映画人九条の会Mail No.2

2004.12.27発行
映画人九条の会事務局

目次

11月24日結成集会記者発表での、呼びかけ人の方々の発言

 11月24日の「映画人九条の会結成集会」に先立って、同日18:15から記者発表が行われました。

 出席された呼びかけ人の高村倉太郎さん、高畑勲さん、神山征二郎さん、堀北昌子さん、山田和夫さんは、憲法9条を守り抜く決意をそれぞれ以下のように語りました。(文責は事務局)

高村倉太郎(日本映画撮影監督協会名誉会長)

 撮影監督協会の高村です。私は昭和14年に松竹に入り、現在、日本映画撮影監督協会の名誉会長をやっています。

 私が松竹に入った頃、昭和14年という年は、すでに国はほぼ戦時体制に入りつつあり、映画法が制定されたり、映画人協会というのが設立されたりして、映画人もどんどん国策に沿った体制へと移っていった時代です。

 その頃は私たちも、国のためにとか、映画を守るためにとか、いろんな観点から国策に沿ったことをやるのが当然、というふうに考えていたんですが、実は私も戦地に行きまして、戻ってきて戦後初めていろいろなことを知ることで、戦争というものがいかに人類にとって無駄な、そしてなんの成果もないことだということに気がつきまして、日本が率先してこの九条を憲法に入れたということは大変素晴らしいことだ、というふうに私はその時思ったのです。

 ところが最近、それがやや怪しくなってきて、9条を見直そうなんて。なんのために見直すのか。せっかく世界で一番進んだ形の憲法9条を、何のために見直すのかということを考えると、またまた私が(映画界に)入った昭和14年に戻っていくのではないかと思いまして、いささか恐れをなしており、この会が結成されることを聞いて、率先して参加させていただいたというわけです。私からは以上です。

高畑 勲(アニメーション映画監督)

 私は小学校4年のときに敗戦になりました。空襲にも遭いました。それで、その2年あとに憲法ができました。ですから子供のころから一貫して、この憲法9条というものは非常に大事なものだと思ってきました。しかし、だんだん現実がずれてきている。日本の自衛隊が、ついにイラクに行くようなことになってしまった。

 問題は、私が強く感じているのは、反戦ということは映画でもいろいろとやってきたのですが、しかし、なにが一番反戦になるかと言えば、戦争以外の道を取ることに最大限の努力をすることが、一番の反戦だと思うのです。戦争の末期にひどい目に遭ったということは、大して反戦にならない。

 そういうことから言えば、この国が戦争を始められるようになるということは、日本が憲法を改悪しようというのは、戦後最大の危機だろうと思います。憲法9条は大きな歯止めなんです。

 戦争中、私は子供でしたが、すぐ分かるのは、日本では一体感がすごく強い。それは良いことでもあるのですが、日本人というのは、いったん日本がもし戦争に巻き込まれたとしたら、戦争に勝ってもらうことだけをみんなが希望し始める、願いとして持つに決まっていると思うんです。あの戦争中もそうでした。それまではいろいろと懐疑的だったり、アメリカには勝てっこないと思っていた人も、結局自ら協力して行ったと思うんです。我々は、そういうことになりやすいと思うんです。そういう点では、アメリカ以下だと思います。違う意見を認めるとか、自分と違う人を認める能力というのは、非常に薄いような気がするんです。

 で、日本が負けてもいいのか、ということを突きつけられたときに、黙ってしまうことが、必ず起こるに決まっていると思います。日本は、あの戦争中と今と、あまり変わっていないんです、若い人たちも含めて。そういうことから言えば、絶対に守り抜かなければならないものが、第9条だと思って参加しました。

神山征二郎(映画監督)

 神山です。私は40年ほど前に映画界に入っているんですが、個人的にはその頃から、この日が来ることを何となく予測していた、悪い予測をしていたんですが、ついにその日が来たかということで、命もだんだん短くなってきましたから、死ぬときに後悔しないように、ここは一番やっていくぞ、というつもりで参加しております。

 事務局の高橋さん(映演労連委員長)の方から、まだまだ(映画人九条の会の参加者の)数が少ないと言われましたが、少ないといえば少ないですが、会員のリストを拝見すれば、私の先生の新藤(兼人)監督も入っておられるし、お仕事で親しくしてもらっている倍賞千恵子さんとか、吉永小百合さんも参加されています。

