に110人!

 7月27日に行われた「映画と講演の集い第2弾/7・27『にがい涙の大地から』上映会」は、東京・飯田橋の東京しごとセンター講堂に110人が集まって成功しました。

 映画「にがい涙の大地から」は、敗戦時、日本軍が中国各地に組織的に投棄して逃げた毒ガス弾などによって、いまも中国では死傷者が相次いでいる実態を描いたドキュメンタリーです。

 海南友子監督は、ハルビンで父親を砲弾事故で殺された27歳のリュウ・ミンと出会ったことから、1年がかりで砲弾事故の実態を被害者とその家族に密着して取材、日本政府を訴えた裁判を追って、賠償しようとしない日本政府の不当さを浮き彫りにしました。

 映画上映のあと講演に立った海南監督は、「この取材中、あまりに重くて毎晩泣いた」と言い、「中国ではみんなが知っているこの問題が、なぜか日本ではほとんど知られていない」と指摘、「戦争は一度起こると60年経っても被害が続く。被害を受けるのは私たち市民。だから戦争を起こさないことを考えるべきです。それをつきつめて行けば、憲法九条になると思います」と語りました。

「九条の会7・30有明大講演会」には9500人!

 7月30日に行われた九条の会発足一周年の大イベント、「九条の会7・30有明講演会」には、9500名が参加しました。

 最初に登壇した三木睦子さんは、「イラクなどという遠いところへ行く自衛隊員を、なぜいま私たちは見送らなければいけないのか。平和で静かな生活があり、芸術が光る日本を」と力強く語り、鶴見俊輔さんは「詩集『もうろくの春』を出したが、平和をめざしてもうろくすることが目標だ。もうろくを組織して戦争に反対しよう」とユーモラスに語りました。

 小田実さんは、孫文の遺言として「憲法は、アジアに対して日本の王道を宣言したもの」と強く語りかけ、奥平康弘さんは「9条の2項を変えても、1項を残しておけば日本の平和主義は保たれると言う人もいるが、2項を変えた1項などもぬけの殻だ」と鋭く指摘しました。

 大江健三郎さんは「憲法改悪を阻止しても自民党政権は変わらず、安保条約も維持されるだろう。私は“ヒロシ”みたいに悲観的だったが、友人のシュナイダー氏は『求めれば変化は来る。決して君の知らなかった仕方で』という詩を示してくれた」と語りました。

 最後に登壇した井上ひさしさんは、「あの戦争は正しかった、あの時代は良かったという人が増えているが、昭和20年の平均寿命は男性23.7歳、女性32.8歳だった。そんな時代のどこがいいのか」「平和を守ろうと言っても、言葉にインパクトがなくなってきている。『平和』の代わりに、『日常』を守ろう、と私は言おうと思う」「日本もようやく批准したジュネーブ条約追加議定書に『無防備地域』がある。軍事基地がなく、兵士もいなくて戦争を望まなければ無防備地域を宣言できる。無防備地域を増やしましょう」と訴えました。

 映画人九条の会は、この講演会の協賛団体になり、裏方のスタッフとしても働きました。

 九条の会はこの講演会のあと、以下の「九条の会・行動提起」を発表しました。

【九条の会・行動提起】
  1. アピールに賛同し広範な人びとが参加する「会」を全国の市区町村、学区、職場、学校につくり、広げよう。
  2. 相互に情報や経験を交流しあうネットワークを広げ、全国的な交流集会の開催をめざそう。
  3. 大小無数の学習会を開き憲法九条の意義を学び、改憲キャンペーンをはね返そう。
  4. 一人ひとりが、ポスター、ワッペン、署名、意見広告、政治家やマスコミへのハガキ運動など、九条改憲に反対する意思をさまざまな形で表明し、大きな世論をつくりだそう。

 ──私たち映画人九条の会も、この「行動提起」を前向きに受け止めて活動していきたいと思います。

【寄稿】“戦後60年”の8月に

山田和夫(映画人九条の会呼びかけ人・映画評論家)

