映画人九条の会Mail No.7

2005.07.20発行
映画人九条の会事務局

目次

自民党が「自衛軍」を盛り込んだ「改憲要綱案」を発表!

 自民党の新憲法起草委員会は7月7日、11月の結党50周年大会で公表する「新憲法草案」のたたき台となる「自民党新憲法起草委員会要綱第1次素案」(PDFファイル/155KB)を発表しました。

 「前文」はまるでブッシュ大統領の演説のごとくで、9条では「自衛軍」を明記し、アメリカ軍に追随して世界各国で「戦争する国」になろうとしています。「軍事裁判所」の設置も明文化されました。国民の権利についても、「個人の権利には義務が伴い、自由には責任が当然伴う」とし、「公共の福祉」は「国家の安全と社会秩序を維持する概念」などに置き換えようとしています。国民が国家権力を規制する「立憲主義」の立場ではなく、国民を統制しようとする方向をめざしているのです。

 自民党はこの第1次素案について、自民党員らを対象に全国10箇所でタウンミーティングを開き、9月から条文化作りを始め、11月の結党50周年大会で「新憲法草案」として発表する予定です。

 また民主党も来年2006年に改憲草案を発表する予定です。そして、自民党、公明党、民主党の三党よって、共同で「憲法改正案」を作るすり合わせ作業が行われる予定です。

 「立憲主義」を放棄し、むきだしで「戦争する国」をめざし、国民を統制しようとする「改憲」を、私たちは絶対に許すわけにはいきません。しかもこれは、「改憲」の域を超えています。自民党が自ら言っているように「新憲法」制定ということになるのであれば、国のあり方を根本から変えてしまおうとすることであり、クーデターにも等しい暴挙です。

 私たちも憲法改悪阻止の闘いをいっそう強めなければなりません。がんばりましょう。

近づく、「映画と講演の集い第2弾/7・27『にがい涙の大地から』上映会」!

 「映画と講演の集い第2弾/7・27『にがい涙の大地から』上映会」が近づいてきました。

 海南友子監督のドキュメンタリー映画「にがい涙の大地から」は、敗戦時、日本軍が中国各地に組織的に投棄して逃げた毒ガス弾などによって、いまも中国では死傷者が相次いでいる実態を描いたドキュメンタリーです。

 この上映会には海南友子監督も参加され、講演されます。CS放送の朝日ニュースターも取材に来ます。多くの皆さんのご参加をお待ちしています。

「にがい涙の大地から」上映会
日時
7月27日(水) 18:45〜21:00
【プログラム・予定】
18:45〜開会
18:55〜映画「にがい涙の大地から」上映
20:20〜海南友子監督講演
場所
飯田橋・東京しごとセンター(旧・シニアワーク東京)地下講堂
TEL 03-5211-2307〜8
JR中央線飯田橋駅・地下鉄(東西線・有楽町線・南北線・大江戸線)飯田橋駅徒歩7分
参加費
1000円

7月30日には「九条の会7・30有明大講演会」!

 九条の会が行う、東京・有明コロシアムでの1万人規模の「7・30有明大講演会」も近づいてきました。この講演会は申し込み制ですが、すでに申込者は1万人に達したようです。

 私たち映画人九条の会は、この講演会の協賛団体として、講演会の成功のために最後まで力を尽くしたいと思います。

 なお九条の会は、この集会告知のために朝日新聞、毎日新聞、東京新聞に出した意見広告について、資金カンパを募っています。「九条の会・有明講演会」意見広告カンパの振込先は、以下の通りです。

「九条の会・有明講演会」意見広告カンパ振込先
郵便振替口座番号=00130‐1‐760316
口座名=九条の会意見広告

【寄稿】自衛隊がスクリーンを闊歩する!

山田和夫(映画人九条の会呼びかけ人・映画評論家)

憲法9条第2項と自衛隊映画

 自由民主党が憲法改正案を発表した。やはり眼目は第9条、とくにその第2項の改変だ。現条文の第2項は、「戦争放棄」を明記した第1項に続いて、「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とある。その部分に「自衛軍の創設」を明記し、実質的に「集団的自衛権」を容認するとある。つまり現在の自衛隊を「軍」に格上げし、「日米同盟」のもとアメリカの戦争にいつでも出動できるようにしたい、その目的が露骨だ。

 そんな時勢に合わせたかのように、スクリーン上ではいつになく陸海空三軍の自衛隊が大活躍している。むろん映画企業やその製作に出資するさまざまな企業は、「ビジネスだ」「もうかればいい」「政治的意図はない」と言うだろうが、前記のような改憲策動の一層の露骨化を見るとき、そうした時勢に便乗して製作費を浮かせ、スポンサーをあつめ、観客動員に役立たせたい、その意図は見え見え。その社会的責任は免れまい。

「ローレライ」から「男たちの大和」へ

 戦後60年の今年、まず東宝が潜水艦スペクタクル「ローレライ」(原作・福井晴敏『終戦のローレライ』)を出した。全編撮影所内のセットとCGで、自衛隊の出る幕はなかったが、角川映画の「戦国自衛隊1549」(原案・半村良、原作・福井晴敏)になると、「防衛庁、陸上自衛隊」の全面協力が“売り”で、試写会や封切初日には、自衛隊員と実物兵器のサービスまでついた。

 7月末公開の松竹・日本ヘラルドなど「亡国のイージス」(原作・福井晴敏)は、「防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊」の全面協力が大々的に宣伝され、映画は冒頭から本物のイージス護衛艦が画面に登場するし、クライマックスではF-2戦闘機のお出ましとなる。

 本年末登場の東映・角川春樹事務所の「男たちの大和/YAMATO」(原作・辺見じゅん)も、戦艦大和の実物大セットがメインだが、海上自衛隊が側面協力している。自衛隊はアフガンやイラクだけでなく、なぜスクリーンに、こうまで積極的に「派兵」されているのだろうか?