 このリストの名前を見ただけでも、映画人だけではなく、いろんな分野で、いろんな地域で、映画人九条の会に続けということで、たくさんの九条の会ができていますが、国内だけでなく、もっと国外にも輪を広げて、人類の願いとしてこの9条は守って行かなければならない。命懸けでやるつもりでおります。よろしくお願いします。

堀北昌子(日本映画・テレビスクリプター協会理事長)

 日本映画・テレビスクリプター協会の堀 北です。私は、もの心ついたときからずうっと戦争の時代を過ごしまして、京都に育ちましたから空襲というものはなかったのですけれども、育ち盛り、食べ盛りをひもじい思いをして育ったのが一番辛い思い出でした。

 それで、難しいことはさて置き、戦争は絶対に嫌だ、そういうふうにはなってほしくない、ということで参加しました。

山田和夫(日本映画復興会議代表委員)

 山田和夫です。私は映画評論家ですけれども、日本映画復興会議の仕事もやっておりまして、司会をやっておられる映演労連の高橋さんなどと、どうしてもこの映画人九条の会のようなものを作らなければならないだろうと話し合ってきて、ようやく今日にたどり着いたわけです。

 私自身は60年前、戦争が終わったときには17歳でした。倉敷海軍航空隊という所で、水上特攻隊の訓練をしていて、危ないところで命拾いをしたわけです。今、特攻隊のこともいろいろと言われております。石原慎太郎は、あれほど純粋な青年はいない、だから俺は靖国神社に行って拝まなければいけない、なんてことをおっしゃっていますが、当時へのことを考えますと、とんでもないことなんです。それ以外のことは考えられなかったんです。その時代の教育だとか環境、そして軍隊にいったん放り込まれてしまえば、特攻隊に行けと言われれば、それは志願なのか、命令なのか、区別はつかないわけです。そうなってからでは遅いのです。

 ですから、なんとしても戦争はやらない、軍隊は持たないと言ったこの憲法9条は、いま事実上崩されてはいますが、守らなければいけないんです。9条をこの悪しき現実に合わせて変えるなどということは、理屈の上で言えばまったく反対のことだと思うんです。

 いま日本で有事という言葉がありますが、いったん戦争になれば、それこそラジオも、テレビも、新聞も、いっさいの言論表現の自由が、戦争という国の危機の名の下に統制されるということは、火を見るより明らかですし、現実に国民保護法の内容を見ると、そういうふうに書いてあります。

 ですから、その歯止めになっているこの9条をなんとしても守り抜くということから、私たちの未来というものを自分たち自身の手で守っていかなければいけないと思っています。よろしくお願いします。

 なお、結成集会での高畑勲監督の記念講演「戦争とアニメ映画」は、全文がシネ・フロント誌(2004年12月号331号)に掲載されています。

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会員671名に。1000名めざしてさらに会員拡大を!

 映画人九条の会の会員数は、671名に達しています(12月27日現在)。映画人九条の会は1000名会員の早期達成をめざしています。会員の皆さん、お知り合いの映画人、映画関係者、映画スタッフ、俳優さん、映画サークル、映画愛好者などの方々に、ぜひ映画人九条の会に入会するようお声をお掛けください。

小森陽一さんの講演録「憲法は誰のものか?」

 九条の会事務局長の小森陽一さんが、出版労連の9月の討論集会で講演された講演録「憲法は誰のものか?」が、出版労連から発行されています。この講演録は、憲法問題の核心を鋭く、分かりやすく語っており、大変参考になるものです。ぜひ一度お読みください。

講演緑「憲法は誰のものか?」
1部 300円
問合せ先
〒113-0033 東京都文京区本郷2-10-9冨士ビル3F 出版労連
TEL 03-3816-2911

拡大運営委員会は1月26日(水)(15:00〜17:00 於 文京区民センター3B会議室)

 映画人九条の会は来年1月26日(水)15:00より、拡大運営委員会を行います。映画人九条の会の次のイベントは、そこで決定します。しばらくお待ちください。


 様々なことがあった2004年も、もうすぐおしまいです。来年は、なんとしても憲法改悪反対の運動が大きく前進する年にしたいと思います。皆様、良いお年を!

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