「男たちの大和〈YAMATO〉」と「俺は、君のためにこそ死ににいく」

 8月17日午後、帝国ホテルの大宴会場で「男たちの大和〈YAMATO〉」(東映、監督佐藤純彌)のクランクアップ記者会見が行われた。太平洋戦争末期、3000名余の乗員とともに沖縄への海上特攻に散った戦艦大和。その最後を描く“戦後60年記念”の戦争映画大作だが、それをどう描くのか?ずっと気がかっていたので、記者会見に参加した。

 出演した男優たちに、記者たちから質問が飛んだ。「映画の若者たちは愛する人のため、故郷のため、死んでいったとされているけれど、あなたたちは愛する人のために死ねますか」。若い男優たちはちょっと口ごもりながら「死ねます」と答えた。ひとりの年配の司令官役を演じたスターは、「そういうときになれば、私は愛する人のため、国のために戦場にいきます」と力を込めて言い切った。最後に佐藤監督がマイクをにぎった。「違います。本当に愛するものや国を守りたかったら、戦争をしないこと。そのためにいま何をすべきか考えてください」と。

 私は佐藤監督の処女作「陸軍残虐物語」(1963年)を思い出した。それは日本軍隊の醜悪さを満身の怒りを込めて糾弾した力作。この「男たちの大和」にその初心が生きていることを願わずにはおれなかった。しかし、この記者会見を報じたテレビやスポーツ紙などは、「愛するもののために戦場へ」の発言だけで、佐藤監督のこの真摯な声は一切排除されていた。ここにも「戦後60年」の現実があった。映画は12月7日全国公開される。

 そして越えて8月22日、今度は赤坂プリンスホテルの大広間で、石原慎太郎総指揮・シナリオの特攻隊映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」(東映、監督新城卓)の企画発表会が開かれた。こちらは来春撮影をはじめ、来夏公開をめざす。戦争末期、多くの陸軍特攻隊が飛び立った九州・知覧の町を舞台に、若き隊員たちの最後の日々を見とった食堂の女主人・鳥浜トメを中心に描く。降旗康男監督の秀作「ホタル」が描いたものと同じ場所、同じ人びとだが、石原ははっきりと「あの映画のトメさんは実際と違う」と語り、死んでいった若き特攻隊員たちは神様そのものであり、トメさんはその心をいやした菩薩のような人、と強調した。

 石原と新城監督が並んだ壇の背景には、桜の花満開の向こうに靖国神社が見える大型カラー・パネルが立ち、そこに「俺は、君のためにこそ死ににいく」のタイトル・ロゴが下がっていた。これ以上、この映画の意図をつけ加える必要がないぐらい。あの痛切な民族的反省を込めた反戦の譜「ホタル」と正反対の特攻賛美の映画が、同じ東映から作り出されようとしている不可解もあわせて、私は心にきざみつけた。

スタジオジブリで加藤周一氏のDVDと本

 スタジオジブリは、「ジブリ学術ライブラリー」の一つとして、加藤周一氏の『日本その心とかたち』を7枚組DVDと書籍のセットで企画制作した。NHK教育テレビで1987年〜88年に放映された番組に、加藤氏のスタジオジブリでの特別講義や高畑勲監督との対談などを加え、別巻に「日本のアニメーション」もある。

 ジブリ社長の鈴木敏夫プロデューサーは、「加藤さんの仕事をお手伝いすることは、日本の将来に役立つことでもある」と語っていて(「朝日新聞」8月31日朝刊)、いま世界的に絶大な信用を勝ち得ているスタジオジブリの真摯な姿勢を改めて示している。

 いうまでもなく加藤周一氏は、私たち「映画人九条の会」が全面的に支持する「九条の会」の9人の呼びかけ人の一人であり、鈴木プロデューサーと高畑監督は「映画人九条の会」の会員である。

【情報】

 憲法を守ろうという取り組みが広がっていますが、独自の「商品憲法」を持ち、ユニークな営業活動を行っている「カタログハウス」が、季刊誌「通販生活」の秋号に「憲法を変えて戦争に行こうという世の中にしないための18人の発言」(岩波ブックレット)を付録としてつけています。18人には、井筒和幸、井上ひさし、黒柳徹子、ピーコ、美輪明宏、森永卓郎、吉永小百合、渡辺えり子の各氏らが。


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