自衛隊映画の歩み

 実は、その「積極」性はいまはじまったことではない。1950年7月、朝鮮戦争勃発と同時に米占領軍命令で、自衛隊の前身「警察予備隊」が発足したが、その直後早くも東映は警察予備隊PRの劇映画「この旗に誓う」(1951年)を製作、警察予備隊は1952年「保安隊」に、1954年今日の「自衛隊」に発展、その広報活動の一環として、映画製作に力を入れはじめる。新東宝は「激闘の地平線」(1960年)、東映は「第八空挺部隊・壮烈鬼隊長」(1963年)、東宝は「今日もわれ大空にあり」(1964年)、大映は「ジェットF104・脱出せよ」(1968年)と、ほとんど防衛庁丸がかえの劇映画が続く。

 同時に防衛庁独自のPR映画がさかんにつくられ、ベトナム戦争最盛時には2000万円をかけてカラー・ワイドのPR映画「科学の驚異・ミサイル大空を飛ぶ」(原題『日米安全保障体制』)を製作、松竹の怪獣映画「宇宙大怪獣ギララ」に併映、1967年3月、全国松竹系で公開、257万人を動員するなど。

 しかし、映画人の反戦平和への熱望は、1963年、防衛庁や右翼の圧力で放映をつぶされたTBSのテレビドラマ「ひとりっ子」(監督・家城巳代治)を1969年、独立プロ作品として再生、劇場公開に成功する。これはベトナム反戦をバネに、防衛大学の受験を拒否する若者の決意をテーマとした。続く小林正樹監督の「日本の青春」(1969年)でもまた、父親の戦争体験をバネに「防衛大学には行かない」と決心する主人公がクローズ・アップされた。その良心はいま新たな輝きをもつ。

「専守防衛」は建前か?

 「戦国自衛隊1549」は、防衛庁より戦車や装甲車、ヘリコプターや重火器などの無償提供を受けたが、その際念を押されたのは、「くれぐれもどんな事態になっても、自衛隊が先に発砲しないように。“専守防衛”ですから」ということ。映画では、400年前の織田信長時代にタイムスリップした自衛隊の小隊が、織田軍の攻勢に会うが、発砲できない。いちいち指揮官の許可をもらわなければならい。見ている方は、これが「専守防衛」なのか、などと思いはしない。なぜ射たないのか!と苛立ちがつのる。一面では、いかに9条第2項の「交戦権」否定が効果をもつかの証明だが、見る方にはそんな“建前”なくしてしまえ!と心理的に誘導する。

 「亡国のイージス」になると、もっとシリアスな形で、このテーマをぶつけてくる。「戦いの原則は、射たれる前に射つこと」がくりかえされる。ここでも9条、とくにその第2項への疑念をかきたてるように仕組まれている。

 実は、それ以前に本物の戦車や飛行機や軍艦が出てくる本物の迫力が、いいかげんな内容でも目をひきつける映画独自の機能があることを、もっと真剣に考えたいが、その力を悪用して危険な思考へと誘導するドラマづくりとのシナジー(相乗)効果を決して軽視してはなるまい。

(2005年7月14日)

【映画情報】

ジャン・ユンカーマン監督の「映画日本国憲法」がロードショー!
 ジャン・ユンカーマン監督(映画人九条の会会員)の「映画日本国憲法」(78分)が、7月初旬から東京・渋谷のユーロスペースにて、連日モーニングショーとレイトショーの2回上映されています。世界的な知の巨人たちが、世界から見た9条を語る、必見の映画です。ぜひご覧になってください。 【ユーロスペース】TEL 03-3461-0211
 また、DVDやVHSも発売されています。DVD¥2,800、VHS¥4,500。
問い合わせ先
株式会社シグロ TEL 03-5343-3101
日本映画史上に残る山本薩夫監督の超大作映画「戦争と人間」(第一部〜第三部)、HDデジタルリマスター版で一挙上映!──三百人劇場
 山本薩夫監督が空前のスケールとオールスターキャストで激動の昭和史を描いた、あの不朽の名作「戦争と人間」(第一部〜第三部)が、HDデジタルリマスター版で一挙上映されます。
 期間は8月6日(土)〜8月19日(金)まで。上映館は、東京・文京区本駒込の「三百人劇場」(TEL 03-3944-5451)です。
 また、DVD-BOXも7月21日から発売されます。
問い合わせ先
日活(株) TEL 03-5689-1023

会員数、1050名に

 映画人九条の会の会員は、現在1050名です。これからもひと回りもふた回りも会員を広げて行きたいと思います。皆さんもぜひご協力ください。

8月24日に拡大運営員会を

 映画人九条の会運営委員会は、8月24日(水)に、結成呼びかけ人の方々にも参加していただいて拡大運営委員会を開くことを決めました。

拡大運営委員会
日時
8月24日(水)15:00〜17:00
場所
全労連会館・3F会議室
議題
(1)映画人九条の会の今後の運動について
(2)映画人九条の会結成1周年集会(予定・11月24日)について

会員の皆様、メールアドレスを教えてください!

 映画人九条の会も会員が1000人を超え、会報やニュース、連絡事項などを皆様にお送りするだけでも大変な労力とお金がかかってきています。

 もし会員の皆様の中で、パソコンのメールアドレスをお持ちの方がおられましたら、ぜひ教えてください。なにとぞよろしくお願い申し上げます。


映画人九条の会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301号 映演労連内
TEL 03-5689-3970 FAX 03-5689-9585